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心の奥底に閉まっていた日記
ふと読み返してみる
あの頃の想い出が鮮明に蘇る
甘くてほろ苦い想い出
あの時があったから
今がいいと思える
ベンチに座って隣を眺めると
大切な貴方が
私に笑顔を向けているから
その笑顔だけで他に何もいらない
これからもこうしていられたらいいな
心の中の日記書き続けよう
暖かく心地いい陽射しを浴びながら
まったりと午後の一時を過ごしている
おはようございます。上田です。
上席佳作との評価、大変嬉しく、またこの作品を細部まで丁寧に読んで下さったこと、詩作冥利につきると感謝しております。
ご指摘のとおり本作はあるバランスの上に成り立っています。そこらは非常に意識いたしましたし、注意もし、逡巡も致しました。ただ私としては心を突き動かされるものがありまして、ペンを運んだ次第です。
今般、このような評価を頂いたということは詩作として成功だったと理解しております。また、新たな作品を書いて行きたいと思います。ご一読下されば幸甚に存じます。
お先に失礼致します。
1 理蝶さん 「祈りの風船」 1/26
ファンタジー的な隠喩がよく効いていて好感が持てます。趣向としては絵馬や七夕の風船版といったところでしょうか。とても伝わりやすく納得できるものです。「空に蓋」「空の底」―こういった表現もよく考えられ、気が利いていますね。妨げられたり解放され叶えられたり、そのあたりの社会模様というか人生模様もしっかり描かれて、これで必要充分な感じがします。そして、この詩、意外と美しい情景が浮かんでくるのです。それも冒頭に書いたファンタジー性と溶け合うかのようです。最後のオチ的な部分はちょっと切ない。どうしてこういう方向になったか、インタビューしたい気がしますね。それだけインパクトあるということです。
仕合わせは他者に譲って、と解しましょうか。
発想や場面描写はシンプルですが、まとまって、良く書けていると思います。印象に残る一作です。佳作を。
2 上田一眞さん 「うつからの帰還」 1/27
半生の詩、自伝詩。壮大です。これを書き投稿するには、かなり勇気が要った事とお察し申し上げます。第1章は導入としてのことわざが印象的。読み終えて、ここに還ってくると(ああ、なるほど)と思わせるに充分な説得力があります。章毎に行きましょう。
2 経営悪化……うーん、自社製品の商品競争力が衰えるのが、やはりどこの会社でも悪化の序曲なのでしょうね。結果としての債務超過。これはキツイですねえ。「歴代経営陣」とあるから、長い歴史をかけて、ゆっくり衰退に向かった、そんな感触を持ちました。終行を読むと上田さんは実務において頽勢を必死に食い止めようとしたのでしょう。そんな印象が伝わってきます。
3 公私挟撃……興味深いです。これを読んで僕は歴史を思っていました。ある政権が崩壊に向かう時、多くの場合こういった人物が出て来る。すなわち寝返り者です。見切りをつける、といった感覚でしょう。会社もそういった構図の例外ではなかった事を感じます。どうも翳りが見えた集団が持つ慢性的な属性なのかもしれない。後半はまさに「私」の方にも火がついて来る。「悪いことが重なる」とはよく言われることですが、ここで見ておきたいのは挟撃に会いながらも、それに耐え挽回しようとする作者の精神の強靭です。
4 幻覚・幻視……しかし、しかし(その強靭も使い果たしてしまったのか…)感覚に変調をきたしてくるのですね。しかし、しかし、この痛みの章が最も詩的純度、濃度が高いのです。それはある意味、皮肉な事なのですが、詩とは、もしかすると哀しみの中から生まれてくるものだろうか?などと思えてしまうほどなのです。
5 混沌……うつ病に苛まれる中での訴訟。この件は既存作でも触れられたものでしょう。
ここで見ておきたいのは自分の会社問題だけに留まらず、他者にも影響を及ぼす事態になったという点でしょう。その事によって心身共に蝕まれた事は容易に想像がつく章であります。
