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編集・削除(編集済: 2025年01月02日 01:55)

感想と評 6/3~5ご投稿分  水無川 渉

 お待たせいたしました。6/3~5ご投稿分の感想と評です。コメントで提示している解釈やアドバイスはあくまでも私の個人的意見ですので、作者の意図とは食い違っていることがあるかもしれません。参考程度に受け止めていただけたらと思います。
 なお私は詩を読む時には作品中の一人称(語り手)と作者ご本人とは区別して、たとえ作者の実体験に基づいた詩であっても、あくまでも独立した文学作品として読んでいますので、作品中の語り手については、「私」のように鉤括弧を付けて表記しています。

●上原有栖さん「雨を待ちわびて」
 上原さん、こんにちは。初めての方なので感想を述べさせていただきます。
 この作品は植物(稲などの穀物でしょうか、それとも草原の草でしょうか)が雨を待ちわびる様子を詩にしたものですね。乾いた大地に雨が降り注ぎ、植物がいきいきと生命力を蘇らせる様子が擬人法を使いながら上手く表現されています。ですます調の優しい文体も童話風の温かい雰囲気を醸し出しています。
 あえてコメントすれば、終連の「小さき寡黙な生命」が(それ自体は良い表現だと思うのですが)少し唐突に感じました。2連では隣りあう植物同士の会話が描かれているからです。もちろん「寡黙」は口数が少ないという意味でまったくの沈黙を意味するわけではありませんので、現状のままでも矛盾とまでは言えませんが、あえて最後に「寡黙」という語を用いるのならば、その前の部分でもう少し詳しくその寡黙さを具体的に描いておいても良いかと思いました。
 いずれにしても、とても読みやすい良い文体をお持ちですので、またのご投稿を楽しみにしています。

●相野零次さん「逢瀬」
 相野さん、こんにちは。人間は独りで生きることはできず、他者とのつながりを絶えず求めている存在だと思いますが、実際に他者と関わり合うのはいつもうまくいくとは限りませんよね。どうしても互いのエゴがぶつかり合い、傷つけ合ってしまう。この作品はそのような人間関係のジレンマを描いた詩と受け止めました。「優しさは/ストローを通すと/少しずつ/汚れてしまう」や「何度も着信音で叫んで」等の表現がとても印象に残りました。
 ただ全体を通して何度か読んでみても、今ひとつすっきりしないもやもやした読後感が残りました。その理由はおそらく、この詩の焦点がうまく定まっていないからではないかと思います。
 タイトルの「逢瀬」とは、通常恋人同士がひそかに会う機会について使われる言葉ですので、この詩もそのような個人的な恋愛詩かと期待して読み始めるのですが、実際のテクストではなかなか具体的なカップルの姿が浮かび上がってきません。それは「誰か」や「人よ」という一般化された表現が使われているからではないかと思います。そのため、ここで描かれている「逢瀬」が語り手の個人的体験としてではなく一般論として描かれてしまい、インパクトを失ってしまっているように思います。
 人間関係の難しさという、誰もが同意するであろう真理をただ一般論として語るだけでは、よほど表現に工夫をこらさない限り読者に訴えかける力は弱くなってしまいます。一般論を個人の体験に落とし込んで語る方が、詩としては良いものになると思います。
 具体的には初連終行の「誰かに会いたくなる」を「あなたに会いたくなる」、4連の「人よ」を「私の心よ」のように変えてみてはどうかと思います。あくまで一案ですので、ご自身でしっくりくる表現を探してみてください。
 細部では良い表現がたくさんありますので、上記のように個人の視点からの語りに書き直していただくと、とても良い詩になると思います。ご一考ください。評価は佳作一歩前です。

