12月度みんなのネット俳句会・互選結果発表
12月句会のトップは10点を集めたダイアナさんの「冬うらら」の句でした。次いであんのんさんの「除夜の鐘」の句で、1点差の9点でした。以下、ABCヒロさんの「寒紅」の句が7点、弥生さんの「十二月」の句が6点と続きました。
10点句 42 診察は旅の話しや冬うらら (ダイアナ)
9点句 5 除夜の鐘こころざし秘す十八歳 (あんのん)
7点句 52 寒紅を引きて女は強くなる (ABCヒロ)
6点句 19 広告に溢れるおもちゃ十二月 (弥生)
個人別総合では、ダイアナさんが16点でトップでした。
12月度みんなのネット俳句会・互選結果発表 特選2点、並選1点で計算。
1 早咲きの山茶花一輪短冊に (みにょん) 2 ◎えっちゃ、
2 よろよろと歩む姿は狂ひ花
3 畝間では白き肌魅せおでん酒 (和談) 1 ヨヨ、
4 亜米利加は未だ銃社会開戦日 (ABCヒロ) 2 ◎ちとせ、
5 除夜の鐘こころざし秘す十八歳 (あんのん) 9 ダイア、◎尾花、◎ラガー、◎森野、ふうり、アイビ、
6 片手ずつ手袋外し手を繋ぐ (玉虫) 4 茶々、にゃん、かをり、コビト、
7 冬日射す水飲み台に小鳥の像
8 初雪や音なく過る鳥の影 (馬渡谷) 2 えっちゃ、アイビ、
9 人は人吾は吾だと冬将軍 (コビトカバ) 2 ラガー、えっちゃ、
10 ほどほどの二年連用日記買ふ (ナチーサン) 4 ◎ヨシ、◎みにょ、
11 雪催ひしいんと生きる村の知恵 (かをり) 2 ダイア、森野、
12 枯草を束ねて結ぶ通学路 (尾花) 2 ナチー、森野、
13 未来とは後のことぞ日記買ふ
14 大阿蘇の枯れて尾花の風となる (森野) 4 ナチー、馬渡谷、◎にゃん、
15 炬燵中先に籠るや熊よりも (ヨヨ) 1 和談、
16 県境を超えれば一面冬紅葉 (ふうりん) 1 ヨヨ、
17 炬燵猫寄せる寒気に薄目開け (茶々) 1 えっちゃ、
18 蜜柑食べ掌談義始まりぬ (ヨシ) 2 玉虫、かをり、
19 広告に溢れるおもちゃ十二月 (弥生) 6 ちとせ、馬渡谷、◎ABC、◎コビト、
20 掃いたあと掃いたあとへと落葉かな (アイビー) 5 ちとせ、和談、弥生、ABC、みにょ、
21 冬の朝烏らは鳴き芥を出す
22 一日を炬燵を出ては戻る猫 (にゃんこ) 1 茶々、
23 ポトフ煮る厨の外は虎落笛 (ダイアナ) 2 尾花、ふうり、
24 電線に音符の響く寒雀 (茶々) 1 ヨヨ、
25 暮れ際のポインセチアの並ぶ店 (みにょん) 1 弥生、
26 しがみつき耐えて残る葉落葉風
27 寒いよーJapanの家は地獄かな (ラガーシャツ) 1 ふうり、
28 パリパリと音する夜道聖夜ミサ
29 先生の前いきなりの大くさめ (ABCヒロ) 3 尾花、玉虫、にゃん、
30 白駒の根上がりに苔雪化粧
31 埋火やあいまいに生くこれよりは (あんのん) 5 ナチー、玉虫、森野、かをり、ヨシ、
32 年の瀬や歌姫昭和の歌を吐く (ナチーサン) 1 和談、
33 陸奥の湯宿初雪にして根雪 (馬渡谷) 1 てつを、
34 当主にて終ふ湯やどの冬構 (かをり) 3 ◎馬渡谷、アイビ、
35 早朝のバス凩と共に待つ (コビトカバ) 1 ダイア、
36 枕木も朽ちて廃線冬ざるる (森野) 5 ◎ダイア、ヨヨ、ABC、アイビ、
37 葉ぼたんや日時計我の腹時計 (尾花) 1 弥生、
38 最後には玉子で〆るおでんかな (ふうりん) 3 弥生、ラガー、ABC、
39 小春日やまたひとり来て畦談義 (てつを) 3 あんの、コビト、みにょ、
