6月句会の互選結果を発表します。
6月のトップは6点を得たふうりんさんの「夏場所」の句でした。続いて8点句の弥生さんの「涼し」の句でした。
以下、6点句がダイアナさん、水尾さん、にゃんこさんの句が同点でした。
10点句 16 夏場所や母のベッドの背を起こし (ふうりん)
8点句 18 辻ひとつ入りて涼しき京の路地 (弥生)
7点句 56 畦道は暮らしの道よ行々子 (森野)
6点句 17 万緑や嬰赤くなり伸びをする (ダイアナ)
6点句 69 推敲の末は昼寝の大鼾 (水尾)
6点句 82 いきさつを聞かむ古茶の葉開きけり (にゃんこ)
個人別総合では、ふうりんさんと弥生さんが、ともに14点で並びました。
6月度みんなのネット俳句会互選結果一覧 ◎は特選、特選2点並選1点で計算。 令和7・6
1 ナイターの我がナガシマや永久 (玉虫) 3 ちとせ、◎えっちゃ、
2 群生を茅花流しや銀色に (和談) 2 ◎ヨヨ、
3 家飲みに麦酒生き生き冷えてゐる (コビトカバ) 1 弥生、
4 おはようと挨拶しそうアマリリス (ちとせ) 2 森野、てつを、
5 五月雨にあやめの紫紺煌めいて (茶々) 4 えっちゃ、ヨヨ、ふうり、みにょ、
6 梅雨寒や九人目となる理髪店
7 本が好き白詰草の野に飽きず (尾花) 2 えっちゃ、森野、
8 うつ病のうつ捨てるため山登る (ABCヒロ) 4 えっちゃ、ナチー、◎弥生、
9 若葉風けふもご機嫌古農機 (てつを) 5 ダイア、ちとせ、弥生、アイビ、水尾、
10 解体をぢつと待つ家夕薄暑 (ヨシ) 3 にゃん、弥生、水尾、
11 著莪咲きし一乗谷に置く思ひ (森野) 2 尾花、水尾、
12 茄子植うる妻の白髪の目に余り (ナチーサン) 1 和談、
13 半夏生最後尾っに来て米を待つ
14 草引くや屈む背中に青時雨 (ヨヨ) 2 ちとせ、和談、
15 白百合に埋め包まれし母眠る (ラガーシャツ) 1 みにょ、
16 夏場所や母のベッドの背を起こし (ふうりん) 10 茶々、◎ラガー、◎玉虫、圓人、森野、弥生、ABC、ヨシ、水尾、
17 万緑や嬰赤くなり伸びをする (ダイアナ) 6 かをり、玉虫、ふうり、ABC、◎アイビ、
18 辻ひとつ入りて涼しき京の路地 (弥生) 8 尾花、ダイア、にゃん、ちとせ、かをり、森野、コビト、ABC、
19 河骨の咲いて荒蕪の湿地かな (アイビー) 1 ちとせ、
20 夾竹桃白し聖職者の庭よ
21 病む父や遠くでニュース梅雨入りと
22 万緑や文武に長ず松代藩 (和談) 1 かをり、
23 梅雨寒やここも更地か古本屋 (水尾) 5 ◎森野、てつを、みにょ、アイビ、
24 何回も振り向く別れ夏の空 (コビトカバ) 4 ◎にゃん、えっちゃ、ラガー、
25 新品種ひたち乙女は薔薇美人 (茶々) 1 ふうり、
26 亀の子の脱走癖の面白し (玉虫) 1 ヨヨ、
27 不機嫌な空地上には梅雨茸
28 ザーザーと洗車する夫半ズボン
29 若竹や母国知らずにパンダの子 (てつを) 1 ナチー、
30 夫偲ぶ友に鬼灯花数多 (森野) 1 圓人、
31 風過ぎて薔薇の香りやバスを待つ (尾花) 2 ◎水尾、
32 今もなほ動かぬ時計梅雨晴れ間 (えっちゃんあら) 1 ラガー、
33 庭中をわがもの顔に著莪咲けり (ヨシ) 2 ヨヨ、みにょ、
34 あれ食べてみたいと言ふの四葩かな
35 次の世は蝶に生れこよ火取り虫 (ナチーサン) 2 尾花、えっちゃ、
36 蔓草や絡みて高く五月雨
37 ひと月の健診終へて早苗道
38 母の日に贈る絵入りの感謝状 (ふうりん) 1 かをり、
