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スレッドNo.328

物事を達成するために最も効果的な方法は?

Q 
 物事に取り組むときに、それを達成するために最も効果的な方法というのがあれば教えてください。

A
 僕はスポーツはあまり得意じゃないんだけど、あるスポーツのコーチをやったことがあるんです。それで、僕がまず何をやったかというと、あるものを上手にさせるのに、一番早く、しかも努力少なく身につけさせるにはどうすればいいかということなんです。
 いくつも方法はあるんですけど、普通スポーツのコーチがやるのは根性主義ですね。「繰り返し繰り返し練習すれば、必ずできるようになるはずだ」と言うのね。でも、ならないものもあるよ、そりゃ。
 僕は無努力主義です。まず、「努力なしでも達成できるはずだ」と思う。そうするといろんなことを考えることができる。「これは努力しないと達成できないぞ」と思うと、もう答えは見つからない。人間というものは基本的にもともと努力家なんです。基本的に努力家なんだけど、それ以上に努力を強いるから逆効果になってしまうんですよ。そして、人間というのは基本的にサボリでもあるんです。サボリでもあるから努力家でもあるのね。ここでうんと頑張っておくと、あとでゆっくりとさぼれるなぁと思うでしょう。一生ずっと頑張り続けるぞなんて思ったら、もうやる気がしないですよ。
 千葉周作という幕末の剣豪がいました。千葉周作さんのところが、江戸の道場の中でも一番流行っていたし、強い人もいっぱい出たんです。どうしてかというと、彼は“努力しない主義者”なんです。それまでの剣術というのは、要するに棒を振っているうちに、いつか必ず開眼するという主義ですわ。だから、滅多やたら修業修業、稽古稽古なんです。
 千葉さんのやり方はそれと違う。剣のやり方を全部バラバラにして、向こうがこうやって来たときにはこっちはこうすればいいとか、あっちがこう前に出たらこっちはこう後ろへ下がるなどと、全部型を作っちゃった。ある意味で剣術を学問的にしたんです。だから、その型を1つずつ身につけていけば、必ず勝てるようになるんです。ただ、やみくもに努力して繰り返すんじゃなくて、最も効率の良い努力のやり方を考えたんです。ある訓練をするには、はっきりとした理論があり、裏付けがあり、方向がないと無意味です。または無意味でないかもしれないけれど、猛烈に効率が悪い。
 武田健先生という心理学の先生が、関学(関西学院大学)で昔、アメリカンフットボールが強かった時代に監督をしてたんです。彼はアメリカンフットボールなんて生まれてから一度もやったことがなかった。彼がアメリカから帰ってきて、このスポーツを実験台にして、どういうことをやればチームが強くなるかという『コーチの心理学』の実験をしようとしたんです。
 当時、関学のアメフトチームは全然強くなかった。彼がやったことはただ1つです。それは、選手がいいプレーをしたら、「今のプレーは良かった」と必ず言おうということ。それ以外は何もなし。ずっとただ見てて、「おお、そのプレーは良かった」。それだけなんです。だけど、それだけ言っていると、選手はどんどん思い上がる。メチャメチャ思い上がった結果、試合に出たら全然アガらない。選手は自分たちのプレーは全部いいと思っているから。わずか彼が監督に就任してから2年で日本一になりました。2年というのは、大きな試合を2回しか経験してないんですよ。
 僕たち人間は、潜在的にものすごく大きい能力を持っています。ただ、それが発揮できないのは、“間違った努力”をするからです。あるいは、勉強するのでも、自分を勇気づけるのとは反対の努力をしているから。不得意なところばかりに注目して、「まだあれができていない、まだこれができない」ということばかり気にしているから。得意なほうを見て、「あぁこれはもうできた、これもできた、これもまたできるようになっていってる」と思えば、いつもいつも前に進んでいくんです。
 中学生になっても、分数の計算ができない子どもたちというのがたくさんいます。ある子どもが高校に行けるか行けないかを判断する最も簡単な方法は 1/2+1/3=? という計算をやらせる。それがすぐできる子は、何とか高校へは入れる。2と3を足して5。1と1を足して2だから2/5だと答える子は、相当テコ入れしてあげないと高校には入れない。では、その計算ができないこというのは駄目な子かというと、そうではなくて、例えば「2足す3」はできるわけだし、「1足す1」はできるわけです。それができるというほうに僕たちが注目すれば、この子たちを勇気づけることができるんだし、さらに次のことも学んでもらうことができる。でも、「君は 1/2+1/3 もできないのか。これもできない、あれもできない、全部できないじゃないか」と言うと、この子たちはすっかり勇気がくじかれてしまいます。
 とにかく、われわれが新しいことができたり、困難を克服できるための絶対の条件は、思い上がっているということです。「私はできる」と思い込んでいること。思い込んだときに、「なぜならば」というのはあとから大急ぎでついてくることことなんです。「僕はきっとできる。なぜならば、えっと、何だったっけ。あぁそうだ」という具合にね。(回答・野田俊作先生)

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