6月句会の互選結果を発表します。
6月のトップは6点を得たふうりんさんの「夏場所」の句でした。続いて8点句の弥生さんの「涼し」の句でした。
以下、6点句がダイアナさん、水尾さん、にゃんこさんの句が同点でした。
10点句 16 夏場所や母のベッドの背を起こし (ふうりん)
8点句 18 辻ひとつ入りて涼しき京の路地 (弥生)
7点句 56 畦道は暮らしの道よ行々子 (森野)
6点句 17 万緑や嬰赤くなり伸びをする (ダイアナ)
6点句 69 推敲の末は昼寝の大鼾 (水尾)
6点句 82 いきさつを聞かむ古茶の葉開きけり (にゃんこ)
個人別総合では、ふうりんさんと弥生さんが、ともに14点で並びました。
6月度みんなのネット俳句会互選結果一覧 ◎は特選、特選2点並選1点で計算。 令和7・6
1 ナイターの我がナガシマや永久 (玉虫) 3 ちとせ、◎えっちゃ、
2 群生を茅花流しや銀色に (和談) 2 ◎ヨヨ、
3 家飲みに麦酒生き生き冷えてゐる (コビトカバ) 1 弥生、
4 おはようと挨拶しそうアマリリス (ちとせ) 2 森野、てつを、
5 五月雨にあやめの紫紺煌めいて (茶々) 4 えっちゃ、ヨヨ、ふうり、みにょ、
6 梅雨寒や九人目となる理髪店
7 本が好き白詰草の野に飽きず (尾花) 2 えっちゃ、森野、
8 うつ病のうつ捨てるため山登る (ABCヒロ) 4 えっちゃ、ナチー、◎弥生、
9 若葉風けふもご機嫌古農機 (てつを) 5 ダイア、ちとせ、弥生、アイビ、水尾、
10 解体をぢつと待つ家夕薄暑 (ヨシ) 3 にゃん、弥生、水尾、
11 著莪咲きし一乗谷に置く思ひ (森野) 2 尾花、水尾、
12 茄子植うる妻の白髪の目に余り (ナチーサン) 1 和談、
13 半夏生最後尾っに来て米を待つ
14 草引くや屈む背中に青時雨 (ヨヨ) 2 ちとせ、和談、
15 白百合に埋め包まれし母眠る (ラガーシャツ) 1 みにょ、
16 夏場所や母のベッドの背を起こし (ふうりん) 10 茶々、◎ラガー、◎玉虫、圓人、森野、弥生、ABC、ヨシ、水尾、
17 万緑や嬰赤くなり伸びをする (ダイアナ) 6 かをり、玉虫、ふうり、ABC、◎アイビ、
18 辻ひとつ入りて涼しき京の路地 (弥生) 8 尾花、ダイア、にゃん、ちとせ、かをり、森野、コビト、ABC、
19 河骨の咲いて荒蕪の湿地かな (アイビー) 1 ちとせ、
20 夾竹桃白し聖職者の庭よ
21 病む父や遠くでニュース梅雨入りと
22 万緑や文武に長ず松代藩 (和談) 1 かをり、
23 梅雨寒やここも更地か古本屋 (水尾) 5 ◎森野、てつを、みにょ、アイビ、
24 何回も振り向く別れ夏の空 (コビトカバ) 4 ◎にゃん、えっちゃ、ラガー、
25 新品種ひたち乙女は薔薇美人 (茶々) 1 ふうり、
26 亀の子の脱走癖の面白し (玉虫) 1 ヨヨ、
27 不機嫌な空地上には梅雨茸
28 ザーザーと洗車する夫半ズボン
29 若竹や母国知らずにパンダの子 (てつを) 1 ナチー、
30 夫偲ぶ友に鬼灯花数多 (森野) 1 圓人、
31 風過ぎて薔薇の香りやバスを待つ (尾花) 2 ◎水尾、
32 今もなほ動かぬ時計梅雨晴れ間 (えっちゃんあら) 1 ラガー、
33 庭中をわがもの顔に著莪咲けり (ヨシ) 2 ヨヨ、みにょ、
34 あれ食べてみたいと言ふの四葩かな
