互選結果発表
8月句会の結果を発表します。8月のトップはダイアナさんの「広島忌」の句で10点を集めました。続いて尾花さんの「風鈴」の句で7点、にゃんこさんの「原爆忌」の句、アイビーの「端居」の句、弥生さんの「新涼」の句が6点で並びました。以下、5点句には7句が並ぶ激戦でした。
10点句 10 小六の語り部ガイド広島忌 (ダイアナ)
7点句 87 風鈴にふれてにこにこ抱つこの子 (尾花)
6点句 4 サイレンへ風止まる街原爆忌 (にゃんこ)
6点句 42 端居して世の喧騒と距離を置く (アイビー)
6点句 64 新涼や新作パンの並ぶ店 (弥生)
個人別総合ではにゃんこさんが20点でトップでした。
8月度みんなのネット俳句会・清記一覧 特選2点、並選1点で計算。 7・8・14
1 止まらないポテトチップス秋涼し
2 八十路来て良き汗かける幸せを (てつを) 2 ラガー、茶々、
3 迎え火の吠え出す犬と男の子
4 サイレンへ風止まる街原爆忌 (にゃんこ) 6 ◎えっちゃ、◎ちとせ、かをり、アイビ、
5 鷺の首白き紋様青田原 (和談) 2 ◎ヨヨ、
6 しんがりの船鉾雨に悠悠と (尾花) 2 ちとせ、和談、
7 緑蔭へ漢孤独な翳を曳く (ナチーサン)
8 腹当は明日の元気を約束す (コビトカバ) 1 弥生、
9 夫運転私助手席雲の峰
10 小六の語り部ガイド広島忌 (ダイアナ) 10 ふうり、えっちゃ、尾花、ちとせ、コビト、◎ヨシ、森野、茶々、ナチー、
11 好きな夢選べる未来水中花 (ヨシ) 1 玉虫、
12 平幕は元気はつらつ名古屋場所 (ラガーシャツ) 3 ◎ふうり、比延、
13 流星や幾人残る同級生 (玉虫) 2 ちとせ、ABC、
14 鉢植えに灯る夕菅ひと夜花 (森野) 1 みにょ、
15 しかけたりしかけられたり水鉄砲 (ABCヒロ) 1 比延、
16 極暑日に線香燻り香り立つ
17 つかの間の生とも知らで蝉鳴けり (みにょん) 4 ふうり、えっちゃ、茶々、ヨヨ、
18 水の日に記録的雨皮肉かな
19 鶏も卵を産まぬ極暑かな (ふうりん) 2 ちとせ、ヨシ、
20 更衣逢ひたき奴は何処やら
21 青芦の風を呼びたりあひびきし (かをり) 1 えっちゃ、
22 向日葵や凛と老人寄せ付けず (和談) 1 ヨヨ、
23
24 ほおずきやほの口をして吹き鳴らす (弥生) 2 ◎にゃん、
25 夕菅や湖に暮れゆく比良比叡 (てつを) 3 みにょ、森野、比延、
26 向日葵や人と違ふと吸えぬ息 (コビトカバ) 1 玉虫、
27 夕暮れへ秋は密かに紛れ込む (にゃんこ) 5 ◎てつを、森野、和談、弥生、
28 水着着て昭和モダンの砂スキー (アイビー) 1 和談、
29 鉾の輪に噛ませたる梃子木屑とぶ (尾花) 2 ダイア、アイビ、
30 立つ秋や季節は歪み飛来せず
31 暑くなる予感小石に躓けり (ナチーサン) 4 尾花、ヨシ、玉虫、アイビ、
32 闇深き夫の故郷や天の川 (玉虫) 2 ラガー、ダイア、
33 今朝の秋雨は田畑を潤さず
34 夏草は胸の丈までここ空き家 (ABCヒロ) 3 みにょ、てつを、ラガー、
35 運転は夫におまかせ雲の峰
36 夢心地推しコンサート夏の夜 (みにょん) 1 えっちゃ、
37 玄関を出れば秋津の群るる空 (森野) 2 てつを、にやん、
38 熱風浴ぶ木々も疲るる40度 (ヨヨ) 5 ちとせ、◎みにょ、ヨシ、和談、
39 新盆の供物の礼の昔めく (比延) 1 森野、
40 長崎の鐘の復元盆供養 (茶々) 5 ふうり、えっちゃ、ABC、◎ナチー、
41 みんみんやとく眼帯のもどかしさ (かをり) 5 ちとせ、コビト、てつを、ヨシ、にゃん、
