第一 学而篇
子(し)曰く、学びて時に之を習う、また説(よろこ)ばしからずや。朋友(とも)あり遠方より来たる、また楽しからずや。人知らずして慍(いか)らず、また君子ならずや。
学問をして然るべきときに何度も繰り返しておさらいすると、その都度に理解が深まり自分のもとして体得される。それこそ人生の喜びではないか。
こうして学んでいると、志を同じくする友だちが遠い所からやって来て学問について話し合う。それこそ愉快なことではないか。
しかしながら、自分の学習が常に人から認められるとは限らない。人から認められないことがあっても、腹を立てない。それでそこ紳士ではないか。
浩→「学ぶ」とは学問することですが、具体的には儒教の重要な教科書、「詩経」と「書経」を読み、礼と楽を勉強することでした。「時に」は「然るべき時」の意味で、「ときどき」のことではないです。
アドラー心理学の学び方は3とおりあると野田俊作先生から教わりました。1つは書物やお話を聞いて、2つはそれを日常生活で実践して、3つめはともに学ぶ仲間と交流して。私たちも、野田先生の講義や講演で学び、日常生活で“横の人間関係”を実践して(いるつもり)、旧倉工講座や旧津山工業講座のような学習の場と、そのあとの打ち上げパーティーで、ご馳走と美酒にホロ酔いながら、ともに学ぶお仲間との交流をはかっていました。そして、現在(2024年6月)、22年ぶりにもとの勤務校・岡山工業高校でこれまた相棒・K先生のマネージメントによって講座が復活して、ほんとに「朋友あり遠方より来たる。また楽しからずや」が実践できています。これはもう奇跡としか言いようがありません。そもそも私たちの講座のルーツは、1992年にアドラー心理学カウンセラーの資格を得た私が岡山工業高校に在職中の1993年9月に、それまで校内研修会だった講座を公開にしたことに始まります。詳しい経過は「浩の自叙伝」にあります。その後、2002年の定年退職後は岡山市内では県生涯学習センターや京山公民館などで、有志の方々のご厚意により継続され、2009年に一旦終了しました。その後2010年に、ともにアドラー心理学を学んでいた倉敷工業高在職中のK先生のご厚意により再開しました。ここ数年の大アドラーブームとはまったく無縁で、倉工教育相談室の先生方と、以前の講座からのお客様でひっそりと、2017年2月まで続きました。つづいて、K先生が転勤された津山工業高校で、同校相談担当の先生と有志の先生方が参加されて、毎月、校内で研修講座を開きました。2023年9月に開講30周年を迎えました。
私は、「人知らずして慍ら(いから)ず、また君子ならずや」の部分がまだまだ実行しにくいです。そもそもスポットライトを浴びるのが大好きな目立ちたがり屋ですから、認められないことがあると内心しょっちゅう怒っています。齢すでに80を超えましたが、まだまだ修業が必要です。
第8課 「~が…です」(形容詞の表現)
<キーフレーズ>
>広場市場が好きです。
クァンジャンシジャンイ チョアヨ
광장시장이 좋아요.
天気がいいです。
ナrシガ チョアヨ
날씨가 좋이요.
気分がいいです。
キブニ チョアヨ
기분이 좋아요.
<公式>「~がいいです」
・名詞(パッチムなし) + 기 좋아요
・名詞(パッチムあり) + 이 좋아요
文末に?を付けて語尾を上げる↑と疑問文。
<応用>
(みかんとりんご)どちらがいいですか?
オヌッチョギ チョアヨ?
어느쪽이 좋아요?
みかんが好きです。
キュリ チョアヨ
귤이 좋아요.
果物は何が好きですか?
クァイルン ムォガ チョアヨ?
과일은 뭐가 좋아요?
りんごが好きです。
サグァガ チョアヨ
사과가 좋아요.
<発展>
お腹がすいています。
ペガ コパ’ヨ
배가 고파요.
お腹がいっぱいです。
ペガ プrロヨ
배가 불러요.
量が多いです。
ヤンイ マナヨ
양이 많아요.
量が少ないです。
ヤンイ チョゴヨ
양이 적어요.
値段が安いです。
カpシ ッサヨ
값이 싸요.
値段が高いです。
カpシ ピッサヨ
값이 비싸요.
