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編集・削除(編集済: 2025年01月02日 01:55)

空月 ~「くらげ」とお読みください~ 暗沢

周知のことを述べるなら
ぼくらの仰ぐ空一面には
無数のくらげが浮いている

まあ そう慌てるな。
なにも驚くには値しない
重吉だって歌っていたし
大岡や青鞋の試みを経た二十一世紀じゃ
目を瞠るほどの事でもない
(これは誠実な抒景なのだ)

近頃じゃ上空から降りてきて
伸ばした触手をぼくらの首に絡め付け
頭からバリバリ食うなどという
物騒な噂まで流布する始末 いやそれよりも
気を付けるべきは眺めるあまり
疎かになった足元で
躓き転ぶことなのだが

霜焼けの三寒四温 高さは尚も残る
冬空から白いものがちらつけば季節外れな
そんな上方からぼくらは見いだす

寒さのぶり返す時節だから まだかすかな陽に
ひとつ ふたつと凍てつく脚も紛れていよう
しかし既にぼくらの頬を濡らすぼた雪の粒よりも
プリズムを輝かす彼らのかさの方が
圧倒的に空を占めるのだ

小さく夥しいのは鳴りを潜めて
次に目に付くのは 朝方の月ほどのやつら
ところで小さいやつらの行方 その仔細は省こう
霞じゃ腹もかさも膨らむまい
空に餌は少ないものだ

残酷だろうか しかしそれらのかさは
真空の名残ある陽の照射を和らげるのに
みな立派な働きを果たすのだ その成果である
ぼんぼりの仄かさを帯びることに成功した日差しは
駘蕩という語の裡には あれらくらげたちの紛れていやしないかという
好奇心を惹起させずにはいられないのだ

やがて 太陽のより間近な折
仰ぎ見る空がぼくたちに一等間近な時節に
見出すに違いない 古い人びとが天蓋と称した穹状の大きさ
それは他ならぬ くらげのかさなのだ

くらげのかさが空から蓋をするのだ
甚大なゼラチンの裡の内側を造形する
微細を極めた襞の密集を目にして
人びとはしばしば 宏観異常の誤謬を犯す

天蓋より伸びる億千 幾兆
阿僧祇の脚は 悠々たるかさの廻転に随身する。
纏わる小分身たちは 海溝における紅海月の秘術である
自己複製の不死を 蒼穹の只中で採用している
無と有との垣根すらも取っ払った 無尽蔵の遊泳
無数のかさと脚とが 明月にて光沢を帯びる夜。
その起動と 円環運動に規則性を見出した先哲は
星座という標を開発したのだ


浮遊する 空月(くらげ)
仰ぐのは 人間(なまこ)

海の底 転がりつつ上で浮かぶ海月へ愚痴を吐く
ぼくら 管なるなまこだ
二本脚と高級な脳髄を付随させるも
詰まるところは管であるぼくらなのだ

空の下と海の上
素知らぬていは相変わらずで
遊泳するくらげを仰ぎながらなまこは
底を転がりつつ あぶくを吐く


※三点、引用元を付記します。
黒柳召波『憂きことを海月に語る海鼠かな』
八木重吉『夜の空のくらげ』
ころんば『.』

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塵箱の中  侑輝。

ツルを折った
カブトを折った
シュリケンだって、折ることができた
金色の折り紙は、大切な時に使おうと思った

金色のツルを折ることはなかった
金色のカブトなんて、きっとカッコよかったんだろう
金色のシュリケンはよく飛んだだろうに

後悔しているなら今折ればいい
なんて、そんな話じゃなくて

賞味期限切れの卵
それは高価だった

後で食べようとしていたら、いつの間にか賞味期限が切れていた
まだ食べられた
けど食べたくはなかった

卵は捨てた
では、欲は

抑えつけてなかったことにした欲
知らぬ間に忘れてしまっていた欲
あえてとっておいて、しまっていた欲

いつかどこかの孤独な夜に、それはあなたに刺さってくる

ツルもカブトも、シュリケンだって捨てた
金色の折り紙は、使わずに捨てた
大切な時に使うということは、使わずに捨てるということだった
そんな塵を大切にする必要などなかった

本当は塵になる前に大切にしなければならなかった

こんなに静かで孤独な夜に、そんな記憶が私に刺さる

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水無川様 評のお礼  侑輝。

ありがとうございます。
詩において、「何を書き、何を書かないか」という情報開示の問題には毎回悩まされています。「書かなければ伝わらない。しかし、書きすぎるのも品がないなぁ」と思いながら、書いていくのでしょう。

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ぼうし  じじいじじい

あさおきるとね
いえのまえにみえるやまが
オレンジのぼうしをかぶってるんだ
あおいそらにオレンジぼうし
なんてきれいなぼうしなんだろう

おひさまがやまのうえでおはようしながら
やまにオレンジぼうしをのせてくれる
やまのあたまがあったかいよね
ポカポカするね

ふゆのさむさにまけないね
いいないいなおひさまのぼうし
わたしもほしいな
おひさまのオレンジぼうし

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猫耳ヘッドホン  ふわり座

ここまで来るにはそれなりの努力があった
他人には分からないけどじしんは
どんなに膨らませても破れない風船のようだった
自信過剰ではない破りたいのなら
針でも持ってこいという事だ

