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編集・削除(編集済: 2026年05月30日 02:08)

文学の糸  三浦志郎  4/7

私は眠る時本を読む

一ページ読んだくらいでたちまち眠れる
栞を入れ忘れ翌日困ることが多い

今 読んでいるのは―
直木賞作品だがすでに絶版
文庫 一九七八年十月二十五日 第一刷
最後のページに鉛筆で
「百円」
著者は今年亡くなられた
著名だった


その日は日曜日なのに朝から雨だった。急に思い出した。
町の文学館が今日を以って閉館するのを。老朽化の為に
改築するという。四年間の長い閉鎖。今、私が読んでい
る作家の追悼展も行われている。雨の中、難儀なことだ
が、どちらも今日が最終日だ。今日を措いて他日はない。
私は行かねばならなかった。その文庫本を持って出かけ
た。雨が勢いを増したようだった。


その文学館
瀟洒で由緒ある洋館をそのまま用いている
木の雰囲気が展示を優しく包む
この地に根づいた文学の姿と時間
去来した作家たち 詩人たち

それらに囲まれ
ひっそり息をするように
その人の追悼展示があった
経歴と写真と著作が並ぶ
窓からは美しい庭園が見え
視界は海へと続くはずだった
しかし 今日は雨に煙ったままだ


「あっ!」―静寂の中

私は場違いな声を出してしまった
近くにいた若い女性が驚く

生原稿である

*(京の醍醐寺に預けられていた今若が、異母兄頼朝の旗揚げをきいて……)


別に生原稿に驚くことはない。しかし、それは私が今読ん
でいる小説冒頭の肉筆ではないか。得がたい偶然である。
訂正や書き込みはあまりなく、比較的きれいな原稿だ。
筆跡は女流らしく、ゆったりと優しい。原稿用紙一枚分が、
私が読んだ時の気分と重なる。(昔はこうして一枚一枚手
書きしたのだ)。ごく当たり前のことに、私は妙に感動し
てしまった。原稿とその人の肖像が私の中で重なる。


今日 時空を越えて
手書きで届けてくれたのだ
贈り物となって 今 私の手許にある
この活字の故郷がこの原稿
畏れながら
著者と私とは
文学の糸で繋がっていたのだ

そう思いたかった

去り際のはからいのように
仲立ちをしてくれたのが
文学館
今日を以って閉じるのだ
この場所と私とは
文学の糸で繋がっていたのだ

そう思いたかった


いつしか優しい降りになった
雨に送られる
文学者も
文学館も

雨のベールで
自らを包み閉じるのだった
モノクロームに
淡く色を添えたような
最後の装いが
私の中で残像となった

(今日は雨でよかったのだ)

そう思った



                       *永井路子著「炎環(えんかん)」所収第一作目「悪禅師」の
                        冒頭部分。この作品集は再評価を受け新装版で復刊した。

****************************************************

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三浦様、評の御礼  凛

凛です。
三浦様、この度は『孤独を知らない君』をお読みくださり、また丁寧な評をありがとうございます。
今回は、孤独をテーマに詩を書いてみました。そしてテーマを引き立てるため、孤独と対照なものとして、月を取り上げてみました。普通月はどことなく孤独なイメージがあるのですが、よくよく考えたところ、意外と孤独とは対照的なものなのではないかという気がしてきたのです。
次回もより良い詩を書けるように努力いたしますので、またよろしくお願いいたします。

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ほほえみなさい  やまうちあつし

ほほえみなさい
と
路傍の花が

なくしてしまった
ものの代わりに
燃やしてしまった
ものの代わりに

ほほえみなさい

新しい如雨露を
ついでに
古いレコードを

夢みたいだね
遠い国の話のようだね

こんなに変わるとは
知っていたけど
知らなかったよ

ほほえみなさい
と
街の夕日が

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しあわせが、まっている  鯖詰缶太郎

空を眺めながら
しあわせだから
手をたたいた

君の事が大好きで、よかった

そして、君が僕の事を
好きでいてくれて
よかった

くちぶえが
僕より、先に
家で待っている
君のところに
急ぎ足で、帰っていく

今日の
ただいまのメロディーは
昨日のよりも
もしかすると
あったかくはないだろうか?
気のせいかい?

君はおかえりのカレーを作って、待っている
あまり、甘い言葉を書いてしまうと
カレーが甘くなってしまいそうだから
とっておきの言葉は
食後にとっておこう

ついつい
にやけながら、歩いている

いつ、職質をうけても
おかしくない、不審者に間違いない

職業は?

しあわせもの、です。

お名前は?

