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拙作の評ありがとうございます、かなりシロップ多めに入れてくださった甘みに感謝させていただきます。
本音を話すと、恋愛詩を書くのが苦手なんです。他の書き手の方には思うことはありません。
あくまでも、すごく個人的に偏った考え方の話です。普遍的で煌めいているテーマだけに、ひねくれ者としては綺麗にも素直に書きたくない。
みんなに共感してもらいたいんじゃない。一部にウケれば!
恋愛詩はそんな姿勢になってしまいます。
書こうとしたのは、螺旋状の立体駐車場を見て「これを詩として表現できないかなー?」と思ったのがきっかけで、それと上記の恋愛詩の姿勢に合致して今作になりました。
でも、書いてみると……うまく繋がりにくい。自分の中では繋がっているのに……この言葉を使ったら伝わるか? という四苦八苦ぶりも感じてくださったのだと思われます 苦笑
ありがとうございました!
島 秀生様 いつも丁寧な評をいただき、ありがとうございます。常に聞き役に徹していたため、母がノコンギクにこだわった真意は、実は分かっておりませんで、ちゃんと聞かないといけないと思った次第です。また、最後の連で、もう少し詳細な事情を書こうかとも思ったのですが、どういうわけか、今回は書けず、自分の中で十分整理しないまま投稿してしまったと反省しております。ノコンギクについての詳細な解説をいただきましたので、いつか、別のバージョンで書いてみようと思っております。今後ともよろしくご指導ください。
1 埼玉のさっちゃんさん 「食とは」 9/20
「手が込んでいるのに/そう見せない工夫が/随所にちりばめられている/料理下手な私にも作れそうな/錯覚を感じる」
いきなり引用しましたが、余人は知らず、僕はこの詩行をもって佳作と致します。いろいろな世界・分野でプロフェッショナルな人々がいますが、彼らの神髄はまさに上記にあると思うわけです。恐ろしく複雑なことを整理整頓して、粒立ちを良くして、シンプルに表現する。「あ、僕にも(わたしにも)できそうだな」と思って、真似してやってみる。額面似る。ても、何かが違う。その何かが彼らの領域なのでしょう。評者ミウラは詩と音楽において、そんな体験をいやというほどしております(笑)。冒頭フレーズに話を戻します。そんな事情を、この詩は料理場面においてそのフレーズによって見事に言い当てています。大変重要な気づきです。その気づきから詩は料理から食、その背景にある農業にまで意識は広がっていきます。農業の重要さと感謝もある意味、気づきでしょう。後半がちょっと急ぎ過ぎの観がありますが、まあ、いいでしょう。
さっちゃんさんには今後、自分固有の、自分なりの表現スキルを研究して頂きたいと思います。
2 松本福広さん 「立体駐車場と私の気持ち」 9/20
駐車場が舞台の詩とは珍しい。確かにタイミングと運ってありますよね。難航するとあまりかっこいいものではない。そんな駐車事情がDNAや社会や人生の縮図と絡ませながら明かされます。
3連はなかなかユニークな連想で面白いですね。5連以降に注目しましょう。自分を駐車場に喩えて、「満車状態=いろんな意味で余裕のない私」だけど、何とか頑張って「君」の居場所を確保する。だから傍にいて欲しい、ずっと居て欲しい、そんな願いでしょう。大汗かいて駐車しながら、各種要素をまじえて一生懸命書いているのは、つまるところ、「君」の為。いつでも自分の隣にいてくれること、それに尽きるわけです。そこが何とも微笑ましいです。もしも、これを恋愛詩とするならば、大変ユニークな横顔を持った作品ということです。ユニークと努力の甘め佳作を。
3 上田一眞さん 「北浦の土用波」 9/21
向津具半島も津黄港もクロ(メジナ)を調べ終わりました。しかし「むかつく」半島とは冗談のようで面白い名前ですねー。詩を読むと、釣りに慣れたベテランぶりが素人の僕にも充分伝わってきます。読みどころはやはり「小一時間ほど経った~」以降、土用波のシーンですね。これほどの高波はそう多くないそうなので、よほど運が悪かったのでしょうか。いや、運が良かったから命が助かったとは言えそうです。せっかくの釣り竿は残念でしたが―。よく波にさらわれたというケースも聞くので、お気をつけて。どちらかというとエッセイ寄りの詩といった印象ですね。佳作半歩前で。
アフターアワーズ。
終行「這々の体」(ほうほうのてい)―この語句・表現は気に入りました。なかなか書けるものじゃ
ありません。人生や読書、ベテランの味わいですね。
4 荒木章太郎さん 「ただいま」 9/21