40 群と呼ぶ数には満たず鴨の池 (弥生) 2 あんの、にゃん、
41 池鏡もみじ葉映す東山
42 診察は旅の話しや冬うらら (ダイアナ) 10 ちとせ、ナチー、◎てつを、◎弥生、ラガー、にゃん、ヨシ、アイビ、
43 コンビニのおでんと言へど侮れず (アイビー) 1 てつを、
44 真夜中に猫の入り来る蒲団かな
45 雪降ればちちははの声雪積もり
46 突つつけば海鼠のつそり復元す (アイビー) 4 ちとせ、尾花、玉虫、馬渡谷、
47 貫けずとても虚子には初昔 (ラガーシャツ) 2 ◎かをり、
48 大根の皮は剥かぬと諭されて (玉虫) 1 えっちゃ、
49 苔庭の日暮れ寂しき冬紅葉 (みにょん) 2 ダイア、和談、
50 初冬の夜道へ誘う電飾衣
51 補助具付け杖つく人や冬日燦 (ちとせ) 2 馬渡谷、アイビ、
52 寒紅を引きて女は強くなる (ABCヒロ) 7 てつを、◎あんの、ラガー、コビト、ヨシ、アイビ、
53 暗闇を燃やす晦日の熱気かな (コビトカバ) 1 みにょ、
54 長生きのめでたきことと言ふ冬日
55 綿虫や逢うて語るも易からず (かをり) 4 ◎玉虫、あんの、コビト、
56 襖絵の虎の眼や山月忌 (馬渡谷) 2 ◎ナチー、
57 日当たりて鴨一列に堰の上 (てつを) 4 ヨヨ、茶々、かをり、ふうり、
58 屑籠に師走の芥放り込む (ナチーサン) 1 尾花、
59 佇めば風吹き抜ける松手入 (ヨヨ) 3 ◎和談、森野、
60 冬晴の天守見惚るる竜吐水
61 百均で探すあれこれ年用意 (弥生) 1 ABC、
62 枯蔦や異人屋敷の跡と聞く
63 電飾の街や二人のクリスマス
64 着物着て外つ国人も紅葉狩 (ふうりん) 3 茶々、ヨシ、みにょ、
65 寒烏逢引きですか見つめ合ふ
66 豆炭の埋れて赤き火鉢かな
67 父の癖思ひだして冬至柚湯 (えっちゃんあら) 1 アイビ、
68 足音に日々の疲れや年詰まる (ヨシ) 2 ◎ふうり、
69 吾子の名の縫い取りありぬ吾の手套 (ダイアナ) 4 てつを、◎茶々、あんの、
*投句者は森野、えっちゃんあら、ラガーシャツ、ABCヒロ、弥生、コビトカバ、馬渡谷、ヨヨ、ちとせ、和談、玉虫、あんのん、ナチーサン、ふうりん、尾花、アイビー、ヨシ、てつを、にゃんこ、みにょん、茶々、ダイアナ、かをりの23名。
*間違い、その他不都合な点をご連絡下さい。
喉ならす猫を膝にし日向ぼこ「アイビー主幹さんの修正案」
日向ぼこ猫のどならす心引く(茶々)
アイビー主幹さんの「紛らわしさを避けるための工夫が欲しい」との評価
作句の在り方の示唆をいただきました。俳句の論理性も念頭に置いてみたいと思います。ありがとうございました。
アイビーの俳句鑑賞の3と4に対し、ナチーサンさん、小苗さん、尾花さん、にゃんこさん、楽日さんからリプライをいただきました。感謝に堪えません。茶々さんから上巳節の故事を懇切に解説して頂きました。ありがとうございます。
アイビーの俳句鑑賞 その3
ふらここ揺れるゆう君は青が好き (にゃんこ)
ふらここはブランコのことで難しく言うと鞦韆。春の季語とされる。この句は「ふらここ」を使ったが、快活な句の調子からみて「ブランコ」でよかったように思う。「ゆう君」という固有名詞が登場させたのは新鮮な試みで、効果的だ。普通、固有名詞を出す場合、周知の有名人とか団体に限られよう。「隣家の鈴木さんの奥さん」では話にならない。この句の場合は固有名詞ではあるが、実質的には普通名詞の幼児と解釈できる。早い話、「ゆう君」であろうが「まあ君」であろうが句意は変わらない。