<問題>
1,市場は人が多いです。
シジャンウン サラミ マナヨ
시장은 사람이 믾아요.
2,この店は服が安いです。
イ カゲヌン オッシ ッサヨ
이 가게는 옷이 싸요.
3,私はマッコリが好きです。
チョヌン マッッコrリガ チョアヨ
저는 막걸리가 좋아요.
<ひとこと>
かっこいいです。
モシッソヨ
멋있어요.
かっこいいですねえ!
モシンネヨ!
멋있네요!
かっこいい(ひとりごと)
モシッタ
멋있다.
<ハングル部屋> 漢数詞
一 일 イr
二 이 イ
三 삼 サm
四 사 サ
五 오 オ
六 육 ユk
七 칠 チr
八 팔 パr
九 구 ク
十 십 シp
23=二十三 이십삼 イシpサm
百 백 ペk
千 천 チョン
万 만 マン
億=억
兆=조
37800=三万七千八百 삼만칠천팔백 サmマンチrチョンパrペk
ゼロ(零)=영 ヨン
電話番号では、공(空) コン
010-285-6439
공일공의 이팔오의 육사삼구 コンイrゴンエ イパルオエ ユkササmク
月の読み方=漢数詞+월(ウォr)
一月=일월, 二月=이월, ..... 十一月=십일월, 十二月=십이월
例外:六月=유월, 十月=시월
<料理のことば>
箸=적가락 チョッカラk
スプーン=숟가락 スッカラk
皿=접시 チョpシ
茶わん=공기 コンギ
鍋=뚝배기 ットゥッペギ
<フィナーレ>
18000ウォン=万八千ウォン 만팔천 원 マンパrチョ’ノウォン
□3回目 10月15日 母親のみ
(S)
毎晩夕食の支度を手伝ってくれる。献立も様々に工夫してくれるし、電子レンジも私は温めるのにしか使っていなかったが、息子は説明書を見てはいろいろの機能を駆使する。男の子が台所にいるなんて許せなかったが、最近は助かっている。この頃は、よく話し合えるようになった。父親が商売をしているので、手伝ってはどうかと勧めてみた。何とも答えなかった。
学校から休学の手続きをするよう勧められた。内緒でしたくないので、息子に「どうしようか?」と尋ねた。「それなら休学にしておいて」はっきりたのんできた。「あんた、やめるんじゃなかったん」と言うと、「いや、わからん」と。
大検用の予備校へ説明を聞きに出かけたが、途中で目まいがしたといって結局帰ってきた。相変わらず、昼頃まで寝ている。テレビを見て笑ったりしている。以前は部屋の隅へ引っ込んでいたのに。先日、何か月ぶりかに友だちの家へ遊びに行った。ご機嫌で帰ってきた。 休学届けに、カウンセラーの意見書を添えなければいけないそうで、それを作ってほしい。
(O)
かなり表情が明るくなった。態度に余裕がある。息子の様子を楽しそうに語れる。
(A)
まだ不満を残しながらも、息子のありのままを受け入れ始めている。「父親の商売を手伝うかと勧めた」と言ったのはとても良いことだと思う。勇気づけの仕方をティーチインするチャンスだと思う。大検は、あるいは乗り気でないのかもしれない。もしかすると、来年1年下のクラスへ入ってやり直すかもしれない。このことを言うと、3月生まれだから、1年早すぎたのかもしれないと。脈ありの様子。
“勇気づけと勇気くじき”(『アドラー心理学トーキングセミナー2』)の一覧表をコピーして、プレゼントした。
(P)
子どもが自分で決められるのを援助できる親になってもらう。
(SVC)
経過報告書にカウンセリング目標がはっきり出た。これで定型にぴったりはまった。(Kさん)
□4回目 11月1日
予約がかち合ったので、初回の来談者を優先させてもらった。10分だけ経過を聞いて、次週来てもらうことにした。
(S)
とても良くなっている。朝早く起きて退屈な様子ですが、夕食の支度はきちんとやってくれている。塾の案内が頻繁に来るのを怒っていた。土曜日にスーパーへ買物に行くというので連れて行ったが、高校生の下校と重なって、自分の学校の生徒が見えたら急に「苦しくなった。もういい。」と言ってすぐ帰った。
(O)
ますます明るくなっている。このごろ、息子が7時には起きるので「1日が長いなー」と皮肉を言ったと、やや嬉しそうに照れて語った。
□ファイナルレポート
11月8日
(S)
朝はどんどん早く起きるようになった。1日が退屈だろうなと思う。雑誌「高1コース」を私に買いに行かせては読んでいる。自分で買いに行けばいいのにと思う。
<息子さんのために役に立つことがあって、良かったですね。>
テレビを見て大声で笑っている。こんな状態なら、学校へ行けるのではないか。
<部屋の隅に引っ込んでいるのとどっちがいいですか?>
それは今のほうがいいですが……。ほかの普通科へは転校できないでしょうか?