今回は比較的短い詩です。これだけだと判然としないものが多いのですが、「人を助ける仕事に就いた」を額面通りに受け取るとするならば、例えば医師やそれに準ずる人々の思いがこの詩に近いかもしれないと思うわけです。そして視線は自己から他者へと転じている。生死について考えている気がする。そして「ただいま~おかえり」が単に挨拶に留まらず、自己の内面に深く関わって来る気がしています。「助かる~助からない」を受けての「失ったもの~生きているもの」への鎮魂と受け入れのような。両者への眼差しを感じました。静かな詩です。ただ今回、ちょっと地味で損した感無きにしもあらず、で佳作半歩前を。
5 秋乃 夕陽さん 「水浴び」 9/22
よく都市の郊外などで市民農園のようなものを見かけますが、背景はそこでのイベントのようなものでしょうか。職員や参加者が作業をして、殊に職員さんは水撒きを通り越して、水浴びといった感じなのでしょう。市の職員さんでしょうか。暑い中とはいえ、濡れて大変だったのでしょう。作品的にはもう少しトピックスが欲しいところです。例えば、どんなものを栽培しているかとか、あと「唐突に現れた客」が手つかずなので、この客はどうしたとか、職員との絡みとか、肉付けしてやるといいですね。フィクションでも構わないのです。佳作一歩前で。
6 酉果らどんさん 「雨よ止め」 9/23 初めてのかたなので、今回感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願いします。さっそくですが、1連と3連は「DO NOT」とも「~ING」とも取れるのです。
しかも2連と4連は、どちらにも対応可能になっています。読み手はどちらか分からず読んできて、5連「水滴が当たり」とタイトルを勘案して、ここで初めて(ああ、降ってるんだな)とわかります。このあたり、書き方として少し工夫が欲しいと思いました。5連以降は感性を働かせての筆致ですね。このあたり、どういう意図があるかは不明ですが、なかなかすごい情景ではあります。また、書いてみてください。
7 静間安夫さん 「もう羽ばたかないわたしのこころよ」 9/23
この詩は静間さんのものであると同時に、僕の課題でもあります。60代~70代の人々が多少なりとも思うところです。この詩はまず二元論で出発します。すなわち若い頃の精神の弾力と溌剌。それと老いた今の精神のダルなありよう。非常にオーソドックスな展開でいいと思います。
詩は「もう一度/はばたくこころを/とりもどせるだろうか?」を契機として徐々に転調していきます。今を生きる方策へ、です。僕の感触では、それ以降の詩行において何がしかのきっかけを掴んでいるようにお見受けしました。推測ですが昔と今を比較するからいけないことに気づいたようです。文中「これまでと違う何かで」「別の何かを見出す」そして「まだわからない~」以降の連にそれを感じます。端的に言えば「昔は昔、今は今!」「発想の転換」といったところでしょうか。後はそれを手掛かりに日常に当てはめて行けばいい、そんな風に感じています。考えさせられ参考になりました。佳作です。
アフターアワーズ。
この詩を読んで、感じたことをキーワード的に書いてみます。
「自由に、慌てず騒がず、静かにゆっくり、余計なことはしない、好きなことをやる」こんな感じですかねー。
8 ベルさん 「片思い」 9/23
古い言葉で恐縮ですが「友だち以上、恋人未満」というのがありました。(うまいこと、言うなあ)といった気持ちと、この詩にけっこう関わっているのではないか、と思い書きました。文中の通り「恋愛と紙一重」なんですが、僕は男女の友情は成り立つと強く思ってます。それは置いといて(笑)、
この詩は、どうも、主人公がホントは「未満も紙一重も」越えて行きたいと思っているように僕には思えます。でも越えられない。その傍証はこの詩からいくつも取れるのです。まずタイトル、「ほんのちょっと距離を置く」「ひとりで歩こう/自分に言い聞かせる」、終連。そこから引き出されるこの詩のフィーリングは「しょんぼり、やるせない、気後れ、→あきらめ」といったものでしょうか。特に終連には、言いようのない思いがよく表れています。短い詩ながらタイトルの思いがよく表出されています。よって佳作、と。
アフターアワーズ。
気後れや遠慮だとすると、相手も同じように思っているとするならば、これはもったいない話ですね。
「譲り合い」と言う事がよく言われますが、双方が譲り合うと事は運びません。この詩の主人公さんに、ベルさんから「ひと当て、当ててみれば?」と言ってやってくださいな(笑)。
評のおわりに。
今も「MY DEAR」の皆伝者にして同人のKazu.さんのことです。
脳腫瘍と失語症を抱えながらの中日詩賞奨励賞を受賞され、そして今回、新聞取材を受けられた
