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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

エイジさん、妻咲邦香さん、MYDEAR免許皆伝おめでとうございます!

エイジさん、妻咲邦香さ、この度はMYDEAR免許皆伝おめでとうございます!
素晴らしいですね!とてもうれしいです。
エイジさんの作品は美しいだけでなく、五感を心地よく刺激する魅力ある作品で
妻咲邦香さんは痛みもかなしみも受け止めながら昇華させる力のある詩を
お書きでお二人とも詩人として素晴らしい力を持っています。
今後はレギュラーメンバーとしてご一緒できることを光栄に思います。
これからもよろしくお願い申し上げます。

編集・削除(未編集)

水無川様、感想のお礼です。akko

私の拙い、詩ともよべないような作品に丁寧なコメントを寄せて下さりありがとうございました。
初心者は何事も始めるには好きな人の真似をすればいい、と良く言われますが、
「詩」をほとんど読んでいない私はその好きな、という詩人がまだいないのです。
こんな私ですが皆さんの作品を読ませて頂いたりして、また投稿したいと思います。
水無川様、これからもよろしくご指導ください。

編集・削除(未編集)

散髪の唄

あたまを チョッキン 刈りたくて
馴染みの店へ てくてく歩く

やあ いらっしゃい
今日も いつもくらいで いいですか?
はいはい そうしてくださいな

チョキチョキ ぱらぱら チョッキンな
脱皮してるよな ここちよさ

ちょきちょき パラパラ チョッキンな
窓からコロコロ ひかりの粒が
流れる音のリズムに あわせて踊る

目を閉じれば あの頃の
あれやこれやが 蘇る

喜び 悲しみ 憎しみやらが
はらはら ほろほろ 床に落ち
そうして そして
ちがう わたしが
鏡の中で 笑ってる

明日に向かって てくてく歩く
あらたな わたしが
鏡の中で 笑ってる

編集・削除(未編集)

うつからの帰還  上田一眞

1.糾える縄

運命を司る神は不機嫌極まりない
「禍福は糾える縄の如し」と言うが
禍々しいことばかり
連綿と続く〈禍〉から〈禍〉への連鎖
〈福〉はいずこにあるのか


2.経営悪化

会社は
ライフサイクルの終焉にある製品を抱え
代替品の開発を試みるが
ことごとく失敗

主力製品は
種々の理由から生産性が低下し
不良品の山を築いた
また もともと商品力が脆弱であったため
市場に浸透出来ず
販売不振に喘いでいた

付加価値生産性を高めることなく
のうのうと
現状にあぐらをかいて来た
歴代経営陣の無策無能が招いた所産だ

剰余金を食いつぶし
増資も期待できず
債務超過に転落
バランスシートは歪な形に堕してしまった

当然のことながら
新たな銀行融資など期待できない状況となり
キャッシュの源泉は
減価償却費に限られる始末
資金繰りに困じて
私は目の下のくまがとれなくなった


3.公私挟撃

年末 仕事納めの日 
一通のメールが
私のイントラネット端末に舞い込んだ 

内部告発だ

告発文を精査すると
品質に係わる重大事項が絡んでいた
これは危険だ
扱いを少しでも誤ると会社がふっ飛ぶぞ
そう直感し
ひとり善後策を練った

匿名のメールだったが
告発者の名を特定し
直ちに連絡をとったが会うことが適わず
新年を迎えた
お屠蘇気分にはほど遠い正月となった

本件を調べて行くうちに
組織から弾き出された男の不満が
背景にあると知った
深い遺恨がことを複雑にし
解決を難しくしていた
そして 
問題が社外に流出
ある勢力に利用されかねない状況だった
まったく度しがたい愚行だ