<1年から受け直せばできるでしょう。学年途中の転校は普通、一家転住の場合だけみたいです。>
息子が学校へ行かなくなって以来、家を空けられなかったが、先週2泊3日の旅行へ行ってもいいと言ってくれたので行った。留守中、夕食を作って父親に食べさせたそうです。娘ならこれでいいのに、どうも男の子がこれではねえ……。
<そうでしょうか?>
今心配なのは、運動もしないで家に篭もっていたら、鬱病やノイローゼになりはしないかということです。几帳面なタイプの子がなりやすいと、本に書いてあった。うちの子が当てはまるような気がする。
<そうして心配していると、本当になるという話もありますよ。>
そうですか。だいぶ楽になってきましたから、しばらく何とか、自分でやっていけそうです。
(O)
不安を訴える割には、顔色は良く表情も明るい。
(A)
少し子どもの状態が良くなると、1日も早く外へ出したいし、料理好きの男の子をまだ本心から好きになれないらしい。買物については、言葉できちんと頼んでいるからとりあえずは引き受けていればいいと思う。今はまだ、頼み方の注文をつける時期ではなかろう。息子のために何かしたい親なので、買物の使いでも役に立っていることに気づいてほしい。学校や将来の進路については、まだ相談に乗れる段階ではなさそう。鬱病やノイローゼへの不安がなければ、当面穏やかにやっていけそうだとのこと。
休学手続き以後、関係が好転しているのは、親が現状のままの息子を受け入れ始めたからではないか。
鬱病やノイローゼについて、少し説明する。親が追い詰めなければ、病気にならないのではないかと。病気になって、親に期待を捨ててもらいたいほどでもない。
自分でやっていけそうだとい言うので、ここらで「凍結」してみることにした。
(SVC)
1)買物や料理が、子どもの自主決定に役立つことを言ってあげるとよい。(Wさん)
2)終結が少し早い。凍結にしても早い。母親が躁鬱気質の「ドライバー」だとこういう終わり方をする。このあと、10分ずつでも経過報告をしてもらうほうがよい。今後、親子関係がどれだけ良くなっているか、少しは疑ってもよい。(野田先生)
3)日常会話の具体的な様子をもう少し聞いて、親子コミュニケーションの改善を確認してから終結へ持っていくとよい。全体としては良い流れです。(Kさん)
4)鬱病や登校拒否のために、母親にできなくなったことは何か?治ったら何をしたいか?「特殊診断質問」をして、母親にライフスタイルをつかんでもらうと、母親がもっと楽になるのではないか。(Nさん)
5)休学届けに添える「意見書」の書き方のコツ
受け取る人を勇気づけするなら、わかりやすく書く。
勇気くじきするなら、難しく精神医学用語や心理学用語を駆使して絶対理解できない内容にするとよい。これ以上登校を強制すると発病の恐れがあると書く。(野田先生)
3、考察と謝辞
このケースもまた、父親の影がうすく、母親が支配的という、平均的な日本の家庭です。もちろん、それを子どもの不登校の原因であるとは考えません。アドレリアンは原因探しをしませんから。母親の様子から、たぶんこの親子の関係は、注目関心の段階から権力闘争の段階を行ったり来たりしているものと思われます。母親の要求の1つである、「外向的な男らしい子であれ」に反発して、家事料理などを好むので、実際母親に、「この子が女の子であったらよかったのに」と思わせるなど、期待をはずしています。そうなると、母親がその線で、期待をさらに強要すると、次の段階である復讐期に入る危険もありますが、さいわいまだその時期には至っていないようです。
したがって、子どもに料理を手伝ってもらうなど、家事への協力を通して、子どもの価値を再発見していくにつれて、関係が改善され、最初、部屋の隅に閉じこもっていたのが、次第に部屋の中央へ出てきて、親子の対話はもちろん、積極的に夕食の支度などもするようになり、明るさと自信を取り戻していったようです。
