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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

秋夜の虫達  小林大鬼

命の糸を
紡ぎながら

静かな時を
夢見るように

甘い寝息を
立ててゐる

月の音色を
奏でてゐる

編集・削除(未編集)

井嶋様 掲示板のエラーについて  エイジ

詩の最後の鍵括弧内の一番最後の文言がエラーで引っかかり投稿できませんでしたので、
ひらがなにて提出してあります。どうぞよろしくお願い致します。

編集・削除(未編集)

寂寥  エイジ

夜十時にもなると
家族は寝床につく
僕は独り部屋にこもり
その日あった嫌なこと
思い巡らし 反芻し
自分が見た現実に悩まされる
短編映画のように甦る
今日あった嫌なこと

僕も眠らなければならぬ
眠りは一種の死だと思う
そう思うと眠りたくない
でも疲れた 休まねばならぬ
そう考え始めた時
僕は哀しい時計番になり
12時も過ぎると
布団に入らなければと思うのだが

身体を横たえるのが怖い
棺桶の中の死体のようだ
布団の上にじっとして
見えない棺に閉じ込められる
眠りは仮想の死だ

ふらふらになった身体で
まるで疲れた狼のように
のそりのそりと家中を歩き回る
気分転換にベランダへ出てみた

見上げると星々が瞬く中に月が
雲間から覗いたり隠れたりしている
ああ 空はなんて神秘的なんだ
僕は漂う空気を思い切り吸い込んだ
ひと時の解放感に浸り 僕はこう呟いた

「これで何の悔いもなくしねる」

編集・削除(未編集)

はたち  樺里ゆう

二十歳(はたち)になった年の秋
私は煙草を一箱買った

私はそれを 自分の部屋の
机の引き出しに仕舞った

ほんとうのほんとうに
どんづまりになったら吸おう
そう決めて
お守りみたいに持っていた

結局
吸ったのは二本

味も美味さも
わからぬまま
息が吸いにくくなっただけ

あの頃の私は
人間になぞ
二度と生まれてくるか
と思っていた

誰かがじさつしたニュースを見て
両親が
「死んだら終わりよねえ」
と言うのを横目に
黙っていたけど
決してうなづきはしなかった

今の私は もう
誰かのじさつに
やたら感情移入することはないし
煙草も吸っていない

たった二年
たった二年前のことなのに

過去の自分が
他人のよう

それが良いことなのか
悪いことなのか

私はまだ
わからないでいる



ーーーーーーーーーーーーーーー
第七連と第八連にある言葉が掲示板の規制に引っかかって投稿エラーになるため,ひらがなにしてあります.
漢字に置き換えて読んでいただければ幸いです.お手数をおかけして申し訳ありません.
どうぞよろしくお願いいたします.

編集・削除(未編集)

ねえ また一緒に詩を書こうよ 紫陽花

20年振りくらいに見た中学の同級生
私はフリーペーパー配りのアルバイト中
彼女は1歳手前くらいの赤ちゃんを抱っこ紐で抱え
手には小さい聖書のような物を持っていた

 あ、まだ宗教活動してるんだ
20年ほど前に彼女から宗教勧誘を受けたことを思い出した

私と彼女はちょうど同じ家に2人してポストにビラを入れようと向かっていた
なんて偶然
私は少し気が重くなったが 彼女は迷いのない笑顔で話しかけてきた
ああ久しぶり!今仕事中なんね?これからちょっと時間ある?懐かしいから 少しカフェでお茶しよう?
何とも昔から押しに弱い私はうんと頷いてしまう
賑やかな通りの裏に突然現れるSALONCOCOなんていうピンクが基調のカフェに入ることになった
店内は至る所天使の飾りだらけ 平日の1時過ぎ店内はガラガラだ
お2人様ですねとこれまたフリルいっぱいのエプロン姿のウエイトレスさんが可愛い
席に着いて 彼女は珈琲私はココアを頼む
早速彼女は目をキラキラさせて言いたいことを一方的に話してくる
宗教活動20年目の彼女は宗教本を慣れた手つきで開いたり閉じたり
時々一生懸命私を見ながら
優等生だった彼女に似たのか赤ちゃんは時々動くけどとても静か
彼女の話だけが白熱してきた
この宗教を信仰すれば絶対幸せになれるから 私幸せになったから
学生時代は親に色々強制されて不幸だったけどやっと親とは違う信じるものが出来たの
公務員にもなったけど上に虐められて辞めてしまった
ただ宗教のところでは幹部にもなれて宗教だけは私を認めてくれた
20年ずっと続けられたのは宗教だけなの
これは素晴らしいの 一緒に幸せになろう  だいたいこんな事を繰り返している