35 次の世は蝶に生れこよ火取り虫 (ナチーサン) 2 尾花、えっちゃ、
36 蔓草や絡みて高く五月雨
37 ひと月の健診終へて早苗道
38 母の日に贈る絵入りの感謝状 (ふうりん) 1 かをり、
39 烏飛ぶ宝珠のごとく枇杷咥え (アイビー) 2 茶々、てつを、
40 空梅雨や己が道行く三男坊 (圓人) 2 尾花、ナチー、
41 薔薇園の少女も婆もプリンセス (弥生) 2 ナチー、みにょ、
42 一晩に一寸を伸ぶ夏野菜 (にゃんこ) 2 かをり、圓人、
43 同志寄り閉ざす旧会梅雨走り
44 叱られし事忘れたる螢かな (玉虫) 5 ラガー、コビト、弥生、◎ヨシ、
45 凛と立ち藍艶やかや花菖蒲 (ちとせ) 2 茶々、みにょ、
46 カセットを交換した日ソーダ水 (コビトカバ) 3 ◎ダイア、玉虫、
47 活けられて高き品格百合匂う (ABCヒロ) 4 ラガー、ふうり、◎和談、
48 梅雨入りやダメライフなもレットイットビー
49 若者に習ひを問はれ青嵐
50 入梅が夫婦げんかの今日の題 (水尾) 2 ラガー、玉虫、
51 クレマチス咲いて老舗の若女将 (ヨシ) 5 尾花、ダイア、ナチー、弥生、アイビ、みにょ、
52 更衣先延ばしする老夫婦 (ナチーサン) 1 圓人、
53 合歓の花長電話して夫の愚痴 (えっちゃんあら) 2 てつを、ABC、
54 赤き花髪に浴衣の城下町 (尾花) 1 茶々、
55 山登る三度もこけてこりゃいかん
56 畦道は暮らしの道よ行々子 (森野) 7 ◎ちとせ、てつを、玉虫、圓人、ナチー、アイビ、
57 さくらんぼそわそわ妻のクラス会 (ふうりん) 1 森野、
58 田舎道蛙の合唱いま昔 (ヨヨ) 1 和談、
59 空海も見し海原の卯浪かな (アイビー) 4 ◎尾花、ヨヨ、水尾、
60 ほの蒼く街煙りゆく梅雨はじめ (弥生) 2 にゃん、かをり、
61 合唱終へ師の誉め言葉代田風
62 蚊遣火や老いを受け入れ然を生く (圓人) 2 ◎ナチー、
63 曇天の水面とろりと梅雨の入り (にゃんこ) 2 ◎コビト、
64 シルバーのアクセ選べば夏来る
65 夏やさい自助自立への老いの鍬 (和談) 3 茶々、ダイア、◎圓人、
66 蒼き葉に楚々と朱を置く花柘榴 (ちとせ) 3 ヨヨ、◎てつを、
67 尺取りや老の脳味噌掻き回す (玉虫) 1 コビト、
68 五月雨に軒下で丸く猫も待つ
69 推敲の末は昼寝の大鼾 (水尾) 6 にゃん、ラガー、玉虫、ふうり、ヨシ、アイビ、
70 果と吾の夢を包みて袋掛け (てつを) 5 ◎茶々、圓人、◎みにょ、
71 白南風や補助輪外しこはごはと
72 逃げだした蛸捕らへられ元の箱 (ヨシ) 1 にゃん、
73 青二才おのれの翳や桜桃忌 (ABCヒロ) 尾花、
74 朝ドラに犬見向きせず半夏雨
75 滴りて水子地蔵の貌濡らす (ナチーサン) 3 てつを、ABC、水尾、
76 五月雨に濁る事なし清水川 (ラガーシャツ) ふうり、
77 廃屋の庭に南天花こぼれ (森野) 2 ヨヨ、ヨシ、
78 学生の眩しき街や更衣 (ダイアナ) 3 ちとせ、コビト、ヨシ、
79 ドクダミや風雨に耐ゆる十字花 (ヨヨ) 4 茶々、ふうり、和談、ヨシ、
80 次々と我抜くシニア登山杖 (弥生) 1 コビト、
81 食欲は常に全開冷奴 (ふうりん) 2 和談、コビト、
