タイプ別の定積分
(1)∫[x=0->1](1-x^2)^5dx
(2)∫[x=0->1](x*(1-x))^5dx
(3)∫[x=0->1](x*(1-x))^5/(1+x^2)dx
但し明示的解で示して下さい。
(1) 256/693
(2)1/2772
(3)11411/2520-2*log(2)-Pi
だと思います。
(1),(2)
は
一般に
∫[x=0,1](x*(1-x))^ndx=∫[x=0,1](1-x^2)^ndx/4^n
=Beta(n+1,n+1)
但し
Beta(s,t)=Γ(s)*Γ(t)/Γ(s+t)
(ベータ関数)
で繋がっていて
gp > bestappr(intnum(x=0,1,(1-x^2)^5))
%470 = 256/693
gp > bestappr(intnum(x=0,1,(1-x^2)^5)/4^5)
%471 = 1/2772
gp > bestappr(intnum(x=0,1,(x*(1-x))^5))
%472 = 1/2772
gp > Beta(s,t)=gamma(s)*gamma(t)/gamma(s+t);
gp > bestappr(Beta(6,6))
%475 = 1/2772
(3)は
∫[x=0,1]x^n/(1+x^2)dx=∫[t=0,Pi/4]tan(t)^ndt
の置換積分で
そこで
gp > (x*(1-x))^5
%476 = -x^10 + 5*x^9 - 10*x^8 + 10*x^7 - 5*x^6 + x^5
=(5*x^9+10*x^7+x^5)-(x^10+10*x^8+5*x^6)
ここで
I=∫[x=0,1](x*(1-x))^5/(1+x^2)dx
ここで
x=tan(t) と置くとdx=dt/cos(t)^2=dt*(1+tan(t)^2)=dt*(1+x^2)
x=0-->t=0 ; x=1-->t=Pi/4
よって
I=∫[t=0,Pi/4](5*tan(t)^9+10*tan(t)^7+tan(t)^5)dt
-∫[t=0,Pi/4](tan(x)^10+10*tan(t)^8+5*tan(t)^6)dt
=5*(1/2*log(2)-7/24)+10*(-1/2*log(2)+5/12)+(1/2*log(2)-1/4)
-(-1/4*Pi+263/315)-10*(1/4*Pi-76/105)-5*(-1/4*Pi+13/15)
=11411/2520-2*log(2)-Pi
(この計算はほとほとめんどくさい。)
gp > intnum(x=0,1,(x*(1-x))^5/(1+x^2))
%480 = 0.00028758846491931730606697697874715425500493507898685
gp > 11411/2520-2*log(2)-Pi
%481 = 0.00028758846491931730606697697874715425500493507898685
私もベータ関数で考えました。
(1)については、
∫[x=0→1](1-x^2)^5dx=(1/2)∫[x=-1→1]((1+x)*(1-x))^5dx
=∫[t=0→1](2t*2(1-t))^5dt=2^10*Β(6,6)=2^10*Γ(6)^2/Γ(12)
=2^10*(5!)^2/(11!)=1024/2772=256/693
となりますが、
(2)については、
∫[x=0→1](x*(1-x))^5dx=∫[x=0→1](x^5*(1-x)^5)dx
=Β(6,6)=Γ(6)^2/Γ(12)=(5!)^2/(11!)=(5*4*3*2*1)/(11*10*9*8*7*6)
=1/(11*2*3*2*7*3)=1/2772
となるのではないでしょうか。
(3)については、∫[x=0→1](x*(1-x))^n/(1+x^2)dx (n=1,2,3,4,5)を順次求めてみました。
(x(1-x))/(1+x^2)=(x-x^2)/(1+x^2)=(x+1)/(1+x^2)-1
より
∫[x=0→1](x*(1-x))/(1+x^2)dx=∫[x=0→1]((x+1)/(1+x^2)-1)dx
=ln(2)/2+π/4-1
(x(1-x))^2/(1+x^2)=((x+1)/(1+x^2)-1)*(x(1-x))
((x+1)x(1-x))/(1+x^2)=(x-x^3)/(1+x^2)=2x/(1+x^2)-x
より
∫[x=0→1](x*(1-x))^2/(1+x^2)dx=∫[x=0→1](2x/(1+x^2)-x-x(1-x))dx
=ln(2)-Β(2,1)-Β(2,2)=ln(2)-Γ(2)Γ(1)/Γ(3)-Γ(2)^2/Γ(4)
=ln(2)-(1!*0!)/2!-(1!)^2/(3!)=ln(2)-1/2-1/6=ln(2)-2/3
(x(1-x))^3/(1+x^2)=(2x/(1+x^2)-x-x(1-x))*(x(1-x))
(x^2(1-x))/(1+x^2)=(x^2-x^3)/(1+x^2)=(x-1)/(1+x^2)-(x-1)
より
∫[x=0→1](x*(1-x))^3/(1+x^2)dx
=∫[x=0→1](2(x-1)/(1+x^2)+2(1-x)-x^2(1-x)-x^2(1-x)^2)dx
=ln(2)-π/2+2Β(1,2)-Β(3,2)-Β(3,3)
=ln(2)-π/2+2Γ(1)Γ(2)/Γ(3)-Γ(3)Γ(2)/Γ(5)-Γ(3)^2/Γ(6)
=ln(2)-π/2+2*(0!1!)/2!-(2!1!)/4!-(2!)^2/5!