42 端居して世の喧騒と距離を置く (アイビー) 6 ダイア、◎ABC、◎比延、弥生、
43 蝉時雨背に一刀浴びにけり (和談) 2 玉虫、ヨヨ、
44 目を剥いて暑いと言ふや仁王像 (尾花) 3 ラガー、和談、比延、
45 今朝の秋ひこうき雲は茜色
46 八月の悼みごころの靴並ぶ (えっちゃんあら) 3 コビト、かをり、ナチー、
47 句集編む時の流れや梅雨湿り
48 炎天や悲鳴を上げる室外機 (てつを) 1 ヨヨ、
49 炎暑果てほっと一息夕日観る
50 無人駅風は青田を渡り来る (にゃんこ) 5 ふうり、みにょ、てつを、森野、比延、
51 炎暑なり荒れに荒れてる名古屋場所 (ラガーシャツ) 1 茶々、
52 寝室に蟷螂全身に寒気
53 老犬の座り込みたる秋暑し
54
55 語り部の白髪三千丈原爆忌
56 このセット取れば優勝蝉時雨 (ヨシ) 2 コビト、ダイア、
57 猛暑日も牌で鍛える古き脳 (みにょん) 3 えっちゃ、尾花、コビト、
58 迷い道して出会いたる花鬱金 (森野) 1 尾花、
59 母と見るプレバト俳句蚊遣香
60 師の病快癒願ひて笹飾る
61 原爆忌さらけ伝えよ世界中
62 踏み上る崩れ石段花は葉に
63 初めての町に既視感百日紅 (アイビー) 4 みにょ、ヨシ、ABC、玉虫、
64 新涼や新作パンの並ぶ店 (弥生) 6 てつを、ラガー、ダイア、◎アイビ、
65 すれ違ひざまに見上ぐる百日紅
66 向日葵は今太陽に挑みたり
67 雨の京都地につくほどに夏柳 (尾花) 3 ◎茶々、玉虫、
68 冷奴何も吸収したくない
69 ペン胼胝の名残かすかに桜桃忌 (てつを) 2 ヨシ、弥生、
70 孫を待つアロハで変身米寿なり (和談) 1 ヨヨ、
71 蚊遣香持ちつつ移動庭仕事
72 夢に入ることもできずに明易し
73 憧れて届かぬ遠さ夏茜 (ヨシ) 3 にゃん、◎玉虫、
74 面痩せの何処に立ちても夕立かな (かをり) 1 ナチー、
75 溜息を繰り返しつつ夜の秋
76 美しく儚きものに揚花火
77
78 森更けてなほ蜩の鳴き止まず (森野) 1 にゃん、
79 みちをしへ遥か先行く父の背ナ (玉虫) 4 ◎尾花、てつを、アイビ、
80 あれこれと歳時記片手に熱帯夜 (みにょん) 1 ラガー、
81 昼日向ビール三昧蝉時雨
82 マスカット一房囲む甘さかな (ふうりん) 3 かをり、茶々、弥生、
83 愛猫も興奮夏の甲子園 (茶々) 1 ABC、
84 手花火のじじと弾けてみな終る (かをり) 2 にゃん、玉虫、
85
86 表札はローマ字表記秋の薔薇 (弥生) 2 かをり、比延、
87 風鈴にふれてにこにこ抱つこの子 (尾花) 7 ちとせ、コビト、ヨシ、茶々、和談、◎弥生、
88 太陽のコロナ閉じ込めスイカ玉 (てつを) 4 コビト、かをり、ナチー、和談、
89 生き過ぎたといふ義父逝きし初の盆 (えっちゃ) 3 みにょ、◎コビト、
90 日を浴びて畑に向日葵凛と立つ
91 なまくらなこの身を嗤へ蝉時雨 (にゃんこ) 4 ◎ラガー、ダイア、ABC、
92 寝室を出たらあちらに蝉王国
93 蛍の点滅闇を争はず (ナチーサン) 2 にゃん、茶々、
94 御所東膳を揃えて生身魂 (ラガーシャツ) 1 かをり、
95 豊漁の鰯クレーンの網開く (ダイアナ) 5 えっちゃ、尾花、ABC、アイビ、弥生、
96 秋簾昭和の会話聞こえそう (ABCヒロ) 2 てつを、ナチー、
97 今の子に貧乏話終戦日 (アイビー) 1 弥生、
98 名は名古屋朝顔とあり江戸の鉢 (森野) 1 ふうり、