しかしながら、凍結を決めた最終回においてさえ、一面で子どもとの関係改善を喜びながら、他面まださまざまな期待を子どもにかぶせている状況があり、なるほど、野田先生のコメントのように、終結が早すぎたと思います。カウンセリングは、いつまでもクライエントに寄り添うのではなく、クライエントの「自助を援助する」という原理に、少し教条的にこだわりすぎていたかもしれません。実際、最終回でいつくかの不安材料を出しているのは、もうしばらくカウンセリングを必要としていることの現れであったかもしれません。自分でできそうだというクライエントの言にそのまま従って、凍結したのは、やはり、根強く残っていたロジャース派カウンセリングのなごりかもしれなくて、とても消極的でした。「ま、そうおっしゃらずに、あと2~3回ほど、様子を聞かせていただけませんか?」と、延長に持ち込むべきでした。『スマイル』のような親教育セミナーへの参加予定が立たない場合は特に、しばらく仕上がりを確認する必要があると思います。
さらに、初回にIPが来ていたにもかかわらず、それきり逃がしてしまったことはとても残念です。いきなり35歳のイメージを求めていますが、それきり次の回から来なくなりました。提案を急がず、もっとIPとのラポールづくりに努め、カウンセラーは親の味方ではなく、IPの味方であることをはっきり打ち出しておけばよかったです。せっかく、面接開始早々に「私立の特別コースのほうがよかった」と、今の学校の代替案らしきものを示唆しているのだから、親教育とは別路線で、直接本人を援助していけたのではないかと悔やまれます。予備校の大検コースに行ってもなお不安だと訴えていましたが、筆者は、この「不安」でIPが母親を操作しようとしていることを読み落としていたと思います。未熟でした。
しかしながら、このカウンセリング中に1回、凍結後に1回、休学届に添える意見書を書きましたが、その書き方を野田先生から丁寧いに教えていただけたし、アドラーギルドの事例検討会では、いつもよりずっとたくさんの方々から、毎回ご親切なコメントをいただけたことで、とても勇気づけられました。ここにあらためて感謝申しあげます。
---参考文献---
・野田俊作監修(1986)、実践カウンセリング、ヒューマンギルド出版部
・野田俊作(1993)、続アドラー心理学トーキングセミナー 勇気づけの家族コミュニケーション(アニマ2001)
・野田俊作監修(1986)、SMILE 愛と勇気づけの親子関係セミナー、ヒューマンギルド出版部
完
第9課 数字の言い方
<スキット>
ランチタイムのお店で
「店員さん、ちょっと来て」
Fu2wu4yuan2, guo4lai2yi2xia4.
服务员,过来一下。
これは私が頼んだ料理じゃないよ。
Zhe4 bu2 shi4 wo3 dian3 de cai4.
这不是我点的菜。
すみません、すみません!
Dui4buqi3, dui4buqi3!
对不起,对不起!
ビール2本で1万円?
Liang3 ping2 pi2jiu3 yi2 wan4 ri4yuan2 ma?
两瓶啤酒一万日元吗?
私のミスです、大変申し訳ありません。
Shi4 wo3 de cuo4, zhen1 dui4buqi!
是我的错,真对不起!
@ 对不起 = (相手に顔向けできない)ごめんなさい
「かまいません」と返すには、Mei2 guan1xi. 没关系。
<今日のフレーズ>
两瓶啤酒一万日元吗? Liang3 ping2 pi2jiu3 yi2 wan4 ri4yuan2 ma?
※名詞述語文:動詞「是」は不要
@两瓶啤酒 = ビール2本
「二」は2とおりあり。
・数量を言う(ものを数える)ときは→「两」
・数をカウントするときや順番を言うとき→「二」
@瓶 は「量詞」:数+量詞+名詞と並べる
一万日元 = 1万円
<数字トレーニング>
yi1一 er4二 san1三 si4四 wu3五 liu4六 qi1七 ba1八 jiu3九 shi2十
shi2yi1十一 er4shiwu3 二十五
<発音>
・jiuはiとuの間にoが隠れている。[jiou]と発音する。
・yi2 wan4 のyiは本来は「第一声yi1」。後ろが「第四声」だと「第二声yi2」と変調する。
・yuan2のyuの音は「ü」:「ウ」の口で「イ」と発音する。
<エクササイズ> 量詞を使った文
「醤油1本300円です」
Yi4 ping2 jiang4you2 san1 bai3 ri4yuan2.
