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1 こすもすさん 「黒い森」 3/21
前回とは違い、今回は比喩などの修辞は使わず、全くの物語詩。しかも完全な幻想譚、ファンタジーです。3つのパーツを持っています。1連目は深い森のおどろおどろしさと獣がつけ狙っている、その不気味さとスリリングでしょう。暗闇に光る獣たちの目が非常に映像的で印象に残ります。
木に登って危機は去った。2連目は黒い森を俯瞰するシーン。ここも黒と白のコントラストが鮮やかです。「明るくなって」「朝の光」「体が軽く」「空を飛んでいる」など、ストーリーは良い方向に向かい始めました。そして3連目、無事帰還。ストーリー自体はごくシンプルなものですが、詩文が醸す映像感と幻想性はなかなかいいですね。なんだか、僕は読んでいて魅かれるものを感じました。
佳作一歩前で。
2 上田 一眞さん 「桜トンネル」 3/22
サラリと登場人物を整理しておきます。
〇 こうちゃん・近所組(こうちゃん、ゆうちゃん、みきちゃん)
〇 上田・親類組(ぼく・幼い頃の上田さん、妹みいちゃん、従妹のきみちゃん)
昭和25年~昭和30年代をイメージしますね。昔は親戚や近所混じり合って遊んだものでした。
「*」前の「思案顔」はちょっと不思議。なんかあったんですかね?続きがありそう。
メインになるのは「ぼく」と従妹のきみちゃん。そう、子どもの頃って、従妹と遊ぶのは意外とありましたね。「ぼく」よりもきみちゃんのほうが年上なんでしょうね。いろいろ言ってきてます。それにしぶしぶ従う「ぼく」。最後はみんな楽しくて、よかった、よかった。この詩は難しいこと、抜き!これを読んで楽しく昔を懐かしがればOKです。昔はこんな風に遊んでいました。佳作半歩前で。
アフターアワーズ。
染井吉野の実は「苦く酸味があり食用には向かない」とありました。が、まあ、それは文献上のおはなし。そこはそれ、子どもの無邪気さでしょう。
3 津田古星さん 「日本左衛門は若かった」 3/22
僕はこの人物は初めて知りました。いろいろ調べて、大変勉強になりました。事の始まりは自家の先祖調べ。由緒ある家柄なのですね。そこから思わぬ余禄があったという事でしょう。日本左衛門。東海道筋を荒らし回った盗賊団の領袖ですね。各種地域、各種人物が被害に遭いますが、持広村・小右衛門さんだけは押さえておきましょう。話の主役はいつしか日本左衛門へ。その行動(逃亡?)範囲は実に広いですね。遠州掛川付近が中心のようですが、京都所司代、幕府本体も動いている。本人は若くして処刑されましたが、悪党ながらも涼やかな義侠心も持ち合わせていたのでしょう。そうでなければ、歌舞伎や講談など、人々は記憶しないでしょう。最後は先祖・小右衛門さんに思いを馳せ、誇らしげに終わっています。よく調べて書かれた、と思っています。実際の古文書(こもんじょ)にあたったのは、見習いたいところです。甘め佳作を。
アフターアワーズ。
登場する幕府役職人は全て有名のようです。「本田紀伊守」の「本田」は「本多」が正しいでしょう。
この人、徳川家康の謀臣、本多正信の弟・正重の流れなので筋目確かで老中もやってたそうです。
上記は余談。
4 荒木章太郎さん 「象徴を描く」 3/24
「俺は画家の頭だ」―凄いですよね、この言葉。平文では絶対成立しないものです。
この人は画家でしょうか?よくわかりませんが、タイトルと冒頭部分を頼りに書いていきましょう。
ひと昔前だと「コピー体験」、今だと、さしずめ「バーチャル体験」とでも言うのでしょうか。そういった概念も含めて、自己とは?人間とは?を煮詰めてゆく。どんなに巧緻な絵を描いても現実の風景にはならない。愛は実際に体験しないと愛ではない。そのような当然にして絶対的なことを、自らの思考世界に設定し、迷い子のように放浪する、何処かに出口を見出そうとする、そんなさまを想像できます。山火事のくだりは大船渡の火事が脳裏をかすめたのかもしれない。
最後の2行は印象的。差し当たっての、これが回答か?人間の虚と実を橋渡しできるもの。ひとつの生き方の方法、そんな風に思っています。佳作です。