●喜太郎さん「三人三様」
 喜太郎さん、こんにちは。喜太郎さんはこのところ毎回恋愛詩を投稿してくださいますが、今回は三角関係を描いた作品ですね。
 「わたし」は「あなた」に好意を寄せていますが、「あなた」の心は「あの人」に向いている……。このような切ないシチュエーション自体はありふれたものですが、それを好きな音楽や映画や食べ物といった小道具を使って表現しています。ここを単に「食べ物」「映画」「音楽」とするのではなく、具体的な固有名詞を用いて書くとより現実味を帯びて読者に伝わるのではないかと思います。
 後半では想いの届かない悲しみに打ちひしがれながらも「あなた」と「あの人」の幸せを願うという複雑な心情が描かれていて印象的でした。
 確認したいのですが、下から7行目「わたしはあの人の心の中には居るの?」の「あの人」はこのままでよろしいでしょうか? 「あなた」の間違いではないかと思ったのですが。もう一点、下から2行目の「ヒロイン」は「悲劇のヒロイン」という意味かと思いますが、もしそうなら、そのようにはっきり書いた方が伝わりやすいと思います。
 タイトルの「三人三様」ですが、確かに三角関係の詩なので「三人」なのは分かります。しかし「三様」の部分が本文でそれほど描かれているとは思えませんでした。特に「あの人」がいったいどういう人物なのかはテクストからはほとんど分かりません。したがって、このタイトルはより詩の内容に適合した、「わたし」の感情にひきつけたものに変更すると良いと思います。
 最後に、これは毎度指摘させていただいている点ですが、今回も連分けがなされていないのが気になりました。特に本作の場合は、6行目と10行目の「消えそう」、それから14行目の「わたしの心も腐りそう」の後で読者の心に余韻を残すために一行空ける必要があるかと思います。そして最後の5行も独立した連にした方が、「わたし」の心情の吐露がよりインパクトを持って読者に伝わるでしょう。詩においては空白の文字や行、句読点に至るまで、必然性をもって書かれるべきだと思います。特に強いこだわりを持って行分けなしのスタイルを貫いておられるのでなければ、ご一考いただけると幸いです。
 評価は佳作一歩前になります。

●荒木章太郎さん「ひとつになれない争いの窓辺で」
 荒木さん、こんにちは。今回の作品は、前回拝見した「僕は君のしなやかなギブスでいたい」と同系統の、個人と社会(国家)の問題を二重露光のように重ねて描いた作品と受け止めました。私は個人的にこのスタイルにはとても魅力を感じています。
 本作において、まず個人レベルでは、「あたし」と「あなた」のぎくしゃくした恋愛関係が描かれていきます。個人の間のやりとりを戦争のメタファーを用いて描くことはよくなされる手法ですが、それがいつのまにか「窓の外」で起こっている本物の戦争と見分けがつかなくなっていく不気味さが良く現れています。「こちとら遊びじゃないのです」という、恋愛でよく使われるありきたりのセリフも、よりシリアスな意味を持っているもののように読めてきますし、「あなたは肉を欲しがるけれども/あたしは――あなたの骨が欲しい」という表現も、単なる愛欲の表現を超えて「肉を切らせて骨を断つ」という戦いのイメージを喚起します。そう考えてくると、「ふたりがひとつになる」ことも、恋愛なら幸せの頂点でしょうが、国家・民族レベルで考えるならば民族浄化や同一化政策などを思わせる表現に見えてきて背筋が寒くなりますね。
 終連の「緊急避難警報が/ふたりに戻る合図です」は、抽象的なイメージのレベルで重ねられてきた恋愛と戦争のテーマが具体的な形で並置されて終わります。この簡潔で効果的な着地も見事でした。
 その他、「花火」と「火花」、「無垢」と「むくむく」など、細部の表現もよく練られていて、緻密な推敲がなされていることが伺えます。大変読み応えのある素晴らしい詩をありがとうございました。評価は佳作です。