ことに深く感動しております。ただでさえ詩を作るのはたやすいことではないところ、ハンディキャップを持ちながらの
詩作~受賞は、病と闘いながらの努力の結晶に他なりません。「偉大」といった形容が浮かんで参ります。「不撓不屈の詩人」
と言ってもいいでしょう。あらためて敬意を表したいと存じます。そしてお大事に。ゆっくりで構いません、今後もご健筆を。
三浦志郎
2024年9月17日から9月19日までのご投稿分の感想と評です。
「ニキビ」 喜太郎さん
喜太郎さん、今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「ニキビ」の評を送らせていただきます。
短い作品ですが、惹きつける力のある作品でした。
ニキビ、私は中学生の時に顔中に出来てとても嫌な思いをしました。
当時にこの作品の中の「あなた」のような人が声をかけてくれたら
嫌な思いは一転したでしょう。
何気ない言葉、何気ないやさしさが心を救うことがあります。
大袈裟ではなくその後の人生に影響を与えることも。
<あんなに嫌だったニキビ
また出来てもいいよ
と、思えるほど主人公の心は軽やかに動きます。
読後の爽快感とあたたかさを感じた一篇でした。
御作佳作半歩手前とさせていただきます。
「不調法」 津田古星さん
津田古星さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「不調法」の評を送らせていただきます。
短編小説を読んでいるような心地になりました。
ぐっと惹きこむ力がありました。
主人公の心情がじわりと広がります。ヒリヒリとして切ない。
結ばれなかった心が寂しく揺れます。それを今の自分が
そっと掬い上げて当時の二人を俯瞰するように見つめます。
二十四歳で何もかもわかり合えることは無理だった。
お互いを慮ることが出来なかった。
<いつか謝りたい
この気持ちを抱いて
<いつも静かに話を聞くだけの私にも
真っ当な怒りがあったことを
彼は知っただろう
と、当時の自分の言葉に後悔しながらも
それでも訴えずにはいられなかった思いを認めます。
切なさは残りますが、時を経て大人になった主人公の強さを
感じられた一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。
「月景」 freeBard さん
freeBardさん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
では、御作「月景」の感想を送らせていただきます。
初連からぐっと惹きこんできます。
“心の水面”とは?と思うより先に映像が展開されていくようです。
二連目、月景のゆらめきから感じ取ったものを、優雅に表現しています。
やわらかく舞い踊っている様子を見ているような心地になります。
三連目で「私」はゆらいで景に解けます。水鏡は月景のみを映します。
理由のあるなし、心情の強弱を描かなくても伝わるものがある。
<私の情緒だけがぼんやりと
ここに在るように思われるのです
ふわりと舞って心に留まる花びらのような一篇でした。
次回のご投稿お待ちしております。
「神様と悪魔と僕」 相野零次さん
相野零次さん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみさせていただきます。ご了承ください。
では、僭越ながら御作「神様と悪魔と僕」の感想を送らせていただきます。
<僕は愛を信じない。裏切りこそが真実だ
主人公に何があったのでしょう。生きていることに苦しみを感じ
痛みを感じもがいているように見えます。
人を殺めてしまっても「僕」は救われません。裁きを受けて罰せられても
入院しても、薬を飲んでも。不安が膨らみ主人公の心より悪い方へ
導きます。
暴走していく主人公を恐ろしく感じながら、ふと思いました。
誰かを攻撃したいという気持ちと誰かを救いたいという気持ちは
表裏一体なのかもしれない、と。
人の心の複雑さが可視化されたように見える一篇でした。
またのご投稿お待ちしております。
「背中」温泉郷さん
温泉郷さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「背中」の評を送らせていただきます。
初連で、この二人の関係性がなんとなく伝わります。
主人公は相手を気遣いながら誕生日のこと伝えます。
背中を見るだけで微細な変化を感じ取り、相手の求めやすい
流れを作ります。
答えない背中の描写が秀逸で
<背中は焦りと怒りで
岩のように凝っている
読み手も「背中」を見ながら様子を伺えます。
キーボードの打つ音、速さまで聞こえてくるようです。
<何でも好きなものごちそうするけど?
