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お疲れ様です。
指摘された句読点を意識して読み返すと
3連がぷつぷつ切れてしまう印象になりますね。
色々難しいものです。ちょっと厳しくなることに、少しの成長が認められた嬉しさと「いえいえ、今まで通りお手柔らかに」という臆病虫がせめぎあっております 苦笑
また投稿の際はよろしくお願いいたします。
許してくれる人を
ただ優しい人と思わないでください
その人は我慢して 苦しんで
自分の思いに蓋をして
傷ついて… 笑顔で許していることを
その優しさに甘えていると
その優しさが当たり前だと
思っていると
その人は突然に消えてしまうでしょう
跡形もなく 忽然とあなたの前から
消えるでしょう
その時になって気づいても
何もかもが手遅れで
優しさの価値が 大切さが
どれだけ想われていたが
初めて気づくのです
失ったものは大き過ぎて
失った人はかけがえなくて
もう二度とあなたは許されないのです
優しさと冷酷さは紙一重
紙一重なんです
英国の秋はどのような感じでしょうか。
お疲れ様です。上田です。
いつも素敵な評を頂戴し、感謝しています。ご指摘のとおり短い詩は濃縮の度合いが高くなくてはなりませんから難しいです。僕の語彙力ではなかなかよい言葉が選べずにいます。
詩人らしい視点の面白さを手に入れるにはどうしたらいいのかお教え頂けたらと思います。
また、投稿いたします。ありがとうございました。
どこかで水滴が落ちているらしい。ポタッ、ポタッ、といつ果てることもなく続いている。その単調な音を聞いているうちに、しだいに意識がはっきりしてきた。どうやらわたしは、薄暗い三畳ほどの独房、それも拘置所みたいな施設の独居房に入れられているようだ。今、横たわっている粗末な寝具の他に、便器、机、流し台があるため、身動きできる空間はごくわずかだ。流し台の蛇口から水は漏れていないので、きっとあの音は、この所内のどこかから廊下伝いに聞こえてきているのだろう。廊下とは鋼鉄のドアで隔てられていて、ドアにはめ込まれた鉄格子から廊下の電燈の光が独房に差し込んでいる。
今、いったい何時頃だろう?夜中なのか、それとも明け方なのかさっぱりわからない。せんべい布団の上に身を起こし、まんじりともしないで座り込んでいると、やがて鍵束をじゃらじゃらとさせながら、刑務官らしき人間が数人近づいてきた様子だ。ふと、その足音がすぐ隣の独房の前で止まった。
「301号、用意はできているな?」。
その声が静かな空間に響き渡ったあと、ドアが開錠されて、独房から人が連れ出されていく気配がした。それも半ば無理やり、力づくで…。というのは「いい加減にしないか!」とか「往生際が悪いぞ!」とかいう言葉に加えて「後生だから、どうか見逃してください」などの声が、かわるがわる聞こえてきたからだ。
いったいどこに連れていかれて何をされるのだろう?わたしの独房にも、いつか彼らがやってくるのだろうか?すっかり不安な気持ちになっていると、ちょうどそのとき、目の前の鋼鉄のドアがノックされたので、ビクッとして思わず心臓が止まりそうになった。
「302号の××さん、教誨師の○○と申します。初めてお目にかかります」。
そう言って、ドアを開けて入ってきたのは、黒い袈裟に身を包んだ、痩せて長身の男だった。青々とした坊主頭に度の強い眼鏡をかけている。年のころは40前後に見える。
「さっきは少し驚いたのではありませんか?お隣の部屋の人が、たまたま今日『執行』されるようで」
「『執行』って、いったい何を『執行』されるんですか?」
慌てて尋ねるわたしを、教誨師と名乗る男は訝しげな顔をしてしばし見つめたあと、質問には答えずに、机の傍らの畳の上に、わたしと向き合うように正座した。
「このごろよく眠れますか?食事も普通に摂れていますか?」