5 月乃にこさん 「手と手は」 3/24 今回、初めてなので感想のみ書きます。
なかなか含蓄に富み、良い詩を書かれています。手という単純な対象をこれだけのボリュームで書けるのも、なかなかの書き手さんと思われます。誰しも思いつくところでしょうが、この「手」は人間に置き換えることができるでしょう。人間個人の内面、人間対人間の関係性、その紐帯、その離合集散まで。その状態に合わせて心情も寄り添うかのようです。とりわけ「手を組む」「手を広げる」に注目したいです。もちろん、これらは単純に動作を考えてもよいのですが、転じて、前者は「志を同じにして共に目標に向かう」さまが思い浮かぶし、後者は「新たな分野を開拓する」が想像されます。終わり2連はフィナーレを飾るにふさわしく総括され、見事な思考で終わっています。ぜひまた書いてみてください。
6 白猫の夜さん 「せめて友のままに」 3/24
冒頭はなかなか印象的な場面です。それ以降は何か恋愛のことかもしれない。どういう種類の恋かというと、「左の薬指の指輪」から、相手は既婚者であることが知れます。ただ「代表スピーチは任せるわね」がヒントのようでもあり、ヒントにしては不充分なようでもあります。想像されるのは以下のようなことです。
「男女グループで、ワイワイ付き合っていたけど、主人公が密かに好いていた男性が(同じグループにいた)別の女性と結婚することになった」
「代表スピーチは任せる“わね”」―は結婚式を想像させるし、「わね」は女性のセリフです。
確かにこうなると、人には言えなくなりますよねえ。別に不倫でも罪でもないですが。主人公だけの心の整理ということになるでしょう。そして、この詩、です。文中「そう あなたは友なのです」はまさに苦渋のひと言でしょう。その人への想いと過去の想い出も「切り刻んで」。そこで登場する笹船の場面です。想いを捨てて、表面上今まで通り「せめて友のままに」。そんなJUST FRIENDS。 語尾の書き方に辛さが滲むかのようです。甘め佳作を。
アフターアワーズ。
最後「ここらで」は、ちょっと。別の言葉を考えましょう。
7 静間安夫さん 「釜山」 3/24
冒頭佳作。
釜山というと、僕の場合、戦争に関わるイメージしかなくて、今回、改めて調べてみると、大都市なので心底驚きました。文体は二つだけ検討リクエストがあります。なに、大したことではありません。
とても雄渾な詩なので、あくまで硬派で行きましょうか。6連目「ごらんなさい」は手ぬるい(笑)。
さあ、旅人
見よ!
―くらいは言っちゃいましょう。 あと最後から1コ前「きみ」も甘い(笑)。「きみの」を削除で「その」で充分通じるでしょう。「釜山」=「おまえ」という強い代名詞があるので、ここは「旅人」=「きみ」という甘さは避けたいです。それだけ!あとは、この詩を読んで、ゆっくり旅情を味わいましょう。
過去に苦難の歴史あり、そして現在の発展あり。日本とも地理・人文共に近い。一般に港湾都市というのは、ホント、ロマンありますよ。そのあたりの事情が充分語られ、叙事、叙景、抒情三拍子揃って正統的な仕上がりです。冒頭と終連の回帰型も僕は好きですね。釜山を調べて、この詩を読んだら、なんだか行きたくなってきましたよ。
8 森山 遼さん 「存在への恨み」 3/24
逆に終わりから行きます。「神、自然、人間」―この3つで、ほぼ全ての「存在」と言えます。
タイトルに近づく事ができます。あとは、その「恨み」の様相を見ましょう。初連、2連が負の何事かを暗示させ、この詩の始まりを伝えます。抽象化された「数千の目とため息」。具象化された「老人、若者、娘たち」つまり殆どの階層が、こわばり、悲しみ、沈黙する。それら深刻な表情を緊張と呼ぶならば、その日は必ずやって来る。これらはすでに抗議を越えてタイトル言葉にまで達しています。
「この瞬間にも/復讐を用意する」は恐ろしいですが、この詩の基調において、選び抜かれた言葉として響いてきます。暗い情念を感じました。 佳作とします。
9 まるまるさん 「息子へ」 3/24