39 烏飛ぶ宝珠のごとく枇杷咥え (アイビー) 2 茶々、てつを、
40 空梅雨や己が道行く三男坊 (圓人) 2 尾花、ナチー、
41 薔薇園の少女も婆もプリンセス (弥生) 2 ナチー、みにょ、
42 一晩に一寸を伸ぶ夏野菜 (にゃんこ) 2 かをり、圓人、
43 同志寄り閉ざす旧会梅雨走り
44 叱られし事忘れたる螢かな (玉虫) 5 ラガー、コビト、弥生、◎ヨシ、
45 凛と立ち藍艶やかや花菖蒲 (ちとせ) 2 茶々、みにょ、
46 カセットを交換した日ソーダ水 (コビトカバ) 3 ◎ダイア、玉虫、
47 活けられて高き品格百合匂う (ABCヒロ) 4 ラガー、ふうり、◎和談、
48 梅雨入りやダメライフなもレットイットビー
49 若者に習ひを問はれ青嵐
50 入梅が夫婦げんかの今日の題 (水尾) 2 ラガー、玉虫、
51 クレマチス咲いて老舗の若女将 (ヨシ) 5 尾花、ダイア、ナチー、弥生、アイビ、みにょ、
52 更衣先延ばしする老夫婦 (ナチーサン) 1 圓人、
53 合歓の花長電話して夫の愚痴 (えっちゃんあら) 2 てつを、ABC、
54 赤き花髪に浴衣の城下町 (尾花) 1 茶々、
55 山登る三度もこけてこりゃいかん
56 畦道は暮らしの道よ行々子 (森野) 7 ◎ちとせ、てつを、玉虫、圓人、ナチー、アイビ、
57 さくらんぼそわそわ妻のクラス会 (ふうりん) 1 森野、
58 田舎道蛙の合唱いま昔 (ヨヨ) 1 和談、
59 空海も見し海原の卯浪かな (アイビー) 4 ◎尾花、ヨヨ、水尾、
60 ほの蒼く街煙りゆく梅雨はじめ (弥生) 2 にゃん、かをり、
61 合唱終へ師の誉め言葉代田風
62 蚊遣火や老いを受け入れ然を生く (圓人) 2 ◎ナチー、
63 曇天の水面とろりと梅雨の入り (にゃんこ) 2 ◎コビト、
64 シルバーのアクセ選べば夏来る
65 夏やさい自助自立への老いの鍬 (和談) 3 茶々、ダイア、◎圓人、
66 蒼き葉に楚々と朱を置く花柘榴 (ちとせ) 3 ヨヨ、◎てつを、
67 尺取りや老の脳味噌掻き回す (玉虫) 1 コビト、
68 五月雨に軒下で丸く猫も待つ
69 推敲の末は昼寝の大鼾 (水尾) 6 にゃん、ラガー、玉虫、ふうり、ヨシ、アイビ、
70 果と吾の夢を包みて袋掛け (てつを) 5 ◎茶々、圓人、◎みにょ、
71 白南風や補助輪外しこはごはと
72 逃げだした蛸捕らへられ元の箱 (ヨシ) 1 にゃん、
73 青二才おのれの翳や桜桃忌 (ABCヒロ) 尾花、
74 朝ドラに犬見向きせず半夏雨
75 滴りて水子地蔵の貌濡らす (ナチーサン) 3 てつを、ABC、水尾、
76 五月雨に濁る事なし清水川 (ラガーシャツ) ふうり、
77 廃屋の庭に南天花こぼれ (森野) 2 ヨヨ、ヨシ、
78 学生の眩しき街や更衣 (ダイアナ) 3 ちとせ、コビト、ヨシ、
79 ドクダミや風雨に耐ゆる十字花 (ヨヨ) 4 茶々、ふうり、和談、ヨシ、
80 次々と我抜くシニア登山杖 (弥生) 1 コビト、
81 食欲は常に全開冷奴 (ふうりん) 2 和談、コビト、
82 いきさつを聞かむ古茶の葉開きけり (にゃんこ) 6 ダイア、てつを、かをり、圓人、ナチー、ABC、
83 ジャスミンの紅茶召しませ夏座敷 (アイビー) 3 茶々、ダイア、ふうり、
84 突然にめだかは向きを変へりをり (圓人) 2 えっちゃ、アイビ、
85 拾ひたる桑の実フッと吹きて食ぶ (玉虫) 2 弥生、ヨシ、
86 蛇口からじゃかじゃか水が立夏かな (ちとせ) 1 にゃん、
87 夏旅や卓球台は洒落た黒 (コビトカバ) 1 ラガー、
