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スレッドNo.775

A2級の歪率特性について

A2級はトランジスタアンプには無い方式なので、興味を持って勉強しています。私に理解できないのは、出力歪率特性が最大出力付近で平坦になったり、減少するという特性です。私のアンプ設計マニュアル / 基礎・応用編 11.ロードラインその4 (電力増幅回路・・シングル応用編)にはは「2次歪み中心のところに3次歪み成分が割り込んでくると、みかけ上歪みが減ったようにみえるということはよく知られています」という説明が書かれています。歪率の定義式は√(2nd^2+3rd^2)/(基本波の実効値)です。2ndと3rdはひずんだ波形を級数展開したときの2次の項と3次の項で直交していますから、どのように重ねあわせても打ち消しあうことはないはずです。

添付図の1番上は基本波に5%の2次歪と5%の3次歪を加えた波形をexcelで描いたものです、2番目の図は歪成分だけを描いたものです。基本波に5%の2次歪と5%の3次歪を加えた波形をFFTにかけたのが3番目の図です。2次歪、3次歪とも5%で、打ち消しは起こっていないことが分かります。

歪率の定義は上記の式ですが、ノッチフィルターを通したあとの信号を平均値指示型の電圧計で測定したときは{√(|2nd+3rd|)}/(基本波の絶対値の平均値)になります。ぺるけさんがお使いになったオーディオアナライザは、写真から推測するとVP-7723Aですが、この機種は実効値応答と平均値応答の二つのモードがあります。アマチュアが自作した歪率計では平均値指示のものが多いと思います。私が大昔に自作したものは、両波整流した出力をアナログテスターで計っていましたので、やはり平均値指示だったはずです。

添付図の一番下は、実効値指示(定義式)と平均値指示の二種類の式で2次歪5%、3次歪5%の波形の歪率を計算したものです。実効値指示では正しい値 0.0707とほぼ一致しています。少しずれているのはexcelのデータの刻み幅がπ/32と粗いからです。平均値指示の場合は0.0557と、本来の値よりも小さくなりました。これは2次歪と3次歪の符号が逆の区間があるからです。

A2級の出力歪率特性で歪率が平坦になったり減少するのは、このように定義式とは異なる測定が原因なのでしょうか? ベテラン諸兄のお考えをお聞かせいただけると幸いです。

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ken様、こんばんは。

なるほど、そうですね。非対称でDC変動したので、その時定数がLとRで決まるというのは納得です。
歪み率の過渡変動はバイアス点のズレによる非対称性変化によると説明できるかな?
球の音はLRだけならほぼ同じに近くなるはずで、
http://daisany.private.coocan.jp/html/2022-8-02-04.html
の【三極管と五極管】の第一節 三極管アンプの理論的考察 図1-1 三極管の特性 のrpとRLを見ればだいたい積は同じです。トランスのRLとLp(インダクタンス)はトランスによって違いますが・・・

後は、古典管では、グリッドカーブがほぼ等間隔で、
http://web1.kcn.jp/tube/tube%20data.html
バイアス点のズレによる非対称性変化によることが少ないとでもなるのかなあ?まあ、どうなのかわかりません・・・・・

ただ、歪率計の示しているものは、現実ではないということに要注意です。A2級の歪率特性の問題は、そういう点で意味があるのか私にはちょっと疑問です。

引用して返信編集・削除(編集済: 2025年07月03日 15:10)

うんざりはちべえさん、

A2級の歪率特性という題からはずれるのですが、16msまたは15msの変動は、出力管の内部抵抗と出力トランスのインダクタンスが作るLRフィルタの過渡解だと考えて良いですか? 16Hと1kΩでちょうど16msです。

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ken様、おはようございます。

まあ、球の音というのは無帰還のこの過渡的歪の変動が作っているのかもしれません。これは、真空管アンプでないとできないことです。しかも、シングルアンプだけです。
だから、私のNFBをかけるという事は真逆なのかもしれません。

引用して返信編集・削除(編集済: 2025年07月02日 12:53)

うんざりはちべえさん、

詳しく教えていただき、ありがとうございます。私も善し悪しは人間の感覚だと思います。音楽を楽しむのが目的ですから、なおさらです。

にもかかわらず私がいろいろと調べているのは、なぜA2級は最大出力付近で歪率が低下するのかという技術的興味です。そのため、歪率のシミュレーションやら、直結とCR結合の違いなどを調べています。

