きっこさん、兎波さんみなさんこんにちは。
ここのところ朝晩は10℃以下に冷え込むが晴れると風のない日中は小春日和となり小六月とも云われる日差しがぽかぽかとして冬とは思えない穏やかな天気で十一月ならではの賜物が続く。木曜日の午前中は車椅子介助なので善福寺川緑地を脳梗塞で半身麻痺の老女を車椅子に乗せて押しながら和田堀公園の池を巡る歩行介助をする。言葉も不自由で補聴器も付けているので耳も遠いが目はいいので冬鳥が飛来する今の時期は善福寺川や和田堀の水鳥を見るのも気晴らしになるので紅葉を愛でながら都会の喧騒を離れて遊ぶ自然が豊富な杉並区は格好の散歩コースが多いので、善福寺川や妙正寺川は体の不自由な人たちには憩いの場となる。早いものでヘルパーの資格を取ってから十年近くなり社福協の仕事などわたくしより古い職員はいなくなったので最古参のヘルパーになってしまったが、お客の奥さんが俳人だったことはあるが、俳人のお客を介護するのは初めてで、つい二時間の介護が今日などは三時間に及んでしまったほどで、どうして時間を忘れてしまったのか今思えばかもめさんと重なっていたのではないかと気づいた。
「季節は一週間で変わり行くから身近にある季語を一週間ごとに見回して御自分だけの歳時記をお作りなさい」と説いたのは波多野爽波で、弟子たちは蛇腹のように身近な季語を何十年も積み上げた歳時記を本当に持っていて見せてもらったが、この師にしてこの弟子たちという見事な絆を真似て「猫髭歳時記」を編んでいたこともあった。今は新しく飛んできた水鳥の名前を教えたり、先週とは紅葉の色合いのここが違うと話しかけているうちに、満点星躑躅の紅葉の光のあたる部分の真紅とあたらない部分の黄色や紫や緑や薄茶の彩の渋さが和の色合いとしか言いようの無い美しさだねえと話しながら、こんな誰も見も気づきもしないことに美を見出して喜んでいるのは俳人くらいで、世界で一番幸福のハードルが低いのは俳句のお陰だねエと笑い合った。道行くひとは皆気づかずにスマホを見ながら歩いており、このちっぽけな幸せよりも高価なルイ・ヴィトンの二十万もするところに幸せのハードルを求めている。逆光の白山茶花の美しさもひときわで、銀杏の黄葉は来週の25日が今年は見頃だと黄金の黄葉の絨毯の予想を立てたりしたら、目を落すと一面の黄花コスモスがまだ咲いており、それが逆光に透けて美しいので野紺菊から背景の写真を替えたが、これはコスモスの裏側の写真である。コスモスの裏側の写真など撮ったことがないので老女に見せると震える手でカメラを顔に近づけ綺麗ねと頷いていた。まさに小春日和の贈り物である。山茶花の紅も来たときは二三輪しか咲いていなかったのに帰るときはもう十輪近く開いていた。多分来週は地面が赤い花びらの絨毯を敷きつめて彼女を迎えるだろう。