82 いきさつを聞かむ古茶の葉開きけり (にゃんこ) 6 ダイア、てつを、かをり、圓人、ナチー、ABC、
83 ジャスミンの紅茶召しませ夏座敷 (アイビー) 3 茶々、ダイア、ふうり、
84 突然にめだかは向きを変へりをり (圓人) 2 えっちゃ、アイビ、
85 拾ひたる桑の実フッと吹きて食ぶ (玉虫) 2 弥生、ヨシ、
86 蛇口からじゃかじゃか水が立夏かな (ちとせ) 1 にゃん、
87 夏旅や卓球台は洒落た黒 (コビトカバ) 1 ラガー、
88 湯の町の路地は静もる夏隣り (和談) 3 ダイア、えっちゃ、ヨヨ、
89 短夜の夢の数々ただ悲し
90 緑蔭や洪鐘(おおがね)までのをとこ坂 (尾花) 3 かをり、玉虫、アイビ
91 あの頃のわれに逢ひたし夏柳
92 特売のチラシわんさか入梅前
93 鎮魂の碑を巡りゐる田植歌 (ナチーサン) 1 森野、
94 父の日にうな丼囲ひ絆かな (茶々) 1 和談、
95 気象図の斜め線引き梅雨に入る
96 海底に数多の遺骨沖縄忌 (ABCヒロ) 2 森野、コビト、
97 糖尿のぎりぎりライン走り梅雨
98 川に沿ひ沢蟹崖を上り下り
99 エルビスの曲の流るる五月かな
100 近づきてキミガヨランの葉がチクリ
101 高速路茅花流しの銀の波 (ダイアナ) 2 ちとせ、和談、
102 表札の擦れし名前姫女苑 (弥生) 1 尾花、
103 相撲道語るも楽し泥鰌鍋 (ラガーシャツ) 4 にゃん、玉虫、ABC、アイビ、
104 雨纏いここぞとばかり四葩起つ
105 梅雨寒のラジオ抑揚無きニュース (にゃんこ) 4 ABC、ヨシ、水尾、アイビ、
投句者はヨヨ、えっちゃんあら、ABCヒロ、ふうりん、森野、ヨシ、和談、ラガーシャツ、弥生、コビトカバ、にゃんこ、てつを、尾花、ダイアナ、ナチーサン、アイビー、ちとせ、玉虫、茶々、圓人、水尾の21名。ほかに選句参加・かをり、みにょん。
間違い等、不都合な点をご連絡下さい。
「今日の三択クイズ」が始まります。いつもアイビーさんの罠に引っかかって無念な思いをしています。お遊びだそうですので気楽に参加してください。束になってアイビーさんを降参させましょう。とても一筋縄では行きませんが。
1 ブルマー今は流行らず運動会
「ブルマー」、久しぶりに懐かしい言葉に出会いました。村民挙げての田舎の運動会でしたが足の速かった妹のブルマー姿の写真があります。いつかリバイバルされ再登場する時代が来るかも知れません。
4 小屋に積む牛の飼料や今年藁
コロナで外国から飼料が入らず酪農家は困っているそうです。一方、地球温暖化に牛のげっぷが一役買っているとか。(日本のメタンガス総量の17%、世界では4%)反芻する動物の4つの胃の中の細菌が問題とか。餌など対策は色々なされているようです。この句の場合はそんなことには無縁で今年も豊作、飼料も十分な長閑な田園風景が伺えます。半田でしょうか。それとも。
15 知恵の輪のなかなか解けず神迎
数独もそうですがなかなか解けません。私の孫のひとりは発達障害ですが数独が得意で難なく解きます。コツがあるんですね。それさえ会得してしまえばと思うんですが中々ね。下5はついに神頼みでしょうか。
57 織田方の伏せし乱波か草虱
上5中7で一気にたたみかけ圧倒されました。乱波は忍者など忍びのものですよね。季語の草虱がいいですね。今年に続き来年も時代劇が登場する大河ドラマ。鎌倉から江戸へ。「どうする家康」に期待しましょう。
