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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

井嶋様 評のお礼でございます 喜太郎

今回も貴重な評を頂き、誠に有難う御座います。全文ひらがなにするかどうかは、かなり迷いました。でも、それで良かった気がします。ありがとうございます。

編集・削除(未編集)

好きなだけなのに 喜太郎

好きなだけなのに
切ない
好きなだけなのに
苦しい
好きなだけなのに
悲しい
好きなだけなのに
見てしまう
好きなだけなのに
話してみたい
好きなだけなのに
一緒に歩きたい
好きなだけなのに
手も繋ぎたい
好きなだけなのに
………キスしたい
好きなだけなのに
嬉しいよ
好きなだけなのに
楽しいよ
好きなだけなのに
どうして良いか分からない
好きなだけなのに
どうして良いか分かってる
好きなだけなのに
好きなだけなのに
なんでこんな私になったんだろう
好きなだけなのに
なんで私が嫌いになっちゃうんだろう
好きなだけなのに
恋しちゃうんだろう

編集・削除(未編集)

玄関の花瓶には― 三浦志郎 11/7

花の精
わたしはトルコキキョウとして
いのちを与えられました

この家の奥さまに
愛され 求められ
玄関の花瓶の中で
美しさを語ります

ありがとう

この家の人々が
出かけ 帰ってくるたびに
訪れる人があるたびに
扉が開くと 
やさしく風も会いに来てくれるのです

ありがとう

わたしはその訪れに
感謝を込め
首を動かしうなずきながら
あいさつをする

ようこそおいでくださいました

この家の奥さまに
こよなくめでられ見守られ
彩り添えて応えたい

ここでいのちの限り咲きほこる
わたしはトルコキキョウです

***********************************

紗野玲空様
評者就任、おめでとうございます。お祝いにまいりました。
記念として軽くコメント下されば幸いであります。

編集・削除(未編集)

床を 拭く  まるまる

「キッチンマットふかふかー」 
新しく敷かれたマットに 
気持ちよさそうに寝そべる息子は
幼稚園生
 
私の胸の奥深くまで
ずん と何かが届いた

全身を預けてしまう 解放された息子
言葉にして共有できる 感動
マットを替える家族がもたらす 安らぎ
そして
台所は そこに居るママ そのものだから 
私自身が気持ちいいと言われているような 
勝手な錯覚

息子がたまらなく 愛おしかった

そんな彼も大きくなった 私よりうんと

一日の終わりに
私は台所の床を拭く
足裏に触れる床には 独特の爽快感
拭かれる前とは別物

感じるかな
床つるつるー とは聞けなくても
 おっ 気持ちいいな と
味わってくれるかな

台所の床は いつも台所にあるから
床の気持ち良さは 母さんの気持ち良さ
今もそう 思ってくれるかな

台所は母さん なんて私の錯覚だったけど

念入りに床を拭いた

編集・削除(編集済: 2023年11月06日 22:59)

桃太郎   晶子

俺は川に捨てられた
父母は俺を不要とされたか
このまま沈んで骨となれば
俺は不要のままなのか
まわりの石に紛れ込み
永い月日待ちに待ち
河原で洗濯する女が
俺の骨を見つけてくれる時まで
「骨、」
と言って涙を流すまで
俺の尊厳はないままなのか
天地の間にいて
否 否 否
俺の血潮は言っている
俺の骨は言っている
日本一の桃太郎
天から賜りし力を持って
人を人たらしめる為
蔑みの鬼をばった ばったと
卑下の鬼もばった ばったと
成敗すると心に誓う
心強きは我が両手
手のうてなに仏の心
傷つき者を優しく包み
去りゆく者には花を捧げる
我は尊き 我は人
天地が俺を見ているぞ

編集・削除(未編集)

モダン・ネオ・ロマンティシズム  エイジ

秋晴れの午後三時
近くの喫茶店へ詩を書こうと
雑然とした自分の部屋を後にした

習慣となっていることだが
まず空から降る光の色を確かめた
あえて言うとパステル・イエロー
乳白色したマンションが
うっすらと黄味がかっているようだった

喫茶店まではバスで5分くらい
ショッピングモールの中の
小さな部屋の戸をそっと開ける

選んだのは段差のある喫煙席
壁に掛けられたセザンヌの名画
「トランプをする人々」 の複製画
その中の男がにやりと笑う

スティーリー・ダンの音楽以外は
ひっそりとしている店内
そっと席に着くと
ペンとノートを取り出して
とりあえずといった感触で
思いつくまま情景を書き出した

 秋陽が西に暮れようとしている
 パステル・オレンジのような
 光を前に微かな疲れを味わっている

そしてこう続けた

 千里で過ごした平凡な日々
 つまらないのではない
 これこそが平和なのだ
 この平穏な日々を
 内なる情熱で支えて
 必死で守らなければ

サラサラとペンの流れる音が
しばし止まった
僕は沈黙している
目の前のモカを飲む

執筆のことなど
忘れそうになるくらい
この喫茶店のモカは美味しい

持ち込んだ詩集に目をやる
詩行を夢中になって読んでみた

言葉の連なり方と
行から湧き出すイメージと
どういう綾を成しているのか
分かる 分かるんだけど 書けない
僕にはこんな風には書けない
ただ自分の書く詩行の
綾なんてものは
今もってさっぱり分からない