「大丈夫、よく眠れているし食欲も十分あります。そんなことはいいですから、わたしの質問に答えて下さい。『執行』っていったい何のことですか?」
すると、その男はわたしから目を逸らし、誰に言うともなくこう呟いたのだ。
「かわいそうに…死刑を目前にして、精神のバランスをすっかり崩してしまったようだ。ひょっとすると、自分がどんな大罪を犯したのかさえ記憶から消えているかもしれない」
「ちょっと待って下さい!なぜわたしが処刑されなきゃならないんですか?何も悪いことはしていないのに!身に覚えのない罪で死刑になるなんて冤罪もいいところじゃないですか!」
わめきたてるわたしを前にして、きっと、どこかのお寺の住職で、かつ教誨師も兼ねているのだろう、その男はいかにもベテランの宗教家といった雰囲気で
「やっぱり思った通りだ。こういったケースにはとっておきの説得方法がある」
と独り言を呟くと、わたしに向き直ってこんこんと話し始めた。
「いいですか、あなたがご自分の罪に身に覚えがないならそれで結構。安心して下さい。なぜなら、死者をお裁きになる閻魔大王様は、そうした場合に備えて、充実した再審制度を構築しておられるからです。もともと大王様は人間たちが下す判決など、大して信じておられません。ご存知のとおり、日本でも裁判の三審制を採用しておりますが、にもかかわらず相変わらず冤罪が引き起こされており、しかも一度刑が確定してしまうと再審への道のりは限りなく遠い、というのが実情です。ですから慈悲の心にあふれた地蔵菩薩様の化身であられる大王様は、無実の人間が死んだ後も地獄の業火に焼かれずにすむよう、閻魔庁直属の優秀な弁護士の助けを借りて、その人間が現世で受けた刑罰を吟味し直し、もし誤りがあれば無罪として極楽に入れるよう手筈を整えてくださるのです。どうです?安心しましたか?えっ、どうしてわたしが現世にいながら閻魔大王様のお裁きについてこんなに詳しいか、ですって?よくわたしの仕事を想像してみて下さい。檀家の方から『家族の臨終が近い』と連絡を受けて大急ぎで駆けつけたところ、そのご家族が三途の川を渡る一歩手前からこの世にもどってくる、息を吹きかえす、といった臨死体験に立ち会ったことは、一度や二度ではありません。そうした体験をお持ちの方々に、あの世にいたわずかの時間に聞いた話を書いて頂き、それらをつなぎ合わせると、今お話ししたような再審制度が設けられていることがわかったのです。どうです、安心したでしょう!ですから、どうか心静かに刑場の露と消えて下さい。お願い致します」
「そんなおかしな論法で煙に巻かないでください!だいたいわたしが死ななければいけないことに変わりないじゃないですか!あっ、ちょっと待って下さい。都合が悪くなると逃げ出すんですか?」
教誨師は必死に食い下がる私を一顧だにせず、素早く独房を出るとドアを施錠し、瞬く間に廊下を立ち去っていった。破れかぶれになったわたしは、鉄格子を握りしめドアを前後に激しく揺さぶったが、そんなことで外に出られるわけもない。その上、例の水滴のポタッ、ポタッ、という音が、妙にはっきりと、いっそう不吉に聞こえ始め、耐えられなくなったわたしはとうとう恐怖の叫び声を上げてしまった―
―その途端、アパートの自室でちゃぶ台にもたれ掛かって眠り込んでいる自分自身に気がついた。どうやら再審制度について書かれた新聞記事を読んでいるうちに寝入ってしまったらしい。夢の中でしきりに聞こえていたあの音の原因もわかった。台所の水道の蛇口をしっかり閉めていなかったのだ。
まだ夜明けまでには間がありそうだ。蛇口を閉め直して布団にもぐりこもう。今度は多少なりとも楽しい夢を見るとしよう。
私はあの人が好き
同じクラスのサッカー部のキャプテン
いつも輝いている いつも笑顔
私はあの人をいつも遠くからみているだけ
彼女さんいるのかな?
私のこと どう思っているかな?