私はというとこの20年 宗教に浸かってたあなたに会いたくなくて距離を置いていた
何だかごめんなさい
学生時代は私も似たようなもの テレビやゲームは全て禁止 親の言うことは絶対だった
親元を離れて私は自分勝手だから自分だけを信じていた
私も仕事はいくつか変わった 
確かに虐めてくる人もいたけど 味方になってくれる人もいた
私はわがままなのでコロコロ変わる他人の評価は気にしなかった
永遠に変わらない価値観なんて多分ないから
私はひたすら私が大好きでとどのつまり割と1人が好きな人間だ
彼女は自分よりその神様が大好きでその神様の価値観は永遠と信じている
その神様を信じる仲間との愛が温かいんだろう

何より目の前にいる彼女が最新のAIを搭載した宗教勧誘ロボにしか見えなくなってきた
どんな時も私を温めてくれるココアも今は無味だ
さっきまで聞こえていた店内BGMも聞こえなくなった
頭の中に昔見たテレビの砂嵐の音と画像がちらちらしてきた

彼女の話を上の空で聞きながら中学2年6組13番と19番
隣の席で 昨日新聞に投稿してた詩が載ったの見てね
と嬉しそうに話す少女だった彼女を思い出していた
また一緒に詩を書こうって 言ってほしい

編集・削除(編集済: 2022年10月25日 19:26)

庭  さくたともみ

すももの木は背を伸ばし
梨の木は横に枝を伸ばした
この自由な庭に規則などなく
人参だの豆だのじゃがいもだのなんでも植えてあった
木や野菜の隙間には無造作に花が敷き詰められていた

稀に栗鼠が遊びに来た
時折雀が休みに来た
よく烏揚羽蝶が蜜を求めてやって来た
特に百合の花の蜜を好んで吸っていた

庭にいた犬は何時からか牧場の番犬をやり始めた
猫は相変わらず家のあちこちで昼寝した
窓辺の金魚は優雅に泳いでいた

天井から下がった曾祖母の作った鞠が色褪せ
金の糸に埃が絡まっている
畳が寂しき呼吸をした
私はこの置いてきぼりにされた部屋から
賑やかな庭先を眺めた
何時も植物の瑞々しい香りが風に乗ってやって来る

手入れの行き届いた庭ではなかった
花園のように繊細な庭ではなかった
野性的な生命力に溢れ
小さな森のように神秘的で
その庭は美しかった

編集・削除(未編集)

きゅうりの詩  朝霧綾め

きゅうりは一本十四カロリー
チーズひとかけらで補えるエネルギーを
きゅうりで代用するなら
五本食べなくてはならない

塩をかければそれなりに美味いが
ほとんどが水分
特に味があるわけでもなく
野菜なのに栄養価も低い

けれども人間には
きゅうりが必要なのだ

きゅうり以外に
河童の好物があるだろうか
ぽきりというあの歯ごたえは
他のどの食材でも代えがたい

黄色い花
水道で洗われている真緑の姿
ぱらぱらとまぶされる塩

なんだかきゅうりが食べたくなってきた

編集・削除(未編集)

しのべるおりのうた 暗沢

 拵えるべきは 何なる面か 
 来たる祭祀を 前にして

いまや薄ぼやけた 模糊たる日差の照らす下(もと)
赤赤赤と氾濫する 二重映しの反映を
無垢に捉えるには 目がかすむ

 雲と連立ち高く失せた 青さが既に懐かしい

夥しい彩りから 歌を紡ごうと覚えたものだ
並(な)べて美(よ)き織物を 陶然と夢見たものだったが
その実紡錘(つむ)へと導く糸は 触れる指を黒く穢した

 錦繍の色彩は なにより染まる色であったか

ふる鎌の刈る垂穗の粒が 嬰児の頭に見えたのだ
末枯れる葉の細やかは 女たちの指である
路傍に敷かれる彩色は 血糊と脂膏の惨憺たるか

 死者の妬みが輝きに そう歌った詩人がいたっけ・・・・

これは如何なる気付きか 或いは錯乱?
累する折々の歌とは 他ならぬ歔欷
織り上げられた錦繍より 滴っているのは血?

