アドラー心理学イコール・シンプリファイ
Q0319
「アドラー心理学イコール・シンプリファイすることだ」と教えていただきましたが、生活体験の中において具体的に教えてください。
A0319
具体的にってどうやって教えていいかわからない。「ああ、アドラー心理学をやって物事が簡単になった」という実感の問題だから。
人に物を教えるとき3とおりの教え方がある。例えば、歴史を教えるのに、縄文式時代があって弥生時代があって、貴族の時代があって侍の時代があってというふうに、始まりから教える。これが第1の教え方。
第2の教え方は根性がいる。今現在から教える。この前、自民党が政権を失った。その前は自民党と社会党でその前は自民党でとか。さらにその前は戦争があってと、逆向きに過去へ遡って教えると興味がつながる。中学・高校は第1の教え方です。『逆向き日本史』という本も出ていて、これは第2の教え方で面白い。
第3番目は、大学で国史をやるとそんなふうにものを考えなくて、まず日本の歴史を2つに割るとしたらどこで割るか。南北朝で割るのが賢い。後醍醐天皇の前後です。いろんなことがあそこで変わる。文字を書く人がそれまでは高級武士とか貴族だったのが、そのころから村長さんが文字を書いて直訴している。日本国に文字がワッと広がった。それから、食べ物が変わって、米中心になった。貨幣経済がその辺から始まって、中国から輸入した六文銭・銅銭が使われた。鎌倉時代は砂金の袋だったのが、それからお金になった。田舎の村ごとにお寺やお墓があるというのもそのあたりから。日本人の暮らしそのものが根底的に変わるのが室町地代に入ったことみたいだという感じを持ちます。
この感じは、高校で歴史をやっている限り絶対に持てない。高校の歴史の感覚で日本の歴史を2つにしたら、ほとんどの人が、鎌倉時代の初め・平安時代の終わり、武士の時代の始まりだと言う。高校式の政治史の見方ではそうだけど、そこには生活実感が何もない。大学なんかに行って歴史を全部知っていて、実際の生活実感を文献なんか押さえていると「室町」だとわかる。第3番目の体験主義的な教え方。細かいことはええがな。大まかにポンと体験しよう。
アドラー心理学も、教えるときに、「基礎講座」といって縄文式時代から始めるやり方を1つしている。アドラー心理学の基礎的な考え方からずっと積み重ねよう。それから「パセージ」は日常生活の、まず育児という問題を取り上げて、そこからズルズルとアドラー心理学の中へ潜り込んでいこうとする第2番目の教え方もしている。それから、「プラサード」や「アスミ」はいきなりボンと「ハイ、アドラーですよ」と何も理屈なしに始める。 アドラー心理学をやると話がシンプルになるというのは第3番目の話です。「ああ、シンプルになった」という実感がないことには、説明すればするほど複雑になる。説明の量が増えるから。だから、やってみてください。(回答・野田俊作先生)