ああ 喫茶店は各々の宇宙だ
束の間 空間を買うという
ある種のエンターテイメントだ

僕はサッと席を立ち
そのまま戸を開けた
惜しかったが僕は
その宇宙を去ることにした

秋陽が西に暮れようとしている
パステル・オレンジのような
光を前に微かな疲れを味わっている
この瞬間の木漏れ日の
暖かな陽だまりの優しさに
まさる恵みはないのだから
平和な日々を守らなければならない

編集・削除(未編集)

「ダンス・ダンス」  水野 耕助

止まると死んでしまうから
止まると死んでしまうから

足が折れようと
腕が裂けようと
止まることなく
踊り続ける

止まると死んでしまうから
止まると死んでしまうから

肺が潰れようと
心臓が破れようと
止まることなく
踊り続ける

でたらめなリズムで
めちゃくちゃなステップを

もしも誰かに
指を刺されても
気づかないくらい
夢中になって

飛んだり跳ねたり
クルクル回ったり
この命尽きる その時まで

止まると死んでしまうから
止まると死んでしまうから

今日も私は止まることなく
自分なりのダンス
踊り続ける

編集・削除(未編集)

ピアノ・リサイタル  えんじぇる

(前夜)

綺麗とは、赤が良ければ赤を、白が良ければ白を。迷わず選ぶ、その瞬間の美意識の中に、あります。
白が良くても赤を、赤が良くても白を。妥協を良しとする、言い訳と開き直りの中に、ありません。

綺麗とは、光への憧れと祈願です。
闇への安息を願う、歪ではありません。

綺麗とは、激情の後の悲しさです。燃え上がる前の不穏ではありません。

(当日)

綺麗とは、威風堂々とドレスを着て座るその姿です。
壊れることを恐れる老婆心では、ありません。

綺麗とは、大胆と過激併せ持ち、見栄とハッタリを貫く、その切れ味です。
錆びたナイフが売り物にする、優しさではありません。

綺麗とは、神経質なピアノの調整のような、デリケートな素肌です。
調整の壊れたお喋りでは、ありません。

綺麗とは、外側にすべてを預け、信頼と安心に身を任せようとする、その心です。
不信と回避から、内側に籠る怯えではありません。

綺麗とは、白鍵と黒鍵が織りなす、良心の呵責と悶え。その中を駆け抜ける疾走。光と闇が織りなすハーモニー。そしてそれを現すメロディの中に、あります。
雑踏の中に紛れる自らの足音を色で誤魔化し、すべてを灰色で済ます適当には、ありません。

綺麗とは、やり切った後の余韻です。なにもする前の空白では、ありません。

編集・削除(編集済: 2023年11月04日 02:54)

ある通信兵の戦い  上田一眞

彼は僕の釣りの師匠だ
額の右側が深く抉れ陥没していた
人相を変えるほどの傷
ある時
釣り糸を垂れながら
傷の来由と自分の戦いについて
訥々と語った

 *

自分は
空母隼鷹(じゅんよう)の通信兵だった
マリアナ沖へ出撃
米機の来襲を受けた
艦橋近辺にいた自分は
深手を負い 
爆発の衝撃で海に投げ出された

敵機の空襲と同時に
潜水艦の雷撃を受けた
魚雷が自分のそばを走り抜けて行った
隼鷹を守る味方駆逐艦が
反撃した

海に浮かぶ自分の周りを
ぐるぐる回って
駆逐艦は爆雷をどんどん投下した
その衝撃は凄まじく
海の中
海水が風呂釜の湯のように沸いた

自分は沈まないように
必死になって浮遊物に掴まった
しかし
額の裂傷は深く
時間が経つにつれ失血で気を失った

気がつくと
駆逐艦の甲板に横たわっていた
救ってくれたのは 
自分と同じ通信兵で
後年プロレスで名を売った男だった

隼鷹の僚艦飛鷹(ひよう)も敵機に襲われ
ボロボロになって
火炎を噴き上げて大破した

隼鷹の沈没は免れたが
数多の兵士が海に投げ出された
長い時間漂流し
力尽きて海中深くのみ込まれ
マリアナの深海に沈んで行った者
獰猛な鱶(ふか)に食われた者
地獄だった

死線を分けたものが何だったのか
自分にも分からない
ただ運がよかっただけだ

 *

静かに語り終えると
彼は「海ゆかば」を口ずさんだ

 海ゆかば水漬く屍
 山ゆかば草むす屍
 おおきみの辺(へ)にこそ死なめ
 顧みはせじ



*隼鷹 帝国海軍の中型改造空母 27500トン
 飛鷹 隼鷹の姉妹艦    

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詩の評、お礼です。  じじいじじい

島様

こんにちは。
詩の評、お礼です。
島様、今回と次回投稿分に関しましては、かなり悪い作品だと思います。実は私、詳細は割愛しますが、最近、かなり精神的にまいっており疲れている状況です。
そんな中、詩の作品に心中が表れて雑な作品になっているかもしれません。
次次回からは落ち着いて書いてみます。

今後もよろしくおねがいします。

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