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(あのーー、私が言うことでもないんですけど、詩は自由を旨としていますから、どこにでも投稿しようと思えば、投稿できないところはないんですけど、いきなり大きなところに挑戦しても、世の多くのものがそうであるように、ポッと書いて、ポッと通用する、ポッと賞が取れる、なんてことは、まずありえないことというか、相当に稀有な話なのです。
やってみることは止めませんけど、大きなところのノー・レスポンスにがっかりしたら、
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臭いを消す商品を、あちらこちらに置いている。玄関、靴箱、リビング、寝室にトイレ。洗濯機の横にも大きなボトルが。独り暮らしだから、臭いの元は一人しかいない。もちろん、生ゴミ由来もあるのだろうが、私は臭いを消すため、あれこれ買い試す。
臭いを消すことに必死な私は最近、声を掛けると良く驚かれる。背後から大きな声を張り上げる訳でもなく、忍び足で近寄るでもないのに。いつもの席に座っていても、気配を消さないで下さいと言われることが増えた。私は臭いを消したからだと満足していたのだが、常務から部下が怖がっていると注意され、消臭剤を芳香剤に変え、柑橘系の香水を軽くふるようにした。すると、気配を消していると文句を言われることはなくなり、自身を臭いと思うこともないのだが、匂いが存在感を増し、気分が優れない。もともと存在感が薄いのに、臭いを消したから、気配が消えたのだ。私が消したかったのは、臭いではなく私なのかもしれない。残り少ない会社生活のため、と割り切ったつもりだったが、やはり納得できず、芳香剤を消臭剤に戻し、香水をやめる。
いよいよ、私は行方不明になる。願い通り、私は見事にきれいさっぱり消えた。部下から、気配を消さないで下さいと再び言われるようになったが、例え社長に呼び出されてももう気にしない。私は私を消したくて消したのだ。臭いが消え、私が消え、お金もだいぶ消えた。そろそろ、私を消した私も消える頃合いなのか、日毎、鏡に映る私は薄ぼんやりしていく。
不思議な子だった
雨が近づくと
雨のにおいがすると言う
実際その数分後には
雨が降った
雨ってどんなにおいなの?
あるとき聞くと
においはにおいだよ
言葉では言えないよ
あっけらかんとはぐらかされた
雨のほかは何か分かるの?
あるときまた尋ねると
好きのにおいが分かるよ
へえ 好きににおいがあるんだ
どんなにおい?
またはぐらかされるかと思いきや
んー 雨と似てるよ
あれから何年たったろう
実は最近僕も少し
雨のにおいが分かるようになった
そのたびあの子を思い出す
そうか
これが雨のにおいだったんだね
心の中であの子に話す
君が言ってたとおりだよ
言葉では言えないね
しいて言えば
そうだね
たしかに 好きのにおいだね
やがて静かに
雨がぼくを濡らす
「冒険」(1/30)に評をいただきましてありがとうございました。
ご高察のとおり、この詩で「一番書きたかったのは「目の前の君」」です。
ですので、これまたご高察のとおり「作中主人公といい、対象読者層といい、やや低めに狙っ」ています。
「多少の大袈裟を伴いながらの“おもしろまじめ”感」もご高察のとおりで、狙ったものでした。
いつもながら、こちらの意図を正確に汲んでいただき、たいへんうれしく思います。
また投稿させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
三浦志郎様
『誰だっけ』に評をいただきありがとうございます。
評の終わりに。の部分を拝見し、感性の鋭い方は私自身が「なんか、なんかなぁ」とぼんやり感じていたことも理解して文章にしてくださるのだなと思いました。
前回の作品の後、この後どうすればいいのか、なんか、まずい、プールの深いところ行っちゃったみたいだ。足着くところに行かなきゃ、ユーモアのある物が書きたい、書けない!足元、足元、と書いたのが今回の作品です。まだまだ息継ぎが上手くいかないです。勉強します。
ありがとうございました。
寒さが厳しさを増す
この季節に
様々な処で
指先に
鋭く痺れるような
痛みを覚える
静電気の季節
触れることを
恐れる季節
乾いた空気の中
摩擦や剥離や衝突により
様々なものが
様々なものより
電子を奪い取り
