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ライブがはねたら

「遊…大丈夫?」
心配そうな俊に頷いて 遊はステージに向かう。
スタジオと中継がつながっているので マイクを再度確認して階段を登る。

「さあ 皆さまお待たせしました‼
七本木ヒルズ クリスマスツリー前から 火鷹遊くんの曲をお届けします。遊くん 今年はアルバムに 全国ライブなどホントに大活躍でしたね〜‼
遊くん 今日歌ってくれる曲の紹介をお願いします‼」

「曲は 今年だしたシングルのメドレーと
あとはクリスマスなので特別にクリスマスソングのカバーを一曲…
これは誰もが耳にしたことのある有名な曲です。」

「では 遊くん スタンバイ お願いします。」

遊は 少し熱っぽい身体を奮い立たせて歌いだす。
喉も少し違和感があり 高音がいつもよりでていないのがわかる。
メドレーを歌い終わった遊は2曲目の 途中でステージ上の階段にふわりと座り込む。
それは演出にみえてそれほど違和感は感じさせなかったが
見守る俊はヒヤリとした。
なんとかラストまで歌い終え 遊の中継は終わる。

「火鷹 大丈夫か。」

先ほどオープニングで夜景をバックに歌い上げたばかりの龍が声をかける。

「志摩さんは?」

「クリスマスだから 矢崎のおっさんの病院に行かせた。
これでも気つかってんだぜ〜。」

「…そうか。」

「?何かあったか?」

「俺 これから番組スタッフの忘年会に呼ばれてて
ちょっと外せないんだよ…毎月一回は遊が必ず出演してる番組だし…
志摩さんがいてくれれば 良かったんだけど…」

「俺が 火鷹を送ってくぜ。」

「…大丈夫か? もし何かかったら…」

「大丈夫 お兄さんにまっかせなさ〜い」

「スピードだすなよ。」


何となくそんなやりとりが聞こえていたが
遊がはっきり意識を取り戻したのは 龍の車の中だった。

タバコの匂いのする龍のコートが掛けられている。
身体の向きを変えると 気がついた龍が声をかける。

「大丈夫か? かなり熱がありそうだから
緊急行っといたほうがいいかもな。
どうする!?」

…病院はまずい…

「ありがと 大丈夫だから…」

「大丈夫って感じではないけどな… 飲むか」

水が差し出される。

「ありがとう…」

一口飲んだ遊がふと気がつく。

「…龍 これ飲みかけだけど…」

「ああ、さっき楽屋にあったやつの残り」

「!!」

「お兄さんの飲みかけだけど ありがたく思え。
風邪には水分だろう」

「………」

熱が一瞬で上がった気がする。

熱のせいなのか 龍のせいなのか

龍が掛けてくれたコートに を握りしめて瞼を臥せる。

遊を気づかってボリュームを下げたラジオから
昔からあるスタンダードなクリスマスソングが聞こえる。

それに合わせ遠慮がちに小さく龍も口ずさむ。
「メリー クリスマス…」

こんなクリスマスもありかも知れない。
そう思って遊は意識を手放した。

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レスレス♪

ぺこさん♪&たまおさん♪
こちらにてレスさせて頂きます〜♡

ぺこさん、何度もチャレンジ(;´Д`)ありがとうございます。もしかしたら、ぺこさんの環境でキャッシュが残っていて更新されなかったとか…?
とにかく見て頂けて良かったです( *´︶`*)

たまおさん、スライディング〜ありがとうございます!
唇と爪は今回結構ポイントにしてます♡

色合いは原作イメージと秋に合わせて…と思っていましたが、もうすっかり冬ですよね(;^ω^)

あっという間にクリスマス妄想の季節ですね〜(//∇//)