70 素嬪の一日をままに木の実降る
スッピンは素顔(化粧無し)ですよね。晩秋のひと時を解放された作者。気ままに降る木の実に心を重ねた至福の時間。ごゆっくり。
88 べっとりと南瓜スープのおちょぼ口
南瓜スープですか。少しアツアツの。べっとりとした感触に思わずおちょぼ口に。お替わりといきますか。
71 木の葉髪鏡の中の幾山河 (胡桃さん) 2
木の葉髪の句がもう一句ありました。「この世に悔いも・・・」でした。いずれも人生の境遇を詠んだもので心に沁みました。この句は鏡の中に人生を凝縮、木の葉髪を媒介として。心象句として詠ませていただきました。
72 赤い糸何処へ繋がる秋の星 (ヨシさん) 3
赤い糸と言えば織姫と彦星。秋の宵、星を眺めながら作者は何に思いを馳せているのでしょうか。中七が意味深、人生の来し方、行く末でしょうか。それにしても赤い糸が気になりますね。
77 冬菊や英霊二十八柱 (アイビーさん) 1
柱は神、英霊を数えるときに沿える語とあります。私の故郷からも30人ほどが出征、英霊となりました。いとこもその一人です。海の見える高台の一角に整然と並んでいます。階位と氏名の側に18歳とあります。海軍でした。最後の日に沖合で別れを告げたそうです。正装の写真が残っています。冬菊が切ないです。
89 潮騒や松色変へぬ御用邸 (アイビーさん) 3
数年前に廃校になった母校の中学校は潮騒の中灯台の膝元にありました。背丈の低い松は並べて傾いています。松は終生色を替えないのでお目出度いとか。今真っ盛りの紅葉とは対比の存在です。御用邸を想像するうちについ故郷に思いを馳せていました。
90 降り頻る木の葉の中の女人堂 (胡桃さん) 4
71の句と読み合わせると何か相通づるものが感じられます。女人堂とは尼寺の事でしょうか。晩秋のひと時尼さんの法話を離れた人生の語らいが聞こえてくるような気がします。
91 染め尽くす紅葉天城を越えてなほ (森野さん) 5
今紅葉たけなわ、骨折のため自由の利かぬ身、袋田の滝(茨城県)、 黒部渓谷の紅葉などをネットで楽しんでいます。天城越えする紅葉、それでもなおと紅葉前線を実感している作者。「染め尽くす」の上五が力強いですね。元気の出る句です。
94 何故の長き祈りぞ霧の宮 (岩座神さん) 1
神秘的な霧の中の神社での祈り、性別、老若など想像をそそられます。が、最後は・・・作者自身かもとも。
11月句会の感想もほぼ出尽くしたようですので、12月句会が始まるまでの間、俳句三択クイズを始めましょうか。
明日27日から始めます。
ずっとアイビーが問題をつくってきましたが、皆さんも問題を考えませんか。正解のほかにダウトを二つ考えるのですがこれが存外楽しいのです。そのかわり人間は悪くなりますが。
大勢投手おめでとうございました。敵ながら天晴でした。素晴らしい記録でした。
本名・翁田大勢、登録名・大勢、新人ながら見事なストッパーで文句なしの新人王。わが中日ドラゴンズも何度か苦汁を飲まされました。新樹俳句会の鐵詠呟さんのお知り合いです。詠呟さんも当句会に投句されておられますが、ハンドルネームを私は知っていますが内緒です。詠呟さん、何はともあれおめでとうございます。
前々回から参加の悦ちゃんあらさん、同じくてつをさん、また12月句会から参加予定の神林亮さん、ようこそお越しくださいました。これからも末永くお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