「まだまだ 温まっていないよ」―僕も母からそう言われたことがたびたびありました。
場面、状況は違いますが、親子間で本質は似たようなことがあった。そんな幼女の頃の想い出から始まり、現在を考えています。
やはりこの詩の主軸は交差点での息子さんのエピソードにあるわけです。この息子さんは自分をよく知り、冷静な判断と意志を持っていました。母は自分の不明を恥じながらも、息子さんの考えと行動に満足し、さらに激励します。すなわち「これからのキミは」以降、充分、結論的な結びをしています。実にこの詩はこの部分であります。
いっぽう、僕はこの詩に、もうひとつ別の事項も感じていて―言葉では上手く言えないんですが―こんな感じ。母親の側です。
〇 自分が子どもだった頃の親
〇 今度は自分が親になった時の子ども
このふたつの思いが、この詩の情緒の中に少なからず入っている気がします。受け継ぎのようなものでしょうか。 佳作半歩前で。
評のおわりに。
いよいよ4月。良い季節になって来ました。近所の家の桜も咲きました。
明日は知人の絵画展に行ってきます。 そのタイトルが「交わる軌道のむこう」。
どこか、詩的でいですね。帰りは何処かで美味いもんでも食べて。 では、また。
今回も読んでいただき、誠にありがとうございました。そしてアドバイスの方、とても勉強になりました。今回は自分でも少し難しく考えすぎたかなとも思いました。その点も含めて井嶋様のアドバイスは的確でとても勉強になりました。ありがとうございます。これからも励みにして頑張ります。
投稿を読んで頂き、誠にありがとうございます。その上、細かな点にまでアドバイスを頂き、とても勉強になりました。これからの創作にとても励みになりありがたいアドバイスになりました。ありがとうございます。まだまだ未熟ですが頑張ります。
昨日までは寒かったのに
急にあたたかくなるものだから
吃驚しちゃってほころんじゃったわ
風がそよいで香りを運んで
ご覧なさいな 明々後日にはきっと満開よ
ところで私の根元で居眠りするのは
一体全体どこのだあれ?
こんなに見事に咲き誇っているのだから
せめて1度くらいは見なくちゃイヤよ
はらり ひらり
いたずらに
はなびらを落としてみようかしら?
ひらり ふわり
起きる気配は全くないわ
くすぐったくはないのかしら?
それにしたって変わったお方
寂れた墓場でお昼寝だなんて
とっても良いご趣味だわ
桜の花さえ目もくれず
ずうっとねむり続けるのだもの…
あら 気づけばもうすぐ満開ね
ね? 綺麗なものでしょう
そう言えばだれかが仰っていたわ
桜の森の満開の下は怖ろしいのだと
まったく失礼なお話でしょう?
まあ 正しいのでしょうけれどね
……ね
かどわかしてあげるわ
あなたがそれを望むなら
この国の人々が思う通りに
私はかどわかしの名人になるわ
ね
隠してあげるわ
見事な桜に死を見立てるぐらい
俗世が非道いところなら
まっさらに隠してあげるから
どうか
色の薄い瞼を開いて
光を灯したびいどろの瞳を見せてちょうだい
…むかしむかしに故人を偲んで
大勢の人が見上げてくれたように
生きた瞳を見せてちょうだい…
知っていたのよ 私
この人の息は絶えていること
わかっていたのよ 私
もう 事切れた人しかここへは来ないこと
知りたくなかったのだわ 私
ひとりぼっちが生き苦しいこと
わかりたくなかったのだわ 私
置いていかれるのってこんなに胸がかき乱されるのね…
どうしましょうね
どうしましょうね
骸はいずれ土に還り
私はふたたびひとりぼっち
どうしましょうね
どうしましょうね……
……世界が見捨てた骸なら
私がもらってしまってもよろしいのかしら……?
骸はかたく
閉じた瞳はひらかない
胴体はすでに石のようで
腐敗の時は迫り来る
とっさにこの人を覆い隠して
ひといきに私の中へと引き摺り込んで……
時はながれて
幾度もの四季が過ぎ
再び訪れた満開の季節
桜の根元に打ち捨てられた骸は跡形もなく
その身を探そうものならば
ざわん ざわん と
桜が激しく身をゆするのです
ガラァン ガラァン と
サレコウベが激しく頭を揺らすのです
……己が見捨てた人の子を
己の勝手で返して欲しい?
