Q
なかなか成果が出ないときに管理職からプレッシャーをかけられたらどうすればいいか?
A
管理職も大変だと思ってください。(回答・野田俊作先生)
Q
いじめられている生徒を励ます方法はないか?
A
イジメというのが何のことかわからないので、例えば、恐喝にあっている生徒を励ます方法は何ですかと言われたら、それはないでしょう、そんなもん。警察に言って恐喝をしている子を捕まえてもらうしかないんじゃない。でも、みんなにのけ者にされている生徒を励ます。それはあるでしょう。「のけ者にされるのはどうしてだと思う?」と聞くことでね。僕の患者さんに結構います。「友だちができなーい」とか言うんですよ。話を聞くと、自分がどんなに悲しいかつらいかいっぱい言うんです。それは友だちできないよ。この子の話を聞いても面白くも何ともないもの。「僕のところではとにかく楽しく面白い話をして」って言う。「クラスでどんなにイヤなことがあったって言われたって、先生全然楽しくないし君と友だちになろうとも思わないし、もしも先生と友だちになりたかったら、まず先生が面白がる話を探して、それを次に持っておいで」と、まず言います、1つはね。もう1つは、「どの子と友だちになりたいか決めて」と言います。「クラスのあの子と友だちになりたい」とか。そうすると馬鹿げたことに、クラスで一番人気のある子を言うんです。「どうやったらその子と友だちになれる?」「わからん」「その子のそばへ行って、ニコニコしながらその子の話を1週間聞いておいで。向こうが君をかわいがってくれれば友だちになれるし、『あっちへ行け』という顔をされたら友だちになれないから、また考えようね」と1週間やってもらいます。1週間して「どうだった?」「ダメ。私がそばへ行くとスーっと去って行く」「OK。あの子は友だちになれない。2番目を選ぼう。1番目はダメだったけど2番目はどう?」。2番目の子も派手な子を選んでこれも失敗。3番目を選んでもこれも失敗。最後は自分と同じくらい「暗い子」と2人ペアです。「友だちできたー」と言って、2人で座っているだけ。だから、すべての問題は段階的に解決すれば解決する。一気に何もかも解決しようと思うとできませんが、ちょっとずつやっていくと解決できますから、犯罪じゃないイジメについてはそんなことです。(回答・野田俊作先生)
Q
大人数の非行グループがクラスに存在するようになってしまったらどうしたらいいか。
A
教師を辞める。非行グループが大人数というのは、教室の運営が完全に失敗しているということじゃないですか。この先生に助言しても無駄だと思う。その子たち全部警察のお世話にならないといけない。少人数の問題児は絶対いる。これは人類の遺伝の要請だと思う。昔アメリカのアドラー心理学者・クリステンセン先生に来ていただいて、安芸の宮島へ行った。旅館の2階でご飯を食べていると、下を修学旅行生が通るんです。行列が通ったあとを2人ほどグレた子がグレた格好でグレた歩き方で歩いてる。クリステンセン先生がすごく喜んで、「どこの国にもああいうのがいるんだよ」って。1人や2人はああやって自分の存在を示す子がいるんだって。世界中どこの国でもそれくらいの確率ではいるんです。ひとクラスに1人とか2人とかはいたほうがいい。あの子たちは将来の乱世のためにはいいんです。今は(一応)天下泰平の世でありますから、あの子たちは邪魔ですけど、将来また戦国の世の中になったときに、あの子たちはきっと頼りになるよ。人類はどんなことが起こっても生き残れるように、いろんな種類の子どもを用意している。だからその子たちを邪魔にすることはない。今は非行の子かもしれないけれど、この子たちが残ると人類の将来に役に立つと思って、大事にしてください。それはそうなんですが、クラスの大半が非行少年になったということは、それはクラス運営がおかしい。ちょっとこのクラスがどうかよくわからないけど。それは、別の先生に入ってもらうとか、今のクラス運営そのものに絶望的な欠陥があると思う。普通そんなはずないもの。(回答・野田俊作先生)
Q
小学校2年生の男の子です。教室で座っていられないときに教頭先生に連れられて教室外に出ます。そのときに「自分をころせ」などと言います(野田:「よし、ころしてやろう」と言ったらどうするかな?)。教頭先生はその子を保健室へ連れて行きます。その子にどんな声かけ対応をしたらいいかいつも考えていまいます。今はじっと黙ってその子を見つめることしかできていません。落ち着いたらおしゃべりをしたり、教室に一緒に帰ります。その子に「能力がある」と思ってもらうためにどんなことができますか?