●こすもすさん「トンネル」
 こすもすさん、こんにちは。初めての方なので感想を述べさせていただきます。
 ドライブしていて長いトンネルに入ると、等間隔で並んだ照明が次々と後ろに流れていって、見つめているとすーっと吸い込まれるような不思議な感覚になることがありますね。この詩は、誰もが一度は体験したであろう、トンネル通過というありふれた体験の中で味わった不思議な孤独感を描いた作品と受け止めました。
 この作品は1.トンネルに入る前、2.トンネルの中、3.トンネルから出た後、という分かりやすい構成になっています。丁寧な情景描写でドライブしている光景がしっかりイメージできるのが良いですね。様々な色への言及も効果的だと思います。
 欲を言えば、全体を通して読んでみて、「私」がトンネルの中で感じた孤独感について、もう少し詳しく書き込んでいただけると良いと思いました。話としてはドライブ中にトンネルを通過した、というだけのことなのですが、その体験がなぜ「私」に強い印象を残したのか、その部分が読者に伝わるように工夫していただければと思います。また書いてみてください。

●aristotles200さん「ドの音で始まる世界」
 aristotles200さん、こんにちは。初めての方なので感想を述べさせていただきます。
 これまでの投稿作もいくつか読ませていただきましたが、哲学に興味をお持ちの方のようですね。ペンネームからもその事が伺われます。
 本作は人間の人生が無限に繰り返されるというニーチェの永劫回帰の思想をベースにしていると思われますが、そのテーマを単なる抽象論ではなく具体的なイメージを用いて語っておられるので、詩作品としても興味深く読むことができました。買ったばかりの新刊書に暗号のような印がついていて、今この本を「初めて」読むのが何回目かが分かるという着想は面白いですね。
 そして後半ではピアノの音を契機として何百もの「自分」との同窓会が実現するという不思議な体験が描かれていきます。関係ないかもしれませんが、最後にド(C)の音を鳴らし続ける場面で、私はテリー・ライリーの「In C」という曲を思い出しました。
 細かい点ですが、初連3行目の「同く」、初連最終行の「少なくと256回目」、2連1行目の「買っばかり」、など単純な誤記と思われる箇所が散見されました。せっかくの哲学的素養と詩的想像力を十二分に活かすために、推敲はしっかりされることをお勧めします。でも作品全体としては大いに楽しめました。またのご投稿をお待ちしています。

●温泉郷さん「ブラックアウト」
 温泉郷さん、こんにちは。電車の中の手持ち無沙汰な時間をどう過ごすか。最近は本や新聞を読む人も少なくなり、もっぱらスマホをいじっている人が大半ですが、それとともに意外と見ているのがデジタルサイネージだと思います。大企業の思惑に踊らされているとは思いつつも、つい何とはなしに見入ってしまうんですよね。
 本作はそのデジタルサイネージが突然ブラックアウトしたら……という状況を描いた詩です。地下鉄の車内に突如出現したブラックホールのように、ブラックアウトして広告の消えたデジタルサイネージが、商業主義の生み出すうすっぺらな夢や理想を吸い込んでいく。だからそれは「贅沢な黒い四角」と呼ばれるのですね。それは高度資本主義社会に対するささやかな抵抗のしるしなのかもしれません。語り手は途中で下車しますが、せめてその電車が終点に着くまでは、そこだけはブラックアウトしたままでいて欲しいと願います。
 本作で描かれたようなアクシデントは単なる技術トラブルでも実際起こりそうなことですので、もしかしたら作者の実体験に基づいたものなのかもしれませんし、実際にはほんの数秒だけのブラックアウトだったのかもしれません。けれどもそのようなちょっとした日常の出来事に普通でないものを感じ取るのが詩人の感性というものなのでしょう。温泉郷さんのそのような世界への向き合い方に強い共感を覚えます。
 あえて言えば、本作は上で述べたような目の付け所だけで勝負しているようなところがありますので、もっと想像力を羽ばたかせて「贅沢な黒い四角」についての語り手の思いをさらに展開していくと、深みが増すのではないかと思いました。でも現状のままでも十分な気づきを与えてくれる作品ですので、評価は佳作とさせていただきます。