88 湯の町の路地は静もる夏隣り (和談) 3 ダイア、えっちゃ、ヨヨ、
89 短夜の夢の数々ただ悲し
90 緑蔭や洪鐘(おおがね)までのをとこ坂 (尾花) 3 かをり、玉虫、アイビ
91 あの頃のわれに逢ひたし夏柳
92 特売のチラシわんさか入梅前
93 鎮魂の碑を巡りゐる田植歌 (ナチーサン) 1 森野、
94 父の日にうな丼囲ひ絆かな (茶々) 1 和談、
95 気象図の斜め線引き梅雨に入る
96 海底に数多の遺骨沖縄忌 (ABCヒロ) 2 森野、コビト、
97 糖尿のぎりぎりライン走り梅雨
98 川に沿ひ沢蟹崖を上り下り
99 エルビスの曲の流るる五月かな
100 近づきてキミガヨランの葉がチクリ
101 高速路茅花流しの銀の波 (ダイアナ) 2 ちとせ、和談、
102 表札の擦れし名前姫女苑 (弥生) 1 尾花、
103 相撲道語るも楽し泥鰌鍋 (ラガーシャツ) 4 にゃん、玉虫、ABC、アイビ、
104 雨纏いここぞとばかり四葩起つ
105 梅雨寒のラジオ抑揚無きニュース (にゃんこ) 4 ABC、ヨシ、水尾、アイビ、
投句者はヨヨ、えっちゃんあら、ABCヒロ、ふうりん、森野、ヨシ、和談、ラガーシャツ、弥生、コビトカバ、にゃんこ、てつを、尾花、ダイアナ、ナチーサン、アイビー、ちとせ、玉虫、茶々、圓人、水尾の21名。ほかに選句参加・かをり、みにょん。
間違い等、不都合な点をご連絡下さい。
2 北窓閉づ老の塒を調へり (ちとせさん) 1
中七に惹かれました。「老の塒」とは言いえて妙。私は寝る前に暖房を切ることにしていますが、まずは室温を整えること。
私の場合ベットでないので蒲団を延べること、風呂、食事は済ませたはず。後は何があるんだろう。独り寝の場合衣類は枕元
に、念のため懐中電灯も。老いの塒ってこんなもんでしょうか。昨日火事で母屋が丸焼けになった友人夫妻の見舞いに行ってき
ました。漏電だったとか。二人ともやけど程度で済みお元気でした。密集地なので類焼が無くホッとしたとのこと。風が無く
運が良かったとも。戸締りと火の元には十分気を付けましょう。お互いに。
9 下萌へを促すチェロの重低音 (菫さん) 4
この句、上五と下五のマッチングに惹かれました。いかにもありそうな因果関係。野外演奏会がイメージされました。心に響
く心地よい作品ですね。心が洗われました。
35 紀の字もつ父と呑みたる建国日 (かをりさん) 3
紀元節ですね。現在の建国記念の日。実は私もこの日に名古屋で生を受けています。大雪の日だったようです。お城の近くだっ
たので三才時に亡くなった考がその年が寅年と言うこともあり加藤清正に因んで正清と付けたそうです。お蔭であまり勇ましくあ
りません。ちなみに家康は寅年寅日寅刻生まれとか。「どうする家康」では、「兎」年を両親が数刻早め「寅」にしたとの描写が
ありましたね。この句、紀元節の一字を貰った父との一献。作者の祖父母はどのような気持ちで名付けたのでしょうか。今と違い
昔の紀元節は価値があったようです。
47 立春の光に濡れて鎖樋 (市原さん) 4
鎖樋が解らずネットで検索しました。いろいろあるんですね。金属製ですので輝いている様子が見えます。それも立春の光。
一瞬目がくらっとする美しさでしょうか。貴重な一瞬をとらえた佳句と思い戴きました。
69 狐火やいまよみがへる資本論 (てつをさん) 3
今、アメリカの若者を中心に経済論が議論されているようです。格差の増大に加え過度のインフレが原因のようです。このまま
ではいつ恐慌が勃発してもおかしくない状況、このことはノストラダムスの予言の中にも含まれているようです。我が国も蚊帳の
