三角形の内接二次曲線と共役点
昨年からの私の個人的なブームは三角形に関するあれこれで今も継続しています。
数日前にふと問題を思いついたので書いてみます。
ただし、問題は作りましたが自分で解いてはいないので解答は用意していません。
(この問題の内容を含むより一般的な命題が成り立つことは確認しています。)
前提知識その1 等角共役点 (isogonal conjugate)
三角形ABCの各辺およびその延長線の上にない点Pをとる。
角Aの二等分線に関する直線APの鏡映を直線l、
角Bの二等分線に関する直線BPの鏡映を直線m、
角Cの二等分線に関する直線CPの鏡映を直線nとすると、
3本の直線l,m,nは1点で交わる。
この点を(三角形ABCに関する)点Pの等角共役点という。
前提知識その2 等距離共役点 (isotomic conjugate)
三角形ABCの各辺およびその延長線の上にない点Pをとる。
直線APとBCの交点をL、BPとCAの交点をM、CPとABの交点をNとし、
線分BCの中点に関して点Lと対称な点をL'、
線分CAの中点に関して点Mと対称な点をM'、
線分ABの中点に関して点Nと対称な点をN'とすると、
3本の直線AL',BM',CN'は1点で交わる。
この点を(三角形ABCに関する)点Pの等距離共役点という。
問題その1
三角形の内接円に対してあるひとつの傍心から2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等角共役点であることを示せ。
問題その2
三角形ABCに対して、四角形ABCDが平行四辺形となるように点Dをとる。
三角形ABCの内接円に対して点Dから2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等距離共役点であることを示せ。
りらひいさん、こんにちは。ちょっと考えてみました。
問題その1
三角形の内接円に対してあるひとつの傍心から2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等角共役点であることを示せ。
回答
△ABCの内心をIとし、∠B内の傍心をI'とすると、3点B,I,I'は一直線上にあり、I'から内接円に引いた接線の2つの接点をI'Iの関して点A側をS,点C側をTとすると、
AIは∠Aの二等分線でAI'は∠Aの外角の二等分線より∠IAI'=180°÷2=90°
また、I'S⊥ISより∠ISI'=90°
よって、∠IAI'=∠ISI'より、円周角の定理の逆により4点S,I,I',Aは同一円周上にある。
ところで、△I'SI≡△I'TIより∠SI'I=∠TI'I=●と置くと、円周角より∠SAI=∠SII'=●
また、∠ITI'=90°,∠IAI'=90°より四角形AITI'は円に内接する四角形である。
よって、円周角より∠IAT=∠II'T=● ∴∠SAI=∠IAT
ところで、AIは∠Aの二等分線より、ASとATは∠Aの二等分線に関して鏡映である。
また、△I'SI≡△I'TIより∠I'IS=∠I'IT ∴∠BIS=∠BIT また、半径よりIS=IT BIは共通より、
二辺挟角が等しいので、△BIS≡△BIT ∴∠IBS=∠IBT
ところで、BIは∠Bの二等分線より、BSとBTは∠Bの二等分線に関して鏡映である。
よって、点Sと点Tは互いに等角共役点である。よって、示された。
補足
∠ITI'=∠ICI'=90°から4点I,T,C,I'は同一円周上にあり、円周角より∠TCI=∠TI'I=●
また、四角形SICI'は円に内接する四角形より円周角で、∠ICS=∠II'S=● ∴∠TCI=∠ICS
ところで、CIは∠Cの二等分線より、CTとCSは∠Cの二等分線に関して鏡映である。
壊れた扉さん
答えていただきありがとうございます。
6つの点 A, C, S, T, I, I' が同一円周上にあるんですね。
問題その1はそれほど難しくはないだろうなとなんとなく思っていましたが、かなりきれいな形でした。
ちなみに、
「三角形の傍接円に対して内心から2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等角共役点であること」