静かに黙したまま
人知れず帯電し
電荷を蓄積して
指先が触れた途端
一気に放電して
鋭い痛みをもたらす
ときにその小さな放電が
大きな爆発や火災を
引き起こして
全てを焼き尽くしてしまう
この乾いた世界の到る処に
奪われたものの
静かに蓄積された電荷と
触れることへの恐れと痛みが
満ち溢れていて
人々は
ものに触れることを
互いに触れあうことを躊躇い
手を伸ばせずにいる
それでも
触れる刹那に
指先よりほとばしる
ごく微かな青白い煌めきは
互いに
惹かれ合いながらも
引き離されたものが
再び結び付くときの
歓喜の閃光でもあり
寒さに震える人々を暖め
暗闇に迷う人々を導く
灯を点す種火とも
なり得るものだから
寒風吹きすさび
乾いた想いが流れる
この静電気の季節でも
人々は触れることへの
恐れや痛みを斥けて
再び出逢うときの
微かな煌めきを
仄かな悦びを
再び追い求めるだろう
今回は私の「-50度」へのご評定、ありがとうございました。
この詩は先々週?の大寒波の時に書いたものです。
気温が-50度をまわると、息の中にある水蒸気が凍結して、音が聞こえるとの事です。それを「星の囁き」と呼びますを
途中の隣にいるのは蝋燭のような……は 人は低温下で無くなると体が蝋のようになるらしいですね。
恐らくこの人は、誰かと雪山……とにかく寒いところに居たのでしょうね……
私も八甲田山の事件の事は存じております。 もしかしたらこの詩を書くのも 偶然ではなかったのかもですね
再度になりますが 私の詩の評定をして頂きありがとうございました。次回もまたよろしくお願い致します。
三浦様 詩の評をありがとうございます。
今回は詩の評だけでなくて、僕に最近起こったことなどにもコメントしていただき、お気遣いをありがとうございます。
「詩行センス」とお褒めいただき、ありがとうございます。一点、ローズマリーの下りはうっかりというか、書いてて自分でも分からなくなっていました。
スカボローの市と出てくるように、サイモン&ガーファンクルの「スカボロー・フェア」なんかもヒントにしながら書き進めました。ああいった曲の感じが出せればいいなぁと思っておりました。
いつも本当にお世話になっております。今後ともどうぞよろしくお願いします。
初めまして、鯖詰です。
この度は真剣に読んでいただきありがとうございました。
だいぶ、内省的なものを書いてしまい、申し訳ありません。
他人に伝わるものを書かなければ、こういうところに投稿している意味がありませんものね。
反省します。
また腕をみがき、投稿させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
この度は私の詩の「前世からの手紙」に丁寧な評をいただき、ありがとうございます。
佳作との評をいただき、たいへん嬉しく思います。
今回は全く異なるスタイルの詩でしたので、どのような評をいただくのか、少々ハラハラしておりました。
今後も折があれば、また新しいスタイルの詩を書いてみたいと思います。
今後とも宜しくお願い致します。
1 猫目屋倫理さん 「嘔吐する自我像」 1/27
はい、これは佳作です。「嘔吐・吐瀉物」など、きれいでない現象が綴られますが、誰しもこれは隠喩であるとわかるので問題ないと判断します。自分という対象、自分という人間風景におけるインプット・アウトプットの様相。これらの前記英単語はこの詩では自己にとっての全方位・全人格を暗示したものであるでしょう。その中にあって、とりわけ「自我、思考、言葉」に重きを置いているようです。このように、この詩は一見、難解そうですが、誰しもその大意を感じる事ができ、共感も見出せることでしょう。そこが僕が佳作とした要因であります。もうひとつ言うと、こういった主旨を他者に向かって書いてはいけない。ケンカになるでしょう。この詩はひたすら自分に向かって言っている。正解です!楽屋裏的に書くと、キワドイテーマを書くには自分に向けちゃうのが一番安全なんです。しかも、この詩には若干のユーモアと自虐性がフレーバーとして感じます。それでも確かな何かが伝わってくる。僕が一番面白く読んだのは「唐突と感じる事は~うっぷ」までの括弧( )の部分なんですね。もっと言うと(抜き書きすると)「懇切丁寧に分かりやすく~~表現や想像力といった人間性の冒涜に他ならぬ~~個人的表現~個性の損失が危ぶまれる予定調和」。特に括弧の出だし「懇切丁寧にわかりやすく」―僕は手を挙げて賛意を表しつつ、残り10~15%くらいのところで、(それだけで進歩するわけないだろ?)そんな思いがあるんです。だから、この括弧の部分は凄く共感できるのです。最後にジョーク風に書くと、終連は、出来れば食事中は読まないほうがいいでしょうね(笑)。もちろん、隠喩ですからいいんですがね。