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スライディング土下座アゲイン

今年もあとわずかになりましたが…

こりすさん♪
Another meeting ありがとうございます‼
掲示板のほうは書き込めないタイミングらしく…
スミマセン…こちらにカキコいたします。

テンポのよい展開にニマニマしながら拝見しました〜
特に 海外が初めて 英語もちゃんと話せないなんて
彼ららしいわ〜ってほのぼの
そして 100ドル渡しちゃうところも爆笑‼

そして 遊ちんと龍のラブラブシーンをまさかのデバカメ(゜ロ゜;ノ)ノ

それでいて しっかり遊ちんと龍の絆も見せてくれてもう大満足です‼
遊は もう昔なじみのメンバーからみても分からないぐらいキレイになったのね…
もう二人のラブラブっぶりに大満足です(*^^*)

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わぁい♪たまおさん
ありがとうございます!

FLUIDITYは実力派だけど素朴でピュアな感じかな〜と。
調べたところ、100ドル札はあまりアメリカ本土では流通していないとか…。そこはまあ、知らずに両替してきちゃった、ってことで(笑)

実は、ちゃんとイメージした光景が文章で書けているか心配だったのですが…
皆様に楽しんでいただけてよかったです(*^_^*)

これからもっと寒くなりますが、風邪にも気をつけて、妄想力+で年末を乗り越えましょうね!!

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(No subject)

万里様♡
うきゃー♡ カッコイイ!美しい!!
待ってた甲斐がありました〜っ\(^o^)/

颯爽としているのに女性の色気にもドキリとさせられて、
映画かドラマのワンシーン?、それともCM第二弾?(ワクワク…)と妄想が広がります♪

急に真冬のような寒さとなりましたが、心はとってもHOTになりました(*^。^*)
ありがとうございますっ!


そして、ぺこさん♪シャナさん♪
↓の変則的番外編妄想、面白がっていただいて、ありがとございます!嬉しいです!

大谷さん×火鷹さん×ヒノさんの三角関係疑惑&遊ちん魔性の女疑惑に、彼はアレコレ妄想を巡らせたことでしょう(*^^)v
第三者目線での二人のラブラブ…書いてて楽しかったです♪

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見た見た見ました〜トップ絵!

シャツは秋色だけど、露出多めの襟まわりはお約束?
んも〜〜〜眼福♡
サービスカットありがとうございます(笑)

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こりすさん♪
お待たせいたしました〜!すっかり遅くなってしまって…(;''∀'')
妄想を広げてくださりありがとうございます。
イメージ、CMとか雑誌とかかなぁって感じで描き始めましたが、決めていたのは茶色系と爪の赤色だけでしたー
色々と妄想お願いしまーす(笑)

あ、↓に頂いた「Another meeting」ですが、部室の方にUPさせていただきました〜♪

シャナさん♪
えへへ〜(●´∀`)ゞ
あれ、おかしいな…今回は露出はぜんっぜん意識してなかったんですけど(←ホントに)
無意識ってコワい〜〜〜(笑)

でもシャナさんが眼福♡って言ってくださっているので良しとしまーす(笑)

引用して返信編集・削除(未編集)

万里様♡
番外編のUP有難うございます〜
お手間おかけし、すみませんですm(__)mでも嬉しいです☆

イラストの遊ちんの赤い爪♡本当ドキッとしますね(*^。^*)
夏の化粧品のCMが好評だったので、“秋の新色”バージョンも、って感じで、街にすごく大きなポスターとかが貼られたりして、「は、恥ずかしいっ…」とか思って、赤面しながらその前をそそくさと通り過ぎていく遊ちん(伊達メガネ)とか妄想して、楽しんでます〜(^^♪

引用して返信編集・削除(未編集)

やっと見られたー\(^o^)/
上のこりすさんの書き込みを拝見してから何度もサイトを開いたり
閉じたり再起動したり笑していたのですが、
何故か私の環境ではトップ絵が更新されず。。。
今日、というかいまやっと拝見出来ました!!
茶色モチーフいいですね♪原作コミックスの表紙を彷彿とさせます!
季節的にもピッタリ(*´ω`*)万里さまありがとうございます!

