選評
アイビ-さん、幹事役お疲れさまでした。
以下、小生の選評です。
3、海霧に消え海霧に現る大型船
沖合の海霧の切れ間を行き来する大型船なのか、それとも海霧に包まれた港へ出入りする大型船なのか
いろんな場面が想像されますが、なかなかこのような情景に遭遇することはないのではないでしようか。
海や港の近くに住んでいるか、海や港へよく出かける人でないと経験できないと思います。
いずれにしても作者は幸運にもそれを目の当たりにして詠まれた一句ではないかと推測します。
「消え、現る」の措辞によって読み手にも神秘的でありダイナミックでもある情景がに伝わってきて、想像
が広がります。
7、目覚むればまだ深夜なり地虫鳴く
この句の場合も、よくある体験です。年を重ねるにしたがい眠りが浅くなり夜中に何回も目を覚まします。
私の場合は、鉄道線路の傍に住んでいる関係で電車の音によって深夜なのか明け方なのか分かるのですが、
作者の場合は、地虫の鳴き声で未だ深夜であることに気付かされるとは詩的な環境におられるものと想像さ
れます。そうでなくとも季語に地虫鳴くを持ってきたことによってこの句の詩情を高めることに成功してい
ると思います。
16、鳥渡る一羽はみ出し飛ぶもあり
秋から冬にかけて渡っていく鳥は大きな群れを作っていますが、その中で群れからはみ出して飛んでいる
一羽に注目された。長旅に疲れたのか、これからの長途に怯えているのか、それとも仲違いをしてしまつた
のかいろいろなことを考えさせられます。人間社会に置き換えてみるとこの句の示唆するところがより深く
感じられます。「飛ぶもあり」が気に入りました。
25、去にしかと思ひしころに鉦叩
庭の樹木か生垣に頻りに鳴いていた鉦叩の鳴き声が消えてしまったので何処かへ去ってしまったと思ってい
たのに再び鳴き出したのでしょうか。鉦叩の鳴き声はそんなに大きくないので静かに更け行く宵闇の状況が想
像されます。作者はず-と鳴き声に耳を澄ましていたのか、たまたま耳に入ってきて気付いたのでしょうか。
大変興趣ある良い句だと思い特選にいただきました。
以上
鉦叩の句に過分なまでの褒詞、いたみ入ります。お説のとおり、鳴き方が間遠になって、どこかへ行ってしまったのかなあと思ったて頃にまた鳴きだすのです。どこか物寂し気な鳴き声ですね。