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スレッドNo.368

正しい話し方

Q 
 「正しい話し方ができるように、技術を深めていかなくてはいけない」とお聞きしたのですが、具体的にどういうことかわかりません。ご説明いただけますか?

A
 まず、丁寧に話すことです。命令したり、指示したりしないで、対等の仲間と、自分の家族と話をするわけですから。なるべく丁寧な言葉で話をしたいと思います。
 ぞんざいな言い方のほうが親しみを込めているという感じがありますが、感情的になりそうなこととか、難しい話題は、子どもが相手でも丁寧な言葉で話したほうが安全だと思います。こちら側を冷静に保つためにも、極端な敬語でなくてもいいから、丁寧な言い回しをします。私も自分の子どもと話すときに、なるべく丁寧な言い回しを心がけてきました。
 それから、私が何か提案することを、向こうが断れるようにします。『スマイル』(『PASSAGE』の前身)を受けると“お願い口調”というのが出てきます。テキストには、「お願い口調というのは『こっちへ来なさい』とか『こっちへ来てちょうだい』と言わないで、『ちょっとこっちへ来てくれませんか?』とか『こっちへ来てくれると助かるんだけど』というように、疑問文や仮定文で言ってください」と書いてあります。「お願い口調を使うと向こうがよく言うことを聞いてくれる」と誰かが言いますが、それは違います。お願い口調を使うと、向こうがよく言うことを聞いてくれないんです。そこがいいところです。お願い口調を使うと、子どもが断りやすいんです。「ちょっとこっちへ来なさい」と言われるより、「ちょっとこっちへ来てくれないかな」と言われるほうが、「イヤです」と言いやすい。そのためにお願い口調を使うんです。
 私(野田)によくお願い口調を使ってものを言う人がいますが、それは全部断ることにしています。「野田先生、今日、帰りはヒマですか?ねえ、一緒につきあってもらえません?」「イヤです」。するとその人は怒るんです。怒ると、「こいつ、まだアドラーができてないな」と思います。お願い口調は、断られるために言っているんです。だから、子どもにも断る権利があり、その権利を認めながらも、こっちが何か頼みたいことは、平等に頼んでいく工夫をしようと思っています。
 それから、理屈の通った(論理的な)ことを言いたいし、向こうの理屈が通っていれば、負けたいと思います。これも昔、息子にイタズラで話したことです。彼、お魚のカレイが好きで食べていたんですが、片身だけ食べて片身残すんです。私、面白いから、「ねえねえ、ちょっとお説教していいですか?」と聞いた。「面白いね、お父さんがお説教しますか。やってごらん」と言うから、「それじゃあ、やらせていただきます」とお説教をしました。
 「今、アフリカでは子どもたちが飢えている。それなのに君は、こうして食べ残していいと思っているんですか?」。すると息子は、「私がこれを食べるのと、アフリカの子どもが食べないのとは関係がないと思います。それともお父さんは、これを宅急便でアフリカへ送りますか?」と言うんです。負けました。一本負けました。だから、「すみませんでした」と謝りました。
 子どもでも、向こうのほうが理屈が勝っていればやっぱり負けたいと思うし、こちらも、子どもが納得できる理由でいろんな話をしたいと思うんです。両方が納得できる、筋の通った理屈で話がしたいんです。
 伝統的に日本人は理屈を言うのが嫌いなようです。でもこれからは、理屈の強い日本人を作っていかないと世界的に困ります。外国人は否応もなく、これから増えていきます。今は例えば、イラン人とか、インドネシア人とか、タイ人とかの未熟練労働者が、あるいはバーのおねえさんが入ってきてますけど、いつまでもその状態ではなくて、やがて必ず、熟練した労働者、知的な労働者が日本でも働くようになると思います。企業も、インドネシアやタイやフィリピンの大学卒を雇わなくてはならなくなると思うんです。国際的な圧力もありますし、それから、絶対的な必然でもありますね。あるいは、日本の企業で働いていても、タイやフィリピンやインドネシアに工場を持っています。大企業だけでなく、中小企業も同様です。日本国内では、人件費が高い、土地も高いのでやっていけなくて、外国に工場を造ります。だから、お宅の坊ちゃんやお嬢ちゃんは、将来問題として、タイの奥地でカマボコを作っているかもしれないです。
 外国人とつきあうときに、われわれが頼れるのは論理の力だけです。理屈ならどの国の言葉に訳しても共通だから通じます。日本ふうの「情」は通じない。「情」に絡めようったって、タイ人やフィリピン人は絡められない。あの人たちには“大和魂”はないから。
 そんなふうに論理的な力がすごく大事と思うから、子どもと話をするときにもわれわれは、冷静に論理的にちゃんと理屈が立つ、筋道が立つ話し方をしていきたいと思います。(回答・野田俊作先生)

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