MENU
64,068

スレッドNo.490

向上心、怠惰

Q 
 前回、「人には決められないことがある、することもできないというのがアドラー心理学ではとても重要です」ということを教えていただいて、ずいぶんまわりで起こっていることを楽に考えられるようになりました。自分の思いどおりにならないことを苦にしていましたが、できないことやわからないことがあるのは当たり前とそれほど気にしないことだと思いますが、向上心がない、怠惰だと見えそうです。どう考えればよいでしょうか?

A
 向上心とか怠惰とかいうのは価値観です。価値観は事実でなく思想ですから、別に向上心なく怠惰に暮らすのを美しくないとは思いません。近代、いつからか?1600年くらいから近代なんですけど、近代という時代は何だったのかというのがここ10年くらいの大きな論争のテーマです。日本ではちょうど第二次世界大戦が始まって1年ほどしたころに、近代の超克という名前の討論会がありまして、それが本にまとめられています。当時、「日本というのは何なのか」「日本の文明というのは何なのか」「日本は世界史の中で何をしようとしているのか」ということを考えなきゃいけないとみんな思っていた。あの戦争は、何も考えないうちに戦争になったんです。戦争が終わったあと、マッカーサーが思っていたように、「集団防備でみんなで世界征服しよう、おー!」とやったわけでは全然なくて、ヒトラーみたいに「何が何でも世界征服するぞ」と全然日本人は思ってなくて、なんやあれやったりこれやったりしているうちに、だんだん戦場が広がっていって、気がついたらアメリカと戦争してしまっていたわけです。そんな状態で困って、僕たちは一体何をしているんだと思ったので、まあいわゆる文化人ね、小林秀雄とか林房雄とか哲学者や科学者が集まって大変大規模な討論会をしました。大体それぐらいから日本人は、一体近代文明というのは正しいのか正しくないのか、もし正しくないとしたらどっちの方向へ乗り越えないといけないのか考え始めました。いまだに何も結論は出ていないです。結論は出ていないけど、近代が何をやってきたかというのはだんだんようわかってきました。それ以来一生懸命考えてみてから。要するに世界征服、物理世界の征服をしていたんです。ルネ・デカルトという人が、科学の力を使えば物質世界を人間は完全に支配することができると、『方法序説』という本の中で言いました。それを実際にやってきました。何のためにやってきたかというと、豊かな暮らしができるように。マルクスが共産主義で目ざしたのは、生産力を大きく上げてしまうと貧富の差がなくなる。あれはうまくいかなかった。で今度ケインズさんやアダム・スミスさんなんかがやったのも、人間の欲望を正面から肯定してしまうと、みんなが儲けたいから生産力は上がる、欲望を全肯定しておいて、生産者は生産者でお金持ちになると思い、消費者は消費者でいろんなものを買いたいと思い、みんなで一生懸命勤勉に働いて向上心を持っていたら、生産性が上がって貧富の差がなくなって、差別のな良い社会が来るだろうと、まあ思っていた。資本主義のほうがある程度成功しました。ある程度成功しましたが、成功してみた結果わかったことは何かというと、要は、幸せじゃないということ。何か忙しいんです。何かどっかが違うよ。鬱は増えているし、子どもも伸び伸びしてないし、みんな勉強せんといかんし、すごいたくさん働かないといかんし、家族もゆったりくつろいでないし、何かどこか違うんです。いまだに近代の超克、近代思想・近代文明を乗り越えて次の段階へ何とか行きたい、方向はわからないけど行きたいなあとみんな思っているんです。だんだんそれは深刻な問題になってきている、いろんな点でね。われわれは大きな力を手に入れました。核科学、原子爆弾・水素爆弾なんかあって、日本国を滅ぼそうと思ったら、中国が2,3発撃ったら終わりです。そんなのひどい世界だと思わない?それはあんまりですし、最近の話題だと、金融資本主義ね。あれはものすごいね。世界の総生産、1年間何もかも作って作って作って全部の生産量が大体5000億ドルくらいなんです。ところが、株式とか先物取引で動いているお金が1年間6000億ドルくらいなんですって。総生産量より大きいお金が、何も買ったり売ったりせずに実体経済と関係なく飛んでいる。そういうわけで株式や先物取引の総計がどれだけかわからない。ある学者の統計によると、2京か2万億ドル、そんな単位聞いたことない。それくらいのお金が株式の形でどこかに置いてある。生産量より多い株式って一体何なんだろう。何もないところでお金が作り出され消えていくマジックが発明されて、ひょっとしたら来年再来年くらいに飢餓とかパニックが起こるかもしれない。今のところない。隠しているから。見えてくると恐いから。もう1つ、生物学というのもめちゃめちゃ恐いと思う。今僕たちが一番びくびくしているのは鳥インフルエンザなんですけど、鳥インフルエンザというのは名前が良くなくて、風邪でしょと思うけど、全然風邪と違う。僕たちが普通かかるインフルエンザは、まあそんなには死にません。全然治療しなかったら、それでも数パーセント死にます。今治療も良くなりました。鳥インフルエンザが人間に感染すると、少なく見積もっても30%、多く見積もって60%の致死率です。もしも日本に鳥インフルエンザが入ってきたら、日本の人口が6000万くらいに減ります。恐ろしい。僕は一応缶詰を買います。一応1週間分。お医者さんたちは6週間分。6週間分の缶詰ってすごい量です。3メーター近づかなければうつらない。3メーターくらいしか咳は飛ばないので。3メーター近づくチャンスというのは、普通、電車だけなんです。電車に乗らなかったら鳥インフルエンザにならないから、日本に入ってきたら、私は自宅へ閉じこもろうと思っています。だいたい5,6週間で死ぬべき人は死にます。その間耐えればいい。なんでそんなことになったかというと、生物学の1つの成果で、密集して鶏を飼うんです。今、養鶏場を見ると、すごい狭い鶏小屋に空中に網の上で鶏さんを育てている。卵を産むと後ろへコロコロと卵だけ流れる。なんであんなに密集して飼えるかというと、感染予防のために餌の中に抗生物質が入っているんです。抗生物質を食べているからすぐ隣の鶏さんとこっちの鶏さんとで病気がうつらないんです。これは恐いですよ。あらゆるところで抗生物質が使われている。例えば、養殖の魚も餌の中に抗生物質を入れているから、あんな狭いところで密集して暮らせる。だって広い海を泳いでいたハマチさんや鯛さんがあんな狭いいけすの中で泳げるなんておかしいと思わない?絶対病気になるのにならない。薬がしっかり筋肉の中に入っているので、食べたら体の中に入りますから、ご用心と言ってももう遅い。もうちょっと違う文明を作っていかなきゃいけない、時間をかけて。だから勤勉じゃなくなって怠惰になると、近代文明の中でえらい暮らしにくいけど、いいじゃないですか、未来を先取りしてて。

引用して返信編集・削除(未編集)

このスレッドに返信

このスレッドへの返信は締め切られています。

ロケットBBS

Page Top