あの人を想うと胸が痛い 胸がいっぱい
好きと言いたい でも恥ずかしい
勇気を出して告白したい でも恥ずかしい
どうしよう私の中で告白と恥ずかしいが
混ざりあって頭がいっぱい
勇気をだして告白をしよう
学校の帰りにあの人に声をかけた
「一緒に帰ろうよ」
「うん いいよ」
2人一緒に校門をでて駅に歩き出した
私は「あのね」と言って立ち止まった
あの人の目を見て「好き 付き合って下さい」
勇気を振り絞って言った
しばらくの沈黙
心中で「ふられちゃった」と思い
泣き顔で一粒の涙が流れた
どれくらいの時間がたったかな
すごく長い時間が過ぎたと思っていると
「俺も前から好きだよ 付き合って」
と言われた 信じられなかった
でも現実
私のふた粒目の涙は嬉し泣きの涙になった
もう涙が止まらない
泣きながら「ありがとう」と言えた
彼は私の涙をそっと拭いてくれながら
「よろしくね」とやさしい笑顔をくれた
私の初めての彼 初めての大好きな人
私は胸の痛みが吹き飛んだ
私の胸は彼の事でいっぱい
彼が手をつないでくれた
ずっとずっと時間よとまれ
りゅうさん、お先に失礼します。
「風に乗る金木犀」上田一眞さん
上田さん、ようやく長い夏が終わり、日本も秋めいてきましたよね。
金木犀の香りってとても濃厚でスマホを覆うような感じというのがとても共感しました。その濃密で静かなものを早朝に感じながら詩情に包まれていく情景でした。佳作一歩手前です。
この詩は上田さんの作品の中では短いものに分類されると思います。ですから、この詩はさりげなく一部の隙もあってはなりません(笑顔で書いています)さあ、私がどこが気になったか、ここで上田さん、考えてみてくださいね。一つ目は直して欲しいなと思う部分です。これは冒頭一行目の「秋色も色濃くなって来ると」です。秋色も色濃くなって、は他の書き方に変えてみてほしいなと感じます。色濃くという言葉に変化をつけるのがいいのかなと思います。いろいろありますよね。重みを増す、深く沈む、たっぷりと濃さを増す、色濃くなるでは少し直球すぎるように思います。特に、色という文字が重なっていたため気になりました。ご一考ください。もうひとつは参考までに。四連目の始まりの「でも」なのですが、物語を紡げないけれどこの香りが好きだ、のつなぎに置かれたのだと思います。ただ、もしかしたらなくてもいいかもしれません。ないほうがリズムがいいような気がしています。これは好みなので、参考までに。上田さん、最終連がとても良かったです。この連がこの短い作品をギュッと引き締めていますね。
「怨念」秋乃夕陽さん
秋乃さん、こんにちは。秋乃さんのペンネームの季節ですね。
こちらの作品は日常の風景の中での出来事に源氏物語の夕顔の君が映し出されてくる、という日常の中に広がる大きな世界を描いたものでその世界観がとても良いと思います。日常の一場面から大きなものが見えることって実際あります。そしてそれってすごく不思議な感覚ですよね。それがよく描かれていると思いました。大作になっていますがよくまとめられていますね。応援の意味を込めて、佳作2歩手前です。この2歩ですが、少し提案というか、やってみてほしいなと思うことを書きます。ひとつ目、この作品は比較的ボリュームがあるのと、登場人物と内容に引き込まれていくため、最後まで来て冒頭の湯船に戻るところで足元をすくわれたように感じました。というのは、冒頭の湯船のことをうっかり忘れてしまっていたんです。それで、最後の湯船が唐突に感じてしまいました。最初に戻って、ああここが始まりだったのだと思い出したのですが、私のようなうっかり者のために、今のあっさりした冒頭から少し重みを持たせて書くと良いかもしれません。湯船に浸かっている情景の描写を少し混ぜる感じです。そこで、最後に出てくる湯気を何気なく描いておくのもありだと思います。最初は何気ない湯気だったのが、最後に深い意味を持つものになる、感じでしょうか。