2 cofumiさん 「ボールペン」 1/27
残念ですが、会社という機能的、目的的、利益的集団の人つながりはこういったものでしょうね。
誰しもわかっていることながら、cofumiさんはかなわぬまでも、敢えて一石を投じてみる。ここに詩の価値があります。金魚を持ち出しての皮肉、ひと刺しが利いてますね。この雰囲気は2連まで持続されています。詩の初期に出て来る「退職した彼」にはすまないですが、これは単にエピソードであって本質ではない。本質はこの詩の後半に来る。「代わりなんていくらでもいる」であり「使い捨て」でしょう。そのことにボールペンが比喩された。そして、そのことに自分を対照してみる。
すぐに、どうこうできる問題ではないですが―。
「真っ白な封筒を買って帰ろう」
この方向性の振り方が実にいい。封筒の白さ、まっさら、が、ささやかなアンチになっているようです。「代わりなんていくらでもいるんだ」のアンチとして「退職した彼」に思いを致しつつ、「結局、人は個人に還る」と言いたいですね。 佳作半歩前を。
3 理蝶さん 「さいなら、こんちは」 1/27
まず、場や背景を把握しましょう。船で今いる街を離れ、別の土地(都会?)に向かう。2連が少し面白く、数字的にならすと自分にとってややマイナス方向か?ちなみに3連のような傍流的な連も練られていて、読み甲斐があります。自分が去る、という感覚に導かれて、ひとつの思考が喚起されます。差し当たり「往来の思想」と呼んでおきましょう。僕の思うところでは、この人は、この街をけっして毛嫌いして去るのではないような気がします。むしろ愛惜が仄見えるような。そんな微妙な感情をハスッパなセリフで言っているのは、去る街への一種の強がりかもしれない。
終わり2連の船上の様子はなかなか映像的に読ませます。「潮風は俺を透明に型取り」は実にいい表現ですよねー。「しょっぱい飛沫」―これは、もちろん、物質的な感触なのですが、同時に街を去る今の気持ちをも暗示しているようにも思える。先に書いた「愛惜」と一脈通じるものではないか、と思うわけです。この詩のキャラから言って、タイトルもセリフスタイルも、この詩の事情を充分に反映しているという意味において成功していると言えます。佳作を。
4 鯖詰缶太郎さん 「メリーゴーランド」 1/27 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。初回ながらキツーイ一作です。解釈が全然わかりません。ただ、全く無関係の単語の効果を楽しむ人はいます。初連や「あなたのいないところで」の連、「爆弾/あなたは/好きだ/と、言ってくれた」の連あたりから推測すると、超変則のラブソングという気もしたのですが、わかりません。タイトルもどこから来たかは謎ですね。わかっていることだけ、ひとつ。「ゴーランド」は話言葉風俗語風で、書き言葉の場合「メリーゴーラウンド」のほうが無難でしょう。ちょっと気取って言うと「カルーセル」ですね。また、書いてみてください。
5 じじいじじいさん 「じかん」 1/28
“当たらずとも遠からず”的に書くと、「A watched pot never boils」(見つめる鍋は煮立たない) 「待たぬ月日は経ちやすい」―いずれも人の時間意識についての格言だと思います。
ところで、地球と時間というのは、ある種、神という概念に匹敵するように僕は思っていますが、その時間意識を子どもに降ろして来た場合、この詩の書き方、調子でピッタリだと考えられます。
1蓮、2連とも最も子どもに身近な体験を提示して、ハマリ過ぎるほどハマっていると思えるのですよ。「いやなならいごと」はケッサクでした。評者にも覚えがありますね。
ところで、この詩はいきなり本題に入ってますが、詩の入り口のようなものがあってもよかったかも?と思うわけです。ドラマや演芸で言う、いわゆる“つかみ”ってヤツですね。きっかけみたいなものです。終わりは「まとめ」がありますので、冒頭にも、それにふさわしい何かが欲しい。
じかんっていたずらするの
それともいじわる?
