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スレッドNo.309

2番目の子どもが気持ちを表現しない

Q
 長女は11歳です。2番目の男の子が自分の気持ちを表現しないんです。

A
 ということは、きっと一番上のお姉ちゃんは、自分の気持ちをよく表現している子なんですわ。どうしてそういうことが言えるかというと、きょうだいというものは、そういうものだからです。
 一番上の子が活発で、大変ハキハキとものを言う子であって、それでもって親たちとつながりをつけているとしたら、下の子は、お姉ちゃんと同じだけちゃんとはっきりものを表現できる自信があればいいんですが、ない場合にはうんとものを言わない子になります。そうすると、こういうふうにお母さんが心配するわけですね。心配すると子どもはお母さんとつながりが持てるわけです。これが、この子が自分の気持ちをちゃんと表現しない目的で、そうやって心配してほしいんです。
 それでお母さんは、「きっとこの子はこんなふうにしてほしいんだろうなぁ、こういうことを望んでいるんだろうなぁ」と推し量って動いている限り、この子はずーっと言いませんよ。だって、それが目的なんだから。
 ほんとはね、別に自分の気持ちを表現しなくてもいいんです。だってそれは母親の課題じゃなくて、子どもの課題なんだから。
 人間には言いたいことを言う権利があります。私は自分の言いたいことを言いますが、しかし、言った以上自分の言葉には責任を取らなければいけない。だから私が言ったことで、相手から攻撃されるかもしれない。その責任さえはっきり取るならば言いたいことを言う権利があるんです。反撃されることがイヤだったら反撃されるようなことは言わなかったらいい。
 逆にね、一切何も言わない権利もある。その代わり、相手に自分の気持ちが伝わらないという責任を取らなければならない。人に誤解されてもいいということを覚悟しておかなければならないんです。だから何にも言わなくてもかまわないですが、何にも言わないということは、他の人たちにどう思われようがかまわないということを認めていることになるから、こっちが勝手にいろいろ誤解してもいいわけです。あるいは全然気にしなくて放っておいてもいいわけです。みんなでおいしいものを食べていてね、向こうが「欲しい」と言わなかったら、あげなくてもいいわけです。そのうち「どうして僕にくれなかったの?」と言ったら、「あなたは頼まなかったもの」と言えば、頼むようになります。
 このお母さんはね、黙って素振りを示すタイプの子どもに弱いんですよ。世の中には、鈍感でそういうのを気がつかないタイプのお母さんもいます。子どもが黙って何かをしてほしいという素振りをするけれど、それに全然気がつかないんですね。すると子どもは死活問題だから、ものを言うようになります。このお母さんはとても敏感で、子どもにたくさん愛情があるものだから、子どもが黙っていても、素振りを示すだけで敏感に反応を示してくれるんです。だから子どもは何も言わなくてもすむ。素振りさえ示せばお母さんは動いてくれるから。そりゃ、その子にすれば便利ですよ。一々口で言わなくても、もの欲しそうな顔をすれば、「あれが欲しいの?これ?それともあれ?」って聞いてくれるわけだもの。お姫様ですね。お姫様がご不快そうな顔をしていると、ご家老は、「お腹がお空きでございましょうか?それとも……」と聞くでしょう。だから、こういうのは「ナニナニしたい」と口ではっきり言うよりもずっと偉い人のやることです。それで、この子はとても偉い人になって、とても快適に暮らしているわけです。
 これはやっぱり具合が悪いと思います。彼の課題ではあるけれどね。彼はものを言わないという権利を主張していて、それに伴う責任を取ろうとしていないと思う。そんなふうにしていると誤解されるとか、わかってもらえないとかいう責任をちゃんと取ろうとしていなくて、黙っていながらわからせようとしている。わからないまま放っておくと、きっとこの子は怒ると思います。やっぱり、はっきり言ってくれるようにしてもらったほうがいいと思います。
 方針はこうです。はっきり言ってくれない限り絶対に動かない。アドラー心理学の育児というのは、ある面でとても厳しい育児です。絶対に叱らない代わりに、絶対に無責任なことをさせないという育児です。「この子がはっきりとお願いしない限り、絶対に動かない」と、お母さんが決心をしなければならない。それはお母さんにとって、とても勇気がいることだろうと思います。でもね、もう11歳にもなっていれば、餓死はしませんから。放っておいても、ご飯くらい自分で何とかしますからね。しばらくそういう目に遭わせたほうがいいです。
 それから、今が最後のチャンスです。この子は小学校5年生か6年生でしょう。今、性格が最終的に固まろうとしているところです。これを逃しますと、性格を変えることはすごく難しくなりますよ。今だったら辛うじて間に合うかもしれない。だから、今、家族全員で、この子本人も交えて話し合ってください。「ちゃんと言葉で、はっきり頼まれないことには動かないようにしよう」。そして、これはこの子だけではなく、家族全員、他の人に対してもそうです。大人どうしでもそうです。「気の利かない人に1回なりましょう。はっきりと口で言うことだけ聞こう」。そうやって暮らしてみるだけの価値はあると思います。
 そうすると、だいたい3か月くらいで相当変わってくる。その間に、家族が感情的になることがあるかもしれない。怒りながらとか、あるいは泣きながら訴えるということがあるかもしれない。おそらく、一時そうなると思います。おとなしくて何も言えないというタイプの子は、ものを言えるようになるという途中で、感情の力で、かけ声をかけながらでなければものを言えないから、泣きながらとか怒りながらとかでものを言う。だからそれはいいことです。そのときに、「できたら泣かないで言ってくれたら、もっとよく聞こえるんですが」と言ってあげてください。そうやって、こちらが冷静に勇気づけてあげてください。(回答・野田俊作先生)

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