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今回も私の詩に丁寧なご感想を頂き、誠にありがとうございます。
そうですね、「主」が二つあるようで、とてもバランスが悪いですね...。
気をつけるように致します。
今後とも、どうかよろしくお願い致します。
ご感想をどうもありがとうございます。拙い詩を、丁寧にお読みくださり、また共感していただけたこと、とても嬉しかったです。
温かいお言葉に心が和み、励まされて、少しだけ自信が持てました。
小さな一歩ですが、前に進めたように感じます。
これからも、私らしく書いていけたらと思います。
好きだと言われた瞬間、僕は自爆してしまった。
なぜだかそんなことになってしまった。しんでしまったあとで後悔する。別にしななくてもよかったのに、好きだと言った子が泣いている。やっぱり生き返ろう。僕は立ち上がった。その子はやっぱり泣いていて、でも悲しいのではなく喜んでいた。
僕は精一杯の愛情を込めてその子に口づけした。
今度はその子が自爆した。いきなり眼の前が真っ赤になるとびっくりする。周りからも絶叫が聴こえた。自爆しないでよ! 僕はめいっぱい迷惑そうにしながら飛び散ったその子の残骸を掻き集めた。もういい頃合いだろう。その子はちゃんと合体して生き返ってくれた。いたずらっ子のように、ごめんね、と笑った。僕はもういちどその子に口づけした。今度は自爆しなかった。
恋をすると不死身になるという噂はほんとだった。きっと今の僕たちなら核兵器が飛んできたって平気に違いない。誰か試しにミサイルを打ってくれと言ったが、他の人がしんでしまうから駄目だと言われた。そりゃそうだ。それよりも自爆したあとの残骸をちゃんと片付けてくれと言われた。そりゃそうだ。
僕はその子……彼女かな。もう彼女と呼んでいいだろう。彼女と一緒に自爆した残骸を片付けた。
僕たちはお祝いがしたかった。せっかくしなないのだから、何かやってみようという話になって、ファイアーダンスを踊ることにした。身体にガソリンをかけて、火をつけた。安全面にはちゃんと注意をはらって、孤独なひとたちを巻き込まないように気をつけて。
ぼんっ! 一瞬で燃え上った。これが本当の愛の炎だ。僕と彼女は燃えながら手を繋いでくるくると回転した。すっかり焼き焦げて真っ黒になった頃合に、水をかけて炎を消してもらった。
炎が消えたところから一瞬で皮膚が元に戻っていく。周りから歓声があがる。僕らは本当に不死身になったのだろうか。
言い伝えによると不死身になるのは片思いが両想いになってから24時間だけらしい。
その24時間であと何回しねるか試してみるのも面白いかなと思ったが、万が一、本当にしんでしまってはいけないし、周りに心配や迷惑もかけるだろうから、それはやめにした。
そのとき、周りの大勢の人たちを押し分けて、白装束に身を包んだ一団がやってきた。改めてお祝いをさせて欲しいと言われた。どうやら恋で不死身になる存在は稀有らしい。とても縁起がいいといわれた。
どこかから神輿がやってきて、上に載って欲しいと言われた。これからお祝いの祭りをすると言われた。ぜひ参加して欲しいと言われた。僕らは照れながら了承した。
神輿が街を練り歩く。僕と彼女は屋根のてっぺんで観衆に手を振った。
そして数時間後、祭りのメインイベントが始まった。
僕と彼女とで心中するというものだった。方法はいたって簡単。僕と彼女と二人で白装束に身を包み、刃物を互いの心臓に向けて同時に突き刺すというものだった。
まだ24時間まで十分時間はある。僕らは了承した。
目の前に彼女がいる。両手で刃物をしっかりと握っている。僕らは近づいてお互いの心臓の位置を確かめ合うと、ゆっくりと刃を刺した。ずぶずぶと刃は埋まっていった。
出血多量で眼がかすむ。僕は彼女の顔を見た。にこりと彼女は笑ってくれた。僕たちはまた口づけした。なぜかはわからないが、僕らは二人そろって自爆した。
ほどなくして二人は意識を取り戻した。自爆する気はなかったので周りにお詫びをしたが、笑って許してくれた。
不死身は24時間までだから気をつけるように。と重々言われた。過去、24時間過ぎていたことに気づかずにしんでしまった例があるらしい。僕らは肝に銘じた。もう死んでみせる必要もないだろう。
次に僕らが死ぬときはいつだろう。願わくば天命を果たしてしにたい。そのときがいつになるかはわからない。僕が先か彼女が先かわからない。でもそのときがきたら穏やかに迎えたいと思う。
三浦志郎さま 評ありがとうございました。
正常巡航とおっしゃられて喜ぶべきかもしれませんが、
筆者としてはマンネリ感を感じています。
また変なところへ軌道がそれるかもしれませんが、
そのときは軌道修正のアドバイスをお願いいたします。
島 秀生さま 評ありがとうございます。
作者としてはいくつかの部屋が連なっており
そこをぐるぐる回りながら合体や変化を繰り返しているイメージです。
でもそこまで描き切れていないので、
島さまのおっしゃる通りひとつの部屋で完結するほうがいいですね。
いつもお世話になっております。
今回も丁寧な評と感想を頂きまして誠にありがとうございます!