以上、7篇でした。今月も素敵な詩との出会いを感謝します。

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読まれぬ手紙 津田古星

斎場へ足を運び
同級生の名の下に儀告別式と書かれた
大きな文字を見て
ああ 本当にもう生きていないのだと
きっぱり言い渡された気がした

最後の別れの時
棺にそっと手紙を入れた人がいた
決して読まれることのない友への手紙
書かずにはいられなかったのだろう
そんな友人を持った彼女の人柄が偲ばれた

療養中に
「両親より一日でも長く生きるのが私の目標」と
言っていたのに 叶わなかった

病院へ行った帰りに我が家に立ち寄り
白い梅の花びらが散るのをじっと見ていた
自分の命を重ねていたのだろうか
それから半年あまり
彼女は49歳で逝った

棺の中に納められた手紙は
彼女に届いたと信じたい
それとも 肉体を離れた彼女は
もう人の感情を超越した世界に行ったのだろうか

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天井のわたし  aristotles200

深い眠りから目覚めた
すっきりとした感覚
とても調子が良い

祭壇に寝かされている、お経が聞こえる
身体を起こす、沈黙、の後、式場は大騒ぎに

とても調子が良い、何でも出来そうだ
ヒョイッと台から降りて壁を登り
天井にしがみつく、首も180°動いた
悲鳴、絶叫、お坊さんは腰を抜かしている

あれ、家族や親戚、友人、上司、皆集まってる
何か嬉しくなって、挨拶をする
URYYYYY(ご機嫌よう)

天井から一瞬で床に跳ね、逃げ出す上司を掴む
助けてっ! 悲鳴を上げて暴れる上司
wreeeeee(あれ、B課長、どうしたんですか)
ずっと暴れる、面倒くさくなる

あれ、口も大きく開くんだ
B課長の頭を丸ごと呑み込むと、咀嚼する
ガキュ、ゴキュ、ボキャと音が鳴る
新鮮なプチトマトを一口で食べる感覚
varyyy(美味っ)

そうか、お腹が空いているんだ
無人の式場、誰もいない
ちょっと、食事に出かけようか

身体ごと窓を割って、外に出る
ビルの外壁をよじ登り、屋上の給水塔に立つ
満月がきれいだ、空気もうまい
夜の街が広がっている

そのまま、下のパトカーめがけて飛び降りる

壊れる車体、身体は、何の痛みもない
ムクッと立ち上がる
あちこちで悲鳴、そして射撃音

今夜はビュッフェ形式らしい
ARYYYYYY(いただきます)

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日常 喜太郎

些細な事 些細な言葉 些細な態度
『そんな』事で
あなたに愛されていると感じられる私の心
あなたの心の中に確かに私は生きて居て
この安心感はとても幸せな事なんだと思うの
私はこの思いをあなたにも与えられているのかな?
ちゃんと愛せていて 私の心の中は
あなたが生き続けている事は
あなたに伝わっていますか?

初めて手を繋いだ時に
お互いの緊張感に包まれた『好き』な想いが
手と手から伝わって来た時を思い出した
言葉じゃなくて感じとれた『想い』

「どうしたの?」
同じ部屋の中であなたを見つめる私に
あなたはいつもの笑顔で問いかける
「初めてデートした時の事 思い出してた」
「懐かしいね 今度久しぶりに行ってみようよ」