外視できないゆゆしき問題です。作者は狐火の季語を借りてこの怪しい気配を表現しています。多様性の闊歩する時代、資本主義
の有り方にも時代の波が押し寄せているようです。
◎90 日本を洗濯すべし菜の花忌 (アイビーさん) 3
菜の花忌は、こよなく菜の花を愛し長崎を作家の根拠地とした司馬遼太郎の忌日ですが「龍馬がゆく」など幕末の戦乱の
作家の印象が強いですね。でも、今朝の読売新聞朝刊愛知版に「岡崎城・大樹寺」の見出しで「覇王の家」が紹介され、その中
で 大河ドラマで渦中の徳川家康が主人公として描かれている本書にスポットを当てています。いずれにしてもこの作、日本の現状
を踏まえ「日本を洗濯すべし」と言い切る潔さに圧倒され迷わず特選に戴きました。司馬遼太郎顔負けの骨太の作品ですね。
拙句 日本を洗濯すべし菜の花忌 を取り上げていただき有難うございます。坂本竜馬は筆まめな人で故郷の姉の乙女さんにあてた手紙の中に「もう一度日本を洗濯いたすべく候」との文言があります。
8 所作美しき茶事の七則梅三分 (ウグイスさん) 8
ウグイスさんの自句自解で裏千家の「茶事の七則」たるものを知りました。茶の心を伝える所作ですね。ひとつひとつ納得いく
ものばかりです。しかも梅三分の下五が良いですね。迷わず戴きました。
アイビーの俳句鑑賞 その1
今月は二物取り合わせの句に見るべき句が多かったように思われる。一概に二物取り合わせ言っても、形態に千差万別があるように思う。ごく穏当に季語のイメージがそのまま句の骨格となるケースと季語のイメージと即かず離れずの距離感を保つケース、最後がいわゆる二物衝撃というもので、まるで関係なさそうな二物をぶつけて化学反応させる手法があるが、取り上げた6句はいずれも即かず離れず句と言えよう。
8 所作美しき茶事の七則梅三分 (ウグイスさん)
今回の最高点句。洗練の極みとして確立された茶事の七則と凛と咲く梅、しかも満開に咲かせるのではなく、敢えて三分に留めおいた絶妙の距離感を味わいたい。
22 薄氷や老母は孫の名を憶え (ふうりんさん)
66 薄氷や恋はいまだにオフライン (かをりさん)
何れも薄氷(うすらい)という難しい季語を持ってきた。両句ともこれが得も言われぬ効果を出している。両句とも季語+切れ字「や」で上五を切り、中七、座五を取り合わせているが、二物の間にある種の緊張感が漂っているのと私は感じた。それもこれも薄氷を季語に選択したことによる。
81 水仙や家に嫁ぐといふ覚悟 (ヨシさん)
水仙という植物は決して卑しい花ではないが、さりとて高嶺の花でもない。中七、座五の内容にまことに相応しい。この句の成功は「水仙」を見つけたことにあると言って過言ではないと私は思う。中七、座五が心象であるのに対し、季語の水仙ははっきり目で見えるから、具象と抽象の取り合わせも効果的だ。
87 ポケットにみすゞの詩集クロッカス (菫さん)
金子みすゞは26歳で夭折した詩人。文学的にも家庭的にも不遇で長く忘却されていたが、近年再評価された。
掲句はみすゞの詩集とクロッカスの取り合わせた。クロッカスの愛らしさと平易で親しみやすいみすゞの詩に通じるものがある。花言葉は青春で、夭折の詩人と相通じるものがある。
94 空セ貝手窪に並べ春隣 (ウグイスさん)
空セ貝はうつせがいと読む。虚貝とも表記するが、巻貝などで中身のない貝殻だけになったもの。砂浜で拾った空セ貝を手窪に並べてみる、別に意味のあることではないが、そこはかとなく海の香りがする。もうそこまで春が来ているのを実感する一時だ。
24 懐に子猫入れたる厨事 (玉虫さん)