終行の心の動きにつきまして、読み手に様々な想像を巡らせてもらう表現を考えてみました。そこを注目して貰えて良かったです。
しかしご指摘のように、その終行に至るまでの内容を簡略化し過ぎました。
少ない連でどのくらい表現を出来るかと考えていたのですが、短い詩での表現はとても難しいものだとより実感致しました。
次は情景・心象・描写等、じっくりと考えて表現できればと思っております。
次回の投稿の際も、ご指摘ご指導をどうぞ宜しくお願いいたします!
1 晶子さん 「嘘つきキツツキ」 9/19
(久し振りなんで不確かだけど、こんな作風は珍しいんじゃないかな?)―そんな風に思ってます。
奇譚と言っていい。とにかく、全てが奇想天外です。ただし、ひとつの場面に限定し、そこに向けて全ての出来事、セリフが機能しています。これは良い傾向と思います。「古今和歌集 仮名序」は全く奇妙な参入で、意図がわかりませんでした。ただし、話の転換点にはなっているようです。それ以降の会話部分では少し心が和みますが、やがて声がしなくなります。おそらく死んだのでしょう。終連は亡くなったことを、裏側から述べているように解釈しました。そう思うと、これはとても悲しい作品とも言えそうです。こういう作品は着地というか結末の付け方が難しいのですが、中規模サイズの中で、なかなかの結末具合を見せています。
タイトルについて。韻を踏み、語呂がいい。名詞としてもユニークでした。ただ、タイトル考えずに思い通りに書いてみて、最後に後付けした印象は感じました。違ってたらごめんなさい。いえ、たとえそうだとしても、全然問題ないですね。この発想力に佳作を。
アフターアワーズ。
全くカンケーないのを覚悟で、これを読んでイメージした事件を書きます。
〇 少し以前に起きた埼玉での悲惨な事故。
〇 日航123便墜落事故の生存者証言 「あたりで人の声がしてたけど、やがてしなくなった……」
2 上原有栖さん 「フォレスト」 9/19
こちらも奇譚。「黒髪の女~森~魔女」と「親子の奇妙な関係」。このように二元的立体的に物語は進みます。語り手は「僕」。その語り手の件で指摘があるので、そちらを先に。終わり近く「その音はまるで僕のことを~」で語り手としての「僕」はここまでで、「そのままふたりは~」以降、一般的ナレーターに替わっています。ここははっきり区別したほうがいいです。つまり最後の「******」を、この間に設けて、最後は「******」失くして、詰めるだけでいいでしょう。単に表記上のことです。さて、内容のほうです。ちょっとポイントになりそうなのは、お母さんの態度の急変です。特に黒髪の女と「僕」が会ったと聞いた時です。
なにか「森~魔女」との関りを匂わせています。
そもそも最初からお母さんの振る舞いは奇妙ですよね。案外、森の魔女はお母さんかもしれない。そんな雰囲気もある本作です。
せっかく語ってくれた「僕」も最後は姿を消してしまう。お父さんもいなくなったように―。最後を一般的ナレーションに託したのは、結末として、案外正解だったかもしれない。甘め佳作を。
アフターアワーズ。
若い頃に評者がハマったホラー作家にジョン・ソールという人がいたのですが、これを読んでそんなイメージを持ちました。
3 aristotles200さん 「禁忌」 9/19
こちらも(一種の)奇譚。 勾玉について調べたのですが、ここにある禁忌や祟り、呪いのような要件はまず出て来ませんでした。
本作は非常に主観的なもので、主観的であるがゆえに詩であるとさえ言えるのですが。こういった文脈に沿うものとして、僕は特に「ご先祖は」以降注目したいです。つまり前半はそこに至るまでの序曲だという気がしてます。まさにここは呪いの世界。遺恨の象徴としての勾玉ならば、本来の意義付けを離れ、復讐のシンボルと化すでしょうね。この詩が何処まで実話で、どこからがフィクションかはわかりません。それは措きましょう。ただ、鎌倉時代は血で血を洗うような抗争史でもあるので、この詩の流れは充分考えられることです。終わりに近づくにつれ、鬼気迫るものがあります。「父の死とともに/やむを得ず」「私の連なりだ」。このあたりに事実としての凄みがありそうです。佳作です。
