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スレッドNo.360

この先の日本はどうなる?

Q 
 最近のくだらないテレビ番組、幼児期からの塾通い、小中高等学校の非行など、またいろんな場所での講話を聞いても、この先日本は、日本人はどうなるのだろうか?と思います。野田先生は、今どきの日本の人々(若い親や子どもたち)をご覧になり、この先の日本をどうお考えになりますか?自分さえしっかりしていればいいとも思うのですが……。

A
 結論としては、私も自分さえしっかりしていればいいと思います。日本国はこのままでは、どう考えてもたぶん駄目です。
 このごろ、ちょっと経済学をお勉強しています。いろいろ考えているうちに、「一番根底的な部分は、結局、経済構造にあるんだ」と思うようになったので、お勉強したんです。大したことはないんですが、本を2~3冊読みました。
 わかってきたのは、1950年ぐらいから、経済学の考え方が変わったということ。それまでは、必要なものを売って必要なものを買っていたのが、今は欲しいものを売って欲しいものを買っている。
 どういうことかというと、例えば、私は釣りが好きです。うちに小さい物置がありますが、そこを開けるとなんと釣り竿が30本くらいあります。「なぜこんなにあるんだろう」と自分で不思議に思います。その30本あるうちの実際に使うのは2~3本です。残りはどうしてあるのかというと、広告に釣られたとか、店の人の口車に乗ったとか、何か買った由来があります。買ったそのときは幸せだったんです。「買って良かった」と思うんですが、しばらくの間幸せなだけなんです。で、しまい込みます。しかも、買うときに安いものを買いません。できるだけ高いものを買います。そのほうが幸せが大きいんです。千円の竿より1万円の竿、1万円の竿よりも10万円の竿(10万円の竿は持ってないけど、もしあったとすればね)。持っていると、何かすごく幸せなんです。
 お宅のご主人がゴルフをやっていると、クラブを欲しがりませんか?今のでもちゃんとできるのに、「ブラックシャフトがどうの」とか言って、また欲しがりませんか?若い人は車を欲しがりませんか?ちゃんと走っているのに、ニューモデルが出たら、「あれが欲しい」と思う。なぜそう思うか。テレビなんかにデザインと広告で欲しくさせる構造があるからです。それを見ていると、ついうかうかと乗っかる。乗っかって買ったとき、すごく幸せ。高級品を持っていると感じられて。
 でも例えば、80万円の車と800万円の車で、乗って何か違うか。本当はそんなに違わない。外の形が違うだけで、裸にしたら中は一緒です。千円の釣り竿と10万円の釣り竿とどっちがよく魚が釣れるかというと、関係なくて、どっちでも同じです。ゴルフもそうで、いいクラブを買ったってちっともスコアは伸びない。でも買うと幸せなんです。だから必要によって買うんじゃない。メーカーも必要なものを売ってるんじゃない。不必要なものを欲しがらせて買わせる。われわれは不必要なものを買って、一時だけすごく幸せになる。そうやって売り買いの構造が、売る人と買う人とがどんどん売ってどんどん買い換えて、それで日本国は戦争しないですんだんです。それまでの時代の経済というのは、必要なものを売って必要なものを買って、そのうち売れない時代が来て、大恐慌が起こって、どうにもいかなくなって失業率が増え、それで戦争をした。戦争すると軍隊のために、ものすごくたくさんのものを生産して、ものすごくたくさんのものを消費しないといけない。それでみんな就職できて働けて良かったんです。しかし、第2次世界大戦をした結果、そんなやり方だと世界が破滅することがわかった。そこで戦争をやめるために、今度は無駄なものの売り買いをする方針にして、これは今のところうまくいっています。われわれは戦争をしないです。先進国はもう戦争なんかしません。無駄なもの、欲しいものを売り買いしているところじゃなくて、必要なものを売り買いしている社会が、今もまだ戦争をやっています。