引用して返信編集・削除(未編集)

万里さん♪
でおくれました〜スライディング土下座…

top絵更新 ありがとうございます!
原作のような色使いに 染まった唇と爪が 大人の女性を感じさせます‼
凛としてるのに 色っぽい(*^^*)
こんな遊ちんの視線に 奴は撃沈でしょう〜

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Another meeting(Red rose 番外編 : FLUIDITY目線)

到着したばかりの夜のNY。
空港ロビーにて、俺たちは早速途方に暮れていた。

大谷さんから、NYでのレコーディングに参加してほしいと連絡があったときは、それこそみんな大喜びで、正直、舞い上がった。
依頼された楽曲も何とか出発までに用意して、意気揚々と俺たちは日本を出発した。
…はずだった。


そう、俺たちはすっかり忘れていた。
メンバー全員、海外は初めて。英語も誰一人まともに話せないことを。


大谷さんは、空港に迎えの車をよこすから、と言ってくれていたのだが、暫く待っても、それらしき人物は現れない。
その上、明らかに白タクと思われる客引きが、何人か声をかけてきて、何とか
“NO”
の一点張りで頑張ったものの、ついには強引に荷物を持っていかれそうになって、俺たちは荷物にしがみつくように、その場にほとんど半泣きで固まっていた。


小一時間はそんな状態で待っていただろうか。
そろそろ、いろんな意味で限界を感じていた頃、今度は大柄な黒人男性が近づいてきた。

(…ヤバい。)

もう、今度こそダメだと思った。
しかし、その男は俺たちの前で立ち止まると、確かにこう言った。

「……FLUIDITY?」

それから、何やらペラペラと捲し立てるように話はじめたが、当然全く理解できない。
唯一、聴き取れたのは“リュウ オオタニ”という名前。

「お、大谷さん?」

男は頷いた。
そして、俺たちの荷物のうち、ふたつを軽々と持ち上げて、ついてくるよう促した。



乗せられたのは、どうやらちゃんとしたタクシーらしく、俺たちは、ほんの少し、ホッとした。

…だが、それも束の間。
急発進したタクシーは、猛スピードで走り出した。

運転手の男は、俺たちに向かって何か叫んでいる。
どうやら、このままでは間に合わない…と言っているようだが、何に間に合わないのかは分からない。
もう、俺たちは何が何だかわからず、外の景色を見る余裕も無く、ただただ車が目的地にたどり着くまで、ひたすら耐えていた。



タクシーが止まった場所は、人通りもまばらな街角だった。

「着いたぜ。降りな。」

運転手の彼は、ようやく聞き取れる言葉で言った。

(ここ、一体どこなんだろう…)

急かされるまま、車を降りる。


彼についていった先は、古い建物の中にある、ライブバーだった。


ちょうど、割れんばかりの拍手と歓声が響いて、照明が明るくなったところだった。

“Oh,no!!”

彼が頭を抱えてそう言ったことで、俺たちは“間に合わなかった”ということを理解した。


「おう、やっと来たか。」

「お、大谷さんっ…!」

ようやく見知った顔に会えた俺たちは、安堵と嬉しさで、ほとんど泣いていた。

「なんだよ。そんなに感動したか?だけど残念ながら間に合わなかったな。」

そう言って、運転手の彼の方を見ると、何やら彼が懸命に大谷さんに話している。
やがて大谷さんは、吹き出して、

「そっか、悪かったな。空港行きの道が渋滞してたんだな。
でもって、おたくら、かなり待たせたみたいだな。…悪かった。」

と、言ってから、また喉奥で笑うから、きっと俺たちの行動の一部始終を彼から聞かされたんだろう。

「でも、残念。今日のライブはぜひ観ておいて欲しかったんだけどな。」

「えっ? 大谷さんのライブだったんですか?」

「いや、オレじゃない。」



「サム!」

その声に振り向くと、ドレス姿の日本人と思われる女性が立っていた。
その姿から今夜の主役は彼女だったことが分かる。

俺たちの目の前で彼女は、運転手の彼と軽いハグをした。
ここではじめて、彼の名前が“サム”だということが分かった。
俺たちに気付いた彼女が、少し戸惑った様子で、こちらを向く。