甚だ可笑しなお話だわね
どうぞ おとといいらっしゃって?
私の詩に丁寧な感想と評をいただきまして誠にありがとうございます。
佳作の評を頂きとても嬉しいです。
身近な日常に潜む異常、恐怖を表現したいと思い書き上げました。
ご指摘のように文章が冗長になってしまい、リズム感が損なわれてしまっているのは課題だと思いました。
アドバイスを参考にしまして、次作への糧といたします。次回もどうぞ宜しくお願いいたします。
また、『夢みたものは』でもご協力出来ましたら幸いでございます。こちらもどうぞ宜しくお願いいたします。
紗野玲空様 評をいただき、ありがとうございました。佳作としていただき、うれしく思っております。ご指摘の説明的になってしまっている部分、自分でもここは、少しくどい感じはしておりました。何度か推敲してみたのですが、主人公が彼女を一生懸命説得するという感じを詩的に簡素に表現することができず、冗長なままでした。頑張って、よりよい表現に書き直してみたいと思っております。いつも的確なご助言ありがとうございます。今後ともよろしくご指導ください。
紗野玲空さま 評ありがとうございます。
べた褒めでうれしいです。
最近はシンプルなスタイルで詩を書いてます。
似たような表現しかできないのがもどかしいです。
自分や誰かを癒したり励ましたりする詩を書きたい気分です。
評をいただきありがとうございます。
この詩は先日散歩した時の風景を描くような気持ちで書きました。
内面的な要素を加えることで詩に深みが増すというご指摘は今後の詩作に活かしたいと思います。
ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
海は
どこまでも深く碧い
波静かな青海島 通(かよい)の波止 *1
対岸の野波瀬(のばせ)が霞んで見える
消波ブロックの上から
水中を覗くと
水族館のアクアリウムと見紛うほどに
色とりどりの小魚が群れている
スズメダイ
ネンブツダイ
ニシキベラ
アジ
イサキの幼魚
カサゴでも釣るかと
釣り糸を垂れる
子ども達は揃って大の魚好き
タモ網を使って海中をまさぐっている
娘の舞衣が
変幻自在に泳ぐゴンズイの幼魚を見つけた
いわゆる ゴンズイ玉だ
毒魚で
幼魚であっても刺されると痛い
舞衣がタモ網にゴンズイを追い込んだ
引き上げると
ピチピチ跳ねている
髭があり
まさに海に棲むナマズだ
おかさな〜(お魚)
幼い息子祐が魚を摑もうと手を伸ばすと
天使の声がした
触っちゃだめ!
祐の後ろに立つのは
おかっぱ頭に赤いスカート
サンダル履きの
島の女の子
掌に
透明なクラゲを乗せている
ゼリーのように
柔らかい
小さな可愛いクラゲ
そっと祐の手に渡す
ぷにゅぷにゅして面白い
笑顔が弾け
いつの間にか三人一緒に遊び始めた
透明なクラゲを弄(いじ)りまわし
釣り上げたばかりの
クサフグのお腹を膨らませて遊んでいる
夕陽に照らされた小さな影が三つ
豊かな海に
穢れなき時が流れる
鷗が啼く
ああ もう家へ帰る時刻だ
車に乗り 発進するとき
おかっぱ頭の女の子が家の窓から
手を振っている
さよなら さよなら
いとけない女の子
君の姿はみなの瞼に焼きついたよ
いつの日にかまた会おう
おかっぱ頭の女の子
ありがとね
*1 青海島(おおみしま) 長門市北部にある島
橋が掛かっており車で行くことができる
都合によりお先に失礼いたします。
3/25〜3/27にご投稿いただいた作品の感想・評でございます。
素敵な詩をありがとうございました。
一所懸命、拝読させていただきました。
しかしながら、作者の意図を読み取れていない部分も多々あるかと存じます。
的外れな感想を述べてしまっているかも知れませんが、詩の味わい方の一つとして、お考えいただけたら幸いです。
*******
☆「Sunday Morning」 上原有栖さま
上原有栖さま、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
日曜日の朝という穏やかな設定から始まる作品ですが〜。
青痣や通り魔事件のニュース、部屋の中から聞こえる不気味な「グチャッ……ビチャッ……」という音、そして最後の「食料(エサ)を買って帰るからね」という言葉……。
日常の中に潜む異常さを際立たせて、緊張感を徐々に高めていく展開が印象的ですね。