この句は一物仕立ての句。猫俳句は茶々さんの専売特許かと思ったら玉虫さんからも出てきた。台所仕事をするのに子猫がまつわりついて来る、ままよと懐に入れる。微笑ましい猫馬鹿だ。子猫が春の季語で立派な俳句になった。ただ、「子猫入れたる」が重い感じがするので、「懐に子猫を入れて厨事」 と軽く流してはどうだろう。
92 中一に背丈抜かれし福は内 (ちとせさん)
一緒に暮らしていると子の成長はなかなか気がつかないものだが、特別の行事とか何かの折に並ぶと、つくづく成長したと実感させられる。節分の豆まきの時に一緒に並んでみて改めてその成長の早さに気づく作者。いつの間にか私の背丈を越えているではないか、頼もしく成長したものだとしばし感慨にふけるちとせさん。いきおい豆まきの声にも張りが出ようというものだ。
18 悪態をついて大根くれにけり (無点)
無点句になったのが信じられないくらい面白い句だ。大根をくれる間柄だからよほど親しい仲だろう。会えば悪態の限りを尽くすのも何時ものことだ。つまり、大根をくれるのも悪態をつくの親愛の表現なのだ。それほどまでに気のおけない二人の間柄が微笑ましい。
(以下次号、不定期掲載)
6 和紙透くる柔き光や春立ちぬ 8
二月に入り寒波が襲って来た。当地は比較的穏やかだが北国は大変だ。このこ
とは洋の東西を問わない。連日の戦火と寒波に怯える彼の国に思いが行く。振り返
えるとこちらは小春日和の一日。申し訳ない気持ちを抱きつつ恩恵に浸る日々。
36 顔料を摺り込み春を紡ぎ出す 1
これは画面を見ながらの作。顔料と言うことを初めて知った。染料との違いは溶
剤に解けないことらしい。この特性を使って粒々を繊維に絡み付けて色合いを出す
ようだ。お化粧と同じらしい。この場面梅だったと思うが思わず所作に見入った。
54 お刺身が具から食み出す恵方巻 1
多様性の時代を反映してか恵方巻にも変化が。具は七福神にちなんで七種類が基
本のようだが色々。内容もドライカレーやエビフライ、焼きそばまであり商業ベー
スがありあり。方角もあるようだがほとんどの人は無関心。末永い恵方巻の存在を
願いつつ。
74 雪吊や金沢城の海鼠壁 0
「海鼠壁は北陸地方の城や民家に用いられる古来からの工法で、特に防火性、
保温性、保湿性に優れている。主に四角形の平瓦を張り合わせその隙間を漆喰で
固めたものでその様が海鼠に似ているところから名づけられた。」とネットで知
った。雪吊が点在する金沢公園、その中に白亜の金沢城に張り付く海鼠壁(塀)、
その壁は厚く防御、攻撃用の工夫も凝らされていると言う。
86 降る雪や矢絣滲む京版画 0
ここ三か月ほど怪我で外出もままならずこの句も36の句同様テレビを鑑賞しなが
らの句である。この句はある京都の伝統木版画工房を取材したもので、江戸期の浮
世絵版画の版木発見やその後の京版画への取り組みなどが紹介されていた。矢絣は
破魔矢と同じ縁起物で、江戸時代嫁ぐ娘に「出戻らないように」との思いで持たせ
たとか。
※ やはり机上俳句は限界が。旨くまとめたつもりでも何か足りません。啓蟄の二月
をそろそろ卒業、外へ。虫や鳥に会いに行きます。
今回の好成績、おめでとうございます。早いようでも三か月かかったのですね。これからは吟行でもどこでも行かれるとのこと、なによりです。期待してます。
ウグイスさん、かをりさんから早速にメッセージをいただきありがとうございます。句会もさることながら、あとの意見交換も大事なことです。生意気なようですが、人様の俳句をただ漠然と感心してるだけでは句力は向上しないと、私は思います。具体的にどこがよかったのか、自分ならこう詠むとか、自分の言葉で整理してみることも貴重な作業ではないでしょうか。皆様からの積極的な書き込みを期待します。