99 旅先で席譲られし冷房車
100 盆唄や炭坑節を繰り返し
101 熱波の水桶で伸びてる蛙の子
102 古本の書き込み侘し夜の秋 (比延) 3 ◎森野、アイビ、
103 茄子馬で迎え火求め先祖来る (ヨヨ) 2 ◎和談、
104 ひまわりも俳句も好き麻雀も (みにょん) 1 ラガー、
105 万博リングそぞろ歩めば風涼し (ふうりん) 2 尾花、ダイア、
106 夏場所や光る土俵に巨人舞ふ (和談) 1 ヨヨ、
107 ちはやぶる一生懸命蝉の声 (ラガーシャツ) 1 ふうり、
108 初穂の田雨渇望す地割れかな (ダイアナ) 2 ふうり、みにょ、
109 朝戸開く外に暑熱が横たふる (ちとせ) 2 ◎ダイア、
110
111 やわらかき野に膝をりて今朝の秋 (かをり) 3 尾花、森野、ヨヨ、
112 奪衣婆の乳房あらはに黴の堂 (アイビー) 3 かをり、ABC、ナチー、
113 唖蝉の不意に翔ちたる翅音かな
114 藍浴衣男嫌ひをとほすかな (えっちゃんあら) 5 かをり、にゃん、ナチー、比延、アイビ、
115 雷鳴に居間を離れて長電話
投句者は、ヨヨ、和談、コビトカバ、えっちゃんあら、ラガーシャツ、弥生、にゃんこ、ABCヒロ、尾花、森野、ふうりん、ヨシ、ダイアナ、ちとせ、みにょん、てつを、ナチーサン、アイビー、玉虫、茶々、比延、かをりの22名。
間違いその他不都合をご連絡下さい。
将棋棋王戦5番勝負第2局が22日高知市で行われていたが藤井聡太棋王が挑戦者増田康宏八段に140手で勝利し挑戦者をカド番に追い込んだ。この将棋先手番の増田八段が善戦したが棋王は終始余裕をもって対戦、手数は伸びたが藤井の強さが目立った一戦。
次回第3戦は3月2日新潟市で行われる。挑戦者の奮起を期待したい。
アイビーさん、私の「裃の息子~」の句を鑑賞して下さりありがとうございます😃
アイビーさんに私の心情を的確に表現して頂き、あらためて母親としてそういう気持ちだったんだ~と納得しました❗️変ですね、自分の気持ちを分からせてもらうなんて😅アイビーさんの鑑賞力です。
博学、読みの深さ、推察力、本当に自分にも少しでも備えて行きたいものです❗️
ありがとうございます。😃🙏
アイビーの俳句鑑賞 その3
末黒野や向かい側には新工場 (ちとせ)
春に害虫などを駆除するため野を焼き払った後を末黒野(すぐろの)と言う。雑草やら芒が黒焦げになっている。今も農村では部落総出で行うところが多い。農業従事者にとって、「また一年仕事が始まるのだなあ」と実感する行事だ。そんな農村にも開発の波は否応なく押し寄せる。真新しい工場が、焼野の真ん前に建設された。近代的な工場の威容と殺伐な焼野、対照的な景色は作者の創作意欲を刺激する。
茶柱のすっくと立ちて利休の忌 (ナチーサン)
時の権力者・豊臣秀吉の怒りを買い、千利休が切腹したのが2月28日(旧暦)のこと。なぜ秀吉の怒りを買ったのか、真相は藪の中だ。それゆえ様々な小説や戯曲に取り上げられてきた。しかし今日、茶道の体系の確立者として、表、裏、武者小路の三千家の祖として名声は地を覆う。この句は一見、何の関係もない茶柱を「すっく」と立たせたところが、巨大な政治権力に一歩も引かなかった利休の生きざまと重なる。茶柱と茶道、近すぎるという見方もできることはできるが…。
初場所や寝たきり母の指動く (ふうりん)
相撲のテレビ放送に、寝たきりのお母さまも熱が入り、動くはずのない指が動いた。寝たきりになっても大好きな相撲だけには反応するのだ。病状は一進一退なのだが、相撲には興味を示すお母さま。息子として、何時も傍に居てやるわけにもいかないが、少しだけ親孝行をした気分になる。誰でも避けられないことながら、衰えゆく肉親を見つめる作者の眼差しが暖かい。