きっとまた手を繋いで歩くよね
そうしたら伝わるよね お互いの『想い』
緊張感は薄れているだろうけれど
それ以上の『愛しさ』が手と手から伝わるだろうね

同じ部屋の中 二人で笑顔になっている
いつもの事 些細な事 大きな愛しさ

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踊れ、俺の細胞  荒木章太郎

自意識が 過剰だ
胃袋を 蝕む
情報が 耳から
垂れてくる

知覚過敏だ

日常的に からだの奥で
日蝕が 起こるたび
猛禽類が 騒ぎたてる

植物性の細胞が
ふるえている

知性の森が
蠢いている

ああ、
日々の驚きが
恐れではなく
畏れに 変わりますように

祈り、
踊れ、
俺の細胞

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天使篇《ハイライト》

天使篇《ハイライト》

煙草を初めて吸ったのは中学生の時だった
親父のハイライトを盗んでマッチで火をつけ
わからなかったので肺にまで煙をやらずに
頬の内側にためては煙を吐き出すのを
繰り返していたと思う
でもニコチンは身体に吸収されていて
なんとも身体が柔らかくなる感じがした
煙を肺まで入れて常習的に吸うのは
高校生になってからだ
周りの友達が皆吸っていたのはセブンスター
ちょうど売り出し時期だったのではないか?
僕も一箱買って吸ったが鉄錆の味がしたので
すぐにブンタ吸いの友達にくれてやった
僕はハイライトを吸っていた
親父の煙草と同じなのは
もちろんカネのない時に
ちょろまかすためである
当時、ハイライトは「労働者の煙草」などと
呼ばれていたので
ちょっと共産主義カブレの僕には
誇らしくもあった
親父は僕が煙草を盗んでいるのを知りながら
全く我関セズを通してくれた
今から思えばホンマにエライ親父であった
サンキュー親父

息子が煙草を吸うのを黙認してくれたのね?
天使はにこにこしながら言う
そやねん
きっと僕は今遠い目をしているだろう
半世紀昔の話だ、なって当然ではないか?
友達が遊びに来た時なんか酒の差し入れを
こそっと僕に渡してくれたのだった
本当に悪いお父さんね 天使がまた笑った
親父、ダンケシェーン!
僕は天を仰ぎ見て言う
あなたの目は 天使は頬笑みながら言う
全くの節穴よね?
え? 何を言われてるのかわからない

天使は半袖の夏のセーラー服姿だ
その背中には白い翼である
セーラー服の垂れ襟の背中と
その翼の根は三センチほど離れている
きっと天使がもぎ取り捨てた天使の輪も
そんな風に浮かんでいたのだろう
なんで、節穴、やねん?
僕は混乱しながら言う
天使は残念そうに僕を見る
お父さんは、息子と煙草の話がしたかった
天使は僕をピタリと見たまま言葉を続ける
酒の話もしたかったしあなたの友達とも――
天使は青白い色の溜め息をついた
――若かった時のように喋りたかったのよ
天使は翼を広げる
そして軽く羽撃いてみせる
それにちっとも気づかないポンコツ息子!
僕は膝をついてしまう
あうあうとしか言えない
半世紀以上経つと言うのに記憶は鮮明に
僕の胸に甦るのだった
なんて鈍感な奴なのか? 僕と言う男は?

親父は死んだ
今から
三十年前に死んだ
先妻が病を得て何の反応もないまま死んだ
先妻の葬式の後、焼き場の横で牧師が
先妻を悼んで皆に語りだした
先妻を含めて信仰していたのは
基督教のプロテスタントだった
今まさに妻の肉体がめらめらと燃えている時
その牧師は言うのだった
「神が彼女を求められたのです」
皆が「アーメン」と言った
以下は出席者には牧師の声は届かない
僕があああああああああと吠えたからである
ああああああああああああああああああとだ
牧師の話が終わり、僕も吠えるのをやめた
しゃがみこんでいた
女の子座りでぺたんとしゃがみ込んでしまう
親父がやってきて僕の肩に手を置いて言う
「今日は泣いてええぞ、ナンボでも泣け」
見当違いだったが
肩に添えられた親父のその手が
なんとも嬉しかった
だがその翌年の僕の誕生日前夜に父は死んだ

