互選結果発表
8月句会の結果を発表します。8月のトップはダイアナさんの「広島忌」の句で10点を集めました。続いて尾花さんの「風鈴」の句で7点、にゃんこさんの「原爆忌」の句、アイビーの「端居」の句、弥生さんの「新涼」の句が6点で並びました。以下、5点句には7句が並ぶ激戦でした。
10点句 10 小六の語り部ガイド広島忌 (ダイアナ)
7点句 87 風鈴にふれてにこにこ抱つこの子 (尾花)
6点句 4 サイレンへ風止まる街原爆忌 (にゃんこ)
6点句 42 端居して世の喧騒と距離を置く (アイビー)
6点句 64 新涼や新作パンの並ぶ店 (弥生)
個人別総合ではにゃんこさんが20点でトップでした。
8月度みんなのネット俳句会・清記一覧 特選2点、並選1点で計算。 7・8・14
1 止まらないポテトチップス秋涼し
2 八十路来て良き汗かける幸せを (てつを) 2 ラガー、茶々、
3 迎え火の吠え出す犬と男の子
4 サイレンへ風止まる街原爆忌 (にゃんこ) 6 ◎えっちゃ、◎ちとせ、かをり、アイビ、
5 鷺の首白き紋様青田原 (和談) 2 ◎ヨヨ、
6 しんがりの船鉾雨に悠悠と (尾花) 2 ちとせ、和談、
7 緑蔭へ漢孤独な翳を曳く (ナチーサン)
8 腹当は明日の元気を約束す (コビトカバ) 1 弥生、
9 夫運転私助手席雲の峰
10 小六の語り部ガイド広島忌 (ダイアナ) 10 ふうり、えっちゃ、尾花、ちとせ、コビト、◎ヨシ、森野、茶々、ナチー、
11 好きな夢選べる未来水中花 (ヨシ) 1 玉虫、
12 平幕は元気はつらつ名古屋場所 (ラガーシャツ) 3 ◎ふうり、比延、
13 流星や幾人残る同級生 (玉虫) 2 ちとせ、ABC、
14 鉢植えに灯る夕菅ひと夜花 (森野) 1 みにょ、
15 しかけたりしかけられたり水鉄砲 (ABCヒロ) 1 比延、
16 極暑日に線香燻り香り立つ
17 つかの間の生とも知らで蝉鳴けり (みにょん) 4 ふうり、えっちゃ、茶々、ヨヨ、
18 水の日に記録的雨皮肉かな
19 鶏も卵を産まぬ極暑かな (ふうりん) 2 ちとせ、ヨシ、
20 更衣逢ひたき奴は何処やら
21 青芦の風を呼びたりあひびきし (かをり) 1 えっちゃ、
22 向日葵や凛と老人寄せ付けず (和談) 1 ヨヨ、
23
24 ほおずきやほの口をして吹き鳴らす (弥生) 2 ◎にゃん、
25 夕菅や湖に暮れゆく比良比叡 (てつを) 3 みにょ、森野、比延、
26 向日葵や人と違ふと吸えぬ息 (コビトカバ) 1 玉虫、
27 夕暮れへ秋は密かに紛れ込む (にゃんこ) 5 ◎てつを、森野、和談、弥生、
28 水着着て昭和モダンの砂スキー (アイビー) 1 和談、
29 鉾の輪に噛ませたる梃子木屑とぶ (尾花) 2 ダイア、アイビ、
30 立つ秋や季節は歪み飛来せず
31 暑くなる予感小石に躓けり (ナチーサン) 4 尾花、ヨシ、玉虫、アイビ、
32 闇深き夫の故郷や天の川 (玉虫) 2 ラガー、ダイア、
33 今朝の秋雨は田畑を潤さず
34 夏草は胸の丈までここ空き家 (ABCヒロ) 3 みにょ、てつを、ラガー、
35 運転は夫におまかせ雲の峰
36 夢心地推しコンサート夏の夜 (みにょん) 1 えっちゃ、
37 玄関を出れば秋津の群るる空 (森野) 2 てつを、にやん、
38 熱風浴ぶ木々も疲るる40度 (ヨヨ) 5 ちとせ、◎みにょ、ヨシ、和談、