 執り行うべき祭祀とはなにか
 祀る神とは なに

何なる神を迎えんや かの来たるべき祭礼に
如何なる貌で迎えらん かの祝うべき祭礼を
いや隠せ 隠せ その訝しげな相貌は その

 青褪めた相貌は 面を拵え隠さねば

ぼくは大笑いの面を作ろう 兎でもいいかもな
波立つ黒山の傍で大人しく 杵でも突いているとしよう
突いているのは餅でなく穀だが 望むなら
千々の穢れた片々も 玉(ギョク)ときらめくかも知れない
そうまでしてやっと ぼくも見出せよう

 赫々たる糜爛の赤とは異なる相を
 その光彩を

紅栄え 黄色(おうしょく)充つる
絢爛極まるその錦繍を紡ぐ営為に
ぼくも嬉々と加わろう
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)の拍子を以て

目眩む七彩の循環は非同心円状の螺旋を描く
その華々しい脈動を感受する恍惚と喜悦を ぼくは
私は 彼等と共に高吟する

 渦中真っ只中でも外れない
 留金のような紐が面には必要だ

そうして
私はやっと参与が叶うのだ その
瞬息と悠久の間にて休む事なく
顫動を続ける 
狂宴めいた引継ぎに

や これは困った仕上がったものの 
急拵えの面ゆえか ぽっかりと
黒目があいてしまっているな
もしも穴の縁周りが濡れていたら
露のせいにでもしておこう

 筆に用いた忍ぶ草は
 豹問蝶の死床(おちばのやま)へでも捨てておこう

 いまは しのべるおりのうた

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摩耗  理蝶

もう飽き飽きだよね?
時代の隙間に逃げ込もうか
片親の眉間に穴を開けようか
黒い波間に溶けてしまおうか
ねぇ、どうしようかしら。

流行り歌にも
私の明日を諭されるの
誰にも何にも
私に触れないで、な夜

高嶺の花の生えるという山の
麓の村に
生まれたのよ私

あなたは待ってなさい
って言われて
生きてきたの私

言葉はね、言葉だけはね
私を救うと思ってたの

でもね、言葉はね
体からはどうしても
離れられないの
こびりついてるの
それを言った人の
香り、罪、親の影、
そんなものまでもね
全部がね
こびりついているの

あぁ、パブロフでも政府でも
何の犬でもいいから
私を冷たく飼い慣らして
私に明日を言いつけて

さもなくば私
みんなわかってるけど
言わなかったこと
みんなに触れて回るんだから

そうしてみんなの苦い顔見て
思いっきり笑ってやってから
都会の藻屑になってやるのよ

もう飽き飽きだよね?
時代の隙間に逃げ込もうか
片親の眉間に穴を開けようか
あなたの夜逃げの邪魔をしようか
ねぇ、そうしようかしら。

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張りぼての牛  荻座利守

商業ビルの
屋上に造られた
大きな張りぼての牛は

降りしきる
雨にうたれ続け
虚しいほほえみを
うかべながら
両の眼から涙を流して

造られたものが
またたく間に消え去るような
つくも神のいなくなった
この世界を
独り寂しく見おろしている

人により
造られたものどもの
朧な魂は
蒸発する今という時の
下がりゆく沸点に
追いたてられるように

巷間の雨風に流されて
永遠に忘却される過去へと
その影を薄めながら
拡散してゆく

人生という時の一部
命のひとかけらが費やされて
造られたものどもに込められた
造り手たちのあえかな魂は
触れる間もなく消えゆく
雪のひとひらのよう

つくも神の
いなくなったこの世界で
ほほえみながら涙する
張りぼての牛

その虚しい瞳は
造られたものの儚さとともに
造り手たちの命の儚さをも
見つめているかのようだった

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