アイビーさん、お纏め、お疲れさまでした。
ありがとうございます。
では拙く、選句の感想を。
75 空をみて空にもどれぬ犬ふぐり (ABCヒロ) 3 ◎かをり、ヨシ
俳句は詩を575の形式に収めたものだなあと改めて感じました。
対象の立場に立って詠む、擬人法のお手本の句であり、何よりその詩心に感動しました。
完成度とその独創性、もちろん特選でいただきました。
3 臥しいても立ちいても山燕来る(えっちゃんあら) 1 かをり
並列の「も」の正しい使い方が効いております。
「木曽路はすべて山の中」で始まる藤村の「夜明け前」冒頭を地で行く一句。
完成度が憎いなあ。
43 ゆるゆると動く四温の風見鶏(菫) 2 てつを、かをり
そのままゆるゆる暮れて行くような晩冬の一日を風見鶏に託されたのですね。
季語ともうひとつ句材があればこのようにシンプルに季節感に奥行きが出るのですね
67 けんけんぱ母は無心に牡蠣を剥く(市原) 2 玉虫、かをり
遊ぶ子と働く母の対比がいいですね。
遊びは子供の仕事です。別な所作、目的なれど、共通項に生き生きとしたリズムがある。
風景もばっちり目に浮かびます。
69 狐火やいまよみがへる資本論(てつを) 3 えっちゃんあら、ナチ―サン、かをり
百句あれば百花の賦、この句会ではぶっ飛びの句もいいですね。
マルクスだってハミングしながら、愛人宅でジャムを煮たかもしれない。私はこういう試みの句は好きです。
81 水仙や家に嫁ぐといふ覚悟(ヨシ) 6 ◎ウグイス、ABCヒロ、尾花、かをり、アイビー
未だに結婚式の招待状の主は親御様であります。
水仙という中性的な季語の斡旋でいただきました。楡家の人々、読了。
94 空セ貝手窪に並べ春隣(ウグイス) 1 かをり
海辺の早春の波音が聞こえてきませんか。
空セ貝、手窪、その和歌を思わせる手練の語彙に酔いました。私も勉強しなくては・・・
所作美しき茶事の七則梅三分 ◎尾花、◎ヨシ、ちとせ、えっちゃん、ナチ―サン、ふうりん
東海市の嚶鳴(おうめい)庵や西尾の近衛邸の茶室を訪れることがありますが、茶亭での亭主・客への所作はしきたりに則って粛々と進められます。
裏千家の四規は 和、敬、清、寂
七則は
茶は服のよきように点て
炭は湯の沸くように置き
夏は涼しく冬は温かに
花は野にあるように
刻限は早めに
降らずとも雨の用意
相客に心せよ
となっており、茶を点てて客をもてなす心構えを定めたものですが、客としても無作法を許されるものではなく、畳の縁を踏まないとか、出された菓子を一言もなく「むんず」と掴んで口に運ばないなどの最低限の作法は知っておくべきでしょう。
清楚な和服で茶を点てる亭主、その茶を客に運ぶ女性の所作をみることや、袱紗捌きには日本古来の侘び・寂びを感じるものです。尾花さん、ヨシさんから特選を頂き、四名の方から選を頂きまして感謝いたします。
2月句会は無事に終わり互選結果を発表したところですが、実はお一人の方が未選句でした。当初からスケジュールを立ておりましたもので、止むを得ず未選句のまま集計・発表をしました。句会は、投句と選句が一体となって初めて成立するものです。この度は、ついうっかりのことだと思いますが、今後はこのようなことの無いようお願いします。
2月句会のトップはお二人が同点で、8点でした。ナチ―サンさんの「春立ちぬ」の句とウグイスさんの「梅三分」の句でした。次いでヨシさんの「水仙」の句が6点で続きました。次が4点句でなんと9句が同点でした。
個人別総合では菫さんが13点でトップ、次いでウグイスさん、ヨシさんが12点で並びました。
