阪妻さんの「魔像」を見て
今回も古き時代劇を見ての感想になります。東映黄金時代劇もこのようなお手本の上に出来上がってきたわけですので。
楽天ブログの”美しき大川橋蔵”で橋蔵さんの作品を年代順にまとめているものは、やっと「月形半平太」までストックできました。これから「丹下左膳濡れ燕一刀流」に取掛るのですが、「丹下左膳」の原作者は林不忘と頭をよぎったとき、大友さんの作品に原作者林不忘の「魔像」という作品があることを思い出しました。そしてつい最近YouTubeに1952年の「魔像」が出ているのを見て、阪妻さんが演じた「魔像」はどんな感じなのだろうと興味を持ちました。こんな機会でなければなかなか見ないですものね。
1930年頃の「続大岡政談魔像編」という映画が大河内伝次郎さん主演で作っているし、阪妻さんも1936年1938年にやっているのですがこれを見るのは無理ですから、阪東妻三郎(阪妻)さんの1952年阪「魔像」じっくり見させていただきました。
大友さんは「魔像」と「血文字屋敷」の2回リメイクで演じています。
前に「血文字屋敷」の感想のときに書いたことがあるかもしれません。
美貌の妻を持ったがゆえに周囲からねたまれ、それがもとで人を斬った喬之助。彼が剣士十数名を向こうにまわし、戦う様を喬之助を助ける謎の浪人の活躍を交えて描く。阪妻さん晩年の作品になるのですが、俳優陣も知った顔の人が多く揃っています。山田五十鈴さんがいいですね。東映にもこのような女優さんがいたならばと思いました。
坂妻さんはこの映画の翌年52歳のとき脳出血で亡くなっています。
不気味な喬之助と豪快で人情味あふれる右近の対比は見ていて面白く、真剣に見ていると喜劇か、と思い込んでしまうほど楽しく、セリフのテンポのよさに引き込まれていきます。阪妻さんの上手さに引き込まれます。また、この作品の喬之助の立廻りが独特でバッタバッタと斬っていく立廻りでなく、動作に間がありその振舞いで相手に威圧感を与えるのです。ただ、東映チャンバラ時代の映画を見て育ったものには、残念ながら殺陣はほめるわけにはいきません。
一人二役の特撮の映像が素晴らしい。ふたり同時に出ているときの合成技術の見事さには驚きです。こんなに楽しく面白く見ていいのかと・・・。
「血文字屋敷」では橋蔵さんが大岡越前守を演じています。
大友さんの場合、神尾喬之助と茨右近は正反対の性格だということは見ていてわかりますが、立廻りになると全く同じ動きで、二役の区別がつかないんですね。
それに見ていると丹下左膳が二人いるように見えてしまうんです。侍である喬之助の立廻りでなくなっているのです。
この「魔像」のクライマックスは、やはり大岡裁きの粋なところに重きがあるわけですね。この場面も1952年の方がいいと思いますね。
この映画を見ていて、橋蔵さんはこの「魔像」の二役は上手くできるのではと思いますし面白いのではと思いました。
阪妻さんの二役のように、面白くなる脚本ならね。
私も画面に二人が一緒にそれに相手の手を握るところなど、どのようにとったのかとても興味深く見ました。阪妻さんの名前はよく父から聞いていましたが私には少しいにしえのことでなじみがないので映画を見てみようとは全然思ったことがなかったもので、今回初めて見て戦後の松竹の時代劇は素晴らしい人達がいたのだなと感じました。「恋山彦」も阪妻さんがやっていて、橋蔵さんはその映画を見ていてご自分もやってみたいと思ったようとか。「恋山彦」どんな感じだったのか見てみたいです。
時々戦前戦後活躍していた俳優さんの映画も楽しいものです。この俳優さん達が頑張っていたから時代劇は残ってきたのですね。