僕は煙草の値上げの酷さに耐えられず
断煙をした
禁煙?
バカにするな
断煙だ
アルコール依存症を患い苦心の果て
断酒したように
きっともがき苦しむと思っていた
だから断酒してからは煙草を吸いまくっていた
煙草を止めるのもものごっつい苦痛だろうと思っていた
だから死ぬまで禁煙なんかしない、と思っていた
だが値上げに押されて僕は煙草を止めた
断酒での精神の闘い、肉体の戦いを思えば
あまりにも簡単に断煙できてしまったから
拍子抜けだった
でも僕は(想像上の)ハイライトの箱を叩く
飛び出してきた(想像上の)一本を咥える
そして(想像上の)イムコのライターで
(想像上の)ハイライトに火を付ける
(想像上の)煙を肺いっぱいに吸い込む
そしてしばらく出し惜しみしてから
(想像上の)煙を空に向かって吐き出す
私にも一本くれる?
天使が言う
ええよ
僕はそう言って咥えていた煙草を差し出す
ありがと
天使はそのハイライトの煙を吸い込んでから
やはり空に煙を吹き上げる
僕は新しい一本を取り出して
そしてオイルライターで火をつける
ふう~~~~
このハイライトは
当然親父の煙草置き場からくすねてきた奴だ
俺にも一本くれないか
僕の肩に手を置き親父が言う
また、一服したばかりのハイライトを
親父の唇にゆっくりと差し込む
親父もまた空に煙を吹き上げる

編集・削除(編集済: 2025年06月17日 22:05)

ラストノート  上原有栖

この部屋で過ごす最後の夜
窓を開けて 照明を灯した
カーテンが揺れる ふわりと揺れる
もう居ないあなたが まだ隣に座っているようで
部屋に染み付いた微かな残り香

これまでのあなたを思い出す
洋服の香り 眼鏡を直す仕草 高い笑い声
目尻にある泣きぼくろ それはいつもの風景だった

この部屋で過ごす独りの夜
瞳を閉じて カーペットを撫でた
髪の毛が揺れる ふわりと揺れる
もう居ないあなたが また耳元で悪戯しているようで
わたしに染み付いたあなたの残り香

これからはあなたを忘れてしまう
どこかにあった泣きぼくろ 特徴のある笑い声
癖だよって言ってた仕草 そして記憶の中の香り
ひとつひとつが砂になって消えていく

残り香が消えてしまう前に
あなたがここに居た証を心に留め
明日この部屋を引き払う
さようなら
今夜は抱き締められる最後の夜
今夜は香りに包まれる独りの夜
ありがとう
いつまでも、愛してる

******
注)ラストノート:last note
香料をつけた後、2時間経過後~半日程度の香り。ミドルノートの次の香り。
香る時間が一番長いため、つけた人のイメージを作る香りと呼ばれる。

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移り気  白猫の夜

カーテンがゆれる
ひらひら ふわふわ
外に出れない私を誘って
暗い部屋に光を招く

ひらりと布をめくってみて
目に入ったのは紫陽花の花
夜のあかりにつゆが光って
どこか悲しげな青の花

そういえば葉っぱに毒があると
どこかで聞いたことがあって
これは興味本位なのだけれど
もしかしたらっていう試し行為

カランッと窓を開けて
てをのばして ひとちぎり
そのままぱくりと飲み込んで……

よぎっているのは愛しいあなた
私のところへ来なくなった
どうしようもないクズなあなた

毒を喰らったって言ったらあなた
またここへ帰ってくれるかしら
あなたを愛して毒まで喰らった
私を愛しいと思うかしら

……なんて
知っているわ
わかっているの
あなたの心はもうすでに
私のところへは向かわない

けれど私も等しくクズで
いつあなたが来てもいいように
ここからはきっと出られない

紫陽花の花の色が変わってしまっても
私は多分ここにいる

窓をしめて
カーテンを閉めて
また暗い部屋に逆戻り

紫陽花の花は夜空に照らされ
ふんわりふんわり
ゆれている

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Exodus  静間安夫

誰が好き好んで
住み慣れた
故里を離れるものか

言ってくれ
もし他に
やりようがあるというのなら…

仕事もなく
食うものもなく
人殺し、強盗が
我が物顔にふるまう国で
この先、どうやって
生き抜けと言うのか?