一瓶酱油三百日元。
「パン10個800円です」
Shi2 ge mian4 bao1 ba1 bai3 ri4yuan2.
十个面包八百日元。
<ひとこと>
「かまいません」
Mei2 guan1xi.
没关系。
<ピンイン> 鼻音
nとng
案内 an-nai 案外 ang-ai
nは舌先が上の歯の裏に付く。ngは舌先がどこにも付かない。
an ang
en eng
ian iang
in ing
uan uang
uen ueng
shan1 山 shang1商
fan4 饭 fang4放
wan2 玩 wang2 王
<街角中国語>
pi2dan4 皮蛋 ピータン
jiang4you2 酱油 醤油
cu4 醋 酢
fen3si1 粉丝 はるさめ
liang3 dai4 两袋 2袋
mu4'er3 木耳 きくらげ
「高1男子の母親」カウンセリング
1,はじめに
アドラーギルドの事例検討会で、終結のタイミングを話題にしていただいたことが、二度ほどあります。一つは、神経症クライエントのサイコセラピーでのそれ、いま一つは今回紹介するケース」です。
これまで「目標の一致」についてはたびたび話題にしてきましたが、カウンセリング初期の段階で、解決イメージをしっかり構築していれば、終結の見通しも当然そこから立ってくるというもので、終結のコツというものが独立して存在するわけではないと思います。筆者がこのケースを担当していたのは、カウンセラー養成講座修了直後のことでもあり、ともすれば過保護的なかかわりになりがちでした。このケースでは5回目あたりで一応の見通しが立ったと判断して、「凍結」というおしゃれな終わり方をしたはずなのですが、さて・・・・。
なお守秘義務の関係で、内容の一部を改変し、人名はすべて仮名としてあります。ケースは、アドラーギルド版・フォローアップシートの様式で報告いたします。
2、ケースの紹介
□イニシアル・レポート
カウンセラー:大森 浩
施設:岡山県教育センター相談室
クライエント:広沢涼子(40歳) 主婦
IP:広沢雅康(公立高校1年生)
IPの生年月日:昭和:**年2月23日
同居家族:夫、クライエント、長男(24歳)、長女(27歳)、IP(15歳)
開始日:某年10月1日
状態記述:記述診断:健常、対人問題:親子関係、面接形態:個人
□1回目
IP同伴。主にIPの話を聞く。母親は黙って傍聴していた。
(Subjective Problem) 以下(S)
6月中頃から、朝起きられなくて学校へ行けなくなった。腹や頭が痛かった。病院ではどこも悪くないと言われた。2泊3日の宿泊研修が特につらかった。友人たちのようにとけこめない。高校は自分で決めて入ったのだが、失望した。部活動ではバドミントンをやっていた。これはやりたい。姉も同じ高校の出身なので、「あまり良い学校ではない」と言っていたが、それでも自分はそこへ行った。滑り止めに受けていた私立高校の特別コースのほうが良かったと思う。
姉のすすめで、広島へカウンセリングを受けに行った。「潜在意識に尋ねる」といって音楽を聞かされた。「12歳に災いのもとがある」と言われたが、納得できなかった。
<これからどうするつもり?> 以下カウンセラーの言葉は< >でくくる。
大検コースのある予備校へ行きたい。
<それで?>
予備校へ行くようになっても、はたして通学できるかどうか不安なのです。
<不安というのはどういうことが?>
朝やはり起きられないと思うから。
<中学の頃はどうでした?>
あまり休んだことはない。高校受験の直前に骨折で1か月入院した。
<それでもこの高校に入れたんですね。>
はい。
<担任の先生は何とおっしゃっていますか?>
行く先を決めるまで退学の手続きをとれないと。
<将来は、35歳くらいになったら、何をしていたい?>
── 沈黙。
(Objective problem) 以下(O)
眼鏡をかけている。ひ弱そう。姉の話の時、涙を流した。とめどなく流れるのを手で拭っていた。
(Assesment) 以下(A)
