秋の句会選評
新之助さん、お世話になりました。
遅くなりましたが、小生の選評です。
〇秋の雲流るるままの余生かな
浮かんでは消え、消えては浮かぶ秋の雲のように飄飄と余生を送る。
これぞ理想的な余生の送り方ですが、現実はなかなかそうはいかな
いものです。俳句としても、何のてらいもなくさらりと詠んだのが
良かったように思います。
〇小魚の散りては群れて水の秋
川や池の澄んだ水の中の小魚の動きはまさにこのとおりです。水に
映る影や微かな物音にも敏感に反応します。子供を連れて釣りに行
って一向に釣れなかったことを思い出しました。
季語に「秋の水」ではなく「水の秋」を持ってきたのは功を奏した
のではないでしょうか。
〇淋しくてならぬ時あり芒見る
淋しくてならぬ時は誰にもありますが、その理由や原因は人さまざ
まです。作者はどのような状況にあったのか、何故に芒を見たのか、
何とも意味深長な句です。
〇儚げにしかも毅然と水引草
この句は、水引の花を如何に感じとるかの一点にかかっていると思
います。野に自生する水引の花は見過ごしてしまいそうな細かなもの
ですが、作者はそこを儚げと詠いつつ毅然とした一面を感じ取ったの
でしょう。ただ、儚げと毅然をつなぐのに「しかも」がどうなのか
一考を要するのではと思いました。
以上