白衣から今日は私服の春コート (ヨシ)
年若いナースだが、少し違った角度から詠んだのが新鮮。私たちは、制服姿で忙しく立ち働く様子しか見ることはない。が、プライベートな部分も当然ある。何せ青春真っ盛りの彼女たち、人並みに夢見ることもあるに違いない。中七から坐五の、「今日は私服の春コート」が断然良い。「若々しい」と言わなくても、情景が目に浮かぶようだ。季語の力を最大限生かした。
上巳節(じょうしせつ)故事なぞりつつひな飾る (茶々)
不勉強で上巳節の故事を知らなかった。恥じ入るばかりだ。おじいさんと孫、曾孫かな、神妙に謂れを聞きながらお雛様を飾っている様が目に浮かぶ。今は難し過ぎて分からなくても、大人になった時、博学な祖父の思い出として、きっと懐かしく思い起こすに違いない。
春泥やいよいよ難きホ句の道 (てつを)
二物取り合わせの句。老練の作者でも「いよいよ難きホ句の道」と述懐する謙虚さ、春の泥道を行くがごときものしと私は解釈した。「春泥」は目で見える現象であるのに対し、中七以下のテーマは、抽象的な概念である。抽象に配するに、具体的な季語を持ってきたところが、いわゆる俳句の呼吸だろう。逆の場合も同様だ。
残雪や円空仏の鑿の跡 (ナチーサン)
この句も二物取り合わせの句。円空は生涯に12万もの仏像を彫ったと言われ、木肌をそのまま生かした円空仏の素朴な味わいで知られる。出生地は諸説あるが美濃と伝えられる。荒々しい鑿跡と残雪の取り合わせが、響きあうかどうかが、この俳句の生命線である。個人的な見解になるが、この句の取り合わせは悪くないと思う。
亀鳴くと補聴器つけたり外したり (小苗)
亀は鳴く動物ではないが、俳句の世界では鳴くのである。私などはアイデアに窮した時、亀を鳴かせる。その意味で俳人の作者は、亀の鳴き声を聞こうと思い、補聴器を外してみたりで忙しい。その様子をユーモラスに纏めた。私好みの俳句だが、選句の際には迷った挙句、外した。亀が鳴くのは、あくまで文芸上の虚構であり、実生活で補聴器をつけたり外したりするのは「悪ノリ」と思ったからである。リアリティが欠ける憾みがある。しかし、教訓もある。それは、「いかに窮しても安易に亀を鳴かせてはならない」ということだ。
以下次号、不定期掲載
小苗さん、亀の鳴き声は邪心があったら聞こえないそうです。嬰児のごとく無心の境地にならなければ聞こえません。私はいまだに亀の鳴き声を聞いたことはありません。俳句ではしょっちゅう亀を鳴かせてますが。
やっぱり、亀鳴くと補聴器つけたり外したり に戻します。
こんなん理屈通したらどもならん。
おい、この亀鳴きよるで。 ほんまかい補聴器ぼろやからなあ。あほかこんなん補聴器で聞いてどうすんねん、第六感で聞かんかい。そらせや、外したろ。と他愛なくぼけている感じ。
ふらここ揺れるゆう君は青が好き
拙句を鑑賞していただき、ありがとうございます。
固有名詞や七五五のリズムを使って少しチャレンジした句でした。
「ふらここ」のひらがな表記や音の柔らかさに、幼い子の可愛らしさが表現できるかな、と思っての選択でしたが…。
「天の声にも変な声がありますね」と宣った昭和時代の総理大臣がいました。ま、それはそれとして、天の声が聞こえたら是非お聞かせ下さい。
それと「亀鳴くや補聴器つけたり外したり」 に直されたようで私もその方が良いと思います。上五で切れば、「亀鳴く」と一応、補聴器は別のテーマになりますから。
亀鳴くや補聴器つけたり外したり に直します。
