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スレッドNo.234

差し替え

このところ、論告や弁論の「差し替え」が頻発しているのですが、
昨日はそのせいで「えっと、前回論告差し上げましたっけ?」という
確認の電話が(前日夜)検察庁から来たり、
私自身も読み上げた弁論の中の数字が元の日本語と全然合わない!と
焦ったら、手元に一緒に広げていた『原文』のほうが古くて、
裁判官に言われて新しいのを出して再度そこだけ読み上げたけれど、
考えてみるともともと読み上げた訳文のほうが新しくて正しかったので
実は問題はなかった…と後で気づいたり(ホッ)、
まあ、しっちゃかめっちゃかです。

別の事件では私が「これ実は(きれいに訳すのが)難しいし、
その頃は新学期でかなり忙しいので、1週間かそれ以上前に必ずください」と
言っていたのに、弁護人が風邪ひいて寝込み、準備に丸2日はかかると踏んでいたのに
半日しか準備時間が取れなくなり、
仕方なくギリギリに「ここだけは書いておかないとサイトラはきつい」と
せっせと書いている最中に「差し替えでーす」とまた別のが来たり、
しかも「てにをはが間違っていたのでそこを訂正しただけです」と
言われて(親切にちゃんと訂正部分は赤い文字になっていた)さっと見たら、
ほかにも山のようにてにをはの間違いがあって、
弁護人、コロナではないって言ってたけど、何か相当やばい風邪ひいたんじゃないのか、
大丈夫か?と心配したり…。
まあ、法廷ではお元気そうだった(書記官も同じ感想)ので、
お風邪は治ったのかもしれないけれど、マジに心配しましたよ。

準備に丸2日かかると思う、なんてのはたぶん今の「ワイヤレスシステム」を導入してから
初めてじゃないかなと思います。昔はその場で逐次というか、検察官や弁護人が全部読み上げてから
こちらが(多くはその場で渡されたものをサイトラして)訳していたのですが、
ワイヤレスシステム導入後は「論告や弁論などは前もって通訳人に渡しておいて、
通訳人は家でそれを訳してきて、当日は同時に読み上げる」ということになってしまったので、
検察官にも弁護人にも、もちろん通訳人にも、かなり「きつい」状態になっています。
作業が前倒しになっているわけですから。

また、いわゆる同時通訳ではないので、読み上げの途中で変更されてもわかりませんし対応できません。
1人で訳していますし(会議などの本物の同時通訳は3人で組むのが普通で、1人でできるのは15分が限度)、
自分の訳文読み上げの声を自分で聞いて自分の訳が間違った文やわかりにくい文になっていないか
(あるいは1行とばしたりしてないか)を確認しながら声に出しているので、正直言って、
元の音声(検察官や弁護人の声)はその間はほぼ聞こえないんです。
そういうシステムにはそもそもなっていないですしね。
だから、家で書いてくるか、サイトラがちゃんとできるように印をつけたり怪しい語は確認しておいたり、
準備をしっかりして、読み上げ練習(?)までして、法廷ではいわば「読み上げるだけ」。
でも、たとえば家で10時間準備をして、その結果1時間の公判で終わった場合、裁判所の報酬は1時間分だけなので、
さすがにそれはないだろ~って感じですし、オーバーステイも殺人事件も通訳は同じ報酬額、初心者もベテランも同じ、
では、どんどんやめる人が出ているのは当たり前ですよねえ。準備に時間を取られて他の仕事ができず、
生活が成り立たないので…。
まあ、それはともかく、「差し替えが多い事件がいくつも重なってしまった」のはなかなか厳しいです。
そのたびにチェックするわけですからね。

昨日のはなんでこんなに何度も裁判所に行ってるんだっけ??と思ったら、初回に私が行く途中でおなかを壊して
1時間もトイレから出られなくなり、書記官室に行く余裕はないからと直接法廷に駆け込んだ事件で、
1回で終わらなかったからと続きを別の日にしたら、そのときは被告人が裁判所の地下で「迷子」になってなかなか現れず、
これまた時間が足りなくなったのでした。いろいろあってごめんなさい、って感じですが、
迷子は被告人本人の責任でしたね…。ただ、あそこは確かに日本人でも迷うので、言葉が不十分な外国人では
中で迷って当たり前なのですよね…。せめて英語かアルファベット表記だけでもいいから、もっと外国人にも
わかりやすいようにいっぱい表示を出しておいてほしいなと思ったのでした。

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昔、まだ「その場で弁論要旨をもらうのも結構普通」だった頃。
弁護人の声を聞きながら「なんだかビザ(visa)のところがピザ(pizza)みたいに聞こえるなあ」と
思い、彼が書いた手書きの弁論要旨を見たら、ヒの文字の上にしっかりまるが書いてありました。
…弁護人、あれのことを本気で『ピザ』だと思ってるよ…。

まあ、誰も指摘しなかったので、そのまま知らん顔で『ビザ』と解釈して訳したような気がしますが。(笑)

でも、別の事件で検察官が『コカイン』のことを全部『ヘロイン』と書いてそのまま読み上げていたときは、
さすがに「ヘロインっていうのは全部コカインですよね?」と確認してから訳した記憶があります。
こういうのも、「聞き終えてから訳す」からできることなので、同時に読み上げている最中には
質問やら訂正やらはなかなかできません。日本語とスペイン語訳では長さが違ってくるので、
置いていかれるのを必死で追いかけてますしね。

でも、本来、証人尋問やら被告人質問やらを経て、あるいは何らかの証拠を調べたりしているうちに、
論告だって弁論だって中身を変更したり追加したり一部削除したりするのは当たり前です。
全部1週間前には書いておけ、とか、通訳人も事前に全部きっちり訳しておけ、というのは、
なんか「時間短縮」のためにもっと大事なことをいろいろ捨ててきているのではないか、と
思うのは私だけでしょうか?

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>たとえば家で10時間準備をして、その結果1時間の公判で終わった場合、裁判所の報酬は1時間分だけなので、

「たとえば」と書いてしまいましたが、実はかなりかなり昔、ワイヤレスシステム導入後割とすぐの頃、
実際に家での準備に10時間かかって(時計見てはかった)、公判は1時間で終わって、
報酬はきっちり1時間分だったことがあるのです。裁判官との集まりでそれを言ったら、皆さん
ゲラゲラ笑ってましたが(たぶん私の話し方のせいでしょうね…面白かったのならそれはそれで嬉しい(?)ですが)、
いつもそんなことではやっぱり生活が成り立たなくなってくるわけです。

公判の報酬は現場での時間を書記官がはかっていて、10分いくら、とかそんな感じなので、
高いレベルの通訳力を必要とするタイプの通訳、たとえば会議通訳とかが通常「半日料金」か
「1日料金」かで設定するのと違い、「予定より早く終わったから安くなっちゃった」というのも
結構あります。

そういえば昔、法廷でペルシャ語の通訳人と二重通訳(リレー通訳)をして、その人もベテランなので
スムーズに終わり、「今日はここまで」と予定よりだいぶ早く終わったことがありましたが、
その通訳人、「どうせ早く終わった分は払ってもらえないし、かといってほかの仕事には今更使えないし、
これから銀座でお茶でもしない?」と誘ってくれたので、二人で楽しくお茶してきたのでした。
(で、有閑マダムみたいな人たちがたくさんそのお店でお茶しておしゃべりをしているのを見て、
その通訳人、「みんな暇なのかな?」と言っていた記憶があります。
なにしろ、彼女自身はその当時、「裁判所が普段頼んでいる各言語の中で一番忙しい通訳人」だったので、
なんとなくうらやましかったようです。(笑))

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