アフターアワーズ。
余談
鎌倉幕府終焉の地で北条高時の墓に行った事がありましたが、その卒塔婆に高倉健の名があり驚いたのですが、
調べると、俳優、故・高倉健はー傍流ながらー鎌倉北条氏の末裔であるのは確実でありました。
4 温泉郷さん 「蚊刺され坂」 9/21
こちらも奇譚といえば奇譚。不思議な詩です。たとえば、ご夫婦で、同じ場所で、同じような状態で、同じように蚊に刺された。
そんな体験を、恐ろしくイマジネーションを働かせて作った、とか?
面白いのは、人も蚊も、相見互い、お互いさま、の部分がけっこうあって、それを面白がっているフシがある点ですね。ただ、蚊のほうがメリットはありそうです。今年は暑すぎてか、来なかったようです。「今年」という事は、以前から、この場所は認知されていた?もっと不思議なのは、そのことをご夫婦はどこか憂鬱に思っているらしいのです。うーん、モチーフというか、設定に少し無理がありそうな? 佳作一歩前で。
アフターアワーズ。
そういえば、今は昔ほど、蚊に刺されなくなったような―?体質や免疫力の変化のようです。
5 相野零次さん 「疑問」 9/21
前回は相野さんにとって気の毒な評になりましたが、今回は大丈夫。
いつも通りの想像性の各種飛び交いはあり、それは相野さんの持ち味ですが、前回と比べ、今回は軌道修正され、総体的感触として”正常巡航“されている、そんな出来栄えを感じています。
「ガラス」「サイダー」など小物の使い方にクリスタルな雰囲気が味わえます。
「~とは何か?」。そんな疑問を抱え、人は考え答えようとする。当然答えはひとつじゃないし、容易に答えられない、そうやって人は人生を意志的に浪費してゆく。そういった方面において、この詩は明確です。「疑問=生きること」。これがメッセージになっています。佳作です。
6 静間安夫さん 「内水氾濫」 9/22
タイトルの「内水氾濫」は主に都市部の災害として注目されています。排水能力を越えた降雨が原因で、文中ある通り、マンホールの吹き飛びが典型としてニュースなどにも取り上げられますね。
この作品の面白い点は、この憂うべき現象を昨今の人々の心のありよう、結果としての悲惨な事件になぞらえてることです。なるほど、マンホールの蓋と人間の心の蓋、都市機能を越えた降雨と人々を襲う心への圧力は、驚くほど似ているのに気づかされます。ここまでは両者の持つ「負の部分」。しかし、この詩はそれだけでは終わらない。ちゃんと「正の部分」も示唆しているわけです。
それが「調節池」の存在。僕もこれを実際に見たことがあります。これに象徴される心の容量のこと、そして、個々の心の連帯のこと、が説かれています。その象徴事例が富士五湖のうちの三湖のことです。これは驚き!調べると「ほぼ同じ」と出て来ます。透水性の高い溶岩で隔てられているからで、地下では同じ水脈を持ってるそうです。 詩の論旨としては非常に説得力のあるものです。
強いて言うならば、表記上のことですね。読み終えて感じるのは「心→主、内水→従」なのですが、少なくとも、前半は「内水→主」の筆の勢いなんです。この表記上の「主~主」現象は、詩においては、かえってバランスがよくない気はするんですよね。静間さんの場合、ごくまれに、こういった現象が出る場合があります。急ぐ話ではありませんが、頭の隅にでも置いといてみてください。
佳作一歩前で。
7 光山登さん 「麦茶と偉人」 9/22 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
メイン対象となるのは「偉人」で統一感はあるのですが、場面がその都度、変わり、目移りします。どこに焦点を集めればよいのか、戸惑う感じです。
この「偉人」とはなんとなく大谷翔平を感じたのですが、違ってたらごめんなさい。
前作も拝読致しました。今作とずいぶん作風が違います。前者はダークネスの中にも、何か推進的な意志があります。後者はフィーリング一発で赴くままに書いた気軽さを感じます。これも「奇譚」の連なりかもしれない。正直に言うと、詩的完成度・詩的純度から言うと、明らかに前者が上なんです。じゃあ、後者は何か?あるいは、詩的レンジの広さを思うべきかもしれない。このあたり、まだ未知数なんです。従って、「また書いてみてください」ということです。
