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スレッドNo.465

嫌いな人を人格障害だと言うのは危険か?

Q 
 あまり人を類型化してはいけないとのことですが、大嫌いな同僚を人格障害だと思いたくなるのは危険な考え方でしょうか?

A
 もちろん危険な考え方です。僕は若い精神科のお医者さんと話をする機会がわりとあるんですけど、「人格障害という病名を付けないでね」と言っているんです。「精神科医が自分の患者さんに『人格障害だ』という病名を付けるのは差別なんだ」って。要するに「あの患者はイヤな患者だとか、あの患者は嫌いだとかいう意味のことを、医学的に難しく言っているだけで、そんなものを病名にするのは「イヤな患者」って意味でしょう。それはパニック障害とか強迫性障害とかと同レベルのものじゃないんです。価値判断が含まれているもの。価値判断が単語自身に含まれている単語は使わないほうがいいと思っています。「あの人はパニック障害だ」とか「強迫性障害だ」とか言うのには何も価値判断は含まれていませんからね。逆に、医学でも価値判断が何となくくっついた単語はあるにはあるんです。例えば、「痴呆」。「老年痴呆」というのを使うのをやめて「認知症」に変えました。なんで変えたかというと、「痴呆」という語彙そのものに「ボケて愚か」という感じがあってイヤだと言う老人たちがいっぱいいたんです。医師の側はdementiaという英語を翻訳して使っていたんですけど、「痴」にも「呆」にも意味があると思っていなかったんですが、「まあそう言うなら変えましょう」となった。それから「精神分裂病」は「統合失調症」に変えました。「分裂しているというのが具合が悪い、感じが悪い」と患者さんたちが言うんですけど、僕も「精神分裂病」という名前は良くないと昔から思っていたんです。あれは「精神統一病」なんです。へんなところに精神を統一しすぎているから、「UFOの命令だ」とか言うから、もっと分散してくれという意味なんです。特に精神医学の領域では、価値判断の含まれた単語を避けたいんです、いつも。患者さんがイヤだと言うと「はいはい」と病名を変えるんです。病名なんていうのは、ほんとは精神分裂病とか統合失調症とか僕らは思ってないので、F2だと思っているから、F2なんです。躁鬱病はF3なんです。全部国際病名分類の番号で覚えているから、何でもいいんです。科学者としては、名前というのがただの符牒ですから、そこに特別の社会的な意味がこめられていると思わないんですが、でもやっぱり入り込んでくるんです、いつも。特に「人格障害」personality disorderというのは、アメリカでも評判の悪い病名なんです。そんなものを病名として認めていいのかと。今、精神科病名分類は、大きく分けて2つあります。WHOが作ったICD(International Classification of Diseases国際疾病分類、今10)とDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders精神疾患の診断・統計マニュアル、今バージョン5)というのが出回っています。すごく立場が違うんです。どっちを取るかで日本の精神科医の中で争いがあって、僕は絶対ICD派なんです。ICDには「人格障害」という概念がないんです。DSMではすごく大っぴらにある。病名分類そのものの中にそういう価値判断がある疾患分類に反対なんです。まあ日常で人格障害という言葉を使いますから、もっとわかりやすく「イヤなヤツ」とか言うほうが誰にでもわかっていいと思う。(回答・野田俊作先生)

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