しあわせもの、です。

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歩こうよ  妻咲邦香

歩こうよ
ねえ一緒に歩こうよ
そう言える理由が欲しかった
手の甲が触れたのは
ちょっとわざとだよ

歩こうよ
ねえ嵐も過ぎ、花も散り
取り残されて裸足になった
ただの思い付き?
それで構わない
恋になりそうな色の空と
逃したくない気持ち
おいでおいでしている午後

背伸びをした後のくすぐったさで
街中のポスター読み上げて
飛行船の夢を見る
発明された遠近法
発見されないアドバルーン
時々は四つの手足を地面に付けて
ナポレオンになって
ナポリタンを食べて
知らない株式会社見つけて
はしゃいだり、ぶつかったり
居並ぶキッチンカー
大学生のデモ行進
お葬式の花束
ねえ歩こうよ
足が痛くても平気だよ
何が出来るわけでもないのに
少し違うだけの染色体が
どうしても縮めてくれない
果てしない距離が何だか

出会う前の恋人たち
目を細める親子連れ
昨日からせーので今日へ
並んで飛び越えた変更線
私は見たよ、怪しい家政婦
見たよ見たよ
腐敗する途中の生命
一度きりの約束だからと律義に従う
もう毎日がカウントダウン
それでも生きよと花を踏む草原
修復不能な裂け目を抱え
摩天楼がそびえ立つ
でもね、空の人には形あるものは映らなくて
機能しか見えてない
だから安心して

歩こうよ
ねえ一緒に
歩きたいんだよ
生まれ変わって一から探すの
面倒なんだよとっても
あなたのためなら今までの
全部捨てて妥協する

だから恋の
愛に変わってしまう前に
歩こうよ
そこいらの星をぐるっと
散歩して
ほんの数万光年

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旅愁  山雀詩人

二本の棒が横たわる
山の奥へ奥へと続く

よくもまあ敷いたものだ
こんな長い鉄の棒を
こんな山の中に

もしも僕が発明家で
もしも列車を発明しても
きっと却下しただろう

線路を敷かなきゃ走れない
そんな乗り物はありえないと

でもそんな予想とは裏腹に
今や線路は津々浦々に
町から町へ
都市から都市へ
ついにはこんな山にまで延び
僕が この寂しがりやの僕が
まさかのひとり旅なんぞして
案の定寂しいだけの一夜を過ごし
案の定寂しいだけの今朝の旅立ち

それでも今まさに列車は駅を離れ
誰見送る者はあらねども
もう来ることはないであろう此処を去らんとするに
おのずから旅情は高ぶる

何だろう この不思議な気持ち
何だろう このこみあげるもの

きっとこの棒のせいだ
およそこの世の旅の形で
列車の旅ほど寂しさをかきたてられる旅立ちが
ほかにあろうか

列車を発明した人は
旅愁の発明家でもあったのだろう
寂しさを演出すべく
こんな大がかりなセットを組んで

ほら 今もつながっている
僕をさらなる愁いへと
誘うように 招くように
二本の錆びた鉄の棒が
山の奥へとつながっている
 

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三浦様、評のお礼  朝霧綾め

三浦様、
このたびは「夜はすべてを知っている」に丁寧な評をくださりありがとうございます。

「夜は千の目を持つ」、知らなかったので調べてみました。小説はミステリー、音楽の方はジャズでしょうか? タイトルだけでも十分素敵で、惹きつけられます。今度読んで(聴いて)みたいと思います。教えてくださってありがとうございました。
また、夜のイメージをたくさんあげてくださり嬉しかったです。とても助けになります。「人は人生半分寝ている?」や「歴史は夜作られる?」はそこまで考えが及んでいなかったので感動しました。

つめが甘かったかな、というのは反省しているところでした。最近、文法や言葉の使い方でミスをすることは減った気がしているのですが、その分気の緩みからか、物足りない詩が増えてしまっているように思います。
推敲に時間をかけられるよう頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。

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日々

魂の
重量が
日に日に
軽くなり
私には
ラジオ体操以外
することがなくなる

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藁人形辞めました 紫陽花

昔昔ある所に
不幸せな不幸せな
お母さんがおりました

お母さんはいつも
こう思ってました
この藁人形を
打っても打っても
私ちっとも幸せじゃない
憎い憎い憎い憎い
この北の大地も
回りの人間も
家族も
ちっとも私の思い通りにならない

だからこの子を打ち付けよう
小さいし 世の中を知らないし
藁人形として育てれば
私は幸せになれる様な
そんな気がする

この藁人形には
毎日毎日言い含めてるから
大丈夫
どこにも行かない
この藁人形はずっと
私のそばにある

毎日毎日お母さんは
藁人形に言います
あなたはダメな子
お母さんがいないと何もできない
出来損ないの子
あなたが出来損ないだから
私は不幸せなの
全部あなたのせい
お父さんだって
あなたの出来が悪いせいで
いつも機嫌が悪い

藁人形はしばらく
気が遠くなるほどしばらく
黙ってました
お母さんが好きだったから
いつか抱きしめてくれる
他のお人形さんみたいに
そんな夢を見ていました
でもそんな日は来ませんでした

ずっとずっと時は経って
藁人形は出てはいけない
と言われていた
家から出てしまいました
外は危険がいっぱいだったけど
愛なんて安全地帯もありました
だから
藁人形は黙って藁人形を
その時きっぱり辞めました

不幸せなお母さんがその後
どうなったか誰も知りません

多分きっと めでたしめでたし

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詩の評、お礼です。  じじいじじい

三浦様

こんにちは。
詩の評、有難うございます。
佳作を頂き有難うございます。
まだまだ、甘さのある作品ばかりです。

これからもよろしくおねがい致します。

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