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魔法の絨毯 麻月更紗

若さはなんて
傲慢で清々しいんだろう
彼らは自信に
希望に
満ちあふれている
もう、自分ひとりで
なんだってできると
思い違いをしている

まぶしいな
たった一言で
消し飛んでしまう
薄っぺらな足元に
気づいていないで
踊っている
笑っている

羨ましいな
私は踊ることを早々に
あきらめた
アンバランスな魔法の絨毯の上
ただ
ひたすら
水平を維持することに
精をだす

一抹の風くらいなら
吹き飛ばない
ようやく
それくらいになれたところ

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みちこちゃんの乱 紫陽花

薬が効いてない
ここ2年くらい続いているみちこちゃんの
朝の挨拶
ただ 今日はいつもより深刻そうで
どんよりとした目でベッドに横たわったまま動かない
みちこちゃんは暗い声で 続ける
何回もトイレに起きるし全く眠れないのよ
しばらく沈黙があった後 少し力のこもった目で彼女は宣言した
今日のデイサービスに行って先生に薬をやめて下さい それとデイもつまらないから辞めさせて下さいって言ってくる
私人参の皮むきの仕事を紹介されているし仕事しようと思うの

ああ、近頃私が掃除してると床にB型作業所のお知らせが落ちてたりコソコソ電話で誰かとアルバイトの話をしていると思ったらそうだったのね

私ときたらみちこちゃんがご機嫌にテレビを見てウトウトしておやつを食べてを繰り返してると思ってた
ごめんなさい 策士だったのね みちこちゃん

でもね訪問看護師さんも心配してるよ
デイサービスでもらう薬を止めたら血圧も上がるししんどいよ
なんて猫なで声で私は恐る恐る彼女の様子を伺う
私とみちこちゃんは六畳間でつきあいたての恋人のように次に相手がどう出るか探ってる
見つめ合う老女2人
どこまでも真剣な私達

そんな今日は木曜日朝8時30分
ピンポーン
デイサービスのお迎えが来たようだ

もう今日でデイは最後にするから
みちこちゃんは静かに呟いた
みちこちゃんの乱が始まった

編集・削除(編集済: 2022年09月27日 16:20)

その一行  cofumi

その一行を
読み飛ばしたばかりに
物語が見えなくなって
その一行を
追うように後戻りしてみたり
記憶の断片を繋いでみたり
物語ならそれができるのに

あなたの心を
一行読み飛ばしたばかりに
小さなすれ違いは
氷床のクレバスのように
深く裂けて
別れの暗黒と目が合えば
逃げる事さえできない

たった一行
読み飛ばしただけなのに
人生が歪みはじめて
取り敢えず 読み進めるように
取り敢えず 歩き続ける
どうか私の物語のエピローグが
書き替えられていますように