成功者か?と聞かれたら思い切りNO!と答える
少し変わり者なあの子をまだゲットしていない
いつも猫耳ヘッドホンをつけてるあの子だ
ごく平凡な僕が変わり者なあの子を振り向かせる事など
土台無理な話だ しかもあの猫耳ヘッドホン
自分で作ったらしい 天才だ
やはり僕にはコンビニでアルバイトしてるくらいの
女の子がお似合いなのかも
可愛い子がいい
優しい子がいい
面白い子がいい
ない物ねだりで本末転倒
でも恋はまだ始まったばかり
猫耳のあの子をものにするチャンスがくるかもしれない
考えながら家路につく
そしてゆっくりドアを開けベッドに倒れこむ
猫耳のあの子をものにするため
恋愛アニメを観て勉強だ
どうやら変わり者なキャラは一生懸命で
ピュアな男に惹かれる傾向があるようだ
よし ぶつかってみるか そとの世界に飛び出そう
見つけた 猫耳は少し目立って街中に立っている
勇気を出せ 誘おう 「ねえ 少し歩きながら話しをしないか」
君は「いいよ」と言うと話し始めた
君はよく話す子のようだ 良かった会話を探して
口を開くのが苦手な僕にはお似合いだ
話しの終わりに「貴方にも猫耳 作ってあげるね」と言った
あれから何年経つだろう 君はもういない
この部屋にはいまでも猫耳ヘッドホンが輝いている
僕がこの世を去る時 棺にはこの猫耳ヘッドホンだけでいい

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粉々  江里川 丘砥

生きることに疲れた
ぼくはある時から
空を見はじめた
足元ばかり見ていることに
飽き飽きした

空ばかり見るようになった
雲の流れ
星の動き
風の通り道を眺めては
その風に飛ばされて
どこか遠いところへ行ってしまいたいと
願うようになった

なぜだろう
どこまで行こうとも
風には追いつけず
風に乗る術も知らず
自分を見失いつづけた

ある日 突風が吹き
足元からすくい上げられ
倒れたぼくは
とうとう
粉々に
砕けてしまった

風はぼくを
その場においていくだけだった
粉々になっても
風に舞い散ることはできず
元に戻ることもできず
雨に打たれ
雪が積もり
雪解け水が流れても
ぼくは
水に溶けることもできず
太陽に容赦なく灼かれ
新月の闇夜に覆われても
生まれ変わることもできず
粉々のまま
ただそこに在ることしか
できなかった

それでも
しばらくすれば
また突風が吹き
空に飛ばされると思っていた

けれども
いくつ季節が過ぎても
ぼくは
粉々のままだった
どんな冷気も
どんな灼熱も
ぼくを
凍らせることも
焼き尽くすこともできなかった

止まった時の中で
空を見上げる
雲の流れ
星の動き
風の通り道を
見つめながら
いまも粉々に砕けている

風に舞うだけでいい
空まで行けなくてもいいから
止まったぼくの時を
少しでも動かしてくれる
何かを願いながら
ぼくは
ただここに
在るだけの存在に
なってしまった

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水無川様 評のお礼  鯖詰缶太郎

初めまして、鯖詰です。
詩を読んでいただいてありがとうございます。
誤字、やってしまいました。
お恥ずかしいかぎりです。
気をつけます。
今後も投稿させていただきます。
次回もよろしくお願いいたします。

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評の御礼 大杉 司

島様へ
はじめまして!
この度は「ひたすらに歩く」をお読みいただきありがとうございます。
この詩は、笑い声や通過音はいつまでも続いていると言うことを普遍的に表そうと思って書きました。
また、自分自身の体験でもあります。
評価もありがとうございました。励みになります。

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島様 評へのお礼  山雀詩人

「雨」(2/5)に評をいただきましてありがとうございました。

「名作且つ代表作」とのこと、たいへんうれしく思います。
本詩、実話ではなく、想像上の話でして、
甘い とか、イージー などの評になるかもと危惧しておりましたので。
そうですね。書くべきは、偏頭痛とかそういう現実をこそ、かもしれませんね。

また投稿させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。

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水無川様 評の御礼  cofumi

水無川様、初めましてcofumiです。
この度は「流るる泪」への評をお忙しい中、誠にありがとうございました。
未熟な作品ばかりで申し訳ないと思いながらも、書く手は止めないようにしています。
でも、インプットが少し最近は不足してるのかもしれないとも思っています。

具体的な理由は、そうですね書いておりません。頭の中にはあるのですが、それを文字に落とし込むべきなのか迷いながらの結果となりました。
灯籠流しを調べていたら、ヒンドゥー教のことを偶然知りました。
おっしゃる通り、少しスピリチュアルな要素があるかもしれません。
思いを上手く表現できないのですが、伝えたい事が伝わった。そんな気がしながら評を読ませて頂きました。
ご丁寧な評に感謝いたします。
これからも宜しくお願い致します。

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