仙人はあっちこっち自在に行き来できるし亀の鳴くのも聞けるけど不自由もあるのだ。
そのうち天の声が聞こえたらそっとお教えしましょう
残雪や円空仏の鑿の跡 (ナチーサン)
鑑賞に取り上げていただき有り難うございました。先日テレビで円空の特集を見ていまして触発されました。円空仏の見かけの荒々しさとその奥に秘められた精神性の奥深さが作品から垣間見えるからです。一方この句の場合、
ご指摘の季語の斡旋に苦渋致しました。おっしゃる通り句の生命線、残雪としましたが二者が響き合う、即かず離れずの関係を考え直す機会を頂き感謝です。何かある筈。
「上巳節」の句の背景その2 上巳の節句は「じょうしのせっく」と読まれ、中国の陰陽五行説が由来です。3月3日は3(奇数)と3(奇数)を掛けると偶数になるため、この日が上巳の節句とされ、邪気祓いの式日となりました。
穢れの祓いに使う人形は天児(あまがつ)・這子(ほうこ)と呼び、平安時代の飾ったり遊んだりする人形は「ひひな(ひいな)」と呼ばれ、季節に関係なく貴族の女児たちが今でいうお人形遊びをしていた。
小生の「上巳節」の句のご鑑賞ありがとうございました。アイビー主幹さんは大変謙虚に(何も知らなかった)とおっしゃっておられ、感銘いたしました。小生の句は付け焼刃です。借りものです。自分のためにも調べた結果を今後の参考に記しておきたいと思います。紙面の都合もありますでしょうから,3,4回に分けて書きます。
その1 上巳(じょうし、じょうみ)とは、五節句の一つ、3月3日。「上巳」は上旬の巳の日の意味であり,元々は3月上旬の巳の日であったが、古来中国の三国時代の魏より3月3日に行われるようになったといわれている。(古代中国300年頃では、上巳は忌む:不吉なものとして避ける。
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アイビーの俳句鑑賞 その4
惜しくも無点となった句にも捨てがたい魅力を持つ句もある。ちょっと手を加えるだけで見違えるような句になることもある。無点句のどこを直せばよいのか一緒に考えてみたい。
耕や肥料とひかり鋤き込みて
耕(たがやし)、あるいは耕すは春の季語だが、肥料を鋤き込むのは当たり前であるから、「ひかり」の方に焦点を絞ってはどうだろう。
耕や今年のひかり鋤き込みて
名を知りて綿毛を頬に母子草
描写が細かすぎて、一番言いたいことが舌足らずになってしまった。ここはザクっとした表現でまとめてみたい。
名を聞いていよよ愛ほし母子草
鮨屋では我儘言ふて春の宵
誰が鮨屋で我儘を言ったのか、恋人か、奥さん(ご主人)なのか、はたまた娘さんなのか、読み手が一番知りたいことが分からない。ここでは分からないままということにする。
我儘を鮨屋に聞かれ春の宵
啓蟄や遅刻常習犯の朝
遅刻常習者と啓蟄は悪くない取り合わせだが入点がなかった。読み手の側に、今一つピンと来なかったのかも知れない。 アイビーもいろいろ考えたが、あまり変わり映えがしないか。
啓蟄や遅刻の朝の言い訳けに
耳固し空真青なり椿赤
上五の「耳固し」の意味が分かりにくいが、それ以前に三段切れである。句にとりとめがなくなってしまい、俳句の禁忌とされる。三段切れの解消のために。
真青なる空に椿の花紅し
淡き絞り明日の句会の春袷
春袷にかかる言葉が「淡き絞り」であるはずなのに、「明日の句会」が途中に挟まって混乱した。こういう場合は語順を変えればスッキリ行くことが多い。
句会には淡き絞りの春袷
日向ぼこ猫のどならす心引く
