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月を見上げて死を想う
猫を抱き上げて死を願う
ほのかに香る心音に
土をかぶせては見ないふり
ふたばは出ずとも根は張りますので
いつしか重たくなりました
根腐ればかりが増えゆく一方
誰も気づきやしないのです
容易い笑顔のその下は
誰にも気づけやしないのです
海の水は冷たくて
どこまでも沈んで行けそうで
腕に突き刺さる長いツメ
身を捩り逃げようとする私の猫を
先に沈めてあげました
わたくしはいまだ生き下手で
無垢なオトばかり消していく
いつしか心は枯れました
いつかと夢見た蓮池で
いつしかおとはきえました
いつかとのぞむまでもなく
鳴き響く愛しい猫の声
私でさえも気づけなかった
ひとりぽっちの心音を
気づいてくれた猫の声
つんざくような ねこのこえ
月を見上げて死を願う
猫を抱き抱え死を望む
頬を伝うものは知らん振り
震えるうでには愛のあと
さあこれでもう引き返せない
腕の中の小さな命
消え果ててしまった愛しい命
星の川渡る口実に
私は猫を殺めました
野菜ジュースが血に見えて
吐き出してしまったところで
彼女はもうおしまいだと思う
彼女は海へ向かうことを決める
ありがちだなと口の端を歪める
でももう構わない
通俗だとかそうでないとか
そんな次元にはいない錯乱の中
彼女は海へ還るのである
漣の一つとなるまで
細かく解けて
彼女は大いなる循環に
身を置くのだ
彼女は10年落ちの
青い車へ乗り込み
エンジンをかける
流れていく車窓の中
彼女は彼女の生きたことを
振り返ったり見つめたりする
それに伴うはずの胸の痛みすら
もう彼女には訪れない
いくつかの愛と憎しみは
彼女が残せる数少ないものであるけど
それも波の満ち引きのように
誰かの心で
本当に時折顔を見せたり
2度とは見せなかったりするのである
尾を引く愛や憎しみで
誰かの中に生きていたいだろうか
彼女が生きた意味を
示す物は本当にないのだろうか
そんなことを秋の霧のような頭で考えている
それも全て
海へ還ればわかる
心の答えや魂の在りかも
全てわかる
罪を背負った猿の言い訳を
聞き飽きた地球が
まだ青い水をその体に
とどめているうちに
彼女は音もなく溶けてゆくことにする
さようならなんて言わない
ただ元に戻るだけなのだから
大いなる循環に
形を変えて
加わるだけなのだから
彼女は重たいドアを開け
潮風を浴びる
ここで孤独に錆びて行く
青い車を見る
そして彼女はこの星の誰よりも
丁寧に目を閉じた後
静かに海へ歩き出す
ソファーに寝転んで
終わらない夢を見る
梅雨が明けてすぐで
少ししっとりした地面に
自分を溶け込ませる夢
後頭部に当たる太陽が
私を後ろから責め立てる
土に被さる影が
私の眼前に差し迫る
終わらない夢を見てる
あの日の地面の水分と
罪悪感と共に
雨音様 感想とても嬉しく思います。
次からは声に出して振り返りたいと思います。
これからも感想よろしくお願いします。
良い作品ができるよう頑張ります。
有り難う御座います。
脳髄が
焼き切れる
赤く赤く
真っ赤に赤く
目眩
くらりと煙草の煙
盗み見るのだ濡れた唇
不意に差し出されたフィルターの
湿った感覚に肺が潰れる
あんたに向かうこの思いが
全部思い違いならまだ
ふざけてぶつけた肩と肩
いつも通り笑い合って
いつも通り消えろと呪った
赤く赤く
真っ赤に赤い
熱の行き場も
情の隠し方も
カレーライスが嫌い
いや本当は好きだけど
三日連続でもいいくらい好きだけど
でも嫌い
味じゃなくて
食べたあと
そう 嫌いなのは食後のお皿
べったりとよごれたあのお皿
パフェが嫌い
いや本当は大好きだけど
でも嫌い
そう 嫌いなのは食後のグラス
べったりとよごれたあのグラス
カレーやパフェだけじゃない
どんな料理も食べたあと
ねっとりと油やソース
こってりとたれやかす
残るのはよごれた食器
あれを見ると哀しくなる
泣きたいくらい侘しくなる
欲望果てたあとのベッド
そのシーツのしわを見るような
誰か作ってくれないか
絶対によごれないカレー皿
絶対によごれないパフェグラス
ついでに