リフォームの釘打つ音や日脚伸ぶ (ヨシ)
「日脚伸ぶ」という季語は、冬至が済んで「だんだん日が長くなったなあ」という、多分に気分的なもので、冬の季語になる。具体的には、日の出、日暮れの時刻から感じる。主に視覚でそれを感じるが、作者は聴覚でも感じた。リフォームの工事現場で釘打ちの音から「日脚が伸びた」ことを感受した作者の俳句センスは貴重だ。
神妙に噴き出しさうに恵方巻 (にゃんこ)
スーパーやコンビニは節分が近くなると、というより正月が終わると、もう太巻き(恵方巻)の宣伝を始める。あの太巻きの食べ方にも作法があるらしく、その年の恵方に正対し、太巻きは丸のまま食べるとかいうあれだ。作法に従いこれをやる。途中でふっと吾に返ると、間が抜けてるというかバツの悪い思いをする。どこの家庭にもある一コマを切り取って句にした。最初は真面目くさってやるところが可笑しい。
大雪や逆さ金閣鏡湖池に (茶々)
金閣寺(鹿苑寺)の境内にある池を鏡湖池(きょうこち)と言う。雪の金閣寺、鏡湖池に映る金閣寺が美しい。ハッと息を吞むような美しさで、絵画的な構図だ。ただ、これだけに留まっていてはいわゆる絵葉書俳句の誹りを免れない。免れた所以は「逆さ金閣」という言葉を入れたことに尽きよう。「逆さ金閣」そのものは既にあるフレーズだが、出自はともかく俳句に取り入れたセンスが良いと思った。
裃の息子声張り豆を撒く (ダイアナ)
息子さんは地域社会の中核に差し掛かる年代と推測される。息子さんが幼かった時、学生時代、そして結婚など様々なことが思い起こされる。それにしても頼もしく成長したことよ。そんな思いが去来するなか、裃に威儀を正した息子さんが、ひときわ声を張り上げて節分の豆撒きをしている。作者は群衆の一人として見守っている。
以下次号、不定期掲載
アイビーさん、鑑賞ありがとうございます。
以前はこの辺りでは恵方巻の習慣はなかったように思いますが、すっかり定着したようです。恵方を向いて無言で一本食べるということらしいのですが、喋るなと言われるとかえって妙な緊張感があります。
茶柱のすっくと立ちて利休の忌 (ナチーサン)
アイビーさん、拙句に鑑賞いただきありがとうございました。ご指摘の通りこのことが気になりました。季語の斡旋の場合、「即かず離れず」を今年の課題として心かけて来ましたが思うに任せません。生け花と同じで、「主と添え」の関係を保つこと、二者が競合すると共倒れになり作品としては弱くなると。この句の場合季語の問題ではなく内容の問題と思われます。今一度推敲してみます。よろしくお願いいたします。
★山椿さはに見たりき利休の忌 (森澄雄)
管理人さん、割込みますがよろしくです。
嚶鳴庵俳句教室は26日です。
兼題は、雪崩 ボブスレーです。12時50分までに兼題と当季雑詠の合計5句を提出してください。
投句用紙は規定のものがありますので、ない方には当日配ります。
難易度の高い兼題も2月、3月と残り2回になりました。それぞれに成長されたことと思います。
それは講師として本当に喜ばしいことです。
26日の句会もワイワイ楽しみましょう、万障繰り合わせの上おでかけください。
いつもご苦労様です。今月の兼題は何だか季重なりになって
しまって悪戦苦闘しておりますあと三日やり直しでーす。
今月もよろしくお願いします🙇♂️
ご苦労様です。嚶鳴庵俳句の名物・兼題は今回は「雪崩」と「ボブスレー」ですか。難問ですね。あと三日必死で無い知恵を絞ることにしましょう。
藤井棋王またまた勝ちました!