日向ぼこをするのは人間に限る。結果的に猫と一緒にするかもしれないが、猫は日向ぼこをしているつもりはない。ただ暖かいからそこにいるに過ぎない。掲句の場合、その点がやや曖昧だ。紛らわしさを避けるための工夫が欲しい。
喉ならす猫を膝にし日向ぼこ
関税の言の葉沁みる春雨や
トランプ大統領の言動が背景にある。座五に切れ字「や」を持ってくるのは、前例もあるにはあるが句の座りが悪く賛成できない。季語の春雨はもっと良い季語がありそうだ。
関税を武器に暴言春疾風
喧嘩して仲直りして春炬燵
姉妹(兄弟)が、炬燵に入ると愚にもつかない喧嘩ばかりしている。といっても姉妹だからすぐ仲直りする。あくまで子どもの世界のことだが、表現の方法に少し変化があれば…と思う。それと、子どもという言葉を使わずに子どもを表現したい。
喧嘩にも飽きればゲーム春炬燵
アイビーの俳句鑑賞:完
アイビーさん
「耕や~」の句は尾花です。鑑賞をありがとうございました。
ひかり鋤き込む、というフレーズが気に入ってたんですが少し足りないので、肥料を入れて失敗でした。全く響かなくなり推敲不足ですね。「~今年のひかり鋤き込みて」これとてもいいです!
耕している畑にきらきら輝きが見えますし、耕す人の楽しそうな様子も見えます。
ありがとうございました。
二句を鑑賞していただきありがとうございました
耳固し
の句は耳は聞こえずとも空の青さと椿の赤の美しさを愛でていることを表現したかったのですが自分でもどうしていいのかわからず今回直していただいてとても感動しています
また 名を知りて
の句も同様になかなか言いたいことを表現出来ず苦労した句です
とても勉強になりました
ありがとうございました
アイビーさん
古雛の箱に書かれし祖父の愛
の鑑賞ありがとうございます
私の本当に拙い俳句に感想やコメントをいただくととても嬉しくまた勉強になります
またネット俳句会の皆さんの
日常の出来事や心情をさらっと切り取って投稿されているのを拝見するといつも自信を無くしますが
なんとか俳句の楽しさを味わいたいと思っています
ありがとうございました
ご謙遜でしょう。でなければ8点の支持は集まりません。このネット俳句は特定の俳句結社の系列下でもなんでもありません。従って「俳句とはこうでなければならない」という理念が、ありません。ただ俳句同好者が、皆でわいわいがやがやしているに過ぎません。だから、入会、退会、再入会すべて自由です。誰が宗匠で誰が弟子ということもありません。だから気軽に楽しく参加して下さい。知らず知らずに、俳句の腕が上がれば儲けものぐらいでお願いします。
アイビーの俳句鑑賞 その2
甲斐駒の稜線嶮し雪解光 (ちとせ)
大景を詠んだ句。甲斐駒ヶ岳は南アルプスの主峰で標高2976m。長野県と山梨県の県境にあり、山容の嶮しいことで知られる。季語の解釈が難しいが、「雪解晴」、「雪解風」ではなく「雪解光」の意味を味わいたい。春になって陽光が燦燦と降り注ぐイメージか。いずれにせよ、「雪解光」という季語を持ってきて成功した。稜線の嶮しさと「雪解光」の対照が見事。
春の陽を落とし込んだの吾のネイル (コビトカバ)
人間のしゃべる言葉をそのまま、しかも女性の言葉で575にした。口語100パーセントの俳句が新鮮だ。何と言っても「春の陽を落とし込んだ」の形容が素晴らしい。強いて瑕疵と言えば、坐五に文語の匂いがする「吾(あ)」を使ったのは惜しい気がする。口語に揃えたい気もする。
ポン・チーと老老男女山笑ふ (尾花)