「紹介するよ。…彼女は、“ヒノ ユウ”。
今度、セントラルレコードからデビューする予定だ。
今回、おたくらには、彼女のレコーディングにも参加してもらいたくてね。
…で、今日のライブを観ておいて欲しかったんだけど。
まあ、それはまた、近いうちに…ってことで。」

「よろしく。」

そう言って、微笑んだ彼女は、“清冽な”という形容詞が相応しい美しさで。
差し出されたしなやかな手の滑らかさに、俺たちは皆、ドキドキしていた。




その後、サムにホテルまで送ってもらった俺たちは、
「サ、サンキュー」
といって、とりあえず100ドル札を差し出したら、彼は一瞬驚いたような表情をした後、すぐに、ニッと笑って、紙幣をつまんでウインクして、ゴキゲンで去っていった。

…後で聞いたら、すでに大谷さんは、彼に金を払っていて。
しかし、『しまった』と思ったところでそれは後の祭りだった。




翌日から始まった、スタジオでの体験は、何もかも、すべてが刺激的で新鮮だった。
ずっと憧れていたNYに、今自分がいるという実感。
もうそれだけで、俺たちは最高に幸せだった。


…ただ、気がかりな事がひとつ。
火鷹さんの姿がどこにも無い。

大谷さんに、一度尋ねたけど、
「火鷹なら、近いうちに会えるさ。」
と、言うだけで、それ以上の事は何も教えてくれなかった。


その後、大谷さんと、…ヒノさんも交えて食事に行った。

彼女は想像していたよりもずっと、気さくで、話しやすくて。
俺たちは、心底ほっとした。

そして、例のライブバーの話題になったとき、ふと、
「そういえば、あそこで火鷹さんもずっとライブをしてるんですか?」
と、質問したら、

「うん、そうだよ。」

と、ヒノさんが、さらっと答えた。

すると、大谷さんは、ちらっとヒノさんの顔を見て。

その瞬間、明らかに、彼女が、
『しまった。』
という表情をした。

大谷さんは何も言わなかったけど。
彼女は、バツの悪そうな顔で、俯いてしまった。

他のメンバーは皆、別の話に夢中で、そのことに気付いていたのは、たぶん俺だけだろう。

(もしかしたら、三人の間で何かがあったのかも知れない)

この時、そんな勝手な憶測が、俺の脳裏をかすめていた。




*******




今日はレコーディングのリハも兼ねて、FLUIDITYと歌を合わせることになっている。

まだ誰もいないスタジオで、遊はひとり佇んでいた。

(…どんな大きなホールでのライブだって、こんなに緊張したことない。)

NYに来た初日に、ライブに間に合わなかったせいで、まだ彼らは遊の歌を聴いていなかった。
結局、彼らには正体を明かしそびれたままで。
しかも彼らはまだ、目の前にいるのが“火鷹遊”だということに全く気付いていない様子だった。

でも、もうこれ以上隠しておくことは出来ない。


これは、日本で再び歌うための、乗り越えなくてはならない最初の一歩だ。
だけど…

“その時”が刻一刻と迫って来るのが。

(怖い…)

遊は胸の前でぎゅっと拳を握りしめた。



「どうした?」

そう言って、後ろから肩をぽんと、叩いたのは。

「…龍。」

「大丈夫か?」

「…うん、平気。」

「嘘つけ。」

龍はそう言って、向き直った遊の頬に触れてから、もう一度肩に手を置いた。

「…お前は、お前の歌を歌えばいい。」

「…え?」

「お前のことを、あいつらがどう思うかは、あいつら自身の問題で、お前にはどうにもできないだろ?
だから、お前はあいつらに聴いて欲しい、“今のお前”の歌を歌えばそれで充分さ。」