<何でも好きなものでいいよ
には、答えず、
<いくらでも大丈夫!
で、背中がこっちを向きます。面白いです。
>「それは 聞き捨てならないわね」
に、
<言葉使いは少々間違っているけど
そんなことは指摘してはならない
心の中でツッコミつつ、控えるところなど
二人の力関係が見えます。
それでも怯むのではなく、むしろ楽しんでいるような
高揚感があってユーモラスに感じました。
主人公の鼻歌か口笛が聴こえそうな流れがよかったです。
御作佳作とさせていただきます。
「壊れサンダル」 小林大鬼さん
小林大鬼さん、今回ご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「壊れサンダル」の評を送らせていただきます。
<壊れサンダル引きずって
雨ん中歩いて行く
疲労感と徒労感を感じます。
この詩の主人公は台風を気にして家に
いましたが、空腹でやむなく雨の中を
出ることにします。
<傘差して向かったら
サンダルが壊れてしまう
<目当ての店は昼には店じまい
他の店々も閉じたまま
<薄暗い夜道を
泥濘んだ夜道を
心も足元も雨が染みる
夏の時期なのに寒さを感じます。心が疲弊していくようです。
壊れサンダルと主人公がひとつに繋がったような
主人公の心情と合わさったような物悲しさを感じました。
<心破れた一日
が、癒える日が来るでしょうか。少しでも心が晴れる日が
来ることを願いました。
御作佳作とさせていただきます。
おはようございます。上田です。
ハカマオニゲシ、早速画像を捜して見てみました。なるほど深紅、私の記憶にあるものもこの赤です。医療用として重要な役割をしたとありますからこれかも。
それにしても島さんはお詳しい。学者並みの知識ですね。凄いです。
駐在さんとはお隣りでもあり、代々お付き合いがありました。そういった関係の中で妙な疑われ方をしたので、父の怒りも爆発したのではと思います。
また、空気感もこんなもので特段警察だから大げさになったということはありませんでした。あっさりしてるとお感じになったのでしたら、正確にその場を再現できたと思います。
また、思い出を辿りながら書きたいと思います。高い評価、ありがとうございました。
こんばんは。
拙作『ペットボトル・ヒューマン』秀作プラスの評価ありがとうございます。
ディティール、意識できていませんでした 苦笑
美文化……書いていて、説明的すぎるかな?と思うことがあって、うん……といった感じがあり、全体的に見直したい部分ですね。
ありがとうございました!
いつもお忙しい中、評をいただき有難うございます。
今回、前半部分はわりとすらすら浮かんだのですが
後半部分ちょっと試行錯誤してたので
ラストの意図を丁寧に汲んでいただけて嬉しかったです。
乱視でも見えづらい色などが出てくるのですね!
人との会話で、ごめん色弱でちょっとわからないって初めて伝える時は
なんだか劣等感のような気持ちがとてもうっすらですが湧いてきてしまいます。
空が濃く見えるというのは思い込みですかね。それを聞いてから心なし濃くなってる気がしちゃいます笑
珍しくキュンとする詩が書けて良かったです。
また宜しくお願いいたします!
有難うございました。
秀作の評ありがとうございました。やっと、初めて佳作を超えることができました。着地点が分からなくなったり、まとまらなくなったら主訴に立ち返る。最初に戻ることが大切なのですね。勉強になります。本作とはもう少し向き合ってみます。今後ともどうぞよろしくお願いします。
何を悩んでいる
僕の悩みなんてどこ吹く風で
そこに希望を見た
僕の心はどしゃ降りでも
雨をよろこぶ子どももいる
優しい笑顔のお母さん
いってらっしゃいと手を振る
後ろ姿でもそれを感じる
何度も振り返る女の子
雨ガッパに傘を差している
僕はその横を車で通った
何でもない一日でいい
なんてことない一日でいい
女の子が無事に一日を終えて
元気に帰ってくれば
それだけでいい
バックミラーに映る女の子を見て
そう思った
ランドセルは光る
未来を照らして光る
お母さんはいつまでも見守る
きっと見えなくなったあとも
しあわせな視線の先は
他人の僕をも
あたたかい気持ちにさせてくれる
能登半島地震のあとの、この豪雨災害は、気の毒すぎます。
一番大切なものだけ仮設住宅に運んだだろうに、それが床上浸水でやられたり
買い直したばかりの車もダメになり、
生業の機械や設備も整えて再開したところだろうに、再度やられたり、