6 発癌・退職……ダブル、トリプルの病のパンチです。結果としての辞表。淡々と書かれているので、読み手はさほど意識しないでしょうが、作者にとっては此処が一番の悲痛地点ではなかったか?そんな風に想像されるのです。
7 生還……ここで見ておきたいのは(8章もそうですが)、再び詩的価値を志向している点ですね。
事歴的には、不本意ながら退職によって一方の課題をクリアーしている点です。あとは健康でしょう。そして、そのことに関して少しづつ期する点があるところを見ておきたいです。
8 朝(あした)の光……章題が示す通り希望が見え始めます。少なくとも、そうありたいと願う作者の姿です。エンディングにも相応しい。文中にもある通り、回復途上にあるらしい。しかし「病は気から」とか申します。その「気」を務めて上向かせれば、結果は必ず微笑むことでしょう。幸いにして上田さんは気を上向かせるものは大いにお持ちだと思います。詩であり釣りでありお孫さんとの触れ合いでしょう。
さて総論です。まず、これは集合体としての1篇詩と言えるでしょう。それぞれの章が1篇として、一人立ちできる力を秘めながら一作品を形作っていることです。次に、こういった詩の難しさと、この詩に見る成功例です。詩として文学として、どこまで伝えるか、そしてどこまで自己のプライベートを維持するか、といった問題です。その具体性と守秘性のバランスを何処に置くかでしょう。幸い、この作品はその境界線を上手に渡っていきます。「わかるところはわかる、わからないところはわからない」―それでいいと思います。そうでなければならない、とさえ言えます。上記バランスと書いた事の勇気と豊かな筆致。これらによって上席佳作と判断致します。
アフターアワーズ。
僕にとって、これは教訓的なものも受け取れたのです。どんな苦境に立たされても、心身の健康だけは人に等しく残された最後の砦。そんな思いがあります。
3 詩詠犬さん 「散髪の唄」 1/27
はい、こういう詩があってもいいと思います。リズムがあって楽しい詩。また2連目のセリフが印象的ですね。今の床屋事情はよくわからないけれど、今はこういった雰囲気は少し希薄な気がします。このお馴染み感、僕はちょっとしたノスタルジーを感じました。昔は、殆どがこんな雰囲気でしたね。さっぱりして気持ちいい。この良さとは、もちろん髪型にあるのですが、心理的なものもある。これが案外大きいのです。気分一新ってやつですね。この詩では終わりの2連が上手く物語ってくれています。この詩の軽さは読んでいて気持ちいいです。「刈りたくて~てくてく」「くださいな~チョッキンな」等、韻の踏み方や擬音など、上手いですね。手慣れた感じで効果的。頭も心も軽くなる。甘め佳作を。
アフターアワーズ。
実際の髪形にちょっと触れても、面白いかも?
4 鯖詰缶太郎さん 「正体」 1/27
さあ、解釈が難しい詩が来ました。ここでキーワードになるのはタイトル「正体」と「フルフェイスヘルメット」でしょうか。このヘルメットだと顔を含めた正体がわかりにくいといったことがあります。
もっと言うと、正体を晦ますことも可能、ということです。2連目のようなことも可能。何かクイズ番組のように謎解き詩になって来ましたが、瞬間イメージでキーワードになりそうな言葉を列挙してみます。
韜晦、他者への嘲笑、社会を斜に構えて把握する、奇妙な世界観etc、etc・・・・・・。
ただ、それでいて、主人公は自尊心⇔自省・忸怩たる思いを、詩という秘密回路で錯綜又は行きつ戻りつしている。それが文中の「アンビバレントな」状況なのかもしれない。そう考えると、この詩は一見投げやり風ですが、実はやるせない詩なのかもしれない。詳細解釈はできませんが、そんなフィーリングを感知したしだいです。 そう、感知です。 うーん、難しいですが―佳作一歩前で。
5 静間安夫さん 「土に還る」 1/29
これは、また難しい詩です。これは日本で言うと末法思想の影響を受けているように感じられます。
前半は正月起きた能登地震が発想の中にある気がします。まず自然の膨大な破壊力が提示され、その前では、どんなに高邁な人物も思想も無力である。机上の空論に過ぎない。単なる衆生はもちろん、「古の聖賢」も神も宗教も自然に対抗できない。そんな主旨を感じます。ではどうするか?