今日は仕事をしながらアベマが見られないので
棋譜情報を見てましたが中盤まではいい勝負かな
と感じてましたが終盤になった途端に藤井棋王の
ペースになりました強いねー💪
ナチーサンさん、木の芽の句の鑑賞、ありがとう御座いました❢ 小さな小さな庭ですが50余年余りの庭木に鉢物に小さな歴史が有ります。60年程前に名駅の地下街にお花屋さんが有りました。そこで潮干狩りのお礼に何でも好きな物を買ってあげると言われ10代の私は迷わず福寿草を選びました❢ その時の福寿草が今年も15.6の蕾を付けてくれています。枯れてゆくのも有ります。大好きなライラックは沢山の花を咲かせてくれましたが去年枯れてしまいました❢ 挿し木が出来ましたのでその子は頑張っています❢
ライラックちゃんでしたね。お孫さんですから。
何物にも代えがたい貴重な時を繋ぎ留めてくれる存在が身近にある幸せ。福寿草ですか、名駅の地下街でね。親はいなくともその思い出を紡いでくれる福寿草。きっと末長く素敵な庭を彩ってくれるでしょう。
福寿草さんそれとライラックさんによろしく。
アイビーさん、鑑賞有難うございました。ダイアさん、ナチーさん選句ありがとうございました。
金閣寺には、過去2回訪れ再建後は境湖池を巡りました。確かにアイビーさんご指摘のとおり「ハット息を吞むような美しさ」に打たれる池端のちょっとした高台から逆さ金閣を眺めたような記憶があります。
この俳句は最近のテレビニュースに映し出された雪の金閣寺を愛でたものです。チョット余談になりますが、人は心のもやもやは海岸で海を感じる時気持ちが安定するらしいですね。識者が言うには。金閣寺池畔の境湖池は母の胎内を思わせるような趣がある。胎児の時は皆さん逆さまでしたよね。逆さ金閣を自分と錯覚してしまうかもしれません。
アイビーの俳句鑑賞 その1
柊やほのかに香り夫(ひと)を待つ (ヨヨ)
夫との待ち合わせの場所に柊花が咲いていた。句意はそれだけのことだが、これを5・7・5に纏めると俄然雰囲気が出てくる。俳句という定型詩の妙味だろう。柊は花が咲く時は葉の角が取れて丸くなり、辺りに芳香を放つ。ここらあたりに寓意が込められている、とすれば深読みのし過ぎであろうか。上五で切れているが、切らなくても別に構わないと思う。まあ、好みの問題だが。それと「夫」と書いて「ひと」とルビが振ったが、素直に「つま」と読ませてもよかったのではないか。
絵踏寺童女の墓と刻みあり (森野)
歴史的事実としても「踏み絵」が春の季語にされるのは疑問だと思う。季語のもつ季節感が全くないからだ。アイビーの個人的な意見を述べても仕方ないことだが。絵踏寺はどこの寺か分からないが、恐らく隠れ切支丹がいた長崎県の五島列島あたりの寺と推測される。その寺に切支丹の故をもって罰せられた人の墓があった。被葬者は、刻まれた字からは童女であることが分かる。薄幸の童女の定めを思い、しばし感慨に耽る作者。淡々と事実のみを追い記述したに過ぎないが、読み手の側にかくも想像を掻き立てる、俳句の醍醐味だろう。
光るもの徐々に増えゆく雨水かな (弥生)
「雨水」は二十四節季の一つで2月19日頃に当たる。春の訪れを感じるのは気温ではなく日差しだろう。一足飛びに温かくはならないが、燦燦たる日差しは明るい。まさに「風光る」を体現するようだ。万物に光が満ち溢れる春。春を喜ぶ人々の心を詠んで過不足がない。丁度、雨水の頃にその思いが強くなる。
声高の病人ふたり日向ぼこ (塚口)
風刺がきいた一句。一体どこが病人なんだとツッコミが入るような二人。それでも、れっきとした病人なのだ。お互いの病気を嘆き慰めあっているのだが、辺りを圧する大声は、元気そのもの。三食に憂いはなく、はた目には結構な身分にしか見えない。けれども病人は病人である。現代社会の欺瞞を鋭く喝破した一句。が、嫌みがなく聞こえるのは上質のユーモアに包んでいるからだろう。
どんど焼漁師になると漁師の子 (尾花)
南知多町の師崎地区の左義長を詠んだものか。地区の5つの部落ごとに行われる左義長は、私も見たことがある。村の青年の通過儀礼の意味もあり、漁村らしい趣向を凝らした正月の行事である。村役は羽織袴に威儀を正すが、主役の青年達は褌一本で参加する。狭い村とてお互い顔なじみばかりだ。いきおい師崎中学の同窓会のノリで参加することにもなる。最近はそうでもないだろうが、漁師の息子だから、後を継いで漁師になることを当然と考える。また、世間もそれを当然視していたのである。