もほとんど同様に示せます。
管理人さん
投稿No.1194を修正しました。
修正前:「線分BCの中点に関する点Lの鏡映を点L'」他
修正後:「線分BCの中点に関して点Lと対称な点をL'」他
理由 … 平面において点対称のことを鏡映とは言わないため。
りらひいさん、こんばんは。
「三角形の傍接円に対して内心から2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等角共役点であること」
もほとんど同様に示せます。
先程やってみました。「ほとんど同様」の意味が分かりました。ある謎を解かないといけませんね。
この問題の元ネタ(より一般的な命題)を載せておきます。
以下、ユークリッド平面に無限遠点の集合である無限遠直線を加えて射影平面の定義を満たすように拡張した平面で考えます。
この拡大ユークリッド平面では、任意の異なる2点を結ぶ直線がただ1つ存在し、任意の異なる2直線はただ1点で交わります。
ことばの定義 内接二次曲線
3直線BC,CA,ABに接する二次曲線を三角形ABCの内接二次曲線という。
※三角形の内側にあり3辺に接する楕円だけではなく、三角形の外側にあり1辺と残り2辺の延長線に接する楕円・放物線・双曲線を含める。
問題その1の元ネタ
三角形ABCの内心と3つの傍心の中から三角形ABCの内接二次曲線Γに2本の接線が引ける点を選ぶ。
その点からΓに引いた2本の接線の接点は互いに三角形ABCに関する等角共役点である。
問題その2の元ネタ
三角形ABCに対して、四角形ABA'C,ABCB',AC'BCが平行四辺形となるように点A',B',C'を定める。
三角形ABCの重心Gと3点A',B',C'の中から三角形ABCの内接二次曲線Γに2本の接線が引ける点を選ぶ。
その点からΓに引いた2本の接線の接点は互いに三角形ABCに関する等距離共役点である。
元ネタの元ネタ(より一般的な命題)も載せておきます。
等角共役点や等距離共役点はさらに一般化された「点の共役関係」のうちのひとつです。
一般化された点に関する共役関係には、自己共役な点を4つ持つものと1つも持たないものがあります。
元ネタの元ネタ
三角形ABCに関して、自己共役な点を4つ持つ「点に関する共役関係」をひとつ決める。
その4つの自己共役な点の中から三角形ABCの内接二次曲線Γに2本の接線が引ける点を選ぶ。
その点からΓに引いた2本の接線の接点は互いに最初に定めた共役関係にある。
この元ネタの元ネタは射影幾何の範疇なので双対が成り立ちます。
その双対がもうひとつのスレッド「三角形の外接二次曲線と共役直線」の元ネタの元ネタになります。
一般化された「点に関する共役関係」(自己共役な点を4つもつもの)について書き込んでおきます。
1点を通る4直線の複比を [l1,l2;l3,l4] のように書き、
1直線上にある4点の複比を [P1,P2;P3,P4] のように書く。
点Dは直線BC,CA,AB上にないとする。
4つの自己共役な点を持ちその中の1つが点Dであるような共役関係のことをD-共役と書くことにし、
ある点に対してD-共役の関係にある点のことをD-共役点と書くことにする。
D-共役点
直線BC,CA,AB上にない点Pに対して、
直線m1は点Aを通り [AC,AB;AD,m1]=1/[AC,AB;AD,AP] となる直線とし、
直線m2は点Aを通り [BA,BC;BD,m2]=1/[BA,BC;BD,BP] となる直線とし、
直線m3は点Aを通り [CB,CA;CD,m3]=1/[CB,CA;CD,CP] となる直線とする。
このとき、3本の直線m1,m2,m3は1点で交わる。
この点が点PのD-共役点である。
ちなみに、
直線BCとADの交点をA',CAとBDの交点をB',ABとCDの交点をC'とすると、
D-共役の4つの自己共役な点のうち点D以外の3つの点は、
点A,A'に関する点Dの調和共役点,
点B,B'に関する点Dの調和共役点,
点C,C'に関する点Dの調和共役点である。
※調和共役点とは複比が-1となる点のことをいう。