主人公の感情が平板で、知人かもしれない被害者への動揺や不気味な音への反応がほとんど見られない点が、冷酷さや罪悪感の欠如を匂わせ、実は犯人なのではないか??という謎を読者に投げかけてくるのも巧妙です。
「今日は『いつもの』日曜日」という表現も、こうした不穏な出来事が日常の一部であることを示唆し、現代社会の疎外感や潜在的な暴力性、平穏がいつ崩れるかわからない不安定さを象徴的に映し出しているように感じます。
日常と非日常の境界を揺さぶり、読者の想像力を刺激する構造が魅力的ですね。
ただ、詩文が少し長めでリズムが途切れがちなのが少し気になりました。
例えば初連で言えば、
洗面所で顔を洗って顔を見たら昨日殴られた所に青痣が出来ていた
の詩文など、短く区切ると、詩らしい流れが生まれ、読みやすくなるかもしれません。
また、主人公の感情や状況への反応をもう少し加えると、さらに共感しやすくなると思いました。
不穏な要素に少しヒントがあると、謎を残しつつテーマが伝わりやすくなる気もします。
言葉の凝縮、詩のリズムを考えていただくと、さらに深みのある詩になりそうです。
有栖さんは、手法、形式、内容…色々な詩の世界をお持ちで、毎回多彩な詩の世界に驚かされます。
不気味ながらも、裏にある現代社会の問題を示唆する佳き作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
**********
☆「しゅきピ」 喜太郎さま
喜太郎さま、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
恋心が芽生える瞬間、その感情が抑えきれずに爆発する様子が、軽快なトーンで描かれています。
率直でとても可愛らしい作品ですね。
心のドキドキが加速していく流れが非常に自然で、読んでいて思わず微笑んでしまいました。
「今の中学生でもならないっつうの!」といった砕けた表現は、詩に親しみやすさとユーモアを与え、リアルな独白のような雰囲気は、大きな魅力となっていると感じます。
特に最後の『ガチでしゅき‼️ しゅき‼️だいしゅき‼️』というフレーズは、感情が溢れ出すピークを象徴しており、繰り返しが効果的で勢いがあり素晴らしい締めくくりだと思います。
少し気になる点を申しますね。
例えば中盤の
あの時からあなたを見つけるとドキドキして
話すだけでしどろもどろって
の部分など、少し冗長に感じられる部分があるように思います。
言葉が詰まりすぎ、流れが停滞してしまう印象を受けます。
短くリズミカルにまとめることで、詩全体の勢いが途切れず、最後まで突き抜ける流れを作れるかと思います。
また
あの頃に戻って可愛く言わせて
という表現はノスタルジックで素敵なのですが、「可愛く」という言葉は日常的にも乱雑に多用される形容詞の代表的なものになっている感が強いので、ここでは「可愛く」を避け、例えば、「目を逸らし 小さく言わせて」など、具体的なイメージを加え、そのシーンをより鮮明に思い浮かべられるようにした方が、感情の深みが増すかと感じました。
「‼️」の使用についても少し気になりました。
視覚的なインパクトが強く、感情の勢いを強調する役目を果たしているとは感じます。
カジュアルな印象が強まるため、SNSなどでは有効かと思いますが、詩集のコンセプトや読者層によっては浮いてしまう可能性もありますから、「!!」にとどめておくのが無難かと思います。
恋のドキドキとピュアな気持ちをストレートにぶつける魅力が存分に詰まっています。
テンポを整えたり、イメージを補強することで、さらに読者の心に深く残る詩になると思いました。
読んでいてとても楽しく、恋の初々しさや純粋さを思い出させてくれる、佳き詩だと思いました。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
**********
☆「散歩道」 こすもす様
こすもす様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
全体を通して非常に優しい雰囲気が漂う詩で、心が温まり、穏やかな気持ちになれました。
春の柔らかな日差しの中、散歩と共に間が流れてゆきますね。
ソーダ水のようなせせらぎ、園児のような小鳥たち、騎士のような白鷺……直喩法も絶妙で、情景描写の細やかさが非常に際立っています。