簡単に投稿手順を説明します。
① タイトル下の左から2番目の「新規投稿」をクリックします。
② 書き込み画面になったら お名前(ハンドルネーム)、タイトル(例、投句します)、メッセージを書き入れて下さい。この3項目は必須です。その他の項目は必須ではありませんから無視して構いません。
③ 画面下の「投稿する」をクリックすれば完了です。
④ 事前にプレビューで確認もできます。
別の人の投稿に対し意見や感想があれば、「返信」をクリックすればできます。要領は上記を準用して下さい。
またこんなことを聞いてみたい、ここが分らないというようなことがありましたら、遠慮なくお尋ねください。
管理人のアイビーのわかる範囲で対応させていただきます。また多士済々の常連投稿者がいますから、お知恵を拝借できると思います。
今月は無点句、いい感じでした。
35 恍惚と蟷螂雌に喰はれゆく
精神的あるいは肉体的な苦痛に快楽を感じる・・・人間界の倒錯は虫たちには本能でしょう。
とても面白かったですが、恍惚が生臭いので 無機的して
夕晴れや蟷螂雌に喰はれゆく
36 爪切りて爪のさみしき山茶花
寂寥感はわかりますし、山茶花の子季語とかにして下五が落ち着けば、とてもいい句だとおもいます。
あと、さみしき山茶花、山茶花が寂しいのではないのです。爪のさみしさかなあ。
42 人間界もしたい放題泡立草
環境問題、主張のある句です。多分セイタカアワダチソウの方ですよね。
53 幹に触れ銀杏落葉を振り仰ぐ
座五がもったいないです。一斉に散り落ちた銀杏の葉のことですもの。
私も幹に触れて何か詠みたいです。
生意気書いてすみません。
無点句に名乗りを上げるのは私自身、全然臆するところはございません。
岩座神さん、アイビーさんのお二方には敬意を抱いております。
逆に高得点句、何故とらなかったのか、こんな恐ろしいコメントはできませんよ。
あくまでも私の好みとなるゆえ・・・
恍惚と食はれゆくの句はアイビーの句です。カマキリは交尾のあと雌が雄を食う習性があります。共食いです。一般に弱肉強食の自然界では、強者が弱者を急襲し、弱者は逃れようと必死の抵抗を試みます。襲うものと襲われるものと命を懸けた攻防があります。ところがカマキリは交尾の最中に交尾の相手に食われてしまうのです。この様子はユーチューブでも見ることができます。恍惚としたのは表現上の修辞ですが、少なくとも弱肉強食の苛烈さはありません。強いて言うなら「従容」でしょうか。どちらにせよグロテスクの謗りを免れませんが。
幹に触れ銀杏落葉を振り仰ぐ そうなんです へまでした 幹に触れ銀杏散れるを振り仰ぐ が動詞三つに散れるが怪しい
まあ銀杏落葉をから、を、を取って銀杏落葉(いちょうらくよう)とごねる方がよかったか 大体掴らずに見上げるとよろけてひっくり返るのを幹に触れなどというのがおこがましい 妻の肩持ちて見上ぐる銀杏散る これを動詞三つなどというのはよほど上品な人の話で現実はもっと厳しい 妻の肩を持った瞬間、手を振り払われるのだ そうして失敗を逞しく笑いに変えて生きていくのだ
突っ込まれるのも悪いことばかりじゃない 恥ずかしくて顔が赤くなって70年の時空を超えて紅顔の美少年に戻るのだ
これくらいでかをりさん許してくれる?