39 新盆の供物の礼の昔めく (比延) 1 森野、
40 長崎の鐘の復元盆供養 (茶々) 5 ふうり、えっちゃ、ABC、◎ナチー、
41 みんみんやとく眼帯のもどかしさ (かをり) 5 ちとせ、コビト、てつを、ヨシ、にゃん、
42 端居して世の喧騒と距離を置く (アイビー) 6 ダイア、◎ABC、◎比延、弥生、
43 蝉時雨背に一刀浴びにけり (和談) 2 玉虫、ヨヨ、
44 目を剥いて暑いと言ふや仁王像 (尾花) 3 ラガー、和談、比延、
45 今朝の秋ひこうき雲は茜色
46 八月の悼みごころの靴並ぶ (えっちゃんあら) 3 コビト、かをり、ナチー、
47 句集編む時の流れや梅雨湿り
48 炎天や悲鳴を上げる室外機 (てつを) 1 ヨヨ、
49 炎暑果てほっと一息夕日観る
50 無人駅風は青田を渡り来る (にゃんこ) 5 ふうり、みにょ、てつを、森野、比延、
51 炎暑なり荒れに荒れてる名古屋場所 (ラガーシャツ) 1 茶々、
52 寝室に蟷螂全身に寒気
53 老犬の座り込みたる秋暑し
54
55 語り部の白髪三千丈原爆忌
56 このセット取れば優勝蝉時雨 (ヨシ) 2 コビト、ダイア、
57 猛暑日も牌で鍛える古き脳 (みにょん) 3 えっちゃ、尾花、コビト、
58 迷い道して出会いたる花鬱金 (森野) 1 尾花、
59 母と見るプレバト俳句蚊遣香
60 師の病快癒願ひて笹飾る
61 原爆忌さらけ伝えよ世界中
62 踏み上る崩れ石段花は葉に
63 初めての町に既視感百日紅 (アイビー) 4 みにょ、ヨシ、ABC、玉虫、
64 新涼や新作パンの並ぶ店 (弥生) 6 てつを、ラガー、ダイア、◎アイビ、
65 すれ違ひざまに見上ぐる百日紅
66 向日葵は今太陽に挑みたり
67 雨の京都地につくほどに夏柳 (尾花) 3 ◎茶々、玉虫、
68 冷奴何も吸収したくない
69 ペン胼胝の名残かすかに桜桃忌 (てつを) 2 ヨシ、弥生、
70 孫を待つアロハで変身米寿なり (和談) 1 ヨヨ、
71 蚊遣香持ちつつ移動庭仕事
72 夢に入ることもできずに明易し
73 憧れて届かぬ遠さ夏茜 (ヨシ) 3 にゃん、◎玉虫、
74 面痩せの何処に立ちても夕立かな (かをり) 1 ナチー、
75 溜息を繰り返しつつ夜の秋
76 美しく儚きものに揚花火
77
78 森更けてなほ蜩の鳴き止まず (森野) 1 にゃん、
79 みちをしへ遥か先行く父の背ナ (玉虫) 4 ◎尾花、てつを、アイビ、
80 あれこれと歳時記片手に熱帯夜 (みにょん) 1 ラガー、
81 昼日向ビール三昧蝉時雨
82 マスカット一房囲む甘さかな (ふうりん) 3 かをり、茶々、弥生、
83 愛猫も興奮夏の甲子園 (茶々) 1 ABC、
84 手花火のじじと弾けてみな終る (かをり) 2 にゃん、玉虫、
85
86 表札はローマ字表記秋の薔薇 (弥生) 2 かをり、比延、
87 風鈴にふれてにこにこ抱つこの子 (尾花) 7 ちとせ、コビト、ヨシ、茶々、和談、◎弥生、
88 太陽のコロナ閉じ込めスイカ玉 (てつを) 4 コビト、かをり、ナチー、和談、
89 生き過ぎたといふ義父逝きし初の盆 (えっちゃ) 3 みにょ、◎コビト、
90 日を浴びて畑に向日葵凛と立つ
91 なまくらなこの身を嗤へ蝉時雨 (にゃんこ) 4 ◎ラガー、ダイア、ABC、