ずっと前、火鷹遊として彼の前にいた時も、彼はこうして励ましてくれていた。
龍に触れられているだけで、その声を聴いているだけで、心が溶かされていく。
あの頃も、そして今も。

「うん。そう…だね。」

だから、出来る限りの力強さで顔をあげると、

突然抱き寄せられ、唇を奪われた。

「……!!」

それは、予想外に…深くて。
その熱さに、いけないとは思いながらも、声が漏れてしまう。

「…ん…ぅっ…」


二人の温度が同じになるまで、唇を重ね続けた。


「りゅっ…」

(こんなとこで…誰かに見られたらどうすんだよ。)

と、言いたかったのに。

漸く遊を解放した龍は、
この上なく優しい笑顔で

「解れたろ?」

なんて言うから。

もう、何も言えなくなってしまった。

いつもより優しく頭を撫でて、部屋を出ていく彼の後ろ姿の、いつもより赤い耳に気付いて、遊の心は、温かな幸せで溢れそうになっていた。




*******




大事なリハーサルを前に、俺の心はモヤモヤとしていた。

―――見てしまった。

大谷さんと、…彼女が、キスしているのを。

それは、“挨拶”などという生易しいものではなく。

少なからず…いや、かなりの衝撃を受けてしまった。

そして、心の奥底に燻っていたモヤモヤが、一気に俺の心を覆ってしまった。

あの大谷さんが、女に現を抜かしているというなんていう事は信じたくなかったし、
ずっと好印象を抱いていた彼女のイメージが俺の中で変わってしまいそうなのも嫌だった。


なのに、当の二人は何事もなかったかのようだ。

…あの時、すぐにその場を離れたので、恐らく二人には気付かれていない…と思う。


「どうかしたのか?」

大谷さんに声をかけられて、はっと気が付いた。

「ま、いつもどうりの演奏でたのむよ。」

緊張していると思われたのか。

スタジオには、結構な数のギャラリーが集まって来ていて。
“品定め”されているのは実は俺たちの方なんだということに、今さらながら気づく。

マイクの前に立ち、こちらに向かって会釈する彼女の仕草に何故か一瞬、既視感を覚えながら、演奏を始める。



彼女が歌い始めたとたん、分かってしまった。

―――彼女は本物だ。

これが、NYで鍛えられた、ホンモノのシンガーなのだと、思い知らされる。

バックで演奏しているこちらも、どんどんノってきて、熱くなってくる。

切ないバラードも、ポップなスタンダード曲も、彼女の歌は冴えわたる。

収録予定の何曲かを、一気に演奏し終えると、スタジオは心地よい高揚感で満たされた。



「…どうだ?感想は?」

大谷さんの質問に、ようやく俺たちは我に返った。

「…素晴らしいです。すごいです…ほんとうに。」

それだけ言うのがやっとだったが、きっと気持ちが伝わったのだろう。

彼女は、ほっとした表情を浮かべて。
大谷さんは、『当然だな』というふうに頷いた。


「…実は、おたくらにもう一曲、彼女と演ってほしい曲があるんだけど。」

「いいっすよ、なんですか?」

気安く答えたら、大谷さんの口から出てきた曲名に、一瞬絶句した。


「それは…。」


その曲は、俺たちが火鷹さんのために創った、大切な一曲だったから。

再び、俺の心をモヤモヤが支配する。


「それだけは…出来ません。」

俺は振り絞るように言った。

「その曲は、火鷹さんのものです。
だから、たとえ…ヒノさんでも…。」

「火鷹の許可があっても、か?
…何もレコーディングしようっていうんじゃない。一度聴いて欲しいんだ。
彼女の歌で、この曲を。」

「……」

重苦しい空気がスタジオを覆う。
それを振り払うように、彼女が口を開いた。

「龍っ!…もう、いいよっ。
そんなに、大事な曲を…やっぱり…歌えないよ…っ。
ごめんなさい。無理言って…っ。」

彼女は何も悪くないのに。
罪悪感で俺の心がチクリと痛む。
だけど…。

小さな迷いが芽生え始めた時、