=ln(2)-π/2+1-1/12-1/30=ln(2)-π/2+53/60
(x(1-x))^4/(1+x^2)=(2(x-1)/(1+x^2)+2(1-x)-x^2(1-x)-x^2(1-x)^2)*(x(1-x))
-(x-1)^2*x/(1+x^2)=-x*(1-2x+x^2)/(1+x^2)=2x^2/(1+x^2)-x=-2/(1+x^2)+2-x
より
∫[x=0→1](x*(1-x))^4/(1+x^2)dx
=∫[x=0→1](-4/(1+x^2)+4-2x+2x(1-x)^2-x^3(1-x)^2-x^3(1-x)^3)dx
=-π+4Β(1,1)-2Β(2,1)+2Β(2,3)-Β(4,3)-Β(4,4)
=-π+4Γ(1)^2/Γ(2)-2Γ(2)Γ(1)/Γ(3)+2Γ(2)Γ(3)/Γ(5)-Γ(4)Γ(3)/Γ(7)-Γ(4)^2/Γ(8)
=-π+4(0!)^2/1!-2(1!0!)/2!+2(1!2!)/4!+(3!2!)/6!-(3!)^2/7!
=-π+4-1+1/6-1/60-1/140=-π+22/7
(x(1-x))^5/(1+x^2)=(-4/(1+x^2)+4-2x+2x(1-x)^2-x^3(1-x)^2-x^3(1-x)^3)*(x(1-x))
(x(1-x))/(1+x^2)=(x-x^2)/(1+x^2)=(x+1)/(1+x^2)-1
より
=∫[x=0→1](-4(x+1)/(1+x^2)+4+4x(1-x)-2x^2(1-x)+2x^2(1-x)^3-x^4(1-x)^3-x^4(1-x)^4)dx
=-2*ln(2)/2-π+4Β(1,1)+4Β(2,2)-2Β(3,2)+2Β(3,4)-Β(5,4)-Β(5,5)
=-2*ln(2)/2-π+4Γ(1)^2/Γ(2)+4Γ(2)^2/Γ(4)-2Γ(3)Γ(2)/Γ(5)+2Γ(3)Γ(4)/Γ(7)-Γ(5)Γ(4)/Γ(9)-Γ(5)^2/Γ(10)
=-2*ln(2)/2-π+4(0!)^2/1!+4(1!)^2/3!-2(2!1!)/4!+2(2!3!)/6!-(4!3!)/8!-(4!)^2/9!
=-2*ln(2)/2-π+4+2/3-1/6+1/30-1/280-1/630=-2*ln(2)-π+11411/2520
> "kuiperbelt"さんが書かれました:
> 私もベータ関数で考えました。
(3)もベータ関数に繋がるんですね。
参考にn=6,7,8,9,10
でやってみました。
I6=38429/13860-4*ln(2)
I7=2*π-4*ln(2)-421691/120120
I8=4*π-188684/15015
I9=8*ln(2)+4*π-17069771/942480
I10=16*ln(2)-1290876029/116396280
管理人さんの解答と数値が合わなくて悩んでましたが、やっぱり (2) は 1/2772 ですよね?