最近、麻雀がブームと聞く。ただし、昔の煙草の煙もうもうとか、徹マンの不健康のイメージから一変している。主にシニア世代がボケ防止のためにやるものだとか。勿論、賭け麻雀とは無縁だ。「老若男女」をもじって「老老男女」としたのが可笑しい。麻雀という言葉が出てこないが「ポン・チー」という効果音で分からせたところが流石。季語の斡旋も適切だ。
春雨や近況友とパスタ店 (ダイアナ)
女性は男性に比べコミニユケーション能力が発達している。私の妻なども「誰某さんとランチに行く」とか言って、いそいそと出かける。近況報告と言うが、おしゃべりすること自体も楽しいのだろう。その所為もあって巷の情報は私よりよほど豊富だ。そんな女性の日常の一コマを過不足なく描写したのがこの句。季語の春雨が抜群に上手い。ただ、春雨、友、近況報告、パスタの店と、一句の中に全部詰め込むのは無理があるように思うのだが…。
見交はせば鶯餅の粉の口 (玉虫)
鶯餅の季節になった。季節の菓子だが、粉が口の周りにつくのが困るといえば困る。お互い顔を見合わせてどっと笑いあう、そんな和やかな情景が目に浮かぶ。鶯餅を句材にした句は多いが、食べた後の家族のリアクションに焦点を絞ったところが作者のお手柄だ。強いて言えば、上五の言い回しが若干言いにくい点が難点。「笑ひあふ」ぐらいでどうだろう。
古雛の箱に書かれし祖父の愛 (楽日)
初孫のために奮発してお雛様を購入した祖父、箱に祖父の筆跡で由来書きがしてある。祖父たるもの、孫は無条件に可愛いものだ。達筆な祖父の筆跡を見るたびに孫煩悩が偲ばれる。ところで、実際の肉親を句材にすると人称、続き柄が混乱することがままある。孫からしたら祖父でも、その父親である作者からすれば父、あるいは義父である。立場によって呼称が変わるので、作句上の配慮が望まれる。
妻の物一枚羽織る春の風邪 (ふうりん)
風邪と言っても冬の風邪と春風邪とがある。場合によっては、さほど重篤ではないものの夏風邪もある。一番重篤なのは冬季の風邪で、流感ともなると隔離だの、学級閉鎖だの大事になる。そこへ行くと春風邪はいくらか軽い。その軽さを「軽い」とは言わず、「妻の物一枚羽織る」と表現した。このあたり、堂に入った詠みっぷりだ。
以下次号、不定期掲載
重ね重ね・・・
ありがとうございます。
恥ずかしいので今日一日は大人しくしておきます。
玉虫さん、早速のご採用ありがとうございます。他事ながら旧かななら「笑ひあふ」、新かななら「笑いあう」となります。
笑いあふ!!
頂きます!
始から
粉は付いてるんだから
笑いあふ鶯餅の粉の口・・・ありがとうございました!
コビトカバさん、ダイアナさんリプライありがとうございます。アイビーが勝手なことを言ってるに過ぎない駄文ですのであまり気にしないで下さい。あくまで個人的なな感想ですから、同感なら取り、反対なら無視して下さい。
アイビーさん、パスタ店の句を鑑賞して頂ありがとうございます😃詰めすぎはいつもやってしまいます。一番言いたい事に焦点を絞るよう心掛けます😃🙏
アイビーさん鑑賞ありがとうございます!
確かに吾を使わずに揃えた方が良かったですね(><)
もっと良い句になるよう、形容部分を活かし再考します!
今日は息子の小学校の卒業式で、式の後そのまま句会に向かいました。
隼(息子の俳号)がアイビーさんは今日いないの?と気にしていました。
先生からお祝いの句を頂き、母としても(父も)感無量の卒業となりました。
俳句に出会えて、色々な年代の方とお話し出来るようになり、私の人生は明らかに豊かになりました。
今後も楽しく俳句続けていきたいと思います^_^
隼君、卒業おめでとうございます。堂々たる披講ぶり、すでに俳人の風格があります。