こうした描写を通じて、自然の美しさを丁寧に切り取っていることが伝わってきますし、読者は詩の中の風景に自然と引き込まれます。
また、詩全体のリズムも良く、頭の中で情景がスムーズに流れていく感覚があり、詩を読む際の心地よさを一層高めてくれる要素となっていると思います。
少し欲を申し上げるならば、感情の動きの「変化」がもう少し加わると、さらに心に響く作品になるのではないかと感じます。
散歩中に考えたことや、風景を見てふと思い出した記憶など、内面的な要素が加わることで、一層詩に深みが増すと思います。
現在の形は情景描写が中心で、その美しさは十分に伝わってくるのですが、「この風景を見て何を感じたのか」「この情景がどのような感情や記憶を呼び起こしたのか」といった内面の動きがもう少し見えると、読者にとってより共感しやすい作品になるかもしれません。
とはいえ、全体として、自然の美しさと穏やかさが存分に詰まった詩で、読んでいて心地よい時間を過ごすことができました。日常の喧騒から離れて静かなひとときを過ごしているような心地よい余韻が残りました。
佳き作品でした。
ありがとうございました。
**********
☆「秋の古夢」 日向さま
日向さま、こんにちは。御投稿ありがとうございます
MY DEARの投稿は初めての方かと存じます。
私が評担当にあたってしまい、申し訳ない気持ちです。
とても難しく、味わうまでに至れませんでした。ごめんなさい。題を頼りに拝読させていただきました。
とても繊細な感性で綴られており、鮮やかな色彩と感覚が織り交ぜられた豊かなイメージの流れが感じられます。
連毎の緩急のつけ方もとても巧みだと感じました。
秋という季節を背景に、火の粉や炎、茜色の空といった視覚的・触覚的な要素が次々と現れ、作者の内なる世界へと引き込まれていきます。
(秋らしい)静かな思索を促す力を感じました。
秋を象徴として、孤独や郷愁、罪と救済といったテーマを古い夢の中に映そうとなさったのでしょうか。
一度読んだだけではその全貌を捉えきれず、何度も味わいたくなる魅力があるように思います。
冒頭の「小さな火の粉が手の甲に口付けをする」という一行は、詩の雰囲気を決定づける素晴らしい一文だと思います。
(「染る」は文法的に「染める」や「染まる」の方が自然に感じられます。古風な表現を意識されたのかもしれませんが、少し引っかかりを覚えました)
「いつしか紳士は形をなして」という展開はとても興味深いです。
火の粉から「紳士」という人格的なイメージが立ち上がり、さらに「空という広大な何かを己のものと定義する」という壮大な発想へと飛躍していきます。
この抽象性とスケールの大きさが詩に深みを加えていきますね。
2連目…無限の空に対する徒労感が伝わってきます。
「人肌は罪深き恋」や「時計草はあの日の口付けで止まったまま」…さらに詩情豊かに紡がれてゆきますね。
時計草の停止した時間は、過去の喪失感を象徴していると考えられ、その後のくしゃみへの流れは、秋の訪れに伴う空への何らかの働きかけを表現されたのでしょうか。
3連目…色彩の変化を通じて時間の移ろいや感情の揺れが描かれていますね。素敵な連です。
(「だれが教えてくれるだろうか、」読点は意図的でしょうか)
4連目…前連の茜色から一転、冒頭の「黒い羽」は色彩的にも暗く重く、トーンへが移り行くのを示唆しているように感じます。
「黒い羽」は秋の落ち葉に似ています。
秋になると葉が木から離れ、地面に落ちていくように、「黒い羽」もかつての翼…6連の「かつてすべての空を手に入れた翼」の一部が落ちたものという解釈でよいのでしょうか…。
「落ちる」という動きが、秋という季節の持つ「終わり」のイメージと詩人の心の中の孤独を結びつけているようにも感じました。
秋の葉が落ちるように、詩人の内面から何かがこぼれ落ち、秋の終わりと共に、一人で抱える寂しさや過去の重み、孤独はより強調されているように感じられます。
5連目…熱さという感覚を通じ、記憶が語られます。
「ドライヤーのようなあたたかさ」という日常的な比喩や「鼻提灯は見えたり消えたり笑ってる」のユーモラスな描写が緊張を和らげてくれます。
6連目…これだけで一篇の詩ができそうなボリューム、内容を含んでいるように感じます。
「私を燃やす炎は彼岸花の繭になる」「母の腕の中はあたたかいと知った」など赤く儚いイメージは再生の暗示を兼ね備え、終連に向けて詩に象徴的な締めくくりを与えているように感じます。
