11/18の練習。
高学年はリレーのバトンパスに挑戦。選手の皆さんはいきなり「バトンパスの練習をします」と聞いて驚いたと思います。
何事も経験
基本的なテクニックを指導後、選手が二人組になってやってみます。
刺激を与えるために、途中でコーチはある言葉を投げかけます。「この30mのテイクオーバーゾーン内で、バトンパスが完了するタイムを測ってほしいペアは申し出て」
立候補してタイムを測る選手たち。だんだんタイムが縮まります。すると表情が明るくなる。活気が出てくる。
『記録』の向上が『やる気』の向上につながります。
学校の運動会でリレーのバトンパスは経験済みとはいえ、陸上クラブのバトンパスはかなりスキルが異なるので戸惑うことも多かったはず。
ですが、個人種目だけになりがちな陸上競技の中で、『仲間の力』を一番感じられるリレーの練習をこれから増やしていきたいです。
ある選手がわたしに質問しました。
「ボクのクラウチングスタート、どこを直せばいいですか?」
100mの目標タイムを達成するためにはスタートを改善する必要がある、と彼は自分のフォームを振り返って考えたのでしょう。
でも
彼のスタートは上手くて、直すところはないのです。近くで見ていた中学校のコーチも「うまいなぁ」とつぶやいたほど。
今の筋力に適したフォームをしています。 スタート後の前傾姿勢も、無理なく少しずつその距離を伸ばしている。
わたしはこう説明しました。
「スタートしてからの加速が遅くなったと感じているのかもしれないけど、あなたのスタートは実は速くなっている。たとえると、今まで軽四に乗っていたから加速感を感じていたのが、普通車になったら遅く感じるのと同じだよ」・・・車の運転をしたことのない小学生に言うことではなかったですね。
わたしはたとえ話がヘタなのです。
たとえ話は的外れでしたが、最後は力強くこう言いました。
「だから今のままでいい。」
小学生に陸上競技の指導をする。
どんな言葉を使えば子どもの心に届くか、いつも悩みます。
言えば言うほど選手の動きが悪くなる言葉もたくさんあります。
緊張して走っている子に「リキむな!」と叫べばさらにリキみますし、「リラックスしろ!」と怒鳴ればギクシャクしたフォームになります。
「下を見るな」と言えば上を見上げてしまいますし、それを直そうとして「アゴを引け」と言えば子どもはアゴを(引くのではなく)下げてしまいます。
ピッチを上げる、つまり速く脚を回転させようと助言すれば、とたんに腰が下がってしまう(初めて練習する小学生は、不思議なことに必ずそうなります)。
風邪薬を飲んだら風邪症状は軽くなったが胃が重くなった。薬にはそんな副作用が起こることがあります。
狙った効果とは違うのが副作用。
スポーツを指導する言葉にも副作用があるようです。
小学生は、コーチに言われたその部分(アゴとか脚とか)だけをなんとか修正しようとするので、別の部分の動きにひずみが生まれてしまうのだと思います。
プロのアイススケーターになった羽生結弦さん(プロなので『羽生選手』とは呼べません)が、単独アイスショーを開催。
その最初の演目は「6分間練習」だったそうです。プロが練習する姿を披露するのはどういう意味があるのかに興味があり、調べるとこんなコメントを見つけました。
「自分のアスリートらしさというか、根本的にある、さらに追究し続ける姿みたいなものを見ていただく機会になれば」
羽生ファンのわたしは、この言葉に深い感銘を受けたのです。
よく考えてみると、OJACで練習している小学生の皆さんも「120分練習」を保護者に披露している。
『目標を追究している姿』を見てもらっているのかもしれません。