なにしろ、トランジスタには無い方式なので興味深いです。

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ken様、おはようございます。

そうですね。バイアスはDC変動します。でも結局、出力はプレート電流からなので、グリッド電圧の非対称は、三極管のロードラインの非対称でプレート電流は決まります。しかもトランスの動作も過渡的にDC変動します。↓に説明しています。
http://daisany.private.coocan.jp/html/2024-1-31-01/2024-1-31-04.html
第2節 アンプ回路図  のR11がスピーカーで、V5はシミュレーションの電圧源で実際にはありません。なお、こんなものは、気でもふれない限り作ったりしない でください。本 機は実験機であり、こうなるものと保証するものではありません。
訂正:図3の解説の
>最大 値約77mA、最小値1約7.5mAとなり、およそ7mAくらい増えている。
ー>最大 値約77mA、最小値約17.5mAとなり、およそ7mAくらい増えている。
なお、これは私の見解であって、真実なのかは不明です。

A2となると、グリッド電流も流れますからグリッドバイアスもDC変動し、トランスの電流の非対称によって更に余計にDC変動します。

歪み率計は、正弦波を入れて、数秒後に安定しますから、トランスのDC変動後の話なので、もともと怪しい計測なのです。だって、音楽は定常正弦波でなくて瞬間瞬間変動しますからね。
結局、人間が価値を決めるので、人間の感覚が一番でしょうね?別にオーディオを否定するものではないですよ。ぺるけ師匠も音が全てだったんだから・・・

おまけ
http://daisany.private.coocan.jp/html/2024-3-11-01/2024-3-11-01.html
でも、スピーカーは質量の運動なので、ロードラインは、必ずしも直線にはなりません。
http://daisany.private.coocan.jp/homepage2/html/SPEAKER.html

なお、これは私の見解であって、真実なのかは不明です。

引用して返信編集・削除(編集済: 2025年07月01日 16:07)

答えにはなっていないのですが、直結とCR結合では、出力管の動作点が違うのではないかと思いつきました。

図は3極管に正弦波を入力した時の典型的なプレート電圧波形です。負側の波高値が大きく、面積も大きいです。つまり、負にオフセットしています。

この波形を次段の3極管に入力すると、直結の場合はグリッドにこの波形がそのままかかります。

CR結合では、Cの後ろではDC電圧成分はゼロでなくてはなりません。そのため、この波形はDC成分がゼロになるように正側にずれます。つまり、Ep-Ip特性のグリッド電圧が少し正の点を中心にスイングします。

このため、CR結合の方が最大出力が小さくなるはずです。歪は難しいところですが、グリッド電圧が深い部分に行かなくなるので、やや減るのではないかと思います。そうすると、ドライバーとの歪の打消しが変わるはずです。

Ayumi's Labの、二次歪が加わると動作点が変わるという記事を読んでいて気づいたのですが、大昔に何かで読んだような気もします。

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VTさん、

不躾な書き方をしてしまい、申しわけありませんでした。

10は名前だけは知っていましたが、データシートは初めて見ました。きれいなカーブに驚きました。基本的に指数関数に従う半導体では真似の出来ない特性です。

それにしても、excelでFFTが出来るようになって、今までは手の届かなかった解析が、簡単に出来てしまいます。大変な時代になったものだと思いつつも、肝心の歪率減少のメカニズムはさっぱりわかりません。

引用して返信編集・削除(未編集)

ken様、おはようございます。

6V6GT(GE)のプレート特性図の解析、お疲れさまでした。

先に私が書いたA2級アンプの出力管は10で、グリッドが正の領域もデータがあるのでグリッド特性図までは変換できたのですが、当時の知識ではそこから歪率を計算する方法が理解できずにそこで断念してしまったのですが、作ったグリッド特性図からはひずみの出方が変わるようには思えないという印象を持った記憶があります。
そこで先の投稿でも出力管ではなく、出力段という表現にさせていただきました。

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出力管だけの歪率の計算が出来ました。三結でVg>0のEp-Ip特性がデータシートにある6V6GT(GE)で、(Vg, Ep)を読み取ってexcel で3次式にフィッティングしました。3次式なのは2次歪と3次歪を扱うためです。

添付図の左上がフィッティング結果です。きれいにフィッティングしています。この式にsin(θ)を代入するのですが、無信号時バイアスを(250V, 40mA)と想定して、sin(θ)-14を代入しました。-14は上記バイアスでのグリッド電圧です。

得られたプレート側での波形が添付図右上です。正弦波ですが、上側と下側で波高値や面積が異なります。歪が発生しているだけでなく、DCシフトも発生しています。

プレート側の波形をFFTにかけると歪成分が求まります。添付図左下は横軸をプレートでの基本波の実効値電圧とした歪率特性、右下は横軸を出力電力とした歪率特性です。

約2.2W, 2.7Wの2点はグリッド電圧を+2V, +4Vまで振っていますが、歪は単調に増加しています。Ep-Ip特性から予想出来ることではありますが、出力管の特性だけでA2領域で歪が減少するということは無さそうです。

やはり、歪率測定の問題、ドライバーとの打ち消しがありそうに思えます。また、振幅が大きくなるとDCシフトが起こっていることが出力トランスに影響を及ぼしている可能性もあるかもしれないと思いました。