8点句 和紙透くる柔き光や春立ちぬ (ナチ―サン)
8点句 所作美しき茶事の七則梅三分 (ウグイス)
6点句 水仙や家に嫁ぐといふ覚悟 (ヨシ)
2月度みんなのネット俳句会 互選結果一覧 ◎は特選、特選2点、並選1点で計算
1 どんどの火役終えダルマ舞い上がり (和談) 1 令淑、
2 北窓閉づ老の塒を調へり (ちとせ) 1 ナチ―サン、
3 臥しいても立ちいても山燕来る (えっちゃんあら) 1 かをり、
4 コート脱ぎさつと出す腕接種の日
5 歴史継ぐ新病院の初仕事
6 和紙透くる柔き光や春立ちぬ (ナチ―サン) 8 ◎ちとせ、えっちゃん、◎令淑、ふうりん、いちご、市原
7 春立つや春だ春ねと春を言ふ (玉虫) 1 いちご
8 所作美しき茶事の七則梅三分 (ウグイス) 8 ちとせ、えっちゃん、◎尾花、ナチ―サン、ふうりん、◎ヨシ
9 下萌へを促すチェロの重低音 (菫) 4 尾花、森野、ナチ―サン、ヨシ、
10 雪解風かくしに去年のルージュ触れ (かをり) 1 玉虫、
11 頃合いに次の熱燗運ばるる (ABCヒロ) 2 茶々、玉虫、
12 風向きの変はりどんどの火の粉来る (尾花) 1 ABCヒロ、
13 鬼よりも人恐ろしき追儺かな (アイビー) 2 ちとせ、ABCヒロ、
14 月ケ瀬や土産手に手に観梅行 (ヨシ) 1 茶々、
15 夫婦して続く寒波に老いの愚痴 (令淑) 1 和談
16 春立つや枝に緋を含(ふふ)み部屋ほのと (てつを) 2 ◎ふうりん、
17 福豆を撒けば愛猫福が寄る
18 一筋の煙と化して野火果てし (森野) 2 ウグイス、市原、
19 悪態をついて大根くれにけり
20 今はまだ力貯めよと冬木の芽 (ヨシ) 2 森野、和談
21 豆まきの投げは大きく声低し (いちご) 1 令淑、
22 薄氷や老母は孫の名を憶え (ふうりん) 1 ヨシ、
23 なかなかに引っ込みつかぬ冬将軍 (ABCヒロ) 2 えっちゃんあら、和談
24 懐に子猫入れたる厨事 (玉虫) 2 茶々、アイビー、
25 水仙や茎折れつつも雪に耐え (令淑) 1 和談
26 寒禽よここに群れしか椋大樹
27 坪庭に凛と一輪寒の梅 (和談) 4 ◎茶々、ふうりん、市原、
28 きりきりと二月の風に揉まれけり (菫) 4 ◎ABCヒロ、◎アイビー、
29 空っぽの箱につまづく春浅し (えっちゃんあら) 4 ウグイス、ちとせ、てつを、ヨシ、
30 リメイクの作務衣を纏ふ春隣 (尾花) 1 市原、
31 啓蟄や人盛りする百貨店
32 石灰を撒かれし鶏舎の春浅し (ウグイス) 1 ちとせ、
33 春浅き散歩約せし友の逝く (市原) 1 いちご
34 一斉に笛を合図に野火走る (森野) 3 ちとせ、尾花、てつを、
35 紀の字もつ父と呑みたる建国日 (かをり) 3 森野、ナチ―サン、アイビー、
36 顔料を摺り込み春を紡ぎ出す (ナチ―サン) 1 てつを、
37 雪国の友より電話雪見舞 (いちご) 1 えっちゃんあら、
38 松葉杖の鹿のオブジェやスキー場
39 番雑炊を少し焦がして夫の昼 (えっちゃんあら) 1 玉虫、
40 恵方巻精一杯の口を開け
41 三千里子猫探すや冬の月
42 雪降りて樹木の描く楕円の美 (和談) 4 ウグイス、令淑、◎いちご
43 ゆるゆると動く四温の風見鶏 (菫) 2 てつを、かをり、
44 スポンジに小皿泣かされ春厨 (ウグイス) 1 ヨシ、
45 初場所や意気地見せたる貴景勝
46 先々の日本見えねど菜の花忌 (ABCヒロ) 1 市原、
47 立春の光に濡れて鎖樋 (市原) 4 ウグイス、◎玉虫、ナチ―サン、