今回は地震を逃れた農地も、軒並みアウトで。
海には流木や土砂が流れ出てるので、漁業もまた当分ダメでしょう。
本当に気の毒すぎます。
立ち直る元気をどこから絞り出せばいいのか、想像もつきません。
心よりお見舞いを申し上げます。
●秋さやかさん「青」
わあー、ステキなお話ですね。なんか、キュンとくるぞ。
私も乱視起因の遠近がわからなくなる苦手な色があるのだけど、なんにせよ、自分の弱点をあなたの愛情がカバーしてくれる、共に歩んでいける世界が美しいという愛情表現が、とてもステキです。
まずもって人生を俯瞰するところまで話が来てるのがいい。
また、冒頭、
空が濃くなってきたから
もう海が近いね
の言葉が、私もちょっと不思議に思った謎かけのような言葉で、だからこそインパクトもあり、その理由が知りたくて、引き込まれるように先を読み進みます。
まあ、本人の言は、堂々巡りなものでしたが、これを契機に作者の色弱の話に派生していきます。子どもの頃、メガネ屋に行って、でも買わなかった苦い思い出がある。
しかしながら今、色弱でも困らない理由として、あなたがいる。愛情の話へと繋がっていきます。
また、ラストの3連もキレイですよね。
絵筆からこぼれる
一滴のように
あなたの詩情が
わたしの空を
青く深めてゆく
色彩弱く見えている作者の視界は、あなたの言葉(詩情)によって、鮮やかな色に変えられてゆきます。
そして、この終盤において「空」は、今見えている空だけでなく、二人の人生の空もまた、そのようであるという暗示に富んでいる。両方を比喩した、とても美しい表現だと思います。
名作&代表作入りを。
●温泉郷さん「ノコンギク」
ノコンギクは、いわゆる「野菊」(俗称)の中でも代表的なものですね。漢字を当てるなら、野菊の紺色(ホントは紫)のものってことで「野紺菊」の漢字が当てられますが、一般的にカタカナなので、この詩においてもカタカナでいいと思います。地下茎を伸ばして増えていったということなので、まさにそれでしょうね。キク科ですが、キク属でなくシオン(アスター)属になります。
紫色ですが園芸店で見られるアズマギクともまた違う種なんです。
ノコンギクは、日本全国で見られる野生化したものですから、これを鉢植えにされる方は珍しい。このこと一つを取ってみても、この花に何か思い入れがあるのだろうと想像できます。もしかしたら、その昔話と繋がっているのか、あるいは日本に戻ってきた当初に、印象深く残っているものなのかもしれません。共通項としての「ちぎられて、捨てられて」のキーの役割を担っているものではありますが、この花自体にまつわるエピソードや好きな理由もなにかありそうに思えて、ちょっと気になるところではあります。
引っ越しの折に、花の鉢を周囲の人にもらってもらったというのは、とても丁寧な行動ですね。ペットでさえ、保健所に渡しちゃう人が多い昨今ですから。
「昔話」については、なにかありそうな伏線を張られてたので、何が来るのだろうと思いながら読み進みましたが、ラスト2連で待ち受けていたのは、よもやの話でした。
そもそも日本国内での生活がとても貧しかったから、新天地を求めて大陸に渡った人が多いのです。戦争終盤に至るまでは、あちらでの生活の方が豊かだったと話す人も多いです。そのせいか、この世代の人には、あちらの地で生まれたという日本人も、少なからずおられます。
しかしながら、戦争に負けると状況は一変。現地の人の態度も豹変し、命からがら逃げ出すことになります。捕まったら命はない、という状況の中、すし詰め状態で引き揚げ船に乗り込むことになります。終連の記憶は、その時の出来事なのでありましょう。
犠牲になったのは民間人かしら? 逃げてるさなかに見たのかしら? よもや兄弟じゃないよね? 終連、おおよその想像はつくものの、どういった人とか、どういった状況下で見たものとか、あと一歩の示唆があるとありがたいです。読者としては、想像しうる範囲が広すぎる状態にあるので、もう少し想像の範囲を絞れる形で提示してもらえるとベターです。
まあ、ちょっと欲張って希望を出しましたが、まずもってOKな詩ですよ。おまけ名作くらいで。
●荒木章太郎さん「選択の痕」
おもしろい作品ですね。「選択」と「洗濯」を重ねているところは無論わかりますが、階段のしみの意味するところまで、変化していくところがおもしろい。
歯をくいしばる階段の上り下りは、実生活の一部でもあるでしょうが、高層階から見下ろす君との構図は、生活の在りようを高低で比喩するかのようでもあります。