 この構造は、幸せじゃないところがいくつかあります。1つは物質的なことです。というのは、ものすごい量の資源を使って、ものすごい量のゴミを出すこと。経済は需要と供給でぐるぐる回っているけど、これは一方では資源を使って生産して、もう一方ではゴミを吐き出している。今は資源の問題よりゴミ問題のほうがずっと深刻です。以前、大阪がオリンピック候補地になりました。大阪オリンピックはゴミ問題と深い関係があります。大阪は大阪湾へゴミを捨て、その上を埋め立てて、たくさんのゴミで埋め立て地がいっぱいできました。けれど景気が悪いからそこへ工場が何も建たなくて、ただの空き地です。大阪市としては体裁が悪い。でも、環境保護団体が怒っています。「大阪は全部埋め立てて、淡路島まで歩いて行けるようにするつもりか!」と。大阪市としては、そこへオリンピックを乗せると体裁がつく。だからぜひともオリンピックを埋め立て地の上でやりたい。しかもひどいことに大阪は、分別収集をほとんどやっていない。大阪市内はまだで、ようやく周辺都市で、燃えるものと燃えないものとを分別しだしたばかりで、ものすごい原始的な段階です。そんなゴミを海へどんどん埋め立てています。余談ですが、東京はもっと状況が悪い。東京は人口が多いし、東京湾は大阪湾より狭いから、とうとう埋め立てられなくなりました。埋め立て可能なところは全部埋め立ててしまったので、今度はゴミを「青森県へ捨てよう」と言ったら、青森県が怒りました。「うちへ捨てないでくれ」「じゃあ、インドネシアへ捨てよう」。恐ろしいことを考えています。
 ゴミ問題と環境汚染。われわれは家をどんどん建て替えていますが、新建材はあとで燃やすとダイオキシンが出てきます。ベトナムで奇形児が産まれる原因になった薬ですが、それが産業廃棄物から海へ溶け出して、広島の牡蠣にもいます。アナゴにもいます。瀬戸内海はダイオキシン汚染が魚や貝にだんだん進行してきています。それをわれわれは食べるわけです。それしか食べるものがないから。そのダイオキシンが体の中に入って、例えばアトピーのように体質を悪くするし、子どもたちの奇形率もやがて増えていくでしょう。これもゴミ問題です。
 家なんてのは、われわれの3代から4代前までは田舎の家は茅葺き屋根で、だいたい一度建てたら200年は保った。それを大事に大事に使っていました。今の家はだいたい20年から30年しか保たないように最初から造ってあります。しかも住宅金融公庫から融資を受けると、住宅金融公庫は材木の指定をしていて、「ここのこんな材木しか使っちゃいけない」という規制があります。その材木は輸入材で、その輸入材には防腐剤(虫除けの薬)が大量にしみ込ませてあり、これが毒なんです。その家に住んでいると、そいつが空気の中にフワフワと出てきます。それを毎日吸って暮らすうち、やがて体がやられます。住宅金融公庫からはお金を借りないようにね。田舎に家があるなら、それを大切にあと200年ぐらい使うようにしましょう。もちろん資源の枯渇のこともあります。石油はもうすぐなくなりますし、原子力も廃棄物で困っています。
 もう1つは精神的なこと。こうやって欲望に任せて買っていると、物を買えなくなると不幸になります。何かを買うということが幸せの条件、物を買えるのが人間の幸福だと、われわれはあまり思わないけれど、子どもたちは思います。「タマゴッチ欲しい」と言ったら、何がなんでも欲しい。あんなものどうせ買っても、私の釣り竿と一緒でしばらくしたら飽きます。でも、私の釣り竿はわりと善用しています。飽きたら、大阪のアドレリアンで釣り好きの人にあげます。そうすると、ちょっと恩に着てもらえるかもしれないから。「あのとき釣り竿あげたろ」なんてこと言えるかもしれない。タマゴッチなんかみんなが飽きたら、ただのゴミですよ。でも子どもたちはどうしても欲しい。ものを買えることが幸せ、あるものを手に入れていることが幸せだと子どもたちは誤解している。
 幸せはそんなとこにはない。物を持っているとか買えるとかというところには、人間の幸福はない。幸せはどこにあるか。アドラーは、2つのことが人間の幸福の条件だと言います。1つは、「この世の中で役に立っている」ということ。自分は誰かの役に立っているという感じがあることが大事。それから、「人と良いコミュニケーションが持てている」ということ。みんなから見捨てられてひとりぼっちでいるんじゃなくて、話し合ったり遊んだりできるということ。それがあればいいと思うけれど、今はみんなそんなふうに考えられなくなっています。それは子どもたちの精神をむしばんでいるし、やがてこの日本国だけでなく、いわゆる先進諸国を駄目にしていくでしょう。それも人類の運命であれば、その方向に動いていくんでしょう。だから、さしあたって私とか私の周囲の人とか、私の家族とかはどうするかをみんなで考えたいんです。そして最終的にわれわれが違う世界、今みたいにこんなに毎日贅沢三昧で暮らすんじゃない世界になったときも、幸せに暮らせる用意だけはしておきたいと思います。(回答・野田俊作先生)

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