令和6年度がスタートしました。学年はじめの「野田先生からのプレゼント」のような質疑応答です。↓
Q
学ぶ意欲の低い生徒(うちの子)に対して、学習の大切さを教えたい。家庭では妻が厳しくやらせようとするが、反発が大きい。何を大切にして子どもに関わればいいのでしょうか?
A
子どもたちに「理想」がないからです。学んで結局どうなるかがわかってないからです。大人になって何をするのかの話をあまりしてないから。大人になって何をするのか、私たちの世代はわりとはっきりしていました。よかれ悪しかれ。鉄腕アトムと鉄人28号の漫画を読みすぎでね、みんな。僕らの頃は漫画月刊誌があった。それに鉄腕アトムとか鉄人28号とかが出ている。それをクラスで1人だけ金持ちが買う。それをクラスみんなが順番で回し読みする。全員が回し読みした頃、次の号が出る。みんな「これだな」と思う。科学工業力です。皆さん方はお若いからピンと来ないでしょうが、日本がこの状況、僕らの頃は焼け野原がまだ残っていて、小学校の校舎は木造のバラックでした。1学年が11組あった。ひとクラスに60人いた。教室が全然足りないから、1年生と2年生は二部授業をやって、朝行くと昼ご飯を食べたら終わりです。午後からは同じ教室を別のクラスが使う。ご飯食べて始まる。昼食が2回ある。そうして1年生と2年生を過ごした。中学へ行くと1学年23組ありました。どうですか、壮大なもんです。校舎が全然足りないから、アメリカ軍の払い下げのカマボコ形兵舎をもらって、そこで授業をしていた。校庭ですから夏は暖房完備。休み時間には全員外へ出て休んで、また中で次の授業。こういう環境で育つと協力を学びます、どうしても。そんな中で僕たちが思ったのは科学です。科学でこの国に貢献しないと、ここから抜け出せないと思った。いわゆる団塊の世代は、科学を中心にその周辺でもって未来を描く。実際にそういう世界になりました。これは結果的に間違っていたと思うけど、まあそうなりました。でも、ある時代からそういう夢を持てなくなった。子どもたちが具体的なイメージとして未来イメージを持てない。漫画もアニメも大変終末論的で、世界が滅びる話ばっかりです。彼らが未来イメージを持ってないので、じゃあ今勉強するのは何なのかがわからないんです。教育がもう一回仕切り直さないといけない。ここ数年の間に、少なくとも10年以内に仕切り直さないといけないと思うのは、はっきりした未来イメージを持ってもらうことです。教育全体が未来イメージを失ってしまって、終末論的な世界の中で何となくただ勉強している。その中で子どもは燃えないよ。1人1人がそういう未来をイメージすることを考えてみてほしい。手はかかりますが。(回答・野田俊作先生)
Q
学校現場では病名に影響されすぎた関わりが多くなって、保護者とともに悩んでいます。具体的にどんな関わりをしたらいいでしょうか?
A
病名に影響されるのをやめようよ。医者じゃない人間が「これは誤診です」と言えないけど、たとえほんとに病名がついたところで、「山田花子さんは山田花子さん」で「中村太郎君は中村太郎君」なんですよ。人間とつきあうべきであって病名とつきあうわけではない。そんな子とつきあえない?そんなことない。僕、統合失調症の患者さんもいるし、躁鬱病の患者さんもいるけど、ちゃんとつきあってますから大丈夫なんです。その人を病人だと思いさえしなければ。この人は生活している人間だ、ある傷害を抱えながら生活している人間とつきあうわけで、そう思えばつきあえる。病気を何とかしようと思うとつきあえない。だって、統合失調症という病気はお薬である程度は症状を抑えることはできるけれど、治るわけではない。完全に症状を全部抑え込めるわけではない。全部抑え込むほどお薬を使うと今度はお薬の副作用がどーんと出てしまったり、かえって具合が悪いから、少し辛抱できる程度に救えるくらいにお薬を使いながら、コントロールします。その状態で例えば会社に勤めたりお稽古事に行ったりするわけです。それを援助するのが僕らの仕事だと思う。病名を持った子も、学校の中で児童・生徒として生活することをどう援助するかが問題であって、病気をどうするかの問題ではないと思う。だからさっきの、クラスの中で子どもが歩いていたら、教頭先生が来て保健室へ連れて行って落ち着くのを待ってまた戻るというのは、すごくリアリティだと思うし、そういうふうな具体的な、病名にかかわらず、その人に対してどういうアプローチをすればいいかを考えればいいんじゃじゃないですか。(回答・野田俊作先生)
Q
なかなか成果が出ないときに管理職からプレッシャーをかけられたらどうすればいいか?
A
管理職も大変だと思ってください。(回答・野田俊作先生)
Q
いじめられている生徒を励ます方法はないか?
A
イジメというのが何のことかわからないので、例えば、恐喝にあっている生徒を励ます方法は何ですかと言われたら、それはないでしょう、そんなもん。警察に言って恐喝をしている子を捕まえてもらうしかないんじゃない。でも、みんなにのけ者にされている生徒を励ます。それはあるでしょう。「のけ者にされるのはどうしてだと思う?」と聞くことでね。僕の患者さんに結構います。「友だちができなーい」とか言うんですよ。話を聞くと、自分がどんなに悲しいかつらいかいっぱい言うんです。それは友だちできないよ。この子の話を聞いても面白くも何ともないもの。「僕のところではとにかく楽しく面白い話をして」って言う。「クラスでどんなにイヤなことがあったって言われたって、先生全然楽しくないし君と友だちになろうとも思わないし、もしも先生と友だちになりたかったら、まず先生が面白がる話を探して、それを次に持っておいで」と、まず言います、1つはね。もう1つは、「どの子と友だちになりたいか決めて」と言います。「クラスのあの子と友だちになりたい」とか。そうすると馬鹿げたことに、クラスで一番人気のある子を言うんです。「どうやったらその子と友だちになれる?」「わからん」「その子のそばへ行って、ニコニコしながらその子の話を1週間聞いておいで。向こうが君をかわいがってくれれば友だちになれるし、『あっちへ行け』という顔をされたら友だちになれないから、また考えようね」と1週間やってもらいます。1週間して「どうだった?」「ダメ。私がそばへ行くとスーっと去って行く」「OK。あの子は友だちになれない。2番目を選ぼう。1番目はダメだったけど2番目はどう?」。2番目の子も派手な子を選んでこれも失敗。3番目を選んでもこれも失敗。最後は自分と同じくらい「暗い子」と2人ペアです。「友だちできたー」と言って、2人で座っているだけ。だから、すべての問題は段階的に解決すれば解決する。一気に何もかも解決しようと思うとできませんが、ちょっとずつやっていくと解決できますから、犯罪じゃないイジメについてはそんなことです。(回答・野田俊作先生)