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VTさん、

貴重な情報をいただきありがとうございます。

出力管だけで起こる現象だとすると、Ep-Ip特性から説明できないといけないと思います。考えてみます。

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kenさま、お早うございます。

 残念ながらデータは残っていないのですが、ずいぶん昔、初めて作ったA2級アンプのひずみ率が変な格好だったので、前段とのひずみ打消しが起こっているなら十分低ひずみで駆動力があるアンプでドライブすれば普通の形に戻ると思って、トランジスタアンプの出力で出力管を直接駆動して各々のひずみ率を比較するというお遊び実験をしたことがあります。
 その結果、トランジスタアンプのひずみ率は測定限界以下であるにも関わらず、A2級動作になるあたりで出力管のひずみ率が一度下がるという現象は残ったことから、少なくともA2級動作させた出力段自身にあのようなひずみ率の推移を示す素因があるらしいと推測しております。

引用して返信編集・削除(未編集)

菊地さん、VTさん、

いろいろと教えていただきありがとうございます。

実のところ、もっともありそうなメカニズムは、出力管のグリッド電流が流れるとドライバーの負荷が重くなって歪が増加。それによって出力管との2次歪の打ち消し量が増えるというのだと思っています。

動作条件によっては、主力歪率特性が直線的でなくなる可能性があるというのも、その通りだと思います。

どういうわけか、この興味深い主力歪率特性についての明確な考察にめぐりあっていません。そのため、2次歪と3次歪は打ち消し合うことは無いというのは、ベテラン諸兄の間ではコンセンサスはあるのだろうかというのが、皆さまに質問を投げかけた理由でした。やはり同じ考えをお持ちだとわかりました。

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kenさま、こんばんは。

「2次歪み中心のところに3次歪み成分が割り込んでくると、みかけ上歪みが減ったようにみえるということはよく知られています」ですが、そのあと「A1級では、こういう凹型にならずに」と記述されていることに加え、「みかけ上」と「みえる」いう言葉が入っていることからもわかるように、実際に2次歪と3次歪が打ち消しあうとか、3次歪み成分が歪みを減らしているということを言っているのではなく、A2級では3次歪み量が急激に増え始めるグリッドがプラスの領域へ入り始める近傍の信号レベルで一度、信号レベルが上がったにもかかわらず「最大出力近くになると歪み率は一旦減少あるいは横ばい」になり、「みかけ上歪みが減ったようにみえる」というその右に示されたグラフ例示された事象が生じることを記述しているに過ぎないものと思われます。

で、そのような現象が起こる原因は、入力電圧に対する出力電圧をプロットしたライン(リサージュ波形のような)をつくるとしばしば、グリッドがプラスの領域へ入るポイント付近でこのラインが曲がってしまうことがこれに関係しているのではないかと思いますが、実際に各ひずみにどういう影響を与えるのかを解析したことがないので、確証はありません。

 私の解釈がどこまで正しいかわかりませんが、ご参考まで。

引用して返信編集・削除(編集済: 2025年01月08日 06:13)

お正月から難問を提案なさっていますね。
というか、お正月だから難問にもじっくり考えられるのかも・・・

で、私は難しい事は解りませんが、
どこかで2次歪が打ち消されるポイントがあるのではないかと思います。
2次歪に比べて高次歪みを打ち消すのは難しそうなので、
トータルの歪量を左右するのは2次歪の打消しだと思うのです。

そこでネット上に公開されている作例の中から、回路図と歪率の掲載されている作例を
片っ端から眺めて、歪率の上昇が水平に変化する作例をピックアップしてみては如何でしょう。
何か回路動作的に共通するポイントが見つかれば、今回の問いのヒントになるかも?

そこで自分の作例を眺めてみたら以下のような作例でした。
https://www.asahi-net.or.jp/~CN3H-KKC/claft/6v6gtq2.htm

上記のぺージの後半で電源電圧を上げた場合の歪率があるのですが、
5Wから12Wくらいまで歪率の上昇はなく、むしろ減ってたりします。

ただQuadⅡ回路はドライブ段と出力段が絡み合った回路で、原因はさっぱり分かりません。
ちなみに、反転信号が何処から来るのかで、過去にMJ誌の先生方の解説が全滅だったという
驚きの事例まで有るほどで、今は簡単にシミって解ってしまう、良い時代になりました。

さらには以下のページのセットも、クリップ手前で歪率が一息ついています。
https://www.asahi-net.or.jp/~CN3H-KKC/claft/6as7_depp.htm

これは極端に感度の低い出力管で、ドライブ段も目一杯になっているので、
ドライブ段と出力段とで、歪の打消しが起こったのではないかと愚考します。   

ただし、どちらもA2級ではないので、ほとんどヒントになってないですね。
何方かわかる方のフォローを、お待ちしています。

引用して返信編集・削除(未編集)

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