48 雪解や石炭殻を突き崩す
49 曠野より処女のごとくに蕗の薹
50 おりん打つ音も清けく寒の明 (ヨシ) 4 えっちゃんあら、尾花、和談、いちご、
51 藍染の空へ打ち出す鬼は外
52 福寿草土を盛り上げ五つ六つ
53 義母の味すなはち夫の納豆汁 (尾花) 2 玉虫、アイビー、
54 お刺身が具から食み出す恵方巻 (ナチ―サン) 1 茶々、
55 道々の雪にたはむる下校の子 (てつを) 4 ABCヒロ、◎和談、市原、
56 スキーの夜蒲団二枚に三人寝
57 三年振りスキー出来たよ筋肉痛
58 節分や揉みあう漢国府宮 (茶々) 1 ちとせ、
59 寒あやめ健気に咲くや雪の朝 (令淑) 1 和談
60 青空の入るアングル梅ふふむ (玉虫) 3 ABCヒロ、森野、令淑、
61 ママを守る鬼追ひかけて豆を撒く (尾花) 1 茶々、
62 寅さんを見送るさくら牡丹雪
63 つつがなく日の渡りゆく寒牡丹 (菫) 2 森野、令淑、
64 臍曲げて爺の足蹴る春炬燵 (ウグイス) 1 ヨシ、
65 初伊勢やおはらい町をと見かう見
66 薄氷や恋はいまだにオフライン (かをり) 2 ふうりん、アイビー、
67 けんけんぱ母は無心に牡蠣を剥く (市原) 2 玉虫、かをり、
68 菜の花を見ゆる丘より伊勢三河
69 狐火やいまよみがへる資本論 (てつを) 3 えっちゃんあら、ナチ―サン、かをり、
70 山寺や陽光淡く節分草 (和談) 2 茶々、尾花、
71 庭に差す朝一の日や寒あやめ
72 雪解けてルフィ一味を縄打てり (アイビー) 1 ウグイス
73 決められぬ本音を置いて二月尽 (えっちゃんあら) 4 ◎森野、◎てつを、
74 雪吊や金沢城の海鼠壁
75 空をみて空にもどれぬ犬ふぐり (ABCヒロ) 3 ◎かをり、ヨシ、
76 白葱のにゆつと飛び出て舌を焼く
77 寒むさむさ雪高速道さむ寒むさ
78 凪の海ごままきしごとかいつぶり (尾花) 1 てつを、
79 老いてなほ人の目集め濃紅梅 (森野) 1 令淑、
80 五十路なり出しては仕舞ふ春の服
81 水仙や家に嫁ぐといふ覚悟 (ヨシ) 6 ◎ウグイス、ABCヒロ、尾花、かをり、アイビー、
82 コロナ癒え味染みわたる七日粥 (ふうりん) 3 てつを、◎市原、
83 我お尻着膨れ嬉し若き日へ
84 猫膝に共に齧るや恵方巻
85 ぱつと吐く楮打つ手に息白し
86 降る雪や矢絣滲む京版画
87 ポケットにみすゞの詩集クロッカス (菫) 1 いちご、
88 儺やらひや度し難き者それは吾 (てつを) 2 ◎えっちゃんあら、
89 払いても払いても睡魔目借時 (ABCヒロ) 2 ふうりん、いちご、
90 日本を洗濯すべし菜の花忌 (アイビー) 3 ABCヒロ、◎ナチ―サン、
91 祖母のいぬ居間に祖父いて春浅し (えっちゃんあら) 1 ふうりん、
92 中一に背丈抜かれし福は内 (ちとせ) 2 玉虫、アイビー、
93 草の芽や四方見渡せる山の寺 (玉虫) 2 ウグイス、森野、
94 空セ貝手窪に並べ春隣 (ウグイス) 1 かをり、
95 針供養小瓶に入れる針と塩
投句者は、ウグイス、いちご、かをり、令淑、和談、尾花、ABCヒロ、えっちゃんあら、ふうりん、てつを、玉虫、森野、茶々、ナチ―サン、菫、アイビー、ちとせ、市原、ヨシ、以上の19名。
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2月句会は選句に入っていますが、本日13日の20時現在、まだお一人が未選句ですので本日の発表はありません。明日14日の正午を期して結果を発表することにします。