(1)と(2)はベータ関数なんて持ち出さなくても、5回部分積分すれば高校生でもすぐ答えられる問題ですね。
(1)
∫[x=0->1] (1-x^2)^5 dx
= (1/2) ∫[x=-1->1] (1+x)^5*(1-x)^5 dx
= (1/2)*(5/6) ∫[x=-1->1] (1+x)^6*(1-x)^4 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7) ∫[x=-1->1] (1+x)^7*(1-x)^3 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8) ∫[x=-1->1] (1+x)^8*(1-x)^2 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9) ∫[x=-1->1] (1+x)^9*(1-x) dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9)*(1/10) ∫[x=-1->1] (1+x)^10 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9)*(1/10)*(1/11)*2^11
= 256/693
(2) (1) と同様にして
∫[x=0->1] (x*(1-x))^5 dx
= (5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9)*(1/10)*(1/11)*1^11
= 1/2772
(3)
まず、
(x*(1-x))^5 = (1+x^2)Q(x) + ax + b
とおき、x = ±i を代入すると、
-4 - 4i = b + ai
-4 + 4i = b - ai
となるので、a = b = -4
また、
∫[x=0->1] 1/(1+x^2) dx = π/4(x=tanθの置換積分による)
と
∫[x=0->1] 2x/(1+x^2) dx = log2
が成り立ちます。
よって、
∫[x=0->1] (x*(1-x))^5/(1+x^2) dx
= ∫[x=0->1] {x^5*(1-x)^5+4x+4}/(1+x^2) dx - 4 ∫[x=0->1] 1/(1+x^2) dx - 2 ∫[x=0->1] 2x/(1+x^2) dx
= Σ[n=0->∞] ∫[x=0->1] {x^(2n+5)*(1-x)^5+4*x^(2n+1)+4*x^(2n)}*(-1)^n dx - π - 2log2
= Σ[n=0->∞] {120/((2n+11)(2n+10)(2n+9)(2n+8)(2n+7)(2n+6))+4/(2n+2)+4/(2n+1)}*(-1)^n - π - 2log2
= Σ[n=0->∞] {-1/(2n+11)+5/(2n+10)-10/(2n+9)+10/(2n+8)-5/(2n+7)+1/(2n+6)+4/(2n+2)+4/(2n+1)}*(-1)^n - π - 2log2
= 4/1 + 4/2 - 4/3 - 4/4 + 4/5 + 5/6 - 9/7 + 5/8 - 1/9 - π - 2log2
= 11411/2520 - π - 2log2
最後の1行は手計算じゃ厳しい……。
11411/2520の正体が
4/1 + 4/2 - 4/3 - 4/4 + 4/5 + 5/6 - 9/7 + 5/8 - 1/9
であることには驚きました。
(x*(1-x))^6,(x*(1-x))^7
に現れる分数値
38429/13860、- 421691/120120
についてDD++さんの巧みな方法を参考に探すと
2 + 4/3 - 7/4 - 3/5 + 1/7 + 14/9 + 1/11 = 38429/13860
- 6 + 7/3 + 6/5 + 8/7 - 7/8 - 20/11 + 17/12 - 1/13 = - 421691/120120
によって構成されてくることになるんですね。
なおkuperbeltさんのベータ関数利用では
2 + 2/3 + 2/15 - 1/30 + 1/140 - 1/1260 - 1/2772 = 38429/13860
- 4 + 1/3 +2/15 + 1/35 - 1/140 + 1/630 - 1/5544 - 1/12012 = - 421691/120120
の構成になるようです。
しかしそもそも
∫[x=0,1]1/(x^2+1)dx=∑[n=0,oo]((-1)^n*∫[x=0,1]x^(2*n)dx)
∫[x=0,1]x/(x^2+1)dx=∑[n=0,oo](-1)^n*∫[x=0,1](x^(2*n+1)dx)
∫[x=0,1]x^2/(x^2+1)dx=∑[n=0,oo]((-1)^n*∫[x=0,1]x^(2*n+2)dx)
∫[x=0,1]x^s*(1-x)^sdx=∑[n=0,oo]((-1)^n*∫[x=0,1]x^(2*n+s)*(1-x)^sdx)
なんて式がどこから思いつけるんですか?
単純に、
1/(1+x^2) がいやだなあ……
→x か 1-x だけを因数に持つものの総和で書けたらなあ……
→初項 1 で公比 -x^2 の無限等比級数に展開すれば、それできるじゃん!
というだけです。
ところで、あとから気がついたんですが、普通に x^5*(1-x)^5 を 1+x^2 で割った商を普通に積分すれば同じ内容の分数の和に帰着するっぽいですね。
式変形頑張ったの、あんまり意味なかった疑惑。