ご一考くださいね。もうひとつ、見知らぬ女性が現れて座っていく過程ですが、もう少しあっさりまとめてみると良いかもしれません。近くに座ったことと年齢が30代前後だということカウンターにいること、がわかればいいのかなと。そして座った後にどっと話し始めることが際立てば良いと思いました。その人は、主人公が会計をすることで話を遮られたから怨念を送ってきたのか、それは主人公が読んでいた源氏物語の幻影を負っていたせいなのか、その辺りにボリュームを持たせるとさらにバランスが良くなりますね。いろいろ書きましたけれど、この作品がとても好きです。良いと思います。そして、時間をかけて推敲してよりよくしていってほしいなと応援しています。
「「箒星」の意味を調べても。」松本福広さん
松本さん、こんにちは。お待たせしました。
こちらの作品のストーリー、とても良いですね。特に三連目にある「星と星のコラージュで綺麗な嘘を作る」という一行に心惹かれました。この一行が最高に良いと思います。この一行への敬意を込めて、佳作一歩手前です。次回から厳しくなります。というわけで2つアドバイスを。ひとつ目、句読点ですが、この作品はない方がいいように思います。「。」の位置に意外と左右されて読んでいる自分に気づいたからです。気持ち的にここで切らずに読みたいなと思う箇所に「。」がついていることがありました。ご一考ください。ふたつ目、秋乃さんのところにも書きましたが、全体的に推敲をもう少ししていただけると良いと思います。これは時間をおいて何度もしてください。いらない言葉、足りない言葉、見つけてください。全体のストーリーがとても素敵なのであまり気になりませんでしたが、松本さんが加えたいものというのが溢れていて、少しわかりにくい点があったことは否めません。ご自身で時間をおいて(ここ大事)読み直してみて、手を入れていく、それによってこの作品はものすごく良いものになると確信していますのでやってみてくださいね。
「登校」ベルさん
ベルさん、こんにちは。お待たせしました。
通勤(かな)途中に車の中から見た風景に心を動かされた優しい作品に私の心も動かされました。とても柔らかな感情の流れが良いと思います。この作品は素敵な要素が詰まっていますので、少しだけアドバイスさせてください。何より一番心に残るのは、三連です。三連目の冒頭の二行が特に素敵。それをバックミラー越しに見守ることも素敵です。それで、この最後の二行を少し工夫してみると良いと感じました。「バックミラーに映る女の子を見て・そう思った」ですが、例えば、バックミラーに映る黄色い傘に・そう願った、とか、女の子を示唆するものに置き換えてみると良いかもしれません。ご一考くださいね。(これは確認ですが、バックミラー越しだったのかな?サイドミラー?どっちかなと思ったのです。これは蛇足ですが、自分自身がサイドミラーの方でよく後方の情景を見るのでちょっと気になりました。これは本当蛇足です。)
こちらも日常のほんの短い時間から広がっていく情景ですね。素敵でした。
「運命のバス」相野零次さん
相野さん、こんにちは。
あらこれは本当に運命のバスですね。タイトルに納得しました。この恋を応援したくなるので、佳作二歩手前です。二つ書きますね。ひとつ目、作品の形式を少し考えてみてください。冒頭一連目の雰囲気で行分けをしていくのが良いのではないかなと思っています。そうした場合、句読点をなくしてみてはどうかな。ふたつ目、「僕」の一人語りなので、「僕」を減らしてみてください。主語を書かなくても通じるところがたくさんあると思います。これを減らすことで読んでいる人に任せることのできる部分ができます。それは間みたいになって良い効果をもたらします。間、ができてくると、とても良くなってくるんじゃないかな。相野さんも次回から少し厳しくなりますので、ご承知おきくださいね。
