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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

紗野様 評のお礼です 喜太郎

読んで頂き、細かい点まで感想と評を頂き誠にありがとうございます。とても参考になりました。

編集・削除(未編集)

少女人形 喜太郎

ガラスケースの中
少女は笑う
僕が見つめるたびに
少女は『また見てくれたね』
そんな笑顔で僕を見る

ガラスケースの中
私は笑う
あなたが私を見つめるたびに
あなたを独り占めしてるから
私は嬉しさに笑う

もしも君が話せたら
僕になんて言うのだろう?
寂しさを癒してくれるかい
悲しみを慰めてくれるかい

もしも私が喋れたら
あなたに愛しさを伝えたいの
寂しさに包まれないように
悲しみに涙しないように

ガラスケースの中
狭くはないかい?
君は外の世界を知りたくないかい?

ガラスケースの中
私は幸せなの
あなたのそばで あなただけを見つめていられる

ガラスケースの中
君は笑う
私は笑う

編集・削除(未編集)

上総亀山の秋  小林大鬼

ダム湖に映る里山

霜月の半ばを過ぎても
紅葉にはまだ早すぎた

宿を出たものの寄る店もない

吹き荒ぶ風に
ムーミンの夢は崩れて
亀の形に姿を変える

だんだんと暮れかかる上総亀山

私は元来た道を戻りながら
静かすぎる秋の夜を味わうのだった

編集・削除(未編集)

歌えない歌  凰木さな

歌が歌えなくなる程
疲れてしまった時には

いっそ何も無いところへ
行きたくなる

そんな場所は
どこにも無いと
知っているのに

歌が歌えなくなる程
疲れてしまった時には

手当たり次第に
思いついた事をするだけ

順序立てる事も
有益な事も
分からなくなる

生まれてきた責任は
きっと私にある

細胞分裂を繰り返して
地図を渡されて来た

小さい頃から
いつも一番後ろを歩いていた

追い抜かされて
追いつけなくて

歌が歌えなくなる程
疲れてしまった時には

それでも地図を頼りに
歩いて行くだけ

編集・削除(未編集)

時の遺産(続・地下に在り)① 全四回連載 三浦志郎 11/19

   かつて こんな新聞記事があった。


相武新聞
一九八五年(昭和六十年)十月二十八日(月)
朝刊 社会面

「神奈川県三浦市初芽町三津浜台地で
旧海軍の地下通路見つかる
そこに遺されていたものは?
町長が明かす戦後四十年の秘密」


            *

   この新聞記事より少し以前、
   ここは神奈川県三浦市三崎警察署。
   今、初芽町の浜野正春町長が菅野清文署長を訪問している。


これは これは 町長 いつもお世話になっております 
今日はどんな御用件ですか?
こちらこそお世話様です 実は 私自身のことで……
三津浜の野菜畑に元飛行基地の地下通路がある
署長さんはそんな話を聞いたことがありませんか?
ほう いきなりですね ええ 何やら少し聞いた事はありますな 
しかし単に噂でしょう それが何か?
戦時中の地下通路は現存します
そこには飛行機の胴体と二体の白骨遺体があります
四十年間私はそれを知りつつ秘密にし 関わってきたのです
何ですと!?四十年……遺体…… よくわからないが—
それは本当ですか?全てを詳しく話してください


   菅野署長は驚き犯罪の匂いを感じている。メモの用意をした。
   すでに険しい表情に変わっている。

            *

昭和二十年の四月 あそこで旧海軍の飛行基地工事が始まりましたが
終戦で頓挫しました 地下通路だけは完成して
私の父・浜野正風は海軍大佐で この基地開設の総指揮官でした 
父は基地未完成と敗戦に絶望し一人の部下と共に地下で自決したのです 
その遺体がまだ地下にあります
私は父の遺書を尊重し現場も遺体もそのままにして
長い間秘密にしてきたのです 供養はしてきたつもりです
もちろん犯罪なのは覚悟していました

信じられん そんなことがあるなんて……
遺体は二体ですね もうひとつの遺体は特定できますか?
貝塚新介という部下です 初芽漁業社員の貝塚新吉氏の父です
その息子さんも私と行動を共にしていました
ふぅむ 初芽漁業の……凄い偶然だな
町長 それだけの理由で四十年は不自然ですね 何か他にも?
さすがですね お察しの通りです 
金を探していました 金の亡者になっていたのです


   もともと浜野家は三津浜地域の大地主。その基地予定地も浜野家の所有地で、
   海軍はその土地を買い上げ、浜野正風にその接収地代と基地開設の軍用資金
   を預けていた形跡がある。それらは莫大な金額にのぼるはずだった。息子の
   町長・浜野正春と貝塚新吉はそれぞれの父親の遺体を守りつつ、地下でその
   金を探していたのだった。