こうして
故里を旅立ったのは
ただただ
追いつめられたから…

ところが
年老いた親、
乳飲み子を抱えて
密林を越え
大海を渡り
命からがら
やっと豊かな国まで
たどり着いたのに
その国境の壁が
どうにも越えられない

入国を拒否され
犯罪者なみの扱いを受け
収容所に入れられたあげく
強制送還されるありさま

運よく
入国できたとして
今度、立ちふさがるのは
偏見の壁
言葉の壁
結局、俺たちに
この地球上で
約束の地はどこにもない

「きっとあの国に辿り着ければ
 なんとかなる」
そんな甘い期待を
ほのかに抱いてきたけれど、
いや、なんとかなりはしない―
まず何よりも
俺たちは
歓迎されざる客なのだ

どうにもならないから
同じ故国からやってきた者どうし
かたまって暮らすしかない
それがまた
もとから住んでいる人間たちの
警戒心を掻き立てる

彼らの気持ちもわからんではない
俺たちとは
文化も風習も違うのだ
お互いに分かり合うためには
気の遠くなるほど
長い時間がかかるに違いない

だが
そんな長い時間を
待ってる暇はない
俺たちは
まず目の前の一日一日を
生き抜かなけりゃならないから

幸いなことに
こうして故里から
この国にやってくるまで
幾つもの危難を越えていくうちに
俺たちが身に着けた逞しさは
ちょっとやそっとの
半端なものじゃない

今に見ていろ!
この国の人間たちの
弱みにつけこんで
したたかに生き抜いてみせるとも!
人手不足の工事現場で
重機を自由自在に操れるのは
もう俺たちしかいない

そうとも
彼らが嫌がる仕事こそ
世の中に
なくてはならないのさ
やがて
俺たちに頼らなくちゃ
この国は動かなくなるだろう

大きく出たな、
と思われるかもしれない

たしかに
俺たちは
資本の暴力と
グローバリズムとやらが
産み出した鬼子には違いない
だが、決して
ただの鬼子ではない

なぜなら
この国に安全に住んでいる
定住民諸君よ
よく思い出してほしい

人類の八百万年の歴史は
あらかた
非定住民の歴史だったってことを!

大地殻変動が起きて
ジャングルからサバンナに
心ならずも追い出されたあのときから
大型肉食獣に脅かされたあの時代から
人間たちは食料を追い求め
移動し続ける運命を
負わされたのだ

それ以来
どれほどの民族が
安住の地を求めて
広大な世界を旅したことだろう

環太平洋を股にかけたモンゴロイド、
出エジプトのユダヤ人、
ヨーロッパに押し寄せたゲルマン人、
枚挙にいとまがないではないか
そのどれもが
歴史に大きな足跡を
残したのではなかったか?

まさに
今、世界中で起きている
移民たちの大移動が
国境線を無効にし
やがては国の形そのものを
変えてしまうかもしれないのだ

それこそ
俺たちの物語だって
ひとつの“Exodus”として
数百年後まで
語り継がれるかもしれない…

だからこそ
この国に定住する人たちよ、
俺たちの問題に関心を持って
正面から向き合ってほしい!

それだけじゃない
時代が変われば
逆に諸君が
俺たちの立場に
立たされるかもしれないのだ

なぜなら人類とは
もともと
決して定住することなく
永遠に旅することを
宿命づけられているのだから

編集・削除(編集済: 2025年06月16日 22:15)

真っ当 津田古星

あまりに まともなので
彼女の言葉は 疑われる

あまりに純粋なので
彼女の言う事は気味悪がられる

あまりに単純なので
彼女の日本語は理解されない

時々 同じくらい
まともで純粋で単純な人が
分かる気がすると思うのだが
それを言うのは憚られる

あまりに真っ直ぐな愛を
告げられた人は
こんなことが本当のはずが無いと疑い
はぐらかして逃げてしまう

彼女の愛を受け取れるのは
よほど度量の大きい人か
愚かなほど純朴な人か
彼女に惚れ込んだ人
そんな人は滅多にいやしない

彼女の言葉も愛も受け取らず
すれ違って行った人達は
神様からのギフトを
気づかぬうちに捨ててきたことさえ
知らぬまま生きている

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