また、
君のためを思うという
悪意のようなシミったれた精神を
ずっと拒否してきたことが、「君に甘える」ということに対しても、素直になれなくしているというところは、気持ちがよくわかるところであります。
秀作あげましょう。だいぶ実力がアップしてきましたね。
この詩、よくがんばって書いてくれてるんですけどね。
一点いえば、3連で、3択があることを書いてられるんだと思うんですが、その3択と、その後の連との関係性がわかりにくい。
「選択ができない」ことから派生してる「洗濯」の話は4~6連までで終わるべきと思います。6連でいちおうオチがついてるので、そこまででよく、
終連では、「洗濯」は抜きにして、3択のうちの、どれと絡んで着地する方向になったのか、そこがわかるように書いたほうが良い。話を元に戻した方が良いです。
現状は、話が散逸していってるように見えます。現状の終連であれば、終連はカットして、その前の連で終わった方がよいです。その方が話にまとまりが出るので。
そのあたり一考してみて下さい。終連の処理だけ直したら、もう一段上がれる作になると思います。
●上田一眞さん「赤い花」
基本的に、産毛があるやつは違うはずなんですけどね。アヘンを作るケシは産毛がないらしいです。匂いもイヤな匂い系らしい。ただ、アヘンとは違う成分の麻薬でもって禁止されてるハカマオニゲシというのがあって、これは産毛もあり、深紅の大きな花を咲かせるらしいので、これの公算はなきにしもあらずです。正確なところは現物を見てみないと識別は難しい。まあ、警察からでなく(←故意にハッタリを言うことアリ)、市役所からの回答ということであれば、確かだと思います。
警察は、人を疑うのが商売ですし、先入観の塊みたいな人も多いので、不快なことを言われるケースがままあります(テレビドラマとはだいぶ違います)。お父さんが怒ったのもわかる。私も怒り心頭になったことがあるので、よーーくわかる。
それにしても、土地をさかのぼれば、いろいろな想像ができるものですね。徳山藩の医療用まで行くと、感慨深くさえあります。
また、父は知らなくとも、そもそも土地を取得し、煎餅屋をしていた祖父ならば、研究熱心な人だったので、何か知っているかもしれないとの想像も、おもしろいです。
なんというか、このあたり、時間軸をタイムトラベルをしてるみたいなところがおもしろかったです。
これ、隣が駐在所ということなので、「わざわざ警察が来た」感がないんですが、これ、離れた駐在所から、わざわざ警察が調べに来たということであれば、もっとおおごとになってたかもしれないですね。こちらの感覚としてね。
お父さんがお見事なんですが、わりとあっさり終わったところが、あっけないと言えばあっけないのです。駐在さんの出で立ちや表情など、最初の来た時の様子を、もし書けたら、もうちょい追加できるといいですね。
後半、いろんな人が登場したり、想像を大きくしたりして、楽しく読ませてもらいました。前半があっさり終わっていただけに、後半の料理の腕で引き上げた感じですね。
おまけ名作にしましょう。
●松本福広さん「ペットボトル・ヒューマン」
日常から始まり、非日常へ。大量生産、大量消費のペットボトル・シューマンの製造法が語られ、利用法やメリットが語られる。
以上を述べた上で、終盤は、それでも人間でなければできないことが語られます。全体ストーリーは申し分ないです。たいへんおもしろいお話です。
ちょい気になったのはディティールだけです。
3行目は、
どれも、もう一本も入んないよと言いたげな窮屈な声をあげていた。
これでいいと思いますよ。「言葉」でなくても、キュウキュウいう擬音が悲鳴に聞こえるってことで、こういう表現でいいと思いますね。
ここを始め、文体がもちょっと美文になるとベターです。
あと2連の製造方法のところで、ちょっと引っかかるのが、フレーク状って、チップ状のことだと思うのだけど、「減量化」っていうと、形のまま圧縮するイメージなんで、なんか文の前後でイメージが合わない感じがするのと、
「個体の能力が決まる」と言いながら、マーブル状という見た目の話で終了してるのがちょっと引っかかる。
不純物がなく、純度の高い透明の方が、命令をきく精度が上がるとか、あるいは力が強くなるとか、そういう話に着地して欲しい気がする。
要は、ここいいアイデアなので、丁寧に行きましょう。
現状、秀作プラスを。以上の点を一考してもらったら、もう一段上がれる作になると思います。