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スレッドNo.243

3/26の練習

静まりかえった体育館は、まるで誰かに忘れ去られた巨大な空洞のようだった。春休みだというのに、そこには子供たちの騒がしい声も、無邪気な足音もない。ただ、ミゲルが流す軽快な音楽だけが、硬い床の上で所在なげに跳ね回っていた。
​ノヂさんはストイックに体幹をいじめ抜くと、霧が晴れるようにふっと姿を消した。彼が再び姿を現すのは、おそらくすべてが終わる締めくくりの時間だろう。それまでの間、彼は世界のどこか別の場所で、静かな休息を取っているに違いない。
​イシバシはボールだけを抱えてやってきた。彼はミニマリズムの体現者のようにも見える。そんな彼が、一人でふらりと現れたヤブキにディアボロを教えている。ボールしか持たない男がディアボロを説く。そこには、ある種の奇妙で美しい矛盾があった。
​「久しぶりだね」と、僕はアーロンに声をかけた。春休みの光景に、彼の姿が戻ってきた

そしてハヤシ。彼はいつだって、非の打ち所のない手つきでクラブを操る。そのリズムは、まるで正確に調整されたメトロノームのようだった。
​コーラ、クロセさん、ポルコさん、そしてミナトがパッシングに興じている。空中に投げ上げられた道具たちは、見えない糸で結ばれているかのように、規則正しい放物線を描き続けていた。
アベさんが現れた後、​時計の針が8時25分を指す頃、いつもの彼女——「8時25分の女」ことタムタムが現れた。彼女たちの目的が練習にあるのか、あるいはその後に待つ冷えたグラスにあるのか、それをあえて問うのは野暮というものだろう。
​練習が終わると、僕たちは夜の闇へと滑り出した。
テーブルを囲み、誰かがビールの注文を終えると、会話は自然に「高尚な」場所へと向かった。
​アメリカの広大な地理について
​積み重ねられた歴史の断層について
​僕たちはジャグリングの道具を置き、代わりに言葉を投げ交わした。それはまるで、遠い異国の地図を指でなぞるような、静かで知的な儀式だった。
​完璧な夜なんて存在しない。
けれど、冷たいビールと、アメリカの歴史についてのとりとめもない会話があれば、それは「悪くない夜」の範疇に十分収まるのだ。

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