ひとつの生命体、自然存在として「土に還る」=死ぬ。それしかない。そう考えると、この作品が説くように誠に単純化することができます。この詩は静間さんの作品ではありますが、ご本人が“直に”語っているといった立場は取っていない。もしそうなら反感を買うでしょう。代わりに、例えば宗教家とか預言者とか。そういった人物を設定し、その人物に託している。そこにこの作品の巧緻さを見る思いがします。そして、それが誰であるかが僕は大変興味があります。その人物は、この一文にもある通り謎であるでしょう。佳作を。
6 ベルさん 「ぼくはキミの靴」 1/29
面白い詩です。靴に人格を与えて、靴の主を逆に客体化する。「えっ、余計なことするな」が実にいいですねえ。会いたい人に向かわせる靴は果たして親切かおせっかいか? この詩を考える上で、大事なのは6連目でしょう。とりわけ、ここの「あなたの」がよくわからない。2説あって……、
① 「キミ」=靴の主人説……しかし、その前で「キミ」と言っているので、「あなた」の言い換えは奇妙。
② 「会いたい人」……場面描写から言って、こちらの方が有力だが、実際の相対場面がないので、いきなり「あなた」は奇妙。この場合「あの人」が相応しい。
この詩において「あの人」との件は、あくまで副次的、事例的なものと捉えたほうがいいでしょう。
ポイントはあくまで靴とその人との絆を重視したいところです。ベルさんもきっとそう思っていることでしょう。結果として、こころ温まる詩になっていますね。佳作一歩前で。
評のおわりに。
「暖冬」とか言われてますが、昨日は雪が降って寒かった。
雪掻きしました。慣れない手つきでした。 では、また。
雨音様
『嘆春歌』に評をいただきありがとうございました。
前回も声に出して読むことをアドバイスいただいたのですが感覚的にばかり読んで推敲してしまって、今回、客観的に読むとアドバイスいただいて、ちゃんと読めていなかったんだなと反省しました。
ありがとうございました。
生きるのに精一杯なんだよ
酸素を取り入れて血液を巡らせて
心臓を動かして
身体中の細胞の一つ一つまで気を配って感じて
五感のアンテナを張り巡らせて
死に向かい歩く道のりを
何一つ見過ごすことないように
生きることに精一杯なんだよ
そんな奴らばかりだから
どう見られてるかとか どう思われてるかとか
自意識過剰も甚だしい
そんなことだからつまずいたり
擦り傷だらけになっちゃうんだよ
大きな傷になる前に
胸を張って腹一杯に酸素を取り込んでみろよ
そして新鮮な酸素を血液に混ぜ込んだら
身体中に巡らせて
余分なものはネガティブな思いと一緒に吐き出しちゃえよ
そうすれば傷の治りも良いはずだよ
見えなかったもの
聞こえなかった音
味わえなかった味覚も
触れたくても我慢してたことさえ
自分の心が背中を押してくれるさ
今日の天気は晴天なりだよ
昨日では見れない
明日では見れない
今の空を見てごらん
この度、純和屋様より作品「地下に在り」を出版させて頂きましたが、
私の立場上、この出版について掲示板投稿での皆様のご挨拶を辞退させて
頂きたいと思います。思いだけ頂いておきたいと存じます。
何卒、ご賢察の上、よろしくお願い申し上げます。
なお、日頃の触れ合いに感謝を込めまして、投稿者様に少ない数ではありますが、
当作品を5名様先着順にてプレゼントさせて頂きます(送料無料)。下記アドレスに、
住所・ペンネーム・本名をご記入の上、お申込みください。
なお、個人情報はこの件以外に使わないことをお約束致します。
ご安心のほどを。よろしくお願い申し上げます。
Poem_drum463@ybb.ne.jp
三浦志郎 拝
三浦志郎さんが新詩集
叙事詩『地下に在り』
¥1000 (純和屋)
を出版されました。
おめでとうございます!!