評のおわりに。
今回は都市伝説的な趣向の物が多く、それ以外の作品でもそういった要素があり、それぞれに個性があって大変興味深く拝読致しました。 「奇譚」という言葉を連発させて頂きました。ありがとうございました。 では、また。
大阪はまだ30度を境に気温が前後してますが、それでもずっと猛暑続きだったので、ずいぶん涼しくなったと喜んでおります。今年の夏は長かったですね。これから毎年、夏はこんな調子なんだろうか。
そういえば、国連総会で、「気候変動なんか起きていない。『地球温暖化』は、史上最大の詐欺だ」と吠えていた、某国の大統領がいましたね。
ちょっと気がしれません・・・・・・。
●白猫の夜さん「海原の約束」
おお、いいじゃないですか。ぐいぐい引き込んでくれますね。謎に満ちたところをぐっと引っ張り、どんでん返しもあるステキな ストーリーが良かった。クライマックスの情景も幻想的でした。また、なんでもかんでも涙と書くんじゃなく、価値ある「涙」が描かれた、いい詩でした。
また、前回希望した、「死」じゃないストーリーを書いてきてくれたのにも、感謝です。
全体しっかりと且つ丁寧に書いてくれてるし、いいと思う。名作&代表作入りを。
細かいところで2ヵ所だけ気になるところがあるんですよね。
まず初連。これは夜明け前のことであるので、3行目の「月の昇る」の語が、ちょっと気になるんです。
すこし欠けた月が西に傾く
くらいで、どうでしょうね?
それから6連。「諦観」というのは、悟りをひらいて、あるがままを見る。ものの本質を見る。みたいな意味なので、なんでもかんでも諦めたっていう、諦めの境地を意味しないんです。つまり「諦観」は、決して「前を向く」の反対語ではないんで、
諦観していた今の私が
ふわりと前を向きたがっている
は、私は凄く違和感あるんですよね。ここのニュアンスは「諦観」で、ホントにあってるんですかね?
平たい言葉でいうと、
何にも執着を持てなくなっている今の私が
ふわりと前を向きたがっている
ここは、これくらいの意味なんじゃないんでしょうか?(「断捨離」をヒントにしました。)
ちょっと、この2ヵ所だけ、一考してみて下さい。
●水井良由木さん「一度きり」
だいぶ書き慣れてる感じがします。もしかして得意とするところはそっち系なんですかね? まあ、私は初回なので、今後を拝見するとしましょう。
「投稿詩」という作品からすると、わかってらっしゃる方のようなので言いますが、本作で、ギリセーフのラインです。(ちょっとイエローかもしれません)
ここだけピックアップして置かれると、そういう印象になってしまいますが、少し時代性も持って書いているようだし、小説のストーリーの中の、一場面としてある分には、ぐっと生きてくるシーンにも思うのです。
たぶん、冒頭のモノローグに入る前に、前フリの情景が必要なんだと思いますよ。それがあるとないとで、後ろの印象も変わるんだと思います。前フリの情景があると、相関関係で、後ろももっと美を伴って読めるんじゃないですかね。
●相野零次さん「人体」
うむ、おもしろいじゃないですか。
全体、ちょっと得体の知れないところのおもしろみがあるが、いちおう「人体」という言葉で大枠のところを括ってくれてるのがいい。
正直なところ、「人体」という枠で括りきれないものも感じているんだが、得体の知れないままで終わるのでなく、いちおう「人体」というセンを入れてくれてるので、多少こぼれ落ちるものがあっても、いちおうそのヒモで括れるのがいい。それによって、詩の輪郭が見えるから。
中でも初連がバツグンにいい。初連でぐっと読者を掴んでくれます。
名作あげましょう。
一点だけあります。
3連なんですが、3行目に「隣の部屋」とあるので、1~2行目とは別の部屋があることになります。つまり部屋が2つあることになる。4行目の「その部屋」とはどっちの部屋を指していますか? 隣の部屋だとすると人体の外観だけを合体することになります。じゃあ、こっちの部屋にある内臓はどうなるんだ? みたいな腑に落ちない部分が出てきてしまいます。
