アイビーの感想その2
アイビーの感想その2【当季雑詠の部】
帰農せし友の久しや吾亦紅 (てつをさん)
会社を定年退職されたのでしょうか、今は農業に従事し悠々自適の友人と、本当に久しぶりに会って積もる話に花が咲きました。さりげなく配した吾亦紅がいい味を出しています。
五十鈴川渡れば秋風濃くなりぬ(新之助さん)
伊勢神宮の森深く流れる五十鈴川。神韻渺茫たる神域に渡り来る秋風が「濃くなりぬ」と感じた新之助さん。粛として襟を正さずにはいられません。
秋雨やけふも一人の沙汰もなく(泉也さん)
老境に差しかかった作者。見た目には何の変化も無い日常が、昨日も今日もそして明日も続くかに感じます。その一日一日が例えようもなく貴重な時間に思えます。
秋寒し靴ひも強く締め直す(野の風さん)
めっきり寒くなった秋を感じた作者、それに続く長く厳しい冬の到来を予感しているのでしょう。「靴ひも強く締め直す」とした中七、座五の楚辞が作者の覚悟を表しています。行為でもって心境を表現されています。