終連…詩の主題である炎(秋)の両義性を見事に集約しているように感じます。
ときには海に咲き
空を飲み込み
大地に立つ
壮大なイメージは、炎の遍在する力を歌い、「無邪気で優しい僕の心」と結びつけることで、一応の回帰をみます。「太鼓が鳴り止まないかぎり」という条件付けが、永遠に燃える炎の運命を暗示しつつ、どこか解放的な響きを持つのも素敵な着地だと思いました。
感覚的で色彩豊かなイメージと、私の孤独を中心とする深いテーマが絡み合い、読むたびに新たな発見がある詩です。色彩の使い方、抽象と具体のバランスが詩に生命力を与え、感情の起伏に自然に引き込まれてゆきました。
独自の世界観と情感を持ち、詩人としての感性と技術が存分に発揮され、何度も読み返したくなる魅力に溢れています。
しかしながら、大作ということもあり、イメージのつながりを結びつけるのが難しく、焦点がぼやけてしまったり、巧みな比喩や象徴の掴みにくさにより、解釈が散漫になってしまう可能性が少なからずあるように感じられました。
読み応えのある素晴らしい佳き作品でした。
ありがとうございました。
**********
☆「喜怒哀楽」 相野零次さま
相野零次様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
初連でぐっときました。
「晴れた空を見上げよう」
個人的に作品に元気をいただけました。
ありがとうございました。
私も見知らぬ誰かを元気づけることができるような詩を、ゆくゆくは書けるようになりたいです。
感情の起伏を自然や日常の情景と重ね合わせながら描いた美しい作品ですね。
喜び、怒り、哀しみ、楽しさといった人間の普遍的な感情が、四季や自然現象と調和しつつ表現されており、読者に深い共感を呼び起こします。
詩のトーンは穏やかで優しく、感情の激しさと静けさがバランスよく共存している点が印象的です。
また、日本語の繊細なニュアンスを生かした言葉選びやリズム感が、詩に独特の味わいを加えていますね。
初連…冒頭の「哀しみの涙が乾いたあとは/ 晴れた空を見上げよう」の一節、いいですね。
哀しみを経た後の希望がシンプルかつ力強く示されています。
「晴れた空」や「雲の切れ間からのぞく太陽の光」が癒しの象徴として描かれ、鮮やかな視覚的なイメージは読者の心に残ります。
「君を癒してくれるから」という言葉に優しさが込められており、読者寄り添うような姿勢が感じられます。
2連…「人生のうちあと何回泣けばいいのだろう」という問いかけは、人生の儚さや不確かさを静かに投げかける一文で、読者に内省を促します。
「やさしい川のせせらぎに涙の流れる音が重なる」という描写は素晴らしいね。
自然の音と感情の動きが交錯するこの表現は、詩全体を通して描かれる「自然と人の一体感」を象徴しており、非常に詩的だと思います。
3連…「怒りに身を任せて地面が揺れる/地球も怒り苦しむこともある」という詩文では、怒りという激しい感情がダイナミックに表現されています。
人間の怒りを地球の揺れに例えることで、スケールの大きさを感じさせ、感情の強さが際立ちます。
「そんなときは机の下でじっと我慢しよう」という結びは、ユーモラスな印象を与えます。詩に軽やかな変化をもたらしますね。
4連…「笑顔は満月の鏡によく映える/ にっと見せた白い前歯がきらりと光る」は、喜楽が生き生きと描かれた部分ですね。
「満月の鏡」という比喩が詩的で美しく、「白い前歯がきらりと光る」という具体的な描写が笑顔の純粋さを際立たせています。
「月のうさぎが踊れば/手拍子を打って僕らもおどろう」と続く流れは、想像力を掻き立てる楽しさに満ちており、読者を詩の世界に引き込みます。
終連…「四季の移ろいは喜怒哀楽とそっくり/自然と人はいつも同じ顔で笑ったり泣いたりしている」は、詩全体の主題を簡潔にまとめ上げた結びとしてとても効果的だと感じます。
四季と感情の類似性を指摘することで、自然と人間の深い結びつきを再確認させます。「同じ顔」という表現が印象的で、感情の普遍性をさり気なく訴えかけます。詩の余韻を美しく残す終わり方ですね。
感情と自然を織り交ぜた構成が魅力的で、穏やかな感動を与える作品だと思いました。
言葉の選び方やイメージの豊かさが際立ち、自然現象を感情に重ねる手法が効果的だったように感じます。