みたいな……。軽く簡単なものでいいんです。ちょっと考えてみてくださいな。 佳作一歩前で。
6 エイジさん 「優しさ」 1/28
この詩の日付周辺にはエイジさんにとって「やれやれ」的な事態が降ってわいたように記憶しております。そういった時期に書かれたもの。しかしながら、この詩に見るように、落ち着き、平静、語りの美しさが表され、まずまずこころのありようが保たれていることに、まずは安堵しております。
初連……真冬だからこそ、ありがたみがわかる陽だまり。そんなイメージが行間から漂ってくる気がします。「仔猫のあくびの息」はささやかな変化になっています。ここに提示された優しさによって詩行全体の流れもゆっくりとした時間を持っているように思えます。「だろう」「だろう」で来て、末尾の「ものですよ」―これはもう詩行センスでしょう、詩行センス!逆に少し気になったのは「風にそよぐローズマリー~」のくだり。すでにローズマリーは風にそよいでいるんだから「ローズマリーの起こす微風」は重複気味で違和感ありか?
野辺に佇むローズマリーの起こす
微風のようなものでしょう
風にそよぐローズマリーの
香りのようなものでしょう (参考です)
など、少し方向を変えてやるといいでしょう。前作のような広がりと大きさはありませんが、ささやかながら貴重な優しさに満たされます。愛すべき小品の感覚です。甘め佳作を。
アフターアワーズ。
この詩のもうひとつの焦点である「スカボロー市(フェア)」のこと。この地名によって、抒情がよりくっきりした気分になります。曲名としての「スカボローフェア」はサイモン&ガーファンクルのオリジナルと思っていましたが、イギリスの伝統歌であることを知りました。歌詞にもローズマリーが出てきますね。この曲がこの詩にも似合いそうです。
7 ストレリチアさん 「舞踏会」 1/28 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。基本、現実描写に基づきながらも必要に応じて適宜想像を詩行で飛ばす。
そのさじ加減がちょどいい感じで好感が持てます。蝶の翅の幻想性、舞踏会らしく優雅さもフレーバー。とりわけ「グラス~ステップ~タップ~ドレス~ハイヒール」―カタカナ語で演出して映像とリズムを醸して雰囲気満点です。
「毒づいた小石」
「呪いがかった予告の書」
―は現代詩的フレーズとして注目しておきたい。この詩の中でも最も先鋭を担いそう。
なにやらペンネームとも似合いそうな雰囲気ですね。また、書いてみてください。
8 荻座利守さん 「前世からの手紙」 1/29
(ふぅむ、そう来たか……) 作風も、趣向も、スタイルも、変えてきました。今のうちにいろいろなスタイルにチャレンジすることは大変良いことだと思います。前世という形を取っていますが、荻座さんが今のご自分に宛てた手紙とも取れるでしょう。この詩はある概念が出されると同時に、必ずと言っていいほど、カウンターを伴っています。おそらく、「物事は一面的でなく表裏一体。鏡の原理のように、鏡は真逆の自分を映すが、どちらも事実としての自分。時に真逆を取る場合もあり、それが有効なことがある」―そういった主旨を感じます。ここには生きていく要件の、実に多くの物が網羅されています。しかも、それらをグラデーションといった感覚で捉えている。こんな感じ―、
順(ex希望) | | | | | | | | | | | |逆(ex絶望)
←←← グラデーション →→→
多分、僕たちはこんな線上を右に左に振幅して生きているのでしょう。
まとめるように、詩は「矛盾していますよね」とありますが、これを読むと「矛盾こそ真なり」と思えてきます。真逆ですが、この話、いちいち尤もと感じます。ひとつの解答として、この詩は「止揚」という言葉を用いています。ここに、この詩の真価があると思えるのです。佳作を。
9 成城すそさん 「-50度」 1/29
この詩は創造の世界で書いたものと思われます。当然、死に至る寒さです。寒いというより痛いのでしょう。刻々痛みが走り、凍傷が進行しているかのようです。3連目はすでに幻覚を見たのでしょうか。6連目にどうしても目が行ってしまいます。傷ましいのですが、それと同等に恍惚感や静けさといったものを感じ、それを受けての終連は気高さのようなものも仄見えるようです。不思議な詩です。この詩の生まれた背景のようなものに興味を覚えます。佳作一歩前で。