浜野町長 私の着任以来 あなたにはいろいろ良くして頂いた
だが それとこれとは話が別だ 
死体遺棄の疑いがありますぞ
わかっています そのつもりで来ました 
貝塚さんにもその事は伝えてあります
ただちに実況見分する必要がある
戸田君 すぐに鑑識係を呼ぶように 事情は私が話す
それから初芽漁業の貝塚新吉氏に任意出頭するよう要請してくれ

            *

   貝塚さん、今日の出頭理由はもうおわかりですね?
   ええ、浜野さんから聞いています。
   浜野さんとはどういう知り合いですか? いつ頃から?
   今回のこと、知っていることを全て話してください。


貝塚新吉です 
昭和十六年(1941)七月九日生まれ 四十四歳
住所 神奈川県三浦市初芽町石田三丁目一六〇〇 シープラザ成島三五 
職業は漁業会社社員 単純に言えば漁師です
私はもともと三崎で生まれました
四歳の時に海軍にいた父が戦死したので 
父のことは殆ど記憶にありません 写真で見るくらいです 
叔父―父の弟―が初芽町三津浜で小さな漁業会社を始めたので 
高校卒業後 私もそこに引っ越し入社しました
最初は小さな漁船一艘からの始まりです
浜野さんと知り合ったのは昭和四十年頃(1965)で私は二十四、五歳でした
当時 仕事で漁業協同組合へはよく行きました 
そこで浜野さんは営業部渉外担当で働いていました
最初 彼から声をかけてくれて馴染みになりました
仕事以外にも一緒に釣りをしたり飲みに行ったりもしましたね

父の死についてはちょっと引っ掛かる点があったのです
東京からの軍需物資を横須賀に運ぶ輸送船に乗っていて
浦賀水道でその船が撃沈されての戦死と聞かされていました 
ですから遺骨はありません でも どこか不自然さは感じました 父の日記が出
てきて一番最後に「昭和二十年三月二十六日 三津浜開設分遣隊副長を拝命す」
とあったので その任務上の戦死は確かなようでした 
それで一応納得はしたのです
ところが ある日 浜野さんに喫茶店に誘われました
そう あの日のことは はっきり憶えています


**********
つづく。(次回 12/1)


             

編集・削除(編集済: 2023年12月14日 13:02)

雨音さま 御礼  江里川 丘砥

大変遅くなりまして申し訳ありません。
先日は「街を歩く」という作品に評をいただきまして誠にありがとうございました。
 いただいたアドバイスを参考に推敲を重ねていこうと思います。
良かったと言ってくださった14連は一番思いが強く入った所だったので嬉しかったです。
ありがとうございました。
またどうぞよろしくお願い申し上げます。

編集・削除(未編集)

音を紡ぐ  エイジ

それは最初は音だった
一つ一つの音が連なり
いつしか旋律となった

旋律は滑らかに
高低を繰り返し
時に休み 時に連なり
一枚の楽譜となった

ああ、また印象的な
あの主題が現れる
私は音宇宙と一体となる
私の想念は今や
宇宙空間へと自由に放たれる

主題はやがて変奏される
教会の大伽藍を震わせるほど
高らかに鳴り響く
絶妙なそして的確な
和音が添えられる

和音は更なる音を積み上げ
幾層にも積み上げられ
夢幻の響きに誘う
その上を旋律は走り抜ける
楽譜を二枚三枚四枚と

何秒か突然の静寂
あまりに静かすぎて
空気の漂う音が聞こえそう

そしてゆっくりコーダが始まる
主題の展開を受け継ぎ
ため息まじりに
音が紡がれていく

繊細なタッチの旋律は
バロックの如く絡み合い
やがて聖堂に最後の一音を落とす

それは最初は音だった
ある一つの音だった

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ロバートジョンソン  えんじぇる

ロバートジョンソンは、たった一人で、誰も聞き手がいなくても歌ったんじゃないかとエリッククラプトンは分析する。

私は決められた場所で、求められる歌を歌える幸福が手に入らないなら、歌を歌わないと決められる表現者をどこかで信用出来ない。

本当に、心が、歌と想像力の世界に生きる人間なら、精神病院の中でさえ、歌おうとしてしまうのではないか?

沈黙を守り続けると独白気味になる。意味や辻褄は合っていないけれど、どこかで意味をなしているような、そんな精神病者の話を聞いたことがある。

立川談志が、現場を無くした時、沈黙を守り続けられただろうか?

