離れて暮らす父(82歳)と後妻(74歳)が仲良く暮らせる援助は?
Q
夫の両親は父81歳、後妻74歳。函館で2人で暮らしていますが、父はボケが始まり、今、胆石と胃癌で入院中。2人の仲はうまくいかず、父はわがままだと母はいつもぼやいている。手術したあと何年生きるかわからないが、ますますボケがひどくなるのでは。大阪に来るように言っても2人とも「ノー」。遠く離れているので私は援助はできませんが、2人が仲良く暮らしていけるには私はどんな援助をしたらいいでしょうか?
A
そんなんでけへんわ。そばにいたってできないのに。喧嘩し合って暮らすのをご両親が選択しているなら、それでもいいじゃないですか。私は別に日本中のいがみ合っている夫婦をみんな仲良くしてやろうと思わないんです。頼んでくるから、うち仲良くなりたいと言うから、「ほんなら手伝いましょ」と手伝いますけど、どっかで喧嘩してるところへ行って、「あんた方仲良くしないといけません」と言う気はないんです。アドラーのカウンセリングの理論を学ばれますと、最初に「目標の一致」というのが出てきます。カウンセリングというのは、お客さんが何かある問題を解決したいと言い、こちらも「それはこういうふうに解決すればいいですね」と言って、最終的にカウンセリングが終わったときにどんなになっていればいいかを先に決めるんです。だから例えば登校拒否の子のお母さんが来て、うちの子を学校へやりたいと言ったら、「それは無理ですね」と僕は言いますよ。お母さんと私が相談した結果、ここへ来てない登校拒否児が学校へ行くかどうかわからないし、請け負えないんです。でも、その子と仲良くなるとか、その子の話を聞いてあげられるようになるとか、その子と一緒に考えられるようになるとかなら、それは援助できます。お母さん自身の問題だから。学校へ行けるかどうかわからないけど、息子さんともうちょっと気楽に話ができるというのを目標にしませんかとか、息子さんがうちにいてイライラするとか喧嘩するのを、喧嘩しないで暮らせるようになるのを目標にしませんかとか、こっちが提案してみます。それでお母さんが「それでいいです」と、「学校へ行く行かないは当分どうしようもないかもしれんけど、冷静に相談できるようになれば一歩進んだことになりますからそうしましょう」と言ったらカウンセリングが始まるんです。夫婦関係も夫や妻がわれわれは仲良くしたいと、「これ嫁よ、なんか方法はないか?」と聞いてくれば教えることもできるけど、まあ聞いてこないでしょうから、だから助けようがない。それから歳取って田舎で暮らしていて、「こっちへ来ないか」と言って「イヤだ」と言ったら、それもそれでいいんじゃない。自分の土地とか家というのは、われわれの心の一部なんです。人間の心というのは、頭の中・脳みその中にあるんじゃなくて、一緒に暮らしている人とか友だちとか、住んでる土地とか家とかにも心が一部ひっついているんです。だから引っ越しして鬱病になる人が多いんです。心の一部がもげちゃうから。友だちがいなくなるのもあるけど、住んでいるおうちって大事です。僕はどっちかというとそんなのはあんまり大事じゃない人なんです。あんまり困らないんですけど、だからこうして旅行して暮らせるんですけど、自分の家から離れるとダメなタイプの人もいますので、無理やり引っ張り出さないほうがいいんじゃないですか。(回答・野田俊作先生)