アイビーの感想 その2
8 ありたけの日差しを集め冬野菜 (てつをさん)
38 大根引くひねくれものも混ざりゐて (てつをさん)
両句とも前々回から参加されたてつをさんの句で、句意については全く説明の必要が無い。互選トップの木の葉髪の句もそうだが、とても分かり易く句の情景にすんなり入って行ける。難渋な言葉を使わないで気負わず、それでいて言葉の選択の一つ一つが的確だ。この作句態度は大いに見習いたいものだ。
24 甘辛く夫の好きな芋を煮る (蓉子さん)
中年以上の男性の味の好みは、大雑把に言っておふくろの味に言い尽くされる。中でも里芋と烏賊を甘辛く醤油で煮れば、あとは何もいらない。飯の菜に、酒の肴にとよくぞ男に生まれけるとなる次第。おふくろの味はとりもなおさず古女房の味でもある。男の味覚はすべからく保守的なのだ。
56 出番待つ畑の四隅の糠袋
農業にも家庭菜園にも不案内なアイビーは糠袋の意味が分からなかったのだが、ネットで調べた結果発酵させて肥料にするとのこと、ようやく得心した。実際に農業体験の豊富な作者ならではの実感がこもった句で好感が持てるのだが、季語が見当たらない。そこで、上五に別の季語を立て取り合わせの句にすることを提案したい。一案として 冬晴れや畑の四隅に糠袋
23 温め酒一献受くる割烹着 (胡桃さん)
文人墨客や俳人のたまり場だった「卯波」の女将で、自らも俳人だった鈴木真砂女を彷彿とさせる。71番の句もそうだが凛とした風姿のよい俳句が胡桃さんの句風と見た。
71 木の葉髪鏡の中の幾山河 (胡桃さん)
特にご婦人は毎日鏡を覗くから体調の一寸した変化にも敏感なのだろう。それだけに身だしなみには細心の注意を払う。ある日、鏡に映る吾が姿に元気のない木の葉髪を見つけた。一本の木の葉髪から来し方のあれこれに思いを巡らす作者。この間の時間の経過に思いを経せる馳せる時、感慨ひとしおのものがある。
81 二枚目の考の笑顔や落ち葉焚く (悦ちゃんあらさん)
考は亡くなった父。読みは同じちちである。亡くなったお父さんは、落葉の降り積もる庭を掃くのが日課だったのだろうか、笑顔を浮かべて庭を掃く温厚な父の日常を回想する作者。中七で切れ字「や」を使っているので、回想シーンとは別に、現実の世界で作者自身が落葉を掃いているとも読める。そう解釈した方が句に深みが出ると思うがどうだろう。二枚目は少し判りにくいので「ハンサム」ぐらいにしたい。
87 湯豆腐や老老介護てふ課題 (ABCヒロさん)
長寿社会は目出度いことながら、一方で老老介護という問題が表面化している。評論家のきれいごとでは済まない事例が、それこそ枚挙に遑が無いほどだ。深刻な内容をはらんでおり、重苦しい句になりかねないところ、季語に湯豆腐を持ってきたあたりが手練れの手腕だ。私自身、大変参考になる季語の斡旋だ。
83 石垣に固まって居る枯蟷螂 (ちとせさん)
「蟷螂の斧」という諺があるように、カマキリは弱いくせにめっぽう威勢がよい。斧をかざして威嚇するパフォーマンスが恰好の句材になる。俳人に人気のある所以だ。そんな蟷螂も秋から冬にかけて枯葉色に変色し、枯草そのものの擬態を装う。微動だにしない。それをちとせさんは「固まって居る」と言い留めたが、言い得て妙だ。本当に、秋のあの威勢は何処へ行ってしまったのか。
以下次号 不定期掲載