明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
信州MAKERSは、長野県松本市と長野市に拠点をおく、DIY電子工作のブログサイトです。
コト作りを目的としたモノ作りを提唱して、若い技術者 学生さんへの啓もう活動をしております。
定年退職してから始めて10年近く継続してます。
●2024年のエポック
cm級GPS技術であるRTKを中心にスキーの運動姿勢と精密軌跡を計測するシステムを開発してきましたが、当初RTK技術は普及すると思っていたのですが、世界的に全然普及せずに、2024年からRTKデバイスメーカー(主に欧州)のリストラが始まってしまってます。
何故なのかというと、
①ビジネス要因
メーカー側とユーザー側のコト作りができてない点が最大の原因だと思ってます。要するに、普及して伸びるアプリケーションが無いので、じり貧になったということです。ユーザーの業界も測量、ドローン、農業、土木と数量がでない分野が多く、半導体チップの数量がでないので、1粒数万円という高価なチップの価格が下がらないというジレンマで一層普及にブレーキがかかったという原因です。
②技術要因
GPSの位置計測原理は、コード測位と言って、衛星からの電波に、モールス信号のようなコードに時刻、衛星位置情報等を載せて地上の受信機へ発信してます。電波が混信しないのはCDMA方式を使ってるからです。コード測位だと、位置精度は数mしかでませんが、
=>cm級GPSでは、搬送波測位方式をとってます。コード測位で使っている電波自体の位相を測定して、波長から衛星との距離を計算します。ですので、分解能が0.1mmと細かいので、精度がcm級になります。更に、RTKでは、10-20km以内の基準局の精密位置情報と電波情報をインターネット経由で受信しながら、自分の電波受信条件を基準局に合わせて、同じ電波状態として、位相測定して相対位置を計測します。ですので、基準局からの距離が0.1mm単位で得られます。しかし、電波の位相を精密に測定するのが大変です。衛星電波が真っすぐアンテナに入ってくれば問題ないのですが、雲、雨、水蒸気などの影響をうけたり近くのビル、森、屋根、遮蔽物にぶつかっていろいろな方向から入ってきます、これをマルチパスといいますが、位相を計測するのに、経路長が雑多なマルチパスがあっては、正確な距離が測定できませんので、cm旧GPSの搬送波測位は視界の悪い場所では、cm級精度がでませんが、一般のGPSよりははるかに出ますが、コスト面とシステム面で
一般のGPSに置き換わることができてません。
●RTK分野あるべき姿への提案
上記理由で、キラーアプリの市場が小さすぎて、商売にならないので、もう少し大きな市場でのキラーアプリが必要なので、信州MAKERSでは、サポートしてもらっているRTKボードメーカーのスペインのArdusimple社へ提案を行いました。
アプリ案1:老人の要介護状態(フレイル)を精密に計測するシステムのキーデバイスとして、用途開発するコト作りを提案してます。
理由:歩行の精密測定をするには、現在の技術では、巨大なフォースプレート上を歩いて足跡軌跡と重心位置の移動を計測するか、
スポーツ選手用3次元動画キャプチャーシステムを導入して、歩行を計測する以外にありませんでした。しかし、両者とも数百万円から数千万円の投資と歩行計測するための建屋が必要となります。これを、RTKシステムに置き換えることで、左右靴にアンテナを取り付けて、腰と頭にもアンテナをとりつけて、病院の屋上など視界の良い場所で歩いてもらうだけで、ミリ単位の歩行計測と体の動きが測定できるので、フレイルの診断ができます。導入費用は20万円以下で済むので、他の技術をコストで圧倒してますので、歩行計測業界ではイノベーションがおきるはずです。私もスキー開発が終わったらフレイル用のシステムを開発しようと思います。
この用途なら、世界中で大量にニーズあって、これから伸びる市場ですので、今までのRTK市場の何十倍にふえると思います。
注目する技術に対するコト作りのアイデアと競合技術との比較を徹底することで、イノベーションは簡単に起こせる事例です。
●2025年の活動
更に、コト作りを強化していきます。スキーではコト作りが自分ではできないので、地元の小賀坂スキーのエンジニア様に御協力をいただいて、コト作りを明確にした開発をしていきます。RTKの開発では、10年後のLEO衛星によるGPS時代を想定した開発テーマを検討していきます。
=>GPS技術に関しては、日本は数十年の後進国ですので、原理開発を頑張ってもしかたがありません、みちびきに関しては2017年からJAXAから総理府に移管して、JAXAは研究してません。JAXAは、勝ち目がない分野なのでやらないと判断したと私は解釈してます。しかし、海外では、どんどん研究開発が進んでます。特にSpaceXのSTAR LINKで有名なLEO(低軌道衛星)は、一般の衛星の高度数万kmに対して2千km以下、数百kmの高度で飛んでいますので、電波の強度が従来のGPS電波より数十倍強いので、マルチパスに強く、建物の屋根を通過して室内まで届くので、屋内測位も可能になると言われてます。そうなった場合、従来のGPS技術にイノベーションがおきて、今までのデバイス、システムがなくなってきます。そういった時代でも、生き残れるような技術開発を今からやっていいきます。
LEOーPNT GPS技術のブログ記事 https://tinyurl.com/2y5t5jzv