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スレッドNo.99

論語でジャーナル

7,胇肸(ひつきつ)招(まね)く。子往(ゆ)かんと欲す。子路曰く、昔者(むかし)由や諸(これ)を夫子に聞けり、曰く、親(みずか)らその身に於いて不善を為すものは、君子入らざるなりと。佛肸、中牟(ちゅうぼう)を以て畔(そむ)く。子の往くやこれを如何(いかん)。子曰く、然り。是(こ)の言(ことば)有るなり。曰く、堅しと曰(い)わざらんや、磨(と)げども燐(うすろ)がず。白しと曰わざらんや、涅(そ)むれども緇(くろ)まず。吾豈(あ)に匏瓜(ほうか)ならんや。焉(いずく)んぞ能(よ)く繋(かか)りて食(もちい)られざらん。

 胇肸の招きに応じて、先生が行こうとされた。子路が申し上げた。「以前、私は先生からこう教えていただきました。『君主自身が不善を行っている国には、君子たる者は入国してはいけない』と。胇肸は中牟(ちゅうぼう)に拠って晋に反逆しています。先生がそこに行こうとされるのは、どういうことでしょうか?」。先生が答えられた。「そのとおりである。しかし、こういう格言もある。『ほんとに堅いと言わずにいられようか、砥(と)いでも砥いでも薄くならないのは。ほんとに白いと言わずにいられようか、染めても染めても黒くならないのは』と。私がどうして苦い瓜になることができようか。どうして蔓(つる)にぶらさがったままで、人間に食べられずにいられるだろうか(どこかに仕官の道を探さないではいられないではないか)」。

※浩→「胇肸」は、晉の范氏の家臣で、中牟の邑(ゆう)の宰でした。前497年、晉の趙簡子が中牟を横領しようとして范氏、中行(ちゅうこう)氏を攻めたとき、これに抵抗するために衛国に帰属しました。中牟という地名は各地にあり、どこにあたるかいろいろ意見があります。「吾豈に匏瓜(ほうか)ならんや……」について、中国古代の瓜には、甘いのと苦いのと二種あって、匏瓜は苦いほうです。
 この出来事は、前の「公山」の招聘に応じようとしたのが孔子50歳のときで、それより12年後のことです。衛霊公に失望して、衛国を去るときの深い失望の中でのことだそうです。「公山」のときと同様、子路は不満で、「よからぬことを働いている者のところへは、君子は足を踏み入れない」と教わった。今、胇肸は中牟を根拠にして謀反をしているのに、先生がそこへ行かれるとはどういうことかと。孔子は答えます。確かにそうだ。しかし世の中には、堅いもの、それはいくらすり減らしても薄くならない堅いもの、また白いもの、それはあくまで白くて、いくら黒い土で染めても黒くならないもの、それらがあるではないか。私はそれだ。私は苦い瓜か。ぶら下がったまま、人に食べられずにいられようか。私は苦い瓜ではない。人に食われたいのだ。
 子路は胇肸を謀反人だと言いますが、趙簡子が晉を抱き込んで、競争相手の范氏、中行氏を攻めたので、これに対して胇肸は晉から独立して、その邑ごと衛国に帰属し、衛の属国として受け入れられました。晉からは謀反かもしれないが、趙簡子に抵抗するための措置でしたから、単純に謀反とは言い切れない。衛国に亡命しても、その内政にあきれて、さらに外国に仕官の道を求めようとしていた孔子が、半独立国になった中牟の招きを受けようとしたのです。子路の非難は歴史の実情と食い違っているようです。孔子は、自分の政策を採用してくれる君主がいれば、大抵のことには眼をつぶって、招きの応じようという気だったのです。子路はこの孔子の気持ちがわかっていなかったのでしょう。でも、結局は孔子はこの招きにも応じなかったそうです。
 春秋戦国時代は、諸子百家の時代で、賢者たちが諸国を遊説(ゆうぜい)して、自説を採用する君主を求めたことはよく知られています。孔子の一派(=儒家)もその代表です。仕官の道がいかに厳しかったかが察せられる一条でもあります。「遊説(ゆうぜい)」というのは、今は選挙運動ですが、もともとは、群雄割拠の時代に賢者が、諸侯を遍歴して採用してもらうために自説を述べたことを言います。今の日本の選挙運動は、どう考えてもクレイジーです。特に、選挙カーで自分の名前を連呼するのは、“騒音公害”です。私は最もうるさく連呼している候補者は絶対に投票しないことにしています。ということは、あの方法は逆効果で、定位置で聞きたい人を集めて演説するのが本来の選挙運動ではないかと思います。ただ、この方式でも、安倍元首相は暗殺されてしまいました。政治家の暗殺は、今に始まったことではありません。地元出身の犬養毅総理も「五・一五事件」で案されたことは有名です。アルフレッド・アドラーの願いは、人類永遠の願いなのでしょう。ボブ・ディランの「風に吹かれて」を思い出しました。

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