ストーカーの具体例は?
Q
近ごろストーカーのことが、よくドラマに取り上げられていますが、ストーカーの具体例がありましたら話してください。「全然知らない人からの無言電話」もストーカーでしょうか?
A
何か次々にあんなものをはやらせる馬鹿者がいるんです。この前は何だったかな?“アダルトチルドレン”だ。もう1つ前は、“シンデレラ・コンプレックス”で、絶えず儲けたい心理学者がいるんです。
私も本を書いていますが、本って最初書くのが大変です。鉢巻きして、ウンウン言いながら書きます。それで、印税10%です。だから例えば、1000円の本を1万部出すとするでしょう。そうすると売り上げは1千万円です。1千万円の10%の百万円をもらえます。嬉しいですね。でも、半年かかって一生懸命本を書いて、百万円って少ないと思いませんか?本を書くエネルギーに比べたら、土木作業に行ったほうがよほど儲かります。ところが印税は、第2版以後もくれるんです。1万冊刷ったのが全部売れて、次にもう1万冊出したら、何もしないのに百万円入ります。しばらくすると第3版、また百万円入る。だから実はすごくぼろい商売です。
『アドラー心理学トーキングセミナー』は、1986年ごろに書きましたが、今でも年に1回か2年に1回増刷します。そのたびにくれるんです。何か突然宝くじに当たったみたいで、すごく嬉しいです。でも、あの本は1回に千冊くらいしか印刷しないので、そんなに儲からない。残念!それでも10万円とか入りますから嬉しい。1冊2千円だと20万円くらい……。百万部売れたりすると嬉しいね。心理学は売れ筋なんですよ。
私はある大手出版社から絶えず「本を書きませんか」と言われています。『誕生順位による性格判断』とかを。「絶対ベストセラーですよ」と言われます。そりゃベストセラーになるかもしれないけれど、そんなもの書きません。「みんなが気にして、そのうち映画ができたり、テレビ番組ができたりするのがイヤだから書かない」と言ってます。でも、そんなのを書く人がいます。
ストーカーなんて言うと、センセーショナルで本が売れちゃったりする。百万部は売れないかもしれないけれど、1000円の本が10万部売れたら、すごいお金です。ちょっと計算してみてください。「おっと」という感じになるでしょう。1冊の本でそれだけ入ったら、女房、子どもがいなければ、2年くらい暮らせるでしょう。女房、子どもがいたら1年くらいだけど。
だから儲けるために書いている人がいます。根拠も何もないのに、まるで手品のように何もないところから、“アダルトチルドレン”とか“ストーカー”とかを取り出し、それにマスコミが食らいつく。次にはテレビドラマが食らいつく。
テレビドラマを作っているのは、だいたい30歳代前半の人たちで、われわれみたいな年齢の者から見ると、失礼ながら世間のことをあまり知らない人たちで、目先目先の話題になったことをドラマに織り込んでいきます。あんなドラマは、半年したら忘れられるということを、初めから計算に入れていて、シェークスピアや近松の芝居とは違います。今やっているドラマを、300年後に舞台でやっているでしょうか。2度とやらないと思います。使い捨てでどんどんドラマを作っていきます。テレビでストーカーのドラマを作るけど、それがいつか再放送されるなんて考えてない。一時視聴率を上げればそれでいいので、そんなものにわれわれは深刻にならないことです。30歳代の若い人たちが一時会社からの受けが良くなるために、たまたま金儲け主義の心理学者の書いたことに食らいついただけで、深刻に受け取ることはありません。(回答・野田俊作先生)