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スレッドNo.680

節分の前に豆食ひ春を待つ

>封筒のなか明るくて風花す   辻田克己

「風花す」は変な日本語だなと思ったら、『改訂増補 富安風正編歳時記』(東京美術、2800円)を思い出した。この歳時記は読書用で、普段は『角川季寄せ』(角川学芸出版、1900円)と『新歳時記 虚子編 増訂版』(三省堂、革装4593円)を実作用で使っている。他にも歳時記は山ほどあるが、座右にあるのはこの三冊で、富安風正編のみ読書用なのは序で本人が言っているように「風正の体臭」を楽しむためである。季語の解説が落語の小言幸兵衛のようでめちゃくちゃ面白い。

例えば「初凪」の季語はこうである。【初凪の「凪」という名詞に「す」という語尾をつけて、動詞化した例も見かけるが。好もしくない。戦時中、時の文相が「科学する」と言った、ふつつかな造語をしたために、「風花す」とか「俳句する」などと言う奇怪な語が生まれたのは、慨嘆にたえない。また初凪の「凪」を動詞に使った「初凪げる」の類も、日本語の虐待で、面白くない。】

いちゃもん、ぼやき、小言のオンパレードで本当に楽しませてくれるが、この歳時記には載っていないがわたくしが富安風正の終生のファンになった一句、

  しまうまがシャツ着て跳ねて夏来る 富安風正

のような破顔一笑の例句も多いので読み物として極上である。そうそう、京極杞陽が自分の句集『くくたち』に入れ忘れた

  性格が八百屋お七でシクラメン 京極杞陽

も『改訂増補 富安風正編歳時記』には載っています。というか、「西瓜」で高浜虚子・池内たかし・川端茅舎・山口誓子・金子兜太・野沢節子の句が並び、「桃」で高浜虚子・石田波郷・西東三鬼・上村占魚・永田耕衣・富安風正の句がよよと並ぶ様を見て退屈を覚えることがあるだろうか。虚子が「風正と死の話して涼しさよ」と詠んだ風正ならではの呉越同舟選句といえるだろう。ちなみに「涼し」は芭蕉・凡兆・蕪村・一茶・虚子・漱石・蛇笏・杉田久女・小野蕪子(新興俳句弾圧の黒幕)・草田男・大野林火・たかし・汀女・柴田白葉女と並ぶから富安風正の懐の深さは個人選としては空前絶後だろう。

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