92 寝室を出たらあちらに蝉王国
93 蛍の点滅闇を争はず (ナチーサン) 2 にゃん、茶々、
94 御所東膳を揃えて生身魂 (ラガーシャツ) 1 かをり、
95 豊漁の鰯クレーンの網開く (ダイアナ) 5 えっちゃ、尾花、ABC、アイビ、弥生、
96 秋簾昭和の会話聞こえそう (ABCヒロ) 2 てつを、ナチー、
97 今の子に貧乏話終戦日 (アイビー) 1 弥生、
98 名は名古屋朝顔とあり江戸の鉢 (森野) 1 ふうり、
99 旅先で席譲られし冷房車
100 盆唄や炭坑節を繰り返し
101 熱波の水桶で伸びてる蛙の子
102 古本の書き込み侘し夜の秋 (比延) 3 ◎森野、アイビ、
103 茄子馬で迎え火求め先祖来る (ヨヨ) 2 ◎和談、
104 ひまわりも俳句も好き麻雀も (みにょん) 1 ラガー、
105 万博リングそぞろ歩めば風涼し (ふうりん) 2 尾花、ダイア、
106 夏場所や光る土俵に巨人舞ふ (和談) 1 ヨヨ、
107 ちはやぶる一生懸命蝉の声 (ラガーシャツ) 1 ふうり、
108 初穂の田雨渇望す地割れかな (ダイアナ) 2 ふうり、みにょ、
109 朝戸開く外に暑熱が横たふる (ちとせ) 2 ◎ダイア、
110
111 やわらかき野に膝をりて今朝の秋 (かをり) 3 尾花、森野、ヨヨ、
112 奪衣婆の乳房あらはに黴の堂 (アイビー) 3 かをり、ABC、ナチー、
113 唖蝉の不意に翔ちたる翅音かな
114 藍浴衣男嫌ひをとほすかな (えっちゃんあら) 5 かをり、にゃん、ナチー、比延、アイビ、
115 雷鳴に居間を離れて長電話
投句者は、ヨヨ、和談、コビトカバ、えっちゃんあら、ラガーシャツ、弥生、にゃんこ、ABCヒロ、尾花、森野、ふうりん、ヨシ、ダイアナ、ちとせ、みにょん、てつを、ナチーサン、アイビー、玉虫、茶々、比延、かをりの22名。
間違いその他不都合をご連絡下さい。
29日の正解 ①―C ②―C ③―B ④―A ナチ―サンさん、幸先よくパーフェクト。恋人の吉三に逢いたい一心で放火事件を起こした八百屋お七、西鶴の「好色五人女」や落語でもお馴染み。
第1問 かちやかちやとかなしかりけり蜆汁 山口青邨
第2問 性格が八百屋お七でシクラメン 京極杞
第3問 蛇穴を出て今年はや轢かれたり 竹中宏
第4問 悪たれの戻りてゐたる春祭 茨木和生
29日の俳句三択クイズ
お遊びの俳句三択クイズです。下記の設問の伏字のところに当てはまる言葉を三つの候補の中から選んで下さい。正解は明日の掲示板。
第1問 【①】とかなしかりけり蜆汁 山口青邨
Aちうちう Bずうずう Cかちやかちや
第2問 性格が【②】でシクラメン 京極杞陽
Aクレオパトラ B瀬戸内寂聴 C八百屋お七
第3問 蛇穴を出て今年はや【③】 竹中宏
A猫パンチ B轢かれたり C飢死にす
第4問 【④】の戻りてゐたる春祭 茨木和生
A悪たれ B級長 C親友
ヒント①碗の中で殻の触れる音かな? ②愛しい人に逢いたい一心 ③哀れだなあ ④出世がしらです
1-C
2-C
3-B
4-B
これでお願いしま~す。
1.C
2.A
3.A
4.A
今日もヒントを頼りに。どうかなぁ~
私は束さんとは面識がありませんがそのイメージは豪快で磊落、一言でいえば東男です。恐らく体格にも優れ熊とも格闘しかねない太っ腹な自然児と見受けます。