あっ、という驚きとともに
壮大に展開する人間物語です。
叙事詩の名にふさわしい。
3冊目の詩集ですね。
この度は、本当におめでとうございます!!
最後は雨音様でした。「シャッター」に素敵な評をいただきありがとうございました。内容がちょっと最後に相応し過ぎますが、これはちょっと偶然です。この詩を投稿した後に免許皆伝のお知らせをいただきました。いただいた批評も有終の美に相応しいもので、何と言いますか、とっておきの餞別でも頂いた気分でおります。そして最後の最後まで「らしい」詩には拘り続けました。最後の佳作もしかと受け止めました。ありがとうございました。
雨音様をはじめ今までメンバーの方々には本当に真摯に丁寧に批評をしていただき言葉では言い表せない程の感謝の気持ちでいっぱいであります。自分の進むべき方向性、守るべき世界観がよりはっきりさせられたのもMY DEARの方々の愛情溢れる指摘があってのものだと思っております。今後はメンバーの欄にて作品投稿をご一緒させていただきますのでよろしくお願いいたします。
詩に限らず創作物は何でもどのジャンルであってもより複雑な方へと流されていくようです。そこを踏み留まれるかどうか。そしてその揺り戻しの度に何を再確認出来るか。技術はあくまで初期衝動の再現に過ぎないと思ってます。そこを剥ぎ取った時にようやく見えてくるもの、それこそが私の見たいものであり、見て欲しいものなのです。
詩で表現されているものは目に見えないものですが、裏を返せば目に見えないものは全て詩でもあるのです。詩は現実の裏側にあるもう一つの世界そのものです。信じていれば世界を変えることもあると本気で思っています。
最後にかすみじゅん様、山雀ぐり様、詩集のご上梓おめでとうございます。ここのところ目出度い報告が目白押しなのがMY DEARの層の厚さを物語ってますね。素晴らしいです。
氷は暗がりの中
時と挫折を閉じ込めて
ずっと待っている
この暗がりに君が訪れるのを
触れて
夜の底を幾度も
通り抜けてきた
その手で
跡をつけて
優しすぎるせいで病んだ
傷だらけになった
その手で
溶かして
君が恥じる
その手 その温度で
君が触れたら
悴む指を忍んで触れたなら
氷は溶け出し
街を抜け出し
海に注ぎ雲となり
いつの日か
懐かしい雨を降らせるから
そしたら君の街にも
懐かしい雨が降って
君が一つしかない傘を
いつものように
誰かにあげてしまった時
空に差し出した手を
傷跡で固く乾いたその手を
懐かしい雨が癒すから
だから
触れて 跡をつけて 溶かして
その手 その温度で
一七歳の無力さを覚えているか
うかつにひらいた手のひらの
その軽さに打ちのめされて
孤独を孤独で埋めるように
もう片方の手を重ねた
祈りとは呼べない不器用な形
出会わない折り鶴たちが
横たわる窓辺
分け合えない哀しみの隔たりに
獅子座流星群は降り注いでいた
救うことも
救われることもできずに
大人になることも
子供でいることもできずに
スマホをいじる指の軌道を
まだ知らない指で
流星群の軌道を寂しくなぞっていた
なにも紡げない白い息
の向こうで
星は流れ続けた
途切れてしまうオルゴールの
切ない音色を繋ぐように
もしあなたも
あの夜空を見ていたのなら
哀しみの隔たりで
不器用な祈りだけは分け合うことが
できていたのかもしれない
役に立たない言葉
掴みとれない時間
とどまれない今夜
できないことばかり数えていたけれど
光って消えてしまうだけの星は
ただそれだけで
じゅうぶんに美しかった
十七歳の無力さを覚えている