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編集・削除(編集済: 2024年09月03日 20:54)

東京都杉並区在住軽音楽系専門学生殺人未遂事件  鯖詰缶太郎

実家に帰省している彼女に
電話をすると
聞き覚えのない声の男が出た

電話番号、間違えた?
誰?と、男の声は誰何してきたので
マツミちゃんの彼氏です
と、答えた

俺、マツミの彼氏なんだけど。
と、男は答えた

そうですか
と、言い、
とりあえず、僕はいったん、電話を切った

しばらく、呆然としていた僕に
彼女からのメールが届いた

ごめん。

そうか
ここ、最近、忙しいからとか、
言ってたの、本命の彼氏と会ってたからか

そうか、そりゃそうだ
だって、これって、浮気相手が
僕って事だろ、って事であってるのかな?

神様、一生のお願いです
一度だけ、気を失っているふりでもして
僕の完全犯罪を見て見ないふりしてもらっても
いいですか?

一生のお願いは、一生のお願いであって
もし、このさき、なにか
かなり、しんどい事があっても
絶対に、お願いしないから。

たぶん。

僕はフォークギターを持つ

ららら
初めての彼女が、あんな純朴そうな娘でよかったな
ららら
たぶん、男性とのお付き合いも、
あまりした事ないんだろうな
ららら
こんな事があったから
同じ、専門学校で
今後、顔、合わせづらいんだけど
ららら
こういう時、どんな顔すればいいの?
ららら
愛など、いらぬ
と、たやすく言えたなら
荒廃した世界でも、僕は
一人で戦っていける、というのに。

六本の弦が
すべて、きれている

領収書の宛名を
株式会社マツミ
にして
新しい弦を購入してやる

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うんーバレンタインデーの夜に

ラジオのスイッチを
おもいっきり ひねって
俺 ひとり

口を への字に曲げて
分厚い眼鏡の奥の眼を
上に向けて
「うん」と笑う
うん 俺 ひとり

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世界のどこかで  朔音



世界のどこかで沢山の人が亡くなった

世界のどこかで沢山の桜の花が散った

亡くなった人たちを人々は悲しんだ

何処かで散りゆき亡くなった桜たちを
人々は喜んだ

もし桜が人だったら

もし人が桜だったら

人々は何をどう思うのでしょう

花と人と比べないでというのが
正しいのだろうか?

桜は文句も言わず悲しみもされず

亡くなっていく 散っていく

さぁ楽しんで

アタシ達の最後の姿をといわんばかりに

桜吹雪は舞い踊る

これがアタシ達の喜びなの

悲しまれず 散っていくその様まで

美しいといわれるのは

アタシ達の特権

生き抜いてる人々へ
死してしまった人々へ
桜はおくる どこまでも

綺麗と言われなくなるその日まで

最後の最後の瞬間まで

あっ桜だ、と

見つけられて喜びを得たい

雨にぬれて茶色がかった花弁は

誰にも見られず
そっと風に吹かれたい

何処か何処か遠くへ

美しいと言われたアタシ達だけを
人々には覚えていてほしい

知っていますか?
これから桜の木は万緑を
力強く咲かせていくことを

知っていますか?
命は巡る
それもまた力強い

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言葉遊び 埼玉のさっちゃん

毎日送られてくるおはようございます。に
続く言葉を選ぶ日課となりつつある
おはようございまストロベリー
おはようござい抹茶ラテ
おはようございま相撲取り
あとからあとから思い付く
おはようございます。が来るのを
密かな楽しみにしている自分がいる
今日は何を返そうかな
送られてくる前にもう考えついている
頭の体操や気持ちがリフレッシュできる
そしてやり取りしているうちに
自然と
コミュニケーションが取れている事に気がつく
コーヒーを飲みながら想いを馳せていると
さっそくおはようございますが来た
さてさて何と返そうか
この一時が楽しい

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君とカフェで

ここのところ 私は
病院から届く
毎日死ぬかもしれない
なんていう澱みと
暮らしている

澱みはだんだん
家中に溜まっていって
最初はもやだった澱みが
今はゼリーの海になって
床にタプタプしている
歩くたびに足を取られて
時々転んで
ふと鏡を見ると
私の顔には大きなくまが
できていた

こんな時は
やっぱりいつもの君に
LINEを
ねえ私死んじゃいそう
辛いの
なんだか分からないけど
本当は 分かってるけど
分からないふりをして
君にLINE

君はやっぱりいつも通り
紫陽花は暇なんだよ
そんなこと考えるなんて
カフェ行きたいだけやろ?
とLINE

そう きっとそう
私は君とカフェに
行きたいだけだった
そう言い聞かせながら
新商品の甘平パフェの
オレンジのジュレを
心の澱みにすーっと塗った
家の澱みのゼリーの床も
きらきらぷるぷる
オレンジのジュレになあれ

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冬から春への小唄  エイジ

冬の絵の具に染まった森から
点々と春の絵の具が芽生えてくる
ほっと僕の心の襞が綻びて
紫煙色した曇り空が
光の階を落として照らされた君の笑顔

You are my only sunshine
僕が口ずさんだら
原稿用紙の書きかけの
ラヴソングの最後の一行が書けた
太陽が嫉妬して雲の中に隠れて行った

お構いなしで手を繋いで歌う
冬の絵の具が色づき
春の絵の具に変わる
太陽が隠れても明るい なぜって
You are my only sunshine

僕らは腕を組んで街へと消える
二重露光のように眩しい街へ

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冷たい夜

黒い空から真っ白な綿が降ってくる
ゆっくりと、
時間の流れを留めながら

規則正しく並ぶ電灯は
旅を終えた雪が静かに横たわるのを 青緑色に染めている
冷たく、不気味に

肋の浮いた飢えた狐
ひょいと顔を覗かせて
小さく鳴いて、よろけて、また鳴いた

ぎゅむ、ぎゅう、ぎゅむ
雪を踏む
狐は後ろをついてくる
時折足元に寄ってきて、
見上げた顔に 雪が積もる

硬く、汚れた毛の中で
濡れた瞳が月を映す

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水 たか

どうか、しましたか
すきとおる水の神秘
引っかける言葉の流れ
すみ

きって

霞になりました

柔らかく触れる
しみて
私はしみて
膨らんでいる、蕾でしかないのかもしれません
花は開けば、処女なのに
ゆりかごに載せられた

やっぱりだと言った
そっくりだと言った

というのか
恐い
あの二人は恐い
なぶりあい、お互いがお互いを水にしようと、試みて

どちらか一人になる、だけなのに
なぜ

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白昼 成城すそ

写真を撮る
忘れないように
崩れた夢の残骸を
かき集めて

写した影に
思い出を包んで

壊れた時に
名前をつけて

自分の過ちに
目を背けて

写真を破る
もう二度と
脳裏に浮かばないように
散らばった夢の欠片を

捨てた

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岬へと  妻咲邦香

絵を描くの
絵筆を掲げて
何処までも行くの

何でも描くの
好きなの嫌いなの
全部並べて

遠ざかるように見えるのは
探してた道を見つけたからよ
さよならを言わないのは
まだ好きな気持ちがあるからよ
九番目の波が教えてくれた
愛せぬものなどこの世には
ある筈がないと

絵を描くの
追い風に押され
とっくに走り出してるの

夢中なの
ずっと描いてるの
何者にもなれないとして
誰とも同じ道は行けないと
気付いてしまった今日の日に
もう見えないの
憧れ以外は
見えないの
私の人生以外は

だから描くの
絵筆を振り回し
足跡ばら撒いて
遠い浅瀬
雲が導く岬へと

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