若き日の絞りや孫へ春著縫ふ
着物好きの幼なじみのT宅へゆく。華道のお師匠さんが高齢になり後を任されたので、たいへんらしい。新春の華道展にこれは派手かしらと、30年前につくった加賀友禅を出してきた。着物警察がうるさいので、無難な色無地がいいかしらと言うので、「身体の線も崩れていないし、華のある貴女だから自信を持って着てよ」と励ましておいた。
明治生まれのお祖母さんが、二十歳のTに縫った羽織をほどいていた。五歳の孫の雛祭りに着せたいと言う。女五世代の物語なり。大人の羽織の前身頃を、子どもの後ろ身頃にもってきて仕立て直す。正絹って、ほんとうにいつまでも綺麗。
鏡中に春著の絹の紐鳴らす 黒田杏子