私、これ、一つの部屋でいい気がするんですけどね。合体するのが、手足とかの外観だけ、というより、中に内蔵も入れて、全部を一気に組み上げるという意味の「合体」にした方が、スッキリしていいと思えるんですけどね。
その点だけ、一考してみて下さい。
でも、よくできた作品でした。バックに作者の(やや自虐的な)陰鬱なものや思考的なものも醸し出しながらの浮遊感であるので、表現として意味あるところのバラバラだったと思います。だからこそ、良かったです。
●多年音さん「自傷紀行」
おお、話の本筋部分として、テーマ性のところに視点が定まってきましたね。結果、深くなりました。良くなりました。
初連終行に「今回は全部一人で」とありますので、前回は、4連で登場する「君」と一緒だったということでしょう。いえば、想い出の場所でもあるところを、今回は一人で回ったわけですが、存外ふつうに楽しめてしまったことに驚く作者がいます。それは3連の、
楽しめた
平然と楽しめてしまった
涙するぐらいは期待したけれど
で、表現されています。
そうですね、楽しいところ、おいしいところ、美しいところは、変わらず作者にやさしかったということでしょう。案外と二人でしゃべってると気づかなかったものが、一人で集中することで、また違うものに気づいたり、発見したりすることがあります。視野が広がった、価値観が広がったという形で、前に進んだのかもしれませんね。
4連の「懐かしんでも羨みやしない」って、いい言葉ですね。その心情、ステキです。
うむ、書けてると思う。秀作あげましょう。
一つだけ言うと、
わざわざ前と同じところに行ってるという意味では、たしかに自傷的行動の一つとも言えるのだけど(「傷心旅行」というと、通常、別の場所に行くのがフツウですから、同じ場所に行くのは、たしかに自傷的ではあるのだけど)、「自傷」は特定の行為を指す場合に使われることの方が多いので、そのイメージを持たれるのを避ける意味で、ちょっとこの言葉は避けたいんですよね。なのでタイトルだけ一考してみて下さい。「再訪」的なニュアンスのあるものがいいと思う。英語でもいいし。
●上原有栖さん「夜景」
終行、まあ、フツウなら、時間が止まればいいのに、とか。夜が明けなければいいのに、とか。長引かせる方の話をするところ、この詩は「早くこの夜が明ければいいのに」と逆の言葉で終わってるところが、おもしろい。その意を深く考えさせてくれる1行ですよね。
その日いちにちで終わってしまうのが不満で、いっそ、もうさっさと終わっちまってくれ!!の逆ギレ状態なのか?? 未練が残るシーンだからこその、これ以上未練を高めさせないでくれ、の強制終了発言なのか?? その真意をいろいろ考えさせてくれるのがおもしろいし、そこでぐっと深くなる終行の1行でした。
ただ、逆な言い方すると、この詩は、現状、この1行で持ってるところがあるというか。この詩、本当は前をちゃんと書いた上で、この終行があっても、全然良かったんですが、なんでか前をすごく簡略に書いてしまってるところが残念なんですよね。
言いたいことだけは書いてるんですが、細かな情景や、それに伴う細かな心の動き・描写も不足してるので、詩が広がらないというか、映像を充分伴って来ないというか、前がちょっと簡略化しすぎてるのが残念な一作なのです。
おまけの秀作ぐらいにとどめます。
●荒木章太郎さん「雨雲の群れ」
いい感じですね。1~3連、おもしろく読みました。
自身が、この国に感じる思いや思考も、ちゃんとバックに感じさせてくれながらの、アイロニーを含んだ比喩になっています。
ただねえー、そこまではいいんだけど、もうちょっと続きが読みたかったなと思いました。もうちょっと粘って欲しかったというか。
せめて終連に入る前に
この国は
あちらもこちらも
ずぶ濡れじゃないか
の1連くらい、追加して欲しかったかな。
まあ、3連までは良かったんで、おまけの秀作にしておきましょう。
●温泉郷さん「姉妹を測る」