内部告発の件で頭を転がしていた頃
郷里の土地管理を託していた者から
農地の利水問題で連絡が入った

聞くとその者が
わが家ののれんを勝手に使い
放恣なる振る舞いをするに至って
郷里の人たちの
顰蹙を買ってしまったようなのだ

私に助勢を求めて来たのだが
身勝手で責任転嫁も甚だしく
お粗末で話しにならない
だが その人物とは縁戚でもあり
やむを得ず
解決策を模索することを応諾した

ただ 郷里とは少し離れた所に住んでおり
時間的にも自由にならない身であるので
隔靴掻痒
相手との意思疎通が図り辛かった

公と私 双方での揉めごとに
挟撃され
私は疲れ果ててしまった


4.幻覚・幻視

微睡んでは一時間ごとに覚醒める
疲れているのに眠りが浅い
うつらうつらしているとき
墓石のような顔をした〈あいつ〉が現れた

見覚えのある風貌 
そりゃそうだ 〈あいつ〉こそ
病んだおのれ自身の姿なのだから

激しい落ち込み
震える心
次第に
意欲という意欲を失って行った
希望という言葉を失くした
明日という未来が見えなくなった

ぬばたまの黒い闇から生まれ出た犬に
魂を食い破られ
その衝撃で
私の眼は一切の色彩を失った

生活の中から彩りが消え
蝶も蜻蛉も飛蝗も
黒いゴキブリに姿を変えて
ゴソゴソと心の襞を這い廻る
異形のものとなった

幻覚・幻視が日を追って酷くなり
黒い曼珠沙華の花を持つ〈あいつ〉が
頻繁に
白昼夢のごとく出現し
部屋の入口や会議室のドア前に
立ち盡くすようになった


5.混沌

T・S・エリオットではないが
四月は残酷極まる月だ

重いうつ病と診断され 出社禁止
入院を勧められたが
それを断り
ひと月ほど出勤を見合せ
病と向き合った

会社も事情を汲んで配慮してくれたが
役員である私は
長く休むことができなかった

会社の存続が危ぶまれる中
断末魔のごとく
コストカットの嵐が吹き荒れた

そんな社内事情などおかまいなしに
かねてより提起されていた
損害賠償請求訴訟は佳境に入り
被告である会社は
待ったなしの対応を迫られた

上級審での訴訟準備を進めて行く一方
内部告発に伴う
懸案の解決策を模索していた私は
何とか着地点を見つけ
軟着陸をさせようと試みたが ままならず
五里霧中の状況に陥った

難題が山積する中
敬愛する先輩役員が精神疾患で倒れ
会社を去った
右腕と頼りにしていたひとりの部下も
脳神経の病が昂じて急逝した

失った人たちの存在は大きく
心の穴埋めができないまま
辛苦の日々を送った

会社と心中して
いっそ散華してしまいたいとの思いが
強くなったのもこの頃だ
死へのいざないが夜ごと続いた


6.発癌・退職

うつとの孤独な戦いを続けているさなか
腎癌と大腸癌を次々に発症し 
入院した

そして 二度の手術を受けた
予後は思ったよりよく
回復は早かったが
罹患した癌のステージを考えたら
五年後の生存は覚束ない

さらに検査で
肺に怪しい影が見つかり
担当医から腫瘍の可能性を示唆された
転移なのか 
それとも原発性の新たな癌か
不安がよぎった

ストレスが
自分の心と身体を確実に蝕んでいた
満身創痍だ

完治しないまま職に復帰したが
それが甘かった
抗癌剤の副作用もあって
繰り返し波のように貧血に見舞われる
頭が重く 眼が回って
仕事のペースは著しく低下した
ものごとを失念することも多くなった