一方感受性にも優れ動植物を愛し正義を犯すものに対する義憤を禁じ得ない正義感の持ち主でもあります。このことは作品や投稿された文面からも明らかです。趣味の釣りでは魚の習性の研究や大魚の豪快な捌き方などから伺えます。地域の祭礼などへの造詣も深く地域に根強く関わって見えるようです。また大きな農場の経営や鴉の生贄への役所の対応など面白く拝見しました。今回の引退宣言に際し束さんのこれまでの業績を思うと地域の俳壇への影響は少なからずと思われます。ここまで束さんを追い詰めた原因を見極めたく思い筆を執りました。後は次回に。
体調不良のため、24日の嚶鳴庵俳句は欠席しましたが、その折の兼題、寄居虫、アスパラガスのどうなったか気になります。一体どんな句が出てきたのでしょうか。もし当掲示板の常連投稿者の方で、嚶鳴庵俳句にも出ておられたらご紹介願えませんか。その場合はいつものハンドルネームじゃなく、別の名前でよいのですがねえ。
こんなところでお茶を濁します。
やどかりのわが身ひとつで世を渡る
アスパラを明治の祖父は知らざりし
ABCヒロさんから早速に回答をいただきました。いやあ、大したものです。「窮すれば通ず」というか「火事場の馬鹿力」と言うか、驚きました。人間、尻に火がつけば大概のことはできますね。私も挑戦してみるか。
アイビーさんのリクエストにお答えしますが作者と点数はここでは伏せておきます。
寄居虫も家でまったりとはいかず
寄居虫も引越ですかご苦労さん
寄居虫の礼金敷金なきお家
片割を捜す寄居虫さ迷へり
やどかりの気まま気楽な暮らしかな
寄居虫や引っ越上手き転勤族
寄居虫や新居慣れゆく大学生
やどかりや終の棲家を模索中
寄居虫の唯我独尊てふ目玉
ゆっくりと引き屋のような寄居虫よ
寄居虫の姿見へぬや波の音
念仏に寄居虫逃ぐるばかりなり
寄居虫や家にこだわり持たぬ質
やどかりや分相応に生きており
螺髪めくアスパラガスの頭かな
数日はアスパラガスのラッシュかな
一枚の肉を巻かれてアスパラガス
ベーコンに巻かれアスパラ格を上げ
憧れの西洋の味アスパラガス
石狩のアスパラガスと呼ばれたし
様々なアスパラ触れて買う親娘
故郷を語る句友やアスパラガス
アスパラのまっすぐのびたよ竹ににて
朝採れのアスパラガスを肉巻きに
北からの荷の香の青きアスパラガス
ただ茹でただけで主役さアスパラガス
アスパラも芯が太いの頑固者
リーファーでアスパラ揺られ倭の国へ
上記のようないろいろな寄居虫とアスパラガスの句会でした。掲示板でもまた、意見交換で盛り上がれば
幸いです。
三井寺の鐘が鳴るなり桜散る(茶々)の句にアイビー主宰と束束子様の的確なご指導をいただきありがたく存じ、初心者の小生の不勉強に恥じ入る思いです。
この句を発想した背景を述べたいと思います。いま「光る君へ」のテレビドラマを見て紫式部(まひろ)に想いを馳せています。
かって西国巡礼で石山寺参拝の時に紫式部の間を拝観しました。また比叡山のついでに三井寺に立ち寄りました。弁慶引き鐘,梵鐘も見聞きしました。茶店でところてんを食べました。これらの思い出から、きっと紫式部も三井寺に参り、山桜の美しさに物語構想
練
意外なことの成り行きに驚いています。スランプは誰にもあることで、そういう時は何をどうしても5・7・5の片言も浮かんできません。ま、こっちは職業として俳句をやってませんから、出来なきゃ出来ないで済んでいきますがね。そのうち、何かの拍子に新聞俳壇に入選でもすれば、それこそ天下を取ったような気分になります。