絶対にしわのよらないシーツ
もできたらいいけど
まあそれはあとでいいから
だからまず
なによりもまず
よごれない食器をどうか
どうか発明お願いします
じゃなきゃ嫌いになっちゃうよ
カレーもパフェも
その他ほとんどすべての料理を
だってそうでしょ
だいたいよごれてるでしょ
食べたあと 欲望のあと
哀しくなるんだ あれを見ると
侘しくなるんだ 泣きたいくらい
生活という野暮な景色に
誰かモザイクをかけてくれ
日常という撮りっぱなしのムービーを
誰か編集しカットしてくれ
だってやっぱり好きなんだ
この味が
だから食べるよ
今夜も食べる
欲望には勝てないよ
三日目のカレーライスだ
では いただきます
うん おいしい
やっぱりうまい
でも早速もう
スプーンがよごれた
このバスはどこへ行くのですか? と聞かれて、はじめて私はバスに乗っていることを知り、私にも分かりませんと答えて、どうしてバスに乗っているのかも分からないのです、と吐き出したら、実はバスに乗っているのかどうかも分からずに聞いたのです、と更に上を行かれてしまい、バスではないのかもしれない、という新たな疑問が増える。周りを見ても、知り合いは誰もおらず、みんな一人らしいので、記憶にないだけで一人旅専門ツアーに参加したのかもしれない、と考えるようにしたのだけれど、そんなものに今まで参加したこともなく、ツアーだったら一人旅ではないだろうと、一人で話を拗らせ一人で笑う。何がおかしいのですか? と隣の人が聞くので、一人旅専門ツアーの話をしたら、あぁそれなら僕も考えましたと苦笑いするので、面白いと思って笑った自分が恥ずかしくなり、一緒に苦笑いする。何かに乗って揺られていることは分かるが、窓の外は暗闇で何も見えない。
戻って、お願い
お願いだから、戻って
耳に突き刺さる叫び声と、折れるのではないかと思うほどに握り締められた手の痛みで、私はベッドに横たわり機械に囲まれた私にするりと潜り込む。
久しぶりの旅行で水陸両用バスに乗り込み、あれは三途の川を渡る水陸両用バスだったのではないかと思いつき、一人頷く。誰に頷いているの? 叫び声をあげて手を握ってくれた女が声を掛けてくる。私は何も言わずにそっと手を重ねる。このバスはどこへ行くのですか? と聞いた隣の人はどうしたのだろう。私のように呼び戻されたのか、それともそのまま真っ暗闇に揺られて、光り輝くどこかへ消えたのか。お花畑の話は聞くけれど、水陸両用バスの話は聞いたことがないので、あれは単なる夢だったのかもしれない。遠い昔のように思えるが、わずか半年前の出来事である。
このバスはどこへ行くのですか? 手を重ねた女が私に聞くから、空いている左手で胸ポケットを探すが、チケットは見当たらない。いったい、私たちはどこへ行くのだろう。
きょうはつかれたな
がっこうのしゅくだいやりたくないな
あしたやろう
ママとのやくそくおてつだい
やりたくないなきょうはいいや
あしたやろう
「きょうはいいやあしたやろう」
きょうやらないの?つかれたから?
ママとのやくそくは?
めんどうくさいから?
あのねやくそくはまもらないとだめ
きょうやることはきょうだよ
「あしたやろうはばかやろう」だよ
「めんどうくさいはこころがくさい」だよ
じいじにしかられた
ごめんなさい
わたしはやくそくまもるこ
わたしはやることやるこ
もうがんばるこになるからね
こっちをみているの?
まどをふくてのいたずらくん?
ぺちゃんこにつぶしたへや
ほとんどつぶしたへや
なかはくねくねしている
なかはぼわぼわしている
ぼくよりすこし えらい きみ
どこをみているの
ちいさなてのきまじめちゃんは
ほんとは
なにもいらない と
いいたかった
ちいさなぐらぐらは
もう
とおくのこと
ようはないのに
ぜーんぶほしい って
せーのでさけぶ
雨音様、この度はお忙しい中ご批評ありがとうございました。
書いた本人としては気持ちを吐き出したのでスッキリしていましたが、少々押し付けがましい詩になってしまったことを反省しています。
タイトルを褒めていただきありがとうございます。癇癪は癇癪でも、もう少し咀嚼して言葉にしなければと思いました。
またよろしくお願いします。
ありがとうございました。