まあ、謎かけで、故意に答えをじらしてるとも取れるので、このままでもOKではあるのですが、いちおう言うとね。
5人姉妹の
長女 5センチ3ミリ
二女 4センチ2ミリ
三女 3センチ7ミリ
四女 2センチ2ミリ
末っ子 1センチ3ミリ
何でもかんでも
物差しで測っては
ノートにつけていた息子の
記録を見つけた
測っていたのは
息子が生まれる前
サンクトペテルブルクで買ってきた
玄関先の小さなマトリョーシカ
ほかにも
鉢植え、コップ、掃除機の高さなど…
下手なイラストもある
小さな末っ子は
よく転んでいるのを
出かけ際に
妻が立てなおしている
と、この並びにする方がノーマルではあります。スムーズさだけでいうとね。
この詩って、マトリョーシカがメインであるかに見せて、本当のメインは
何でもかんでも
測っていた息子
の話にあるので、
ほかにも
鉢植え、コップ、掃除機の高さなど…
下手なイラストもある
の3行のところが抜けないんですよね。案外と、ここが必須で必要となる詩であるので。
でも、流れだけをいうと、本当はこの3行がなければ、原文のままでも、ピタリ収まってる詩なんです。
しかしながら、この3行を入れたいんで、前半ちょっと並びがややこしくなってるわけです。
それにしても、息子さんは、流体力学でもないのかな? 物理の中でも見えないものを計測やら観測やらするような、例えばスーパーカミオカンデみたいな世界の仕事をされてるのかもしれませんね。凄いなあー
ちなみに私はこの詩で、「マトリョーシカ人形の基本は五体」、というのをやっと学ばせて頂いたところであります(算数レベル?)。
余談ですが、材質が一枚板の木でできているものであれば、湿度によって、若干の伸縮はあることと思います。まあ基本は乾燥方向に行くので、縮みはありうることと思います。日本のものであれば、狂いが出ないように、そもそも材木の段階で乾燥させてから使うんですがね、それ海外ものだから、ちゃんと乾燥させてない可能性があります。となると余計に狂いが出ますね。木は生きてますからね。
思うにこの詩、マトリョーシカも擬人化で五人姉妹で書かれていることを思うと、息子さんを筆頭に、大きくは「家族の詩」ということで、登場人物全員を括れそうです。
うむ、「家族」に思いを巡らす、いい詩でしたね。「測る」というキーワードも生きてましたし、名作を。
●aristotles200さん「水滴」
まず、初連、
雨が降っている
水滴が無数の雲で生まれ
地上で合わさる
このイマジネーションの取り方、あまり上手じゃないんですよね。
水滴が無数の雲で生まれ
のところで、水滴というより、雲の側の話になっちゃってて、視線が雲の方に行っちゃってるから、3行目と合わないんですよね。
言うと、初連のこの3行って、視線が、下・上・下とジグザクに行くんで、映像を結びにくいんです。あんまりいい初連とは言えない。ちゃんと視線を繋いで行かないと。
雨が降っている
無数の雲から生まれた水滴が
地上と合わさる
こうすると、映像が自然と繋がるでしょう? 視線をちゃんと繋いでいかないといけない(追っていかないといけない)。
また、3連、4連も水滴は複数形なので、2連だけポツンと「一滴の水滴」にしない方がいい。そこで「一滴」の定義・解釈を入れてしまうと、あくまで「一滴の水滴」として有効になり、3連以降の「無数の水滴」(複数形)の定義や解釈に流用できなくなる。そのまま持ってこれなくなる。(だって単数と複数は主語として異なるものだから)、両者をつなぐロジックがまた別途必要になってしまう。
初連から4連までは一気に行くべきところで、この時点で単数の別主語なんか、持ってこない方がいいです。
雨が降っている
無数の雲から生まれた水滴が
地上と合わさる
雨が降っている
雲から大地まで
水滴は世界を繋げる
同一化した
無数の水滴が見る夢は
天から地までのパノラマ
異質化した
無数の水滴が見る夢は
現象と実存を秘めた異世界となる
こんな感じです。
また、3連と4連を並列で置きたい時は、「水滴が」「水滴が」と、助詞を合わせたほうが、並列に見えやすくなります。