初めのうちは、さっぱり具体的に語らなかったが、広島のカウンセリングのあたりから、かなり雄弁になってきた。姉が重要な場面に出てくる。12歳年上で、彼にとっては相談役だろうか、母親代理だろうか。
体が訴えていることの意味は何だろうか。しばらく体の要求どおりに生きてみてもよいのではないか。
(Planning) 以下(P)
将来の自分をイメージしてもらう。
(Supervisor's Comment) 以下(SVC)
1)やはり将来の希望を、きっちり聞いておけばよかったのではないか。そうすると次回からの見通しが立つ。母親が同席しているのだから、息子が当分ぐずぐずしていても経済的に困らないかどうか確認してみる。親の課題はこれだから。(Tさん)
2)この子をエンカレッジするとしたらどんなことが言えるか。今まで姉を目標にしてきたが、うまくいかなくなってきている。自分で考えてみるよいチャンスではないか。(Hさん)
3)1回目でカウンセリングの方向を示してもよいのではないか。本人を対象とするか、親だけか。これからどうしようかと本人に聞いてみればよい。楽屋ネタをばらしてもよい。(Kさん)
□2回目 10月8日 母親のみ
(S)
ここへ来るよう誘ったが、機嫌が悪くて寝ていた。友だちが遊びにくると言いながら友だちは来なかったので機嫌が悪いのでしょうか。姉(12歳上)は活発な子だった。9歳上の兄もいたが、どちらも年が離れているので、ほとんど一人っ子同然。自分から率先して友だちを作るほうではない。高校になって友だちができなかったのかもしれない。
学校は進学競争がとても激しいと言っていた。男の子らしくどんどん外へ出るようであればいいのに、料理が好きです。この前も春巻を作ってくれた。みんなで食べておいしかった。風呂のそうじなども、機嫌が良ければしてくれる。
先週、帰りの車の中で話した。35歳になったら、「それまでに戦争があろうから、生き残れるためには英語を勉強しておこう。何でも食べて生きていけるようにしておきたい」と言っていた。*
<それで?>
なんて馬鹿なことを言うのかと笑った。*
<他の受けとめ方はなかったでしょうか?>
どんな?
<生き残れるための準備をするなんて、すごいとか。>
まさか・・・・(笑い)
(O)
少し小太りのたくましそうな女性。IPを賞めたりクライエントを勇気づけるとそのたびに涙を流した。ユーモラスな場面では笑うようになった。
(A)
料理が好きと聞いて、これはいけると思った。不登校児の男の子は料理の好きな人が多いと野田先生から聞いていた。家事手伝いもよくするので、そういうプラス面、家族に貢献している面に注目していくのがいいのではないか。学校へ行かなくても安心して家に居られるように配慮してはどうか。今まで、IPの失敗を咎めていたらしい。学校へ行かないで家にいるのはのは目障りだと思っていたらしいので、どこを改善すればいいか見えてきた。
夕飯を手伝ってもらうか任せるかしてはどうか。せめて、味だけでもみてもらうように。「おかげで助かったよ」と言える材料をしっかりさがしてもらう。
(P)
IPに、もっと家の中でできることをしてもらう。クライエントのIPに対する評価が変わってくるのではないか。
(SVC)
1)最悪の事態は避けられる子ではないか。(Hさん)
2)誕生順位からライフスタイルをゲッシングすると、「ベイビー」。(Kさん)
3)* を受けてカウンセラーは、「で、お母さんは何とおっしゃったんですか?」と聞けばいい。(Hさん)
4)親の言った具体的なやりとりを聞き出すこと。そうすると、親子のコミュニケーションのティーチインに持っていける。ここまでくると、目標の一致をしておくとよい。子どもが家の中で貢献できる仕事を持つのはよい。親は、子が料理をすることの意味をわかっているのか?(Kさん)
5)「とてもいい子だ」としっかり子を勇気づけると、親も納得できる方向性が出てくるのではないか。取り決めなしに学校の話をせず家庭内のかかわりが話せるのは不思議。家族カウンセリングらしくなっている。普通は、この線まで導くのに苦慮する。(Kさん)
・・・つづく