::::::
終わりに。我が物顔に秋空が見下す英国よりお届けしました。
みなさま、秋を楽しまれてくださいね。
前日降り続いた雨は畑を潤し
昨日一昨日のひび割れた白っぽい地面とは
打って変わって
まるで沼地のように
どろっと水を豊富に含んだ地となっていた
そこから生える緑色の若い芽は
眩しそうに群れながら生え
ジョウロで水を与えるごとに
水滴を弾きながらより鮮やかに輝く
小松菜
キクナ
カブラ
ラディッシュ
大根
白菜
水菜
柔らかな可愛い手のような葉を広げて
精一杯陽射しを受け止めている
そのどこまでも伸びてゆこうとする生命力
小さな命は私の心をくすぐり
よりいっそう育ててゆきたい意欲を持たせる
水やりだけでは飽き足らず
ぬかるんだ土から
生えすぎた小松菜の葉を間引いたり
発育を邪魔する雑草は引き抜いたりしているうちに
時間はあっという間に過ぎてゆく
畑に来たのが十二時前ぐらいだったのが
いつのまにか十四時過ぎになっていた
心地よい風が頬を撫で
疲労というよりも充足感が胸を撫で下ろす
熱った頬に伝う汗を手の甲で拭いながら
泥まみれの長靴も手袋もTシャツもズボンも
我が子を育てている証なのだと
君への思いが足りなくて
君と別れた十字路が
飛行機窓から見下ろすと
山に刻まれた十字架に見える
背負うべきものを捨てて
重力に逆らっても
胸の奥の重い想いが
重い錘の重しの下で
受け止めきれずに散乱している
これらの想いを知性を盾に
言い訳へと変換して
全てを無かったことにしたら
山に刻まれた十字架が窓枠に変わった
君の父になるべきだった
君を救う者になるべきだった
対等という言葉に隠れて
責任から逃げていた
勝ち負けではなく、守るべきものがあった
生き死にではなく、生き抜く理由があった
堕ちるべき場所は空ではなく、大地だった
「あれは大地の窓か」
俺は飛び出す方向を間違えたのだ
迷いを捨て、これからは父として生きる
後悔の旅ではなく、覚悟の道を進む
詩の評ありがとうございます。今回は短い詩に挑戦してみました。初めは短すぎて読み手に伝わらないと思い、推敲の末、第1連で状況の説明を加えたのですが、かえって地味になってしまいました。短い場合は、読み手の想像に委ねても良かったのかもしれません。難しいですね。一人で作っているのに、他者とのコミュニケーションの練習をしているみたいで面白いです。
こころの闇に棲む
黒い犬
〈うつ〉という名の狂犬に
追いたてられ
列車に飛び乗った
仕事を放り出し
家庭を顧みず 独りよがりな
各駅停車の鉄道の旅
旅の途中
千切れたこころを掻き集めようと
藻掻きに藻掻く
医者には止められているが
もうスコッチを一本あけてしまった
ごとん
ごとん
ごとん
レールが軋み
うとうとしていると
列車が止まる
肥前山口 *1
ああ ここは…
脳髄はたちまち九歳のわらべに
立ち戻る
*
年一回の家族旅行
今年は九州だ
博多発長崎行きの急行列車
四人で対面式の席に座る
床に新聞紙を引いてもらうと
ここ座れるね
みいちゃんの席よ
幼い妹は無邪気にはしゃぐ
到着する前の車内案内
次は 肥前山口〜
聞き慣れない九州訛が色濃く
響く
ここは父の恩師が住む街
師を訪ねる旅に
父が笑い
母が微笑む
あり余る幸せの旅
そして 僕は
燕舞う
豊饒の大地
緑の佐賀平野を満喫する
*
僕には温かい寝床も
身を包む団欒もない
孤独の花を持つ左手が微かに震える
崩れ落ちた追憶
せつなさがただよい
帰ることのできない過去に
おぼろな自分が見える
なぜ肥前山口で下車?
ただ 佐賀平野のクリークが見たくなった
親子四人で訪れた
和蘭芥子が咲き
小鮒泳ぐ里
幸せを感得できた大地
わがこころの狂い犬に怯えるいま
緑豊かな自然と
確かな幸せの記憶が
僅かな慰安を与える
南への旅路に
死への願望が霧消したとき
僕は思わず落涙した
*1 肥前山口駅 現江北駅(佐賀県)