それにしても前半は、論が言いたいのが先に立ってるから、ポンポン映像が飛ぶ。丁寧に繋いでいったほうがいいです。単純に論のための置き換え語にならないようにすること。本当に理解してるなら、単語ではなくフレーズでもって意味を語れるようにすることが肝要です。その意味でも映像展開を大事にしていって下さい。
あと、大きいアスタリスクと、小さいアスタリスクで区切ってる部分があるんですが、まあ、たしかに話の展開の切り替わりではあるのだけど、aristotles200さんの場合、たぶん硬質の言葉は抜けないと思うから、硬質の言葉多めの部分と、硬質の言葉少なめの部分。つまり「硬パート」と「軟パート」の別で書いて、境目にアスタリスクを置くというスタイルを取るのも、アリです。今回の詩で言えば、「斯くして」以降は、もうちょいやれば、「軟パート」として行けそうです。今後の方向性として、そういうスタイルも提案しておきます。まだ文体に難があると思うからです。
だいぶ良くなりましたし、構想の大きい詩を書いてくれてる点は大いに買いますが、私としては、文体はまだもうちょっと工夫してほしいなと思う。秀作半歩前とします。
●ゆづはさん「ちっぽけな絶望」
ああ、私も寝込んでた体をおして、HPで水曜日診療やってることも確かめで行ったのに、実際に行ってみたら、水曜は休診だったという目にあったことあります(HPが古いままだったようです)。あれには参りました。体が弱ってた時だけに、気持ちのダメージも大きかったです。私もそんな経験があるんで、お察し致します。
ケーキ屋さんもそうですし、行きたい店が休みだった時は、スマホのメモ帳にでもメモしておきましょう。1回目はしょうがないけど、2回目イタイ目に合わないで済みます。人間て、バイオリズムがあるから、気持ちのローテーション的に、食べたくなる日が、ちょうどお休みの日と重なるってことがあるのは、わからんでもないです。その時は、スマホのメモを見て、踏みとどまりましょう。( ← なんか、半分、自分に言ってるところもありますが。)
1連、2連のツイテナイ事例のあとに、3連で「どうして今日なんだろう」の心情を語っていってくれてるのは、1~2連で例を上手に語ってくれてるだけに、スルッと入れますね。
また、そうした心が折れる日が連続すると、より深化して(ドロ沼化して?)、自分だけが取り残された気持ちになるという、4連の心情にも察せられるところがあり、思いが至るところです。
ラスト3連、風景で終わるのもいいですね。「小さな歩幅で」という作者らしい言葉があるのも良かった。
初回なので感想のみになりますが、この詩に関してはよく書けてますよ。特に問題は感じませんでした。この調子で書かれたらいいと思います。
人から見れば
ちっぽけなもぐらは
湿った大地をゆっくり移動する
やわらかい土を黙々と掘り進むうちに
長く伸びた生活痕が
ずっと後ろまで続いていった
ぽっかり空いた暗いトンネルでは━━
頑固な粒ぞろいの小石がぶつかってくる
(通り道でいつも邪魔だから困ってしまう)
腐葉土のホテルはふかふかに発酵していた
(食事と寝床はここに決めている)
濡れたティッシュが鼻先を少し湿らせた
(誰かの涙が染み込んでいたのかも)
銀色のお菓子の包み紙は誰が落としていったの
(まだ優しくて甘い香りがしたよ)
もぐらとは
土のなかをもぞもぞ動く
いつも腹を空かせている小さき生き物
前へ前へと 開いた手で器用に掻き進むけれど
掘れば掘るほどに腹が空いてしまうのだ
このまま死にたくないから
餌のミミズを探して穴をもっと深くした
人が生きているのは土の上
モグラが暮らすのは土の下
立場は違えども 緊張に晒されている
それぞれの場所で生き抜くために
今日もお互い もがき続ける
*********
(補足)
・もぐらは大食漢。毎日、体重の約半分にあたる餌を食事として摂らなければいけない。
12時間以上食事をしないと餓死してしまうとも言われている。
・もぐらは縄張り意識が強い生き物である。2匹のもぐらが出会うと喧嘩が始まり、負けた方は住処から追いやられ食事が出来ずに命を落としてしまうこともあるという。