アフターアワーズ。
この詩を読んで、昭和中期に生まれた評者はどうしても「八甲田山死の彷徨」(新田次郎)をイメージしてしまいます。日本での最低気温を調べたところ1902年1月25日の北海道・旭川の-41度だそうです。八甲田山の悲劇は、奇しくも、その2日前に起こっています。ところで最近のニュースで、中国、ロシアのある地域で-65度を記録したそうです。一部死者も出たそうですが、普通に市場が立ち、生活の情景が映されました。凍ったトマトで釘を打つシーンが紹介されました。寒さというのは不思議なものです。
10 喜太郎さん 「初雪」 1/29
(結露した)窓がひとつのキーワードになって、その状態によってバリエーションが付けられ詩は進行します。ひとつの提示の仕方の表れと感じます。僕としては3連が一番好きですね。ほっとした時間を感じさせます。情景・場面に終始していますが、少し心情部分も欲しいわけです。そこで「初雪」です。ロマンを掻き立てる語句ですが、実態は意外と曖昧でしょう。例えば豪雪地帯に住む人、そこそこ降る土地の人、南の島に住む人、では感じ方に地域格差があるでしょう。そこまで考えずとも、喜太郎さんの初雪についての気持ちやイメージをさりげなく織り込んでみると、詩的効果はより上がりそうです。軽く簡単で可です。 佳作一歩前を。
11 晶子さん 「誰だっけ」 1/30
タイトルが事情にかなっていて可愛い。実話でしょう。小さい頃に触れた見知らぬ人からの手助け、優しさ、思いやり。これ、誰だかわからない方が、この詩のためにはいいですね。タイトルの思いにも連なります。初連や2連に書かれたことは昔けっこうありました。昔だからこそ、晶子さんは思い出しているのでしょう。現在もそこまではいかずとも……、「ありがとうございます、すみません」「いえ、全然…」―生活という現在が進行する中、ふとした場面でこういった「匿名の優しさ」みたいなことは昔も今もあるわけです。この詩を読んで、そういった些細なことも含めて感じる部分は多いのです。「誰だっけ」と思い出しながら晶子さんはある考えに至ります。それは日常の細かさから災害時に至るまでおおえる気がしています。最後の一行のことです。
「この詩はこの一行のためにあり、この一行はこの詩のためにあり」―その相互性の中に成り立っています。甘め佳作を。
12 山雀詩人さん 「冒険」 1/30
「さわる」といった行為を「冒険」とした点、なかなか面白く興味深いものがあります。書くまでもなく「触覚」は五感の一角を立派に担っていますが、嗅覚と共に詩の登場頻度は他よりぐっと低いかもしれない。この詩はまずそこが面白いです。次に技術論めいたことをふたつほど……。ひとつは、作中主人公といい、対象読者層といい、やや低めに狙ったの感がありそうです(もちろん、普通の大人対象でも全然構わないのですが)。もうひとつは、触る側だけでなく、触られる側にも思いが行っている点です。どちらも、この詩の個性といって差し支えないでしょう。
「本や服~」から「勇気を出して」のくだり。多少の大袈裟を伴いながらの“おもしろまじめ”感がとてもいいですね。なんか、微笑ましいですね。終連も締めとしては面白い終わり方でした。甘め佳作を。
アフターアワーズ。
多少、冗談風に書くと、一番書きたかったのは「目の前の君」だったりしそうです(微笑、失礼)。
この詩を読んで、ある有名な詩を思い出しました。それが「触れる~男よ」といった詩行しか思い出せないのです。
調べてもなかなか出てきません。大岡 信だったか……?僕の錯覚か……?
評のおわりに。
今回、評を書いていて、あることに気づきました。「6、エイジさん」「11、晶子さん」を例に挙げます。
お二方とも前作は大きく広がりある作品を提示されました。今回は、ややささやかに語るように綴っています。これは出来・不出来を意味しません。長く書き続けるには大事なことだと思われます。ワンクッションの置き方、呼吸のありよう、音楽で言う緩急・強弱のあり方にも似ているようです。これらはムードのプラン、セッティング、調整力が必要とされます。こういった流れは次に向かう平常心を整えてくれるでしょう。 では、また。