承認欲求の世界に生きる表現者は、無難な表現が丁度いいと思ったから、都合良く内容を調整したと語る。
それが受けてしまうと、私の行き場は塞がれたようなものだ。

演じている。キャラでやっている。そう言った似非者を、プロであり職人であると大人が言い出した時、一人語りの世界に生きた人々が懐かしい。
孤高のブルースメンが、悪魔と契約して、利益社会に本物のアートの門を開け開いた。
悪魔と契約する前、歌は決して人を選ばなかった。どこでだって歌う。誰とだって歌うし、誰にだって歌う。それが本物の歌だったろうに。

編集・削除(未編集)

紗野玲空様、ありがとうございました。  妻咲邦香

はじめまして紗野玲空様、「選ぶ」を読んで下さりありがとうございました。 まずは最初ということで自己紹介的なものを、と選ばせていただきました。人物の関係性は特にはっきりと明言してませんが、自由に解釈していただいて結構です。
お相手が「言葉」であるというのも素敵な解釈ですね。そうなのかもしれません。
丁寧に読んでいただきありがとうございました。またいずれよろしくお願いいたします。評を付けるという行為は大変かもしれませんが頑張ってください。

編集・削除(未編集)

メレヨン島の悲劇  上田一眞

メレヨン島
この不条理極まりない
魔の戦場を知ったのは
職場の上司が記述した体験記からだった
陸軍中尉だった彼は手記に記している

 遥か南海の孤島で
 焼きつくような暑さと 
 空腹に堪えながら死んだ戦友を思うとき
 慟哭して捧げる言葉すらない 

メレヨン島 聞かない名だ
調べると中部太平洋
グアム島の南方六百キロ
カロリン群島のオレアイとも呼ばれる
小さなサンゴ礁
戦前は日本の委任統治領
現在ミクロネシア連邦の一部となっている

島々はどれも小さく
諸島中最大のフララップ島でさえ
一辺が千五百メートルほどの三角形
標高ニメートル
全部合わせても四・五平方キロの小諸島だ

この諸島に昭和十九年四月
一個旅団七千名の将兵が上陸し
配備された

戦闘といえば
小さな島の飛行機発着場を
B24爆撃機に空襲されたくらいで
ペリリュー島のような
血で血を洗う上陸戦
本格的な地上戦は行なわれなかった
しかるに
復員できた者僅か千五百名
実に五千余名の将兵が
餓死した

米軍は有名なカエル跳び作戦で
マリアナ諸島の
サイパン テニアン グアム各島を攻略
主要な島から遠く離れたメレヨン島は
最前線の背後に残された
畢竟
島は戦略的価値を無くして
無視されたのだ

一方日本軍の最高統帥部でも
中部太平洋の防波堤と位置付けしていた
メレヨン島に
当初考えていたほどの決戦価値を見い出せず
旅団を〈捨て置き〉にすると決めた

勝手なもので
戦況の変化に犠牲を強いても
無頓着
七千名を干殺しにして屁とも思っていない
これが名誉ある皇軍首脳陣の本質だ

米軍と干戈を交えることもなく
敵からも味方からも見捨てられた
死の独立混成旅団
たった三ヵ月分の食料しか持たされず
その後の補給は
潜水艦による限られたもので
皆無に等しかった

メレヨン島は
碧海に浮かぶ椰子の姿も美しい南洋の小島だ
ラグーンを囲む環礁だから
サンゴの欠片ばかりで土がなかった
ゆえに蔬菜の栽培は叶わず
タロイモなどが多少採れる程度
火薬を使った漁撈も
たかが知れており
部隊全員の腹を充たすことはできなかった

糧なき戦いの悲劇は始まった
支給米七月から 一人一日四百十グラム
八月 二百四十グラム
九月 百グラム
この頃より餓死者が出始め
野草 鼠 蜥蜴 芋蛆まで食ったが
酷い下痢を起こし
褌を汚した
ただ単に
食った者の死期を早めただけだった

味方同士で
食料争奪の悽絶な殺し合いが起こり
食料統制を乱した将校が自決させられた
多くの兵が飢餓と
蚊を媒介としたデング熱などの風土病に倒れ
死臭は全島を風靡して
陰惨を極めた

部下の亡霊が
夜な夜な小隊長を誘いに来た

  隊長!靖国神社へ行こう!
  引率を頼む

戦わずして玉砕したも同じ
メレヨン島守備隊も終戦により降伏
七千もの将兵が
食料もないまま放置されていたと知って
米軍は驚き
クレイジーと言った

昭和二十年九月
復員船がメレヨン島に来た
帰還の船に乗り込むとき
姿なき鳥が
ギャーッ ギャーッ と啼いた
それは無言の帰国をする者たちの
泣哭(きゅうこく)に思えた

編集・削除(編集済: 2023年11月18日 04:59)
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