論語でジャーナル
8,子曰く、由よ、女(なんじ)六言六蔽(りくげんりくへい)を聞けるや。対(こた)えて曰く、未だせず。居(お)れ、吾女(なんじ)に語(つ)げん。仁を好みて学を好まざれば、その蔽や愚。知を好みて学を好まざれば、その蔽や蕩(とう)。信を好みて学を好まざれば、その蔽や賊。直を好みて学を好まざれば、その蔽や絞(こう)。勇を好みて学を好まざれば、その蔽や乱。剛を好みて学を好まざれば、その蔽や狂。
先生が言われた。「由(子路)よ、お前は六つの概念についての六つの弊害(六言六弊)を聞いたことがあるか?」。子路は答えた。「いまだ聞いたことがありません」。「そこに座りなさい、話してあげよう。仁を好んで学問を好まないと、その弊害はただのお人好しになる(人から愚劣と見なされる)。智を好んで学問を好まないと、その弊害はとりとめがなくなる。信義を好んで学問を好まないと、その弊害は他人に利用され自らを損なう(自分が騙されてしまう)。正直を好んで学問を好まないと、その弊害は窮屈になる。勇を好んで学問を好まないと、その弊害は無秩序・乱暴になる。剛強を好んで学問を好まないと、その弊害は狂気になる」。
※浩→「居れ、吾なんじに語げん」は、孔子の学園で師匠が弟子にあらたまって教訓や故事などを語り聞かせるときの言いだしです。弟子が座から立ち上がって、先生に教訓をせがむと、先生は弟子を座らせて、居住まいを正し、あらたまって物語を始めます。ただ、この言い方をしているのは、『論語』ではここだけで、しかも、表現が教条的・図示的で、やはり『論語』前半とは違います。学問教養による調整を経ない限り、「仁知信直勇剛」の六つの美徳は六つの弊害を生むということです。こういう教条的な教えよりも、何かエピソードにもとづいての教えのほうが、弟子によく伝わるのではないかと思えます。セマンティックな記憶よりも、エピソディックな記憶のほうが心にしっかり残ります。教条的だと、まるで試験の前に丸覚えしているようです。試験で解答したあとは、すぐに忘れるかもしれませんし、覚えていても、ただ記号を覚えているようで、実生活には役立ちそうにありません。「じんちしんちょくゆうごう」って、何のことだか???日本の仏教のお経がまさにこのようで、せっかくのお釈迦様の教えがどんなものかは、さっぱりわからなくて、ただのおまじないのようです。「かんじーざいぼーさつぎょうじんはんにゃーはらみたーじしょうけんごうんかいくうどいっさいくやく……」。何のことやらわかりません。漢文で習った知識を参考にして、口語訳すると、「求道者にして聖なる観音は、深遠なる智慧の完成を実践していたときに、存在するものには五つの構成要素があると見きわめた。しかも彼は、これらの構成要素が、その本姓から言うと、実体のないものであると見抜いたのであった……」と、こういうふうに読むと、しっかりと意味が伝わってきます。最後の「ギャーテーギャーテーハラギャーテー…」の“真言”は正規のサンスクリットではなくて、俗語のようでいろいろに訳せるそうですが、古来翻訳しないものとされているようです。したがって、ここは“おまじない”みたいです。
アドラー心理学で、「最優先目標」というのがあります。人が切羽詰まったとき、最優先する目標を想定して、その人のライフスタイルを推量しようというもので、それそれの特徴とリスクが示されています。人はみな個性的で、パターンに分類できるものではないという大前提には立ちますが、人を知る手がかり・ヒントとしては役立ちます。↓
最優先目標
タイプA「安楽」
*しようとすること:安楽を求める(彼にとって安楽であるものなら何でも)
能動的:「甘やかされたガキ」
受動的:喜びを求める
*長所:こせこせしない、要求が少ない、他人にかまわない、調停者、外交的手腕にすぐ れている、共感性がある、温厚、先見の明がある
*他人の反応:いらいら、迷惑、退屈
*支払うべき代価:低い生産性、才能を使わない
*避けようとするもの:ストレス、責任、期待、「私を追い詰めないで!」
*不平を言う:低い生産性、忍耐強くないこと
*~から発しているかもしれない(小さい子どもの頃):不快、甘やかし
タイプB「好かれる」
*しようとすること:他人を喜ばせる
能動的:賛同を求める
受動的:憐れみをそそる
*長所:親しみやすい、思いやりがある、攻撃的でない、妥協する、自発的に奉仕するこ とがよくある、他人が望むことをする
*他人の反応:最初はうれしく感じる;「彼は素敵な人だな」
後に、賛同を求める彼の要求にいきどおりと失望を感じる
*支払うべき代価:成熟度の低さ、自己理想と自己評価の不一致、疎外
*避けようとするもの:拒絶
*不平を言う:自分と他人への尊敬の欠如
*~から発しているかもしれない(小さい子どもの頃):「敵陣の中で」(叩かれた子ども)
タイプC「支配」
*しようとすること:
A.自分をコントロールすること(普通は受動的)
B.他人をコントロールすること(能動的:独裁者、受動的:巧妙に立ち回る人)
C.状況をコントロールする
*長所:リーダーシップをとる潜在能力、系統だっている、生産的、粘り強い、断定的、 法を守る
*他人の反応:挑戦されていると感じる、緊張を感じる、抵抗を感じる、欲求不満を感じ る
*支払うべき代価:創造性の低さ、自然発露性の欠如、社会的距離
*避けようとするもの:屈辱、予期できないもの、馬鹿にされることを恐れる
*不平を言う:友だちが少ない、もっと親しくなりたい、「緊張している」と感じている
*~から発しているかもしれない(小さい子どもの頃):きついコントロール、打ち負か されていた
タイプD「優秀」
*しようとすること:他人より良い;
より能力がある、より善良、より正しい、
より役に立つ、より高貴に苦しむ…ヴィクティム、または、マーター(殉教者)
*長所:知識が豊富、正確、理想主義的、完全を目指す、粘り強く物事にあたる「共同体 感覚」の高いレベル(アドラー)
*他人の反応:不十分に感じる、「どのようにして達すればいいのだろうか?」劣等感や 罪の意識を感じる
*支払うべき代価:荷を負い過ぎていると感じる、責任を負い過ぎていると感じる、かか わり合いになり過ぎていると感じる
*避けようとするもの:人生とそのタスクにおいて、無意味なこと
*不平を言う:ひどい重荷、時間が無い、他人との関係の不確かさ、罪の意識
*~から発しているかもしれない(小さい子どもの頃):恥ずかしめる、完全主義