Q
小学校6年生の男子、長男。学校の宿題などやるべきことをさっさとしません。このままの様子では将来不安です。めんどくさがりで何でもいい加減で済ませてしまうんです。しかし反面、やさしく感性が豊かなので、そういうところを活かした育て方を教えてください。
A
あのねー、わかんなんですよ。小学校6年生のときに宿題をさっさとしないというのが、一生いろんなことをさっさとしないかどうかということかわかんなくて、あることはさっさとするかもしれないです。例えば、朝全然起きてこなくて学校へなかなか行きたがらない子が、このごろ釣りに凝って、友だちが誘いに来たら、午前4時でも起きて行くということがあるわけです。学校の宿題はイヤだからしないけど、そのうち好きなことが見つかったら、それはさっさとするかもしれない。だから嫌いなことでもさっさと済ませるというのが良いことかどうか必ずしもわからないという気がちょっとします。これピンとくるかどうかわからないんですけど、医者をやっていると健康保険の請求をしないといけないんですよ、毎月。健康保険のカルテに病名を書くんです。この病名はだいたい嘘なんですよ。やった検査とか出したお薬に合う病名をあとからつけるわけ。ほんとの病名をつけると、いらんお薬とかいらん検査とか出しているから、削られるんです。削られるといけないからあとで病名をつけるんですが、大学病院に勤めていると、若い医者にこの病名つけの義務が回ってくるんです。毎月の新患者さんたちの病名つけをやらされるんです。2000人とか3000人とかの見たこともない患者さんのカルテを見て、「この薬だったらこれ通るね」と、いい加減な病名をつけるんです。この仕事嫌いでねえ、「どうしようかねえ」と思って考えたんです。できるだけグズグズやって、「先生、まだですか?」「すまん。もうすぐやるからね」と言って、やらないというのをやっていると、きっと月末になって、怒った上司が「しょうがないな」と言いながらやるだろうと思ってたらそのとおりになって、「すみません、忙しくて。来月はきっとやりますから」と言ってやらないで、2年間大学の研究室でほとんど逃げ回って、最後かなり膨大な量を残して辞めてしまったんです。きっと誰かやったんでしょうね。それで生きていけますから、大丈夫ですよ。
Q
私の妻は私が異性と話をしたりするのをとてもイヤがります。例えば、仕事関係の電話があって話をしたりするのもとても気にします。私を信頼してほしいのですが、どうしたらよろしいでしょうか?
A
うーん。奥さんを愛さないとしょうがないんですけど、私はもしもこんな女性と一緒に暮らすとしたら、「嫉妬というのはわりと子どもっぽい行動だよね。恥ずかしいんだよね、嫉妬って」という話をして、ちょっと嫉妬しにくいようにしておきますけど。わからん。
Q
自分にとって大変だなと思う仕事があると、そのときまで不安でたまらず、最悪の場合のことばっかり考え、最悪の事態になったらこう行動しようと、そこまで考えたら落ち着きます。もっと気楽に考える方法を教えてください。
A
僕もこう考えますから、わかりません。直し方はわかりません。僕も最悪の場合を考えるのが凄い好きなんですよ。「こうなったらどうしよう。ああなったらどうしよう」を凄い楽しむんです。インディー・ジョーンズみたいなんです。無茶苦茶なことを考えるんです。凄い安心するんです。最終的にこれしか起こらないのかと思うんです。だから必要なんじゃない。
Q
小学校5年生の男子。書き順を間違える字がたくさんあります。特に平仮名や簡単な漢字の書き順が違うのが気になります。間違えて覚え込んだ書き順を直す良い方法を教えてください。
A
「目標の一致」といって、子どもが「直したい」と思ってくれれば直せます。「直したい」とまだ思ってなければ直せません。だから訊きます。「私はあなたの字の書き方を見てるとそれは間違っていて、世の中では普通そんなふうには書かないと思いますが、あなたは書き順を直したいと思いますか、しばらくこのままでいきたいと思いますか?」と訊きます。「しばらくこのままでいきたいと思います」と言ったら、「そうですか」と言うんですよ。それからふた月ほどして、「まだ書き順を間違えていますが、直したいと思いますか、直したくないと思いますか?」と訊くんです。「直したくない」と言ったら、「そうですか、じゃあしばらくそのままでいってください」と言うんです。子どもが「直したい」と言ったら、それでは直してもらおうと、こういう手続きです。これがアドラー心理学の良いところなんですよ。こっちが善悪を判断して「こうしなさい、ああしなさい」と言うんじゃなくて、「それ良くないと思うけど、あんたどうする?」と訊いて、子どもも「そう。それ良くないと思う」と言って初めて協力するという手続きです。
Q
ひとり暮らしを始めた息子が気になります。怪我したりしている様子だし、電話しても来ません。たまに帰ってきても、「向こうのほうが住みよい」と言うんです。これは子育ての成功と言えるんでしょうか?(成功です。成功です。)見守るというのは難しいもので、「ああすればよかった」と言いながら見ているという感じです。
A
うちも娘が1人なんか小田原へ消えていったまま消息を絶って5か月です。その前、手紙出して「生きてるか?」と聞いたら、「生きてるよ」と返事が来ましたから、いいんですよ、それが子育ての成功だから。親なしで暮らせるようになったら。いいかげん男でもくわえこみゃいいのにまだくわえこんでいないようだし。