中日俳壇の若い二人の選者は、いわゆる常連の句は採りませんね。栗田やすし、長谷川久々子先生の時は、またこの人かということがよくありました。高柳克弘、高田正子先生とは対照的です。忘れた頃に入るパターンです。
束束子さんへ。 あのうネット俳句でお名前と繋がりを自分勝手に感じていましたがお辞めになるお休みになる?でプツンと糸がきれたのかな。寂しく思います。少しの期間でしたが自分勝手に俳句の旨味を束束子さんからいっぱい貰っていました。ありがとう😆💕✨ございます。
アイビーさん 毎回のお取りまとめありがとうございます。
また4回に分けての俳句鑑賞も的を得ており、しっかりと読ませてもらってました。
「鐘」の一句 よく分かりました。 茶々さん これからも頑張って下さい。
なお 小生 かねてからの難聴に加え、体調不良により暫く休眠することにします。
無気力に加え、恒常的な微熱、傾眠(一日に約11時間も寝ている)などがあるからです。
作句への意欲減退、迷いも著しい。
中日俳壇の選者との波長が合わないこともあるが、2年間で約200句がボツになっている現実では、これ以上 この俳壇への投句は諦めることとします。 また各地区の俳句大会、募集へ応じることも止め、当掲示板も卒業させて貰うことにします。
小生の鑑賞句発表や句へのアドバイスを心待ちにしている方もあるのでしょうが、そういう方からの投稿が殆ど無い以上は「迷惑がっているんだろう」と考えますので、仕方ありません。 無言の方が これから少しでも書き込みされることを願っております。
最後になりましたがナチーサンに母子手帳の評を頂いたこと ありがとうございました。
たまたま同じフレーズが出てきたからと言って、直ちに本歌取りと言うことにはならないと思います。茶々さんの句は本歌取りには当たらないと判断されます。第一、元になる子規の句とは似ても似つきませんから。近江八景石山寺の晩鐘は古来より名高く、詩歌で取り上げられたところです。それと落花の風情がまことに調和していると感じ、私も一票入れた次第です。あくまで作品本意です。
ひとつアドバイスを申し上げるとすれば、映像や外部情報で俳句をつくるやり方を一概に否定はしませんが、この句のように、やはり実景の写生が本道かと思います。大先輩に向かって生意気なことを申しました。多謝。
追記
山桜の美しさに疲れをいやしたと想像しました。
俳句作りを想像しながら楽しんでいます。
アイビーの俳句鑑賞 その4
例によってアイビーの俳句鑑賞3原則に則った駄文。お気に障ったら平にご容赦を。
甲羅干しの陣取り落ちて亀の鳴く (ちとせ)
池や川などに亀が何匹も甲羅を干す光景をよく見る。亀の上に亀が重なったり、そうかと思うと水に嵌まったりと亀の生態は見飽きがしない。いかにも長閑な春の光景を詠まれたが、季語の「亀の鳴く」は再考願いたいところ。前半で亀の生態を描写し、後半で亀を鳴かせたら、本当に亀が鳴いたのかと読み手は判断する。勿論、現実の亀は鳴かないし、読み手の側も亀が鳴かないことは承知している。爛漫たる春の気分を象徴的に言ったものが「亀鳴く」の本意だと思う。候補として、うららけし、水ぬるむ、春の昼、等を上げてみた。
来年の再会約す花の山 (ヨシ)
