遺品みな高額といふ寒さかな
初めての今日のお客さんは、茶道と華道と日本舞踊をされる上品な方だった。姑さんの着物を貰ったので、裄を出してほしいという依頼だったので、「お姑さんとは仲が良かったんですね」と尋ねると、「いえ、それが、、、」と事実は小説より奇なる話が飛び出してきた。
姑、つまり夫の母は、6歳の夫を残して蒸発した。音信不通となること60年。ところがある日、公証人という人から、「お母さんが危篤です」という知らせが来る。まずは住んでいた家に入ると、物という物に埋め尽くされて、足の踏み場もない。200枚はあろうかと思われる、畳紙に入った高級そうな着物や、ルイビィトンとかシャネルなどブランドのバッグや洋服や、家電製品が山積み。ところが、現金は30万円のみ。姑さんは親の遺産で水商売をはじめ、儲けもしたが破産もした人生だったようだ。
30万円は納骨すると無くなったし、不動産は抵当に入っているし、あとの片づけは、どうやればお金をかけずに出来るか思案中とのこと。「200枚もの着物を広げる気力はないので、20枚ほどの中から、↓5枚ほどだけ選んで残すことにしました」とお客さん。写真の着物、手前から幾何学模様・辻が花・松と梅尽くし・桜吹雪・蝶尽くし。どれもよい素材・よい仕立てのものばかり。いやはや、、、(笑)。
落丁のごとき一日や銀杏枯る 藤木倶子