欲を申せば、トーンの統一感や具体性をさらに追求することで、より強い印象を残せるのではないかと少し感じました。
素敵な佳き作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
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☆「雨の喫茶店」 温泉郷さま
温泉郷様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
雨の日の静かな情景の中で繰り広げられる二人の会話と内省を通じて、空想と現実、主観と客観というテーマが繊細なタッチで描かれています。
喫茶店という日常的な舞台に、哲学的な問いと個人的な感情が交錯する構成が魅力的で、「主観的真実」という概念を軸にしたやりとりが印象的です。
初連…詩の舞台を簡潔かつ鮮やかに提示しています。
雨粒やコーヒーの香りといった感覚的な描写が、読者を喫茶店の落ち着いた雰囲気に引き込みます。
2連…語り手のキャラクターが垣間見えます。少し見栄を張る癖があるものの、彼女との親密な関係性が感じられ、微笑ましいやりとりが詩に温かみを加えています。「今度こそは カッコいい言葉だ」と続く部分は、語り手の純粋な気持ちが伝わり、後の「主観的真実」という言葉への伏線として機能しています。
3連…彼女の優雅さを際立たせつつ、詩に視覚的な美しさを与えています。この一行が会話の前に挿入されることで、彼女の存在感が際立ち、二人の関係性に深みを与えますね。
4連目から「空想は主観的真実である」と提案する詩の核心が導かれます。
この言葉自体が詩的であり哲学的で、読者に考えさせる力があります。
さらに、その説明として
「その人の経験や知識や感情が反映されていて/その人固有のものだ」と展開する部分は、空想の定義を丁寧に掘り下げており、詩の知的側面を強めていると思います。
彼女の反論「客観的真実じゃないの?」と、対する語り手の「空想は実在しないから/それ自体は主観的だよ」というやりとりは、二人の対話を生き生きと描き出します。
彼女の「納得のいかない顔」や「寂しそうに本に目を落とした」描写が、感情の機微を細やかに捉えており、読者に彼女の心情を想像させます。
「僕が言いたかったのはね」で始まる長い説明は、詩のクライマックスですね。
空想を単なる幻想ではなく、現実と結びついた大切なものとして再定義しており、深い洞察を感じさせます。
彼女の「それなら賛成するわ」から始まる返答…「あなたの中では 私は主観的真実であり 実在する大切な生活の一部なのね」という言葉が、突然彼女の不在を暗示し、読者に衝撃を与えます。
「私はもう 客観的には実在しないけれど」という一文で、彼女が過去の存在であることが明らかになり、詩全体のトーンが一変します。この展開は非常に効果的で、切なくも美しい余韻を残します。
終連…詩を静かに締めくくる一行として素敵だと思います。
記憶の曖昧さと喪失感が凝縮されており、読者に思索の余地を与えます。
詩のテーマである「主観的真実」とも共鳴し、彼女が語り手にとって大切な存在だったことが強調されていますね。
情感と知性が調和した詩であり、日常の中の哲学的な問いは、語り手自身の経験を通じて詩の中に見事に昇華されているように感じました。
少し欲を申し上げるならば、空想は云々の部分のやり取りが、説明的になりすぎ、少し冗長に感じられます。
言葉を絞り込み、トーンの一貫性をさらに磨くとより完成度が高まるかと感じました。
素敵な佳き作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
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以上、6作品、御投稿いただき、誠にありがとうございました。
それぞれに、素晴らしい作品でした。
十分に読み取れていなかった部分も多かったかと存じます。
読み違いはご指摘いただけたら嬉しいです。
井嶋りゅうさんが、評者を退かれるとのこと、さびしくなります。お疲れ様でした。
もうすぐ4月。新年度が始まります。
皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
紗野玲空