待望の桜が満開だ。上々の天気に恵まれたある日、久闊の友達を誘って花見に行った。果たして期待した以上に見事な桜だったなった。十分に桜を満喫した帰り、また来年もここへ来ましょうと約束して友と別れた。もって回った難しい表現をしないで、分かり易くまとめたのが好感が持てる。ために、非常に印象のはっきりした後味のよい句になったと思う。
田楽は妻の十八番(おはこ)や味噌香る (ふうりん)
おでん(関西風に言えば関東炊き)は冬の季語だが、豆腐を短冊に切り、焼き、味噌をつけ食べる田楽、木の芽田楽は春の季語。京都を中心に関西では一流料亭で供される。妻の十八番(おはこ)と言うからには、料亭ではなく家庭料理として食べることも一般的なのだろうか。食べ物の句はおいしそうに詠むのが鉄則だが、座五の「味噌香る」が効果的で、なにやら旨そうな匂いが漂ってくるようだ。
花びらを追ふ花びらの速さかな (ナチ―サン)
一切の状況説明を省略し、水に流れる花びらの動きのみに焦点を当てる手法が成功した。上五、中七で「花びらを追ふ花びらの」とやったお手並みはまことに鮮やか、省略の極みだ。リフレイン効果もあり、緊張感のある引き締まった句になった。省略のお手本のような一句。
三井寺の鐘が鳴るなり桜散る (茶々)
近江八景のうち、名高い円城寺(三井寺)の晩鐘と落花飛花と取り合わせたところがお手柄。もっとも作者は「鐘が鳴る」としか言っておらず、晩鐘とは言っていないが、ここはどうしても晩鐘でなければおさまらない。晩鐘が落花を促すようで、雰囲気を醸し出している。「鳴るなり」と「桜散る」と切れが二つあるが、「鳴るなり」が切れ字を使った極めて強い切れ、「桜散る」も強い切れながら「鳴るなり」には及ばない。切れにも強弱があり理に適っている。
花冷えや一枚羽織り小買物 (無点)
惜しくも無点となったが、桜そのものを詠むのでなく「花冷え」というワンクッションおいた季語に挑戦した。その意欲的な姿勢を見習いたい。ただ私が気になったのは①花冷え→②寒い→③一寸外出→④何か羽織るもの と簡単に種明かしが出来てしまうことだ。そのため俳句の奥行が出て来ない憾みがある。
アイビーの俳句鑑賞 完
アイビーさんへ
花びらを追ふ花びらの速さかな (ナチ―サン)
ご講評有り難うございました。今回は桜に絞っての投稿でした。雨に挟まれた快晴の日曜日、すでに散り初めていました。花吹雪の中での句です。時折の風に急かされる様に舞う桜。アイビーさんは水面の桜と見られたようです。風や水いずれも自然の営みです。カメラを手に暫し見とれていました。感動の瞬間でした。
初案は下5を「一途にて」としましたが推敲の結果見たそのままの表現にしました。
「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」は、正岡子規の俳句。
今回のネット句会に出てきたのは
「三井寺の鐘が鳴るなり桜散る」 で寺の名前を変えて前へ持ってきた「本歌取り」
元の作品を改変して別の作品にすることを本歌取りといい、詩歌の世界で古来行われてきました。
過去には沢山あり、有名な俳人、歌人でも行ってきているが最近では珍しいことです。
<例>わが天使なるやも知れず寒雀 西東三鬼
わが天使なるやも知れぬ小雀を撃ちて硝煙嗅ぎつつ帰る 寺山修司
その良し悪しは論じないが、中7の「鐘が鳴るなり」部分があり、私は即座に外した。