無駄な物捨ててしまおう春はそこ (コビトカバ)
冬の暗さから解放される春がすぐそこに来ている。春を迎えるに当たり、もろもろの足かせ手かせとなる物を、この際一掃しようと作者は考えた。この思考の過程は私ら年配者にもよく分かる。座五の季語を「春隣」「春近し」でなく「春はそこ」としたところに作者の工夫が見られる。そのために,当たりがソフトになり、俳句自体に若々しさが生まれたように思われる。
新春に夫従えて映画かな (ラガーシャツ)
昭和30年代、日本人がひたすら明日を信じて頑張っていた時代は日本映画の黄金時代でもあった。プログラムピクチャーという興行形態があり、邦画各社は年に百本近い映画を量産していた。ことに年末年始は映画館の掻き入れ時であり、ドアが閉まらないまま上映したものだ。ところがいつの頃か、映画を見なくなった。ところが正月のこととて映画を夫婦で見ることになった。もっとも奥さんの方に見たい映画があり、夫はつきあっただけなのだが。それでも久しぶりの映画である。映画の始まる前のわくわく感を久しぶりに味わったことであろう。
以下次号、不定期掲載
ラガーシャツさん、楽しいお話を有難うございます。私の実感として婦唱夫随も悪くないと思います。それにしてもドラゴンズのキャンプ地の沖縄に行かれたとは驚きました。ひととおりのドラファンの域をはるかに超えて、ドラXXの境地ですね。(XXは放送禁止用語)
アイビーさん映画の句鑑賞ありがとうございます。
ちょつと前までは俺に付いてこいの勢いでしたがこの10年程は
妻の言うなりの楽な生活を送っております。昨日まで奥方様が
熱狂的なファンのドラゴンズ沖縄キャンプに5日間行って来ました。
サイン帳を持って走り回る彼女を見てるだけの楽しい旅😀これも良し!
尾花さんへ
コロナ騒ぎ以後、簡略化したようですね。褌の若者が縦横に走り回るのが売り物なのに、肝心の若者の褌姿が見られないのは期待外れです。これでは観光客は呼べません。
コビトカバさんへ
毎月、貴女の俳句を楽しみにしています。毎月何か新しい試みをされ、読み手にもその意図が分かるのです。
鑑賞ありがとうございます!
いつも楽しみにしています^_^
春はそこは私も好きな下五だったので、良いと言って下さり嬉しいです✴︎
春は私は花粉にやられて弱りますが、ピンク色の自然たちが可愛くて好きですo(^_^)o
アイビーさん、どんど焼きの句の鑑賞をありがとうございました。
今年、褌一本の青年はお見かけしませんでした。
海風が強く寒かったので何か羽織ってしまったのかもしれません。少し残念でした。
アイビーさん
紅さしてまだ百二歳春そこに
の句を鑑賞していただきありがとうございました
百二歳になるのは私の叔母でとても明るくておしゃれな人でした
なぜだか国会中継がお気に入りでよく聞いたり見たりしてたのを思い出します 頭も歳の割にはすごくしっかりしてて私なんかより世の中のニュースに詳しかったのを昨日のことのように思い出します
とても元気だったのですが今年に入ってコロナに感染しあっけなく逝ってしまいました
皆さんにこの句を選んでいただいたことをとても嬉しく思っております
ありがとうございました
2月句会のトップ、おめでとうございます。102歳は叔母さんでしたか。コロナをこじらせてお亡くなりになられたとか、ご冥福をお祈りします。国会中継がお好きとか、愉快な明るい叔母さんだったのですね。
だうしても訛りの抜けぬ雪女(アイビーさん)
雪女といえば白く冷たく美しい妖怪で、木こりの親子の親の方に「ふぅーー」と冷気を浴びせたので死んでしまい、息子に「この事は誰にも言うな!誰かに話をすればおまえも死ぬ!」と言ったという。
雪女からすれば想定通り事を運んだと思うのだが「あーー、また訛りが出てしまった、どうしてもこの訛りが抜けなくて・・・」なんて嘆いているとしたら妖怪なのに可笑しくて。
アイビーさんの発想と創造力で楽しい雪女になりました。 名句佳句が100余りある中で、唯一見た途端クスッと(笑)きたので特選にいただきました。
拙句を鑑賞いただきありがとうございます。雪女は現実には居ないのですから、いきおいファンタジーの世界に遊ぶか、雪女に見立てた実在の女性を詠むことになります。その雪女に見立てた女性はそこそこ美人でしたが、九州訛りがひどく、何かをしゃべると幻滅です。雪女はべらべらしゃべるイメージではないのです。だからしゃべってはいけませんね。