横から、仲間の裏切りの言葉が発せされた。

「…べつに、いいんじゃないすかね。
レコーディングするとかなら、また別の話ですけど。
火鷹さんもいいっていってるなら……それに、ちょっと聴いてみたいし。」


彼女が顔をあげる。

「そう…だよなぁ。うん。」

「…俺はいいと思うけど。」

残るは、俺の許可のみ…となったところで、全員の注目がこちらに集まる。 

もう、どうしようもない。

「一回だけなら…。でも、キーは変えない。原曲のままなら…」

俺が少しの抵抗と共に渋々承知すると。


「ありがとう…本当に、ありがとう…!」

と彼女は何度も頭を下げた。




力強さと、切なさを合わせ持つイントロは、火鷹さんのイメージそのもので。
我ながら、会心の出来だと思う。

困難を乗り越えて、未来に羽ばたく…火鷹さんに託したメッセージ。

この歌は、きっと火鷹さんにしか歌えない。
少なくとも、俺たちが思い描いた通りには…


「―――!!」


その考えは、彼女が歌いはじめてすぐに、まるでオセロの盤面が真っ黒から、全て白になるように、ひっくり返った。

…火鷹さんの歌う完成形が、俺のなかにあって、
彼女の歌は、さらにその、遥かに上の完全な完成形を俺たちに示していた。

まるで、はじめから、彼女のための歌だったみたいに。



……はじめから?

俺はふと、目の前で歌う彼女の後姿に、見知った仕草を見つけた。
少し首をかしげる角度、マイクを持つ手。

……まさか?


その『まさか』は、最後のサビに差し掛かった時、確信に変わった。



歌い終えた彼女は、目を閉じて、余韻を噛みしめるように、しばらく動かなかった。

そして、俺たちに向かって、深々と頭をさげた。


沈黙。


そして、俺は確信を言葉にする。



「……火鷹さん…なんですか?」



頭を下げたままの彼女の肩がピクリと動いた。

息を止めて、返事を待つ。


「やーっぱ、ばれたか。」

そう言ったのは、大谷さんだった。

「いつバレるかなって、思ってたんだよな。
でも、オレの予想どおりだったな。あ、念のため言っとくけど、こいつははじめから女だったんだからな。」


「…じゃあ、ホントに…火鷹さん…。」


「…っ、ごめんなさい!!
こんなことっ、許してもらえるなんて思ってない…!
でも、この曲を聴かせてもらったとき、うれしくて…どうしても、歌いたくて…。
みんなに聴いてほしかった。だから…」

彼女が声を詰まらせる。


「…何、言ってんですか…。火鷹さんが、男でも、女でも、関係ない。
この歌は、あんたの歌だ。これからも、ずっと…。」

俺の言葉にようやく彼女が顔を上げる。


俺たちは、それぞれに、自然に歩み寄り、彼女を囲んだ。

「また、会えてうれしいです。火鷹さん。」

そう言うと、
彼女は、晴れやかな笑顔で、

「ありがとう。」

と、言った。
少し目を涙で潤ませた、その顔は、本当に綺麗で、
俺は不覚にも、ドキリとしてしまった。

そして、『火鷹遊』のツアーの開演前の時にしていたみたいに、互いに拳を突き合わせたあと、皆で笑いあって。
どさくさ紛れに俺が、彼女の肩に手を置こうとした時だった。

「あっ、お前ら、気安く触んなよ。」

と、今まで、俺たちの様子を黙って見守っていた大谷さんの声が聞こえた。

振り向くと、口調は冗談めかしていたのに、その目は全然笑っていなかった。


……ちょっとコワかった。


「も、もぉっ!龍ってば!!」

そう言って、真っ赤になった、火鷹さん…ではなくてヒノさんの表情に、
他のメンバーも、一瞬にして二人の関係を理解したらしい。

俺は…再会の嬉しさと、目の前の事実に対する、すごく複雑な気持ちが入り混じって。

だけど、今、自分が日本の音楽シーンを揺るがす歴史的瞬間に立ち会っているに違いないという確信に近い予感に、胸が高鳴っていた。



END

引用して返信編集・削除(未編集)