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秋の扉  エイジ

夏は確と扉を閉ざしてしまった
甘酸っぱい思い出が
いっぱい詰まってある
夏の扉は最後の夕立と共に
夏の涙と共に
その扉を光も漏れないくらいに
閉ざしてしまった

真っ暗な中で
途方に暮れていた僕たち
その時 トットットッ
僕たちはある音を聞いた
ふと扉の方に目をやると
秋の冷たい風が扉を叩いていた

夕立があった次の日は
爽やかに晴れて
僕たちは秋晴れの中にいた
秋はその扉を開いた

陽の光を浴びすぎて
疲れのたまった肩を
ゆっくり起こして
色の変わった葉の中を
僕らはゆったりと歩んでいく

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青島江里様、詩評の御礼

「夜蝉」に感想と評価をありがとうございます。

今年の夏の熱帯夜に作ったものです。

機械的な耳障りな音に〜余りに機械的な音だったので、自分なりの言葉は浮かびませんでした。

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雨音様 詩評の御礼

「椋鳥の窓」に感想と評価をありがとうございます。

土浦駅前のホテルで泊まった時に見た光景を詩にしました。
あまり主観を入れずにそのまま作ったため、最後の情感まで考えがおよびませんでした。

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藍音ななを様 詩評の御礼

「スマホの風景」に感想ありがとうございます。

この詩はふと車内を見て作ったものです。
ガラケーからスマホになかなか替えられなかった
のもこの風景が嫌だったからです。

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本を読む  秋冬

いつもの
単行本を
手にして
家を出る

地下鉄の
ベンチで
付箋だらけ
赤線だらけの
物語を開く

目の前を
人が
行き来する方が
一人に
なれるのだ

何度読んでも
懐かしく
何度読んでも
新しい


隣りに
座った
少女が
紫のハンカチを
差し出す


僕が
思い描いた
主人公だ

この世に
現れた
のか

僕が
本の世界に
入り込んだ
のか

どちらなのか
分からないが
とにかく
涙が止まらない

 いつも
 ありがとう

ハンカチを
受け取ると
少女は
優しく笑んで
うっすらと
消えて行く

しかし
手にした
紫のハンカチは
消えない


僕が
残された世界は
どちらなのだろう

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炎  もりた りの

あなたは揺れる
揺れる
揺れる
揺れる

 
わたしを照らす
照らす
照らす
照らす


わたしを包む
包む
包む
包む


わたしを燃やす
燃やす
燃やす
燃やす


わたしと光る
光る
光る
光る


わたしを廻す
廻す
廻す
廻す


わたしを飛ばす
飛ばす
飛ばす
飛ばす


わたしを焦がす
焦がす
焦がす
焦がす


わたしを崩す
崩す
崩す
崩す


わたしを尽くす
尽くす
尽くす
尽くす


わたしを帰す
帰す
帰す
帰す


わたしに光る
光る
光る
光る


あなたは揺れる
揺れる
揺れる
揺れる

編集・削除(編集済: 2022年09月26日 16:47)

てんとう虫の子ども  朝霧綾め

てんとう虫の子どもを
私が育てる夢をみた

夢の中で
田舎の小道を歩いていると
一枚の大きな葉っぱに
私の顔ほどもある、
大きなてんとう虫が四ひき、ついているのをみつけた
重みで四匹がついている葉っぱの茎が
今にも折れそうにしだれていた

虫はあまり好きではないし
私はその光景から
遠ざかるように歩いて行った

もう一度そこを通ったとき
てんとう虫はやっぱりいた
けれども今度は葉っぱの下で
人間の赤ちゃんが泣いている
まだ立てない
その子は私が出会った
はじめての人間だった

突然、てんとう虫が一斉に震えた
「タノム、ソダテテ」
てんとう虫の言葉を理解すると
ああ、赤ちゃんはてんとう虫の産んだ子なのだと直感した
他にきいた人はいないか、あたりを見渡しても
誰もいない
とりあえずその子を抱き上げ
山奥の祖母の家まで歩いて行った

部屋に入るやいなや
祖母は言った
「育てなさい」
巫女がお告げするように重々しい口調だった
「何をあげたらいいのかわからないの」
私が言い訳すると
すりおろしたりんごを葉っぱにのせて持ってきた
赤ちゃんはそれを手づかみで器用に食べた
「頑張って」
私は行きと同じように
その子を抱っこして帰っていった

どうしててんとう虫の子どもが
人間になってしまったのだろう
けれどその子は
りんごしか食べないこと以外
普通の赤ちゃんだった

そのうちてんとう虫のことなど忘れて
その子を育てていた
公園に連れて行ったり
新しい服を着せたりもした

その子は私にお母さんのように甘えた
私が育てているのだし
お母さんでもいいと思った
とにかくその子が可愛かった

……
私は夢からさめた
布団の上の腕には
よいしょ、と抱き上げたときの重みと
あたたかい体温の感覚が残っている

その子はもう二歳、
電車好きのやんちゃな男の子になっていた

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