仕事が速いだけが取り柄の自分だ
それが機能しない以上
職に留まることは出来ない 
そう悟り
辞表を出した  

五十九歳六ヵ月での株主総会を最期に
退任
六十歳までは勤め上げようと
固く思っていただけに
無念だった


7.生還

縦糸にうつ 横糸に癌
ほつれあったこれらを解きほぐして
心の内を省察し 服薬と
ウォーキングに励む日々を送った

幸いなことに猖獗した
癌の再発はなく
うつ発症後四年目の秋を迎えた

ひとりの病葉(わくらば)が
一枚の銀杏の葉を見て
黄色に染まっていることに気づいた

蝶は蝶であることを
蜻蛉は蜻蛉であることを
飛蝗は飛蝗であることを
銀杏が黄色に色づくことを
自分の心はどこかで願っていたのだ

こんな当然のように存在した
生きとし生けるもの
わが心の友は
なんと得難い貴重なものであったことか


8.朝(あした)の光

今春で闘病十四年目を迎える
うつは厄介だ
全身から精気を奪い
性欲まで削ぎ落とす魔物だ

まさに土壺に嵌ったと実感する
もがいてももがいても脱出できない
『砂の女』の家に
囚われたようなものだ (*)

でもストレスを遮断して
治癒できると自分を信じれるなら
帰還できる 
必ずできる

いまは良い薬も出来ているし
人は誰も
自らを治癒させる力を備えている

まだ寛解とは言い難いが
希望の光を感じている
始まりの朝(あした)は確かにやって来る
だから静かに待とう

老残の身なれども 私は
糾える〈福〉を待つ



 (*)安部公房著『砂の女』

編集・削除(編集済: 2024年03月16日 23:01)

祈りの風船  理蝶

高台から街を見下ろすと
あちこちから風船が
気流に乗って
昇ってゆくのが見える

色とりどりの風船に
拙い字や綺麗な字で
祈りの言葉が
書き留められている
大きいものから小さいものまで
一つとして同じものはない

祈りを捧げた時
人は気づかず
その風船を空に飛ばす
切に願う気持ちが
温かな気流を興し
風船を高く高く空へ
運んでゆく

生憎今日は曇り
曇り空の雲は
空に蓋をして
人が空へ飛ばす
沢山の祈りを遮ってしまう

空の底には
雲でつっかえた
この街の祈りが
ひしめき合っている

この街の祈りが
どうか行くべき場所に
届きますように 
僕の頭上から
水色の風船が一つ飛んでいった
ゆっくりと登ってゆき 
雲にコツンとぶつかり止まった

急な風が吹いて
雲間がわずかにできた
柔らかな陽がこぼれてくる
みるみるうちに雲間は広がり
空の蓋にぽっかり青い穴が空いた

遮られていた
沢山の風船は
その穴から
高く高く青い空へ昇ってゆく

色とりどりの祈りが
今空に放たれた
さあゆけ 温かな気流に乗って
行くべき場所まで
届くべき人まで
どこまでも

僕が浮かべた水色の風船は
青い穴をくぐったところで
パチンと割れた

編集・削除(未編集)

マスメディア  荒木章太郎

情報を得ることが
マスである必要はなくなった
いくらでもポケットから出てくるから
夜明けには蕾
右肩が上がる頃は
知るという好奇心だけで
夢が膨らんでいった
夕暮れには花
しぼむ頃は誠実さ
潔癖が求められた

0か1か
俺達は数字ではない
数字は人間が作ったものなのに
なぜ捌かれなくはならないのか
徹底的に根絶やしに叩かれる

真っ白な雪か
真っ黒な珈琲か
孤独の椅子に寛ぎながら
ヘラヘラと浅はかな子供の悪意で
瞳に映る極端に振れる錘に
眼球は振り回される

メラメラと燃える瞳の奥で
正義感を膨らまし
燃やし尽くしたら
虚無も炭も
結局は死に至るのではないか
作り手は眠れずに疲れていた

編集・削除(未編集)

早く帰らなくちゃ  まるまる

今家に居るのは もう大きくなった息子
私は職場で片付けを急ぐ
 仕事の続きは明日にしよう
 だって早く帰りたいから
そんなつぶやきに
 もう お母さんは居なくて良いでしょ?
明るい声は隣のデスクから