↑長々貼り逃げすみません。
『FLUIDITYのNY珍道中』を出しに二人のラブラブを書きたかった…という番外編です。
書き始めてから、FLUIDITYのメンバーも個々には名前が無かったんだなーと気付きました。
はじめは、FLUIDITY目線のみのつもりでしたが、どうしても当事者目線のラブラブがないと!と、遊ちん目線を間にブチ込んでしまいました(*^^)v

音楽業界は全然詳しくないので、かなりいい加減な部分は多々ありますが、軽く読み流して頂ければ幸いですm(_ _)m

引用して返信編集・削除(未編集)

こりすさん♪
わ〜い!妄想の秋〜♪♪♪
FLUIDITYのおのぼりさん状態から始まり、遊ちんとの再会ー
嬉しい続きが読めましたぁ。
FLUIDITYも遊ちんを大事に思ってて、それがしっかり伝わって( *´︶`*)良い再会〜。バンザーイヽ(´▽`)/
間に二人のラブラブもちゃんと入れてくれて、ありがとう!こりすさん!
>「あっ、お前ら、気安く触んなよ。」
独占欲しっかり出してる龍もイイですねっ(//∇//)

引用して返信編集・削除(未編集)

万里様♡
ありがとうございますm(__)m
今回は、何か色々難しくて、イメージした通りの場面がちゃんと文章で表現できてるか自分ではよくわからないのですが、楽しんで頂けたら、とても嬉しいです(*^^*)
とにかく龍もFLUIDITYのメンバーも遊ちんにメロメロ〜な感じで♪

万里様の新作イラストも楽しみです♡
“ヒロイン”っぽい素敵遊ちんにワクワクです(≧▽≦)♡

引用して返信編集・削除(未編集)

わーぎゃーっ!!お久しぶりです!!

こりすさん、FLUIDITY目線のストーリーめっちゃ面白かったです!!
いいなぁ、新鮮味がありつつ他者から見た遊ちんの才能や魅力、
そして龍とのラブッぷりまで余すとこなく見せつけられて(*≧∀≦*)
NY事情も唄の分析もなんかすごくしっくり読めました!
冴え渡る歌声、ドストライクの表現だなと。
サムはタクシードライバーになったのですねwそれっぽい\(^o^)/
素敵なお話ありがとうございました〜〜〜♪

万里さま、ソルジャーボーイ電子書籍化ですか!?
今まで探してなかったから諦めてたのに、今頃?(;・ω・)
もちろん紙媒体は持ってるけど…買わなきゃwww
情報ありがとうございますv
秋冬verのイラスト、楽しみにしていまーす!!

引用して返信編集・削除(未編集)

こりすさーん!
番外編、ありがとうございます♪

そういや、FLUIDITYのメンバーって個人名は無かったですね(笑)
つか、顔もなんかおぼろげ…^^;
でも音楽やってる時はわちゃわちゃしてて楽しそうな感じと、
そんな軽いノリの割には実はけっこう義理堅い感じが、
原作のイメージそのまんまでした。

なにげに大谷龍・火鷹遊・ヒノユウの三角関係疑惑にニタリ( ̄∀ ̄*)
抜け目なくブッ込まれたラブラブにニンマリ( ̄m ̄* )ムフッ♪
ヤローどもをしっかり牽制する独占欲龍もツボです♡

ああ、楽しかった〜!!(≧▽≦)

万里さんの新作イラスト遊ちんもめっちゃ楽しみです!!

引用して返信編集・削除(未編集)
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