A
あのー、こんな子に話しかけなくていいです。今日は、たぶん学校の先生、それも中学校かな、小学校の先生もいるかなと思って話をしていますが、保育所とか幼稚園とかだと、子どもが喧嘩をしたら、2人の先生がその子たちのところへ行って、喧嘩はほっといてもいいけど怪我させたらいけないから、2人の先生が引き離して、子どもを別々の場所に連れて行って、ニコニコしながら何も言い聞かせないで、落ち着くまで待って、「もう喧嘩しないでいられる?」と聞いて、子どもが「うん」と言ったら釈放します。それだけです。「なんで喧嘩したの?」とか「どうしたら喧嘩しないでいられる?」という話を一切しません。これが正解なんです。「なんで喧嘩したの?」と聞いたら、「相手が悪い。自分が正しい」と言うに決まっている、両方が。「これからどうする?」と言ったって、ろくなこと言いませんから。喧嘩したら捕まえて離す。危ないことしてたら捕まえてよそへ連れて行って落ち着くのを待つだけの動きをします。これはタイムアウトですね。「あー、これはしてはいけないことなんだ」とわかってくれればそれでいいから。「してはいけない」と言うこともないです。2人を離すんだから。うっかりここで「あれはしてはいかんよ」と言うと、先生が陰性感情を持って子どもたちを罰してしまいそうに思う。だから、何も言わないで引き離しておいておくのが正解なんです。この教頭先生はとても正しい行動をしていると思う。クラスの中を立ち歩いたら、とにかく引き離して落ち着いて最後、「もう座って授業受けられるか?」と聞いて、「うん」と言ったら釈放で、「ううん」と言ったらしばらくまだ拘留する。話をしない。それを受容と共感で、子どもの話を聞いてやると「特権」を与えていることになる。クラスの中で不適切な行動をすると、僕だけ特別に話を聞いてもらえる。むしろ「不利な状況」を与えないと、子どもは結末を体験しないから、とにかく隔離して落ち着くのを待って、その間何も話をしないで、「もう座っていられる?」と聞いて「うん」と言ったら帰す。それだけでいいんじゃないですか。(回答・野田俊作先生)
Q
中学校の教師をしています。不適切な行動には4つの目的があると聞いて、目から鱗でした。思春期の子どもについて、この4つの他に特に気をつけたほうがよいことがありますか?
A
まあ、4つないし5つ。『クラスはよみがえる』では「賞賛を求める」というのが入っていて、「賞賛を求める」「注目関心を引く」「権力闘争をする」「復讐をする」「無能力を誇示する」です。「無能力を誇示する」は普通、学校では見当たりません。どこへ行けば見当たるか?精神病院と刑務所へ行くと見当たります。「私は人間失格です」という宣言をすることで、人間失格宣言の積極的なのが犯罪者で、消極的なのが精神病者です。それは普通は学校ではいません。復讐はいます。復讐の積極的なのが非行少年で、消極的なのが不登校、学校に恨みを持つ不登校です。復讐になると、学校には対処能力がない。学校が当事者能力を欠いているから復讐になっているわけで、はっきり非行化している子たちに学校ができることがあるとあまり思わない。警察と連携したほうがいいと思う。学校に対して積極的に恨みを持って不登校している子に学校がアプローチできるとは思わない。何となく消極的に行けなくなっているんじゃなくて、「あんな学校に行ってやるか」と怒っている子がいるから。教師に怒っていたりして。だからクラスの中で問題になるのは「権力争い」。教師と生徒でどっちがボスかを決めようとする争いか、「注目関心」を引くか。不適切な行動でもって注目関心を引くか、それか賞賛を求める。賞賛を求めるのを結構見逃していて、「私はこんなに良い子ですよ。ほら先生、もう計算できたよ。あ、僕知ってるもん」と言う子がいると、他の子がイヤがる。「あんなええカッコできないから、じゃあうんと悪いカッコしよう」と、それで不適切な行動を起こすやつがいる。「賞賛を求める」というのは学校では結構問題です。その子たちには賞賛を与えないことです。そんなことをしなくてもその子たちとつながれる。そのことについて教師が一々「あ、できた。すごいね」と言わないこと。
思春期だからといって何も変わりません。ドライカースがこれを言い始めたんですが、いろんなことを言う人がいます。学者家業というのは、新しいことを言ってなんぼですから、先生の言ったとおり言っていると論文が書けないから、「思春期に特有の3つの目的」というのをディンクメイヤーという人が書いたんです。嘘じゃないですが、使わなくてもいいです。ドライカースの「4つの目的」で、十分大学生までいけますから、あんまり考えなくていいです。(回答・野田俊作先生)