それもわかってる
食べる物はあるし
何も気にせずやりたい放題
見張られないのは最高だよね

 ずっとずっと前のこと
 お父さんの帰ってくるのは いつも真夜中
 子どもたちはもちろん
 私でさえ顔を会わせず 過ごした

日曜は 眠らせてあげよう
思いやり

いつの間にか息子は思春期に
家の中で聞こえる声は
私の独り言くらい
前はよく 一緒に笑ったのに
一つ屋根の下
それぞれがそれぞれ
居てくれるだけでほっとする
「家族の本質」みたいなもの
感じ取れなかったんじゃないかな

この先息子が
自分の家を振り返るなら

安らぎはないし
母さんは居なかった
より
 安らぎはなかった
 でも母さんは 居た  

そんな家にしてやりたい
せめて
さあ 急いで帰らなくちゃ
目に見える交流だけが絆ではないけれど

編集・削除(編集済: 2024年01月25日 23:43)

三浦様 評のお礼です。  荒木章太郎

評をいただきありがとうございました。人間=玉葱論は存じ上げませんでした。この詩は5作品目に投稿した「カレーライス」のリベンジ作でした。前回は描きたいことが散らかってしまい読み手にうまく伝えることができませんでした。今回は離縁をテーマにして男の自己愛を表現してみました。弱さを曝け出し悲しみと向き合いながら、だけど悲痛になることなく生きていく哀愁が伝わって良かったです。

編集・削除(未編集)

辻占と約束 紫陽花

小さな商店街の片隅に
やっぱり小さなお寺がある
小さな古いお寺の庭には
小さなブランコと
滑り台 砂場
そこに年老いた黒猫
黒猫には
小さなピンクの
クッションがあてがわれ
眠っていることが多い
その看板黒猫目当てに
幼児から大人まで
みんなが集うお寺

そのお寺の前には
辻占のおじいさん
私が小さい頃から
辻占のおじいさんは
立っている
茶色の着物に茶色の草履
頭にはそれらしい帽子
おじいさんの辻占は有名で
元気のない人に声をかけては
希望を持たせていたらしい

そんなことも忘れるくらい
月日は経って
私は世間のだいたいが
そうであるように
それなりに大人になった
大人って思ったより
生きていくのが難しくて
私にはとても難しくて
恥ずかしいことに
命を捨てようとした日があった

なぜか 私はその時
辻占のおじいさんと
赤い滑り台
春の日の中で
のんびり眠る黒猫を
思い出した
最後にどうしても
見たくなって
私は小さくなって
こそこそと何も悪いことを
してるわけじゃないけど
見つからないように
声をかけられないように
道の端を歩いて
お寺の前を
通り過ぎようとした
ああ もう通り過ぎる
もうこれでいい
そう思って足早に
歩を進める
俯いている私の手を
辻占のおじいさんが
そっと捕まえた
私は泣いてなんかいなかった
でも 辻占のおじいさんは
泣かないでと言っていた
手相を見せてと
言っていた
私はお金を持ってきていない
と伝えた
要らないからと言って
軽く私の手を見て
あなたはこれから必ず
幸せになるから
半年以内に必ず
だからその時
お代を持って占いにおいで
生きてるんだよ
辻占のおじいさんに
私は分かりましたと
言ってしまった
律儀な私は約束を
破れない
だから今もこうやって
生きている

ただ 辻占のおじいさんは
私がもう一度占ってもらう
前にいなくなっていた
だから 私は これからも
時々あのお寺の前を
通ってやっぱり生きていく
幸せだろうがなんだろうが
生きていく
約束をしてしまったから

編集・削除(編集済: 2024年01月25日 21:04)

水無川様 評のお礼です 紫陽花

水無川様 こんばんは。共感して読んで下さりありがとうございます。そして、安心しました。夜はたくさんの人の孤独から出来てるって伝えたかったのです。最近、命について考えることが多く、そのせいか私、寂しい寂しいと言ってます。